公開日 2010/03/03 15:08
「機動戦士ガンダムUC」で体験! コンテンツのネット配信、その利便性と今後
ケースイがSCEに直撃インタビューを敢行
アムロやシャアが活躍した「機動戦士ガンダム」、俗に言う「“ファーストガンダム”」の流れを汲む久々の新作「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」が話題だ。すでに2010年2月20日より、全国8カ所の映画館で「プレミアレビュー」としてイベント上映がされている。ユニークなのはこの「プレミアレビュー劇場」と同時に、PlayStation Storeでネット配信が実施されたことだ(関連ニュース)。ネット配信を利用すれば、上映館と同じタイミングで最新のガンダムを家に居ながら視聴できる。忙しかったり、上映館が近くに無い人にはまさに朗報と言えるサービスだ。
なぜPlayStation Storeがガンダムの新作を配信するのか、またその反応はどうなのだろうか? 今回、ソニー・コンピュータエンタテインメントでコンテンツの配信を担当する三人の方へインタビューを行った。
また後半ではネット配信版と劇場で先行販売されているBD版、そして劇場のスクリーンでの上映版を比較してみようと思う。
劇場と同じタイミングで、家に居ながら視聴できる − 「ネット同時配信」という楽しみ方
━━ それぞれご担当されていることを教えてください。
河越氏:私と吉田はPlayStation 3やPSP「プレイステーション・ポータブル」上で楽しむことができるコンテンツを配信しているPlayStation Storeで、販売するコンテンツの購入から編成、ラインアップまでを担当しています。コンテンツホルダーとの交渉など対外的なお仕事が多いですね。三木は編成に加え、PlayStation Storeの全製品の販売を担当しています。いわばPlayStation Storeの“店員”的な存在です。
吉田氏:河越が仕入れてきて、私が三木に、お店に置いてもらえるように営業をする。そんな感じでしょうか(笑)。商品量も多くなってきているので、三木もPlayStation Store上での陳列は結構苦労しているようです(笑)。
三木氏:今回の「ガンダムUC」の配信は、個人的にも楽しみなコンテンツでした。
━━ 配信コンテンツに「ガンダムUC」を選ばれた理由は?
河越氏:いままでネットのアニメ配信といえば、テレビや劇場公開を経てから行うものでした。しかし2009年に「亡念のザムド」をPlayStation Storeで先行配信したところ、とてもクオリティが高いアニメということもあり、スマッシュヒットを記録しました。そこで「新作アニメの配信はやはり凄い!」ということになり、次なる配信作品としてガンダムUCをセレクトしました。
吉田氏:私と三木は30代半ばなので、’80年代のガンプラブームなどを経て育ちました。いわゆる“ファーストガンダム”は再放送での視聴でしたが、続編の「機動戦士Z(ゼータ)ガンダム」、「機動戦士ZZ(ダブルゼータ)ガンダム」などにハマったものです。社会人になり、しばらくガンダムから遠ざかっていたときに、小説版ガンダムUCを読んで、またガンダムに興味がわいてきました。この作品には、ガンダムを見なくなった大人たちにもう一度ガンダムの世界を振り返らせる力があると思います。
三木氏:ガンダムUCの配信を担当していると、社内のいろんな部署の方が協力してくれました。アドバイスにとどまらず、「ガンダムってのはなぁ……」と作品についてアツク語られたりして(苦笑)、叱咤激励をいただきました。それだけ多くの人が関心を持っている作品だなと感じましたね。
━━ ガンダムUCを配信することで、PlayStation Storeへの新規顧客を掘り起こせるということでしょうか?
河越氏:そうですね。話題作と言うだけでなく、旧作へ再度興味を持っていただけるというのは、ビジネスとして頼りになります。PlayStation Storeでは動画配信のコンテンツを大幅に増やしており、2009年年7月の時点で約50タイトル程度であったのが、2010年1月には300タイトル以上に増えています。今回のガンダムUCの物語は、1988年に劇場公開された映画「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」の延長線上にある話です。PlayStation Storeでは「ガンダムUCを見る前に『逆襲のシャアを見よう』ということで、現在通常価格の半額で視聴できる施策をやっています。
三木氏:PlayStation Storeのユーザーはガンダム世代の30代が多いので、多くの方に魅力を感じていただけると思っています。お求めやすくなった新型PS3が登場してからは急激に20代のユーザーが増えているのですが、これからは“ガンプラ”ブーム以降に育った世代が、どれだけガンダムに関心を持ってくださるか楽しみにしています。
━━ HD画質1,000円という価格設定についてお聞かせください。一般的なダウンロードレンタルが200円〜500円なので、少し高いように感じますがいかがですか?
河越氏:価格についてはいろいろなご意見があると思いますが、劇場の「プレミアレビュー」開始と同日から配信をスタートしたこと、BD/DVD版の先行視聴ができるという2つのメリットを考えると、多くの方に利用していただける設定だと考えています。
吉田氏:「プレミアレビュー」は国内合計8カ所の映画館でしか行われません。ガンダムファンは多いですから、近くに上映劇場が無い方でも、開始と同時期のタイミングで作品に接することができるメリットは大きいと思います。
━━ PlayStation Storeで配信するソフトを選択する基準はありますか?
河越氏:やはりPS3やPSPはゲーム機としての使用がメインですから、『ゲームとの親和性』は重要視しています。利用者は圧倒的に男性が多いので、まずはゲームやコミック好きの男子の皆さんに興味を持っていただけるコンテンツを充実させるように心がけています。
三木氏:それと、ユーザーの年齢にも気を遣っています。アニメ以外ですと、最近はマイケル・ジャクソン関連も好調です。「This is it」はもちろん、「ムーンウォーカー」など、関連作品のダウンロードも好調です。ガンダム世代とマイケル・ジャクソンブームって、時期や世代的にかぶっていますからね。これからもガンダム関連作品に限らずセールやキャンペーンなどを企画しています。無料の体験版ゲームも増えていますので、PS3を起動したらぜひPlayStation Storeにお越しください!
ネット配信の活路は「即時性」と「希少性」
ネットワークを使った動画配信ビジネスで成功するのは難しい。ネット配信のレンタルの相場は300円から500円だが、大手ビデオレンタルチェーンだと旧作を1本100円でレンタルできる。運営費や権利料金などを考えれば、ネット配信の価格がべらぼうに高いとは思わないが、両者を比較した場合、ユーザーは多少歩いてでも安い実店舗を利用するのではないだろうか?
筆者はネット配信の活路は「即時性」と「希少性」にあると考えている。即時性とは、今回のガンダムUCのように映画館での「プレミアレビュー」上映開始と同時に家庭でも最新作を楽しめるメリットだ。もう一つの希少性は、既存のレンタル店に置かれていないようなニッチな作品を配信することだ。たとえば筆者はロベール・ブレッソン監督の「抵抗」という映画が見たくて、レンタルで探したのだが、近所のレンタル店でもポスト投函式のレンタル店でも見つからなかった。こういった大手のレンタル店が扱わないような作品こそ、ネットレンタルで視聴できたらと思う。
PS3では見られないのだが、アクトビラでは2010年のサンダンス映画祭でグランプリをとった「フローズン・リバー」を期間限定で配信している。これまで単館上映しかされなかった作品を、ネット配信で自宅に居ながら、それも劇場公開と同じタイミングで楽しめるのは素晴らしい。こんな機会が増えるのなら、ホームシアターの機器もグレードアップしたくなるというものだ。
