公開日 2014/04/21 11:00
“世界初”ドライバー搭載イヤホン・オーディオテクニカ「CKRシリーズ」が生まれるまで
【開発者特別インタビュー】
オーディオテクニカが、またひとつイヤホンの新たなフェーズを拓いた。4月25日に発売されるイヤホン“CKRシリーズ”(関連ニュース)は、ラインナップされる5モデルのうち上位機種「ATH-CKR10」「ATH-CKR9」に“世界初”の「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」を搭載。これまでのイヤホンの音を一新するサウンドを実現した意欲的なモデルとなっている。“世界初”ドライバーは、いったいどのようにして生まれたのか? 特徴も様々な5モデルを貫く思想とは何か? オーディオテクニカのキーマンにお話しをうかがった。
「なにか新しいことをやろう」からスタートしたCKRシリーズ
中林氏(以下敬称略):4月25日、オーディオテクニカから“世界初”の「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS(デュアルフェーズ・プッシュプルドライバー)」を搭載した“CKR”シリーズが登場します。既に大きな話題を呼んでいる本シリーズですが、どのような経緯で誕生したのでしょうか。
國分氏(以下敬称略):CKRシリーズの企画が本格的にスタートしたのは1年ほど前です。
CKRシリーズは、これまでご好評いただいたCKMシリーズの後継にあたります。CKMシリーズの3代目フラグシップモデルである「ATH-CKM1000」をリリースした2011年頃から、次をどうしようかという話が出ていたんです。その時点で何か大幅な変更を加えることにはなりませんでしたが、新しいトピックや、世の中に驚きを与えられるようなネタはずっと探していました。小澤にも「何か新しいことをやりたい」と相談し、様々な案が出たのですが、いまひとつインパクトが足りないものばかりで…。そこで「他社が手掛けるハイブリッド/デュアルドライバー搭載モデルを、オーディオテクニカが手掛けると、どんなものができますか?」と話したんです。これがCKR10/CKR9の誕生につながっていきました。
小澤氏(以下敬称略):様々な引き出しを常に持っておくのが我々の仕事。デュアルドライバーも、3年ほど前から試作機は作っていました。他社さんからもデュアルドライバー搭載製品が登場してきた頃ですね。しかしそれらはドライバー同士が正位相で動くので、歪みが倍増されてしまう。そこで、ドライバーを対向配置し逆位相で動かすことで歪みの問題をクリアし、かつ磁束を高められる方式を考えました。それが「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」になったのです。
「音楽をいかに楽しむか」という
一貫した思想のもとに作られた個性豊かなラインナップ
中林:CKRシリーズは「ATH-CKR10」を筆頭に5モデル(iPhone/スマートフォン対応モデルを含めると7モデル)がラインナップされています。価格帯も幅広く、構造も異なっていますが、どのようなコンセプトに基づいて企画・開発されたのでしょうか?
國分:最上位機種である「ATH-CKR10」は税抜40,000円。一方エントリークラスの「ATH-CKR3」は税抜3,500円と手に取りやすい価格帯で、iOS端末/スマホ用マイクリモコン付きモデルも用意しています。様々なユーザーに向けた幅広いラインナップを取り揃えました。
どのモデルも一貫して「音楽をいかに楽しむか」という思想のもと開発を行っています。低音強調型ではなく、中高音をきれいに鳴らして“本当の音”を聴いてもらえるモデルを目指しました。CKRの”R”は“Resolution” “Sound Reality”“High Response”に由来しています。音については、全てのモデルで小澤がチェックを担当しています。
まず、上位モデルの「ATH-CKR10」「ATH-CKR9」ですが、“世界初”の「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」を搭載しています。特に「ATH-CKR10」については、オーディオテクニカのハイエンドモデルに使用する素材であるチタンと純鉄ヨークを採用。信号を伝達する線材にもこだわり、「ATH-CKW1000」や「ATH-CKM1000」などにも採用したスタッカード撚り線とするなど、音に妥協のないつくりになっています。「ATH-CKR9」は、「ATH-CKR10」の思想を受け継いだアルミハウジングバージョンです。
「ATH-CKR7」以降のモデルは、「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」ではなくフルレンジのダイナミック型ドライバーを搭載したラインナップとなります。このドライバーは、どれも今回の新モデルのためにそれぞれ開発されたものです。
「ATