評論家は「曲のどんなポイント」を聴いている?
Mrs. GREEN APPLE、ジェイコブ・コリアー、パット・メセニー……オーディオ評論家が試聴に使った2024年の曲はこれだ!【Part.2】
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多重録音によるマルチスクリーン・レイアウトのYoutube動画が注目を集めクインシー・ジョーンズにも見出されるなど、世界的にも高い人気を誇るコリアーの最新アルバムから。
ゴージャスなハーモニーとシンセサイズされたピッチベンドを伴う重層的な歌声表現は、細やかな情報に富んでおり男性ボーカルのチェックに最適。深い領域でピッチがアップダウンするエレクトリックベースは、1分6秒以降、終始、裏拍にアクセントを持ったタイトなフレーズが奏され低域のレスポンスを確認できる。
音量変化を含むシンセの表情や、細かく散りばめられた多数のSEの明瞭な再現性、スティーブ・ヴァイと思しき2分40秒からのギターのオブリガードも聴きどころだ。
20世紀交響曲の傑作。オンド・マルトノ、ピアノ、そして合計10人の打楽器奏者が15種ほどのパーカッションを演奏するという極めてプログレッシブな内容だが、それだけにオーディオ機器の腕試しには最適で、音楽としても文句無しの大作。
賑々しくダイナミックな第5楽章はもっともシステムの実力が分かりやすい。多彩な銅鑼を含むシンバル類、グロッケンやチェレスタが強打され、その上、和音を鷲掴んで強奏するピアノや金管の咆哮がダイナミクスの幅豊かに重なる様を、如何に混濁・飽和させずに、楽器ごとの位置関係や音色も明解に描き分けられるか。また、大太鼓やコントラバスのローエンドも、深く、そして、明瞭なレスポンスで再生したい。
1986年にミサワホーム総研の制作でリリースされたタイトルのリマスター版で、楽曲でのピックアップという趣旨ではあるが、これはアルバム全体として挙げさせていただきたい。特にアナログ盤リイシューがオススメ。
サラウンドと題された本作は、身の回りの音環境に溶け込むアンビエント的な作品だ。ジャケット画像のような水をはじめ、水滴や水蒸気、雲、森、などを想起するシンプルで美しい音響が静かに展開する。
古典的なシンセサイザーの音のみで構成され、マリンバを思わせるような音色のTr.1、大気や雲を思わせるような大きな流れの中に細かな粒のシンセサイザーの動きが詰まったTr.2、ミストのようなきめ細やかなシンセ音の滞留が美しいTr.4、凛とした空気や水滴を思わせるTr.5など、再生能力が高まれば高まるほど、清涼で瑞々しい極上の音世界に没入させてくれる。