映画館での「プレミアレビュー」上映開始とPlaySation Storeを通じたネット配信を同時に行った、このガンダムUCの企画は、これまでありそうでなかったファン目線のサービスだと感じた。事実、配信についての手応えをSCEの宣伝に伺ったところ「ガンダムUCは、今までのPlayStaion Store映像配信タイトルを圧倒する数のDLが初日だけでありました。20代のユーザーによる利用が多いPlayStation Storeのなかでは際立って30代以降のユーザーも多かったのが興味深いですね。『“ファーストガンダム”世代を呼び戻す!』というコンセプトが実現できたと思っています。また現在半額キャンペーンを行っている『逆襲のシャア』にもかなり反響があり、ガンダムUC配信開始後は10倍以上にダウンロード数が伸びました」とのことだった。ぜひ今後もネットレンタルに風穴を開けるような配信をしてほしい。
なぜPlayStation Storeがガンダムの新作を配信するのか、またその反応はどうなのだろうか? 今回、ソニー・コンピュータエンタテインメントでコンテンツの配信を担当する三人の方へインタビューを行った。
また後半ではネット配信版と劇場で先行販売されているBD版、そして劇場のスクリーンでの上映版を比較してみようと思う。
劇場と同じタイミングで、家に居ながら視聴できる − 「ネット同時配信」という楽しみ方
━━ それぞれご担当されていることを教えてください。
河越氏:私と吉田はPlayStation 3やPSP「プレイステーション・ポータブル」上で楽しむことができるコンテンツを配信しているPlayStation Storeで、販売するコンテンツの購入から編成、ラインアップまでを担当しています。コンテンツホルダーとの交渉など対外的なお仕事が多いですね。三木は編成に加え、PlayStation Storeの全製品の販売を担当しています。いわばPlayStation Storeの“店員”的な存在です。
吉田氏:河越が仕入れてきて、私が三木に、お店に置いてもらえるように営業をする。そんな感じでしょうか(笑)。商品量も多くなってきているので、三木もPlayStation Store上での陳列は結構苦労しているようです(笑)。
三木氏:今回の「ガンダムUC」の配信は、個人的にも楽しみなコンテンツでした。
━━ 配信コンテンツに「ガンダムUC」を選ばれた理由は?
河越氏:いままでネットのアニメ配信といえば、テレビや劇場公開を経てから行うものでした。しかし2009年に「亡念のザムド」をPlayStation Storeで先行配信したところ、とてもクオリティが高いアニメということもあり、スマッシュヒットを記録しました。そこで「新作アニメの配信はやはり凄い!」ということになり、次なる配信作品としてガンダムUCをセレクトしました。
吉田氏:私と三木は30代半ばなので、’80年代のガンプラブームなどを経て育ちました。いわゆる“ファーストガンダム”は再放送での視聴でしたが、続編の「機動戦士Z(ゼータ)ガンダム」、「機動戦士ZZ(ダブルゼータ)ガンダム」などにハマったものです。社会人になり、しばらくガンダムから遠ざかっていたときに、小説版ガンダムUCを読んで、またガンダムに興味がわいてきました。この作品には、ガンダムを見なくなった大人たちにもう一度ガンダムの世界を振り返らせる力があると思います。
三木氏:ガンダムUCの配信を担当していると、社内のいろんな部署の方が協力してくれました。アドバイスにとどまらず、「ガンダムってのはなぁ……」と作品についてアツク語られたりして(苦笑)、叱咤激励をいただきました。それだけ多くの人が関心を持っている作品だなと感じましたね。
━━ ガンダムUCを配信することで、PlayStation Storeへの新規顧客を掘り起こせるということでしょうか?
河越氏:そうですね。話題作と言うだけでなく、旧作へ再度興味を持っていただけるというのは、ビジネスとして頼りになります。PlayStation Storeでは動画配信のコンテンツを大幅に増やしており、2009年年7月の時点で約50タイトル程度であったのが、2010年1月には300タイトル以上に増えています。今回のガンダムUCの物語は、1988年に劇場公開された映画「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」の延長線上にある話です。PlayStation Storeでは「ガンダムUCを見る前に『逆襲のシャアを見よう』ということで、現在通常価格の半額で視聴できる施策をやっています。
三木氏:PlayStation Storeのユーザーはガンダム世代の30代が多いので、多くの方に魅力を感じていただけると思っています。お求めやすくなった新型PS3が登場してからは急激に20代のユーザーが増えているのですが、これからは“ガンプラ”ブーム以降に育った世代が、どれだけガンダムに関心を持ってくださるか楽しみにしています。
━━ HD画質1,000円という価格設定についてお聞かせください。一般的なダウンロードレンタルが200円〜500円なので、少し高いように感じますがいかがですか?
河越氏:価格についてはいろいろなご意見があると思いますが、劇場の「プレミアレビュー」開始と同日から配信をスタートしたこと、BD/DVD版の先行視聴ができるという2つのメリットを考えると、多くの方に利用していただける設定だと考えています。
吉田氏:「プレミアレビュー」は国内合計8カ所の映画館でしか行われません。ガンダムファンは多いですから、近くに上映劇場が無い方でも、開始と同時期のタイミングで作品に接することができるメリットは大きいと思います。
━━ PlayStation Storeで配信するソフトを選択する基準はありますか?
河越氏:やはりPS3やPSPはゲーム機としての使用がメインですから、『ゲームとの親和性』は重要視しています。利用者は圧倒的に男性が多いので、まずはゲームやコミック好きの男子の皆さんに興味を持っていただけるコンテンツを充実させるように心がけています。
三木氏:それと、ユーザーの年齢にも気を遣っています。アニメ以外ですと、最近はマイケル・ジャクソン関連も好調です。「This is it」はもちろん、「ムーンウォーカー」など、関連作品のダウンロードも好調です。ガンダム世代とマイケル・ジャクソンブームって、時期や世代的にかぶっていますからね。これからもガンダム関連作品に限らずセールやキャンペーンなどを企画しています。無料の体験版ゲームも増えていますので、PS3を起動したらぜひPlayStation Storeにお越しください!
ネット配信の活路は「即時性」と「希少性」
ネットワークを使った動画配信ビジネスで成功するのは難しい。ネット配信のレンタルの相場は300円から500円だが、大手ビデオレンタルチェーンだと旧作を1本100円でレンタルできる。運営費や権利料金などを考えれば、ネット配信の価格がべらぼうに高いとは思わないが、両者を比較した場合、ユーザーは多少歩いてでも安い実店舗を利用するのではないだろうか?
筆者はネット配信の活路は「即時性」と「希少性」にあると考えている。即時性とは、今回のガンダムUCのように映画館での「プレミアレビュー」上映開始と同時に家庭でも最新作を楽しめるメリットだ。もう一つの希少性は、既存のレンタル店に置かれていないようなニッチな作品を配信することだ。たとえば筆者はロベール・ブレッソン監督の「抵抗」という映画が見たくて、レンタルで探したのだが、近所のレンタル店でもポスト投函式のレンタル店でも見つからなかった。こういった大手のレンタル店が扱わないような作品こそ、ネットレンタルで視聴できたらと思う。
PS3では見られないのだが、アクトビラでは2010年のサンダンス映画祭でグランプリをとった「フローズン・リバー」を期間限定で配信している。これまで単館上映しかされなかった作品を、ネット配信で自宅に居ながら、それも劇場公開と同じタイミングで楽しめるのは素晴らしい。こんな機会が増えるのなら、ホームシアターの機器もグレードアップしたくなるというものだ。
映画館での「プレミアレビュー」上映開始とPlaySation Storeを通じたネット配信を同時に行った、このガンダムUCの企画は、これまでありそうでなかったファン目線のサービスだと感じた。事実、配信についての手応えをSCEの宣伝に伺ったところ「ガンダムUCは、今までのPlayStaion Store映像配信タイトルを圧倒する数のDLが初日だけでありました。20代のユーザーによる利用が多いPlayStation Storeのなかでは際立って30代以降のユーザーも多かったのが興味深いですね。『“ファーストガンダム”世代を呼び戻す!』というコンセプトが実現できたと思っています。また現在半額キャンペーンを行っている『逆襲のシャア』にもかなり反響があり、ガンダムUC配信開始後は10倍以上にダウンロード数が伸びました」とのことだった。ぜひ今後もネットレンタルに風穴を開けるような配信をしてほしい。
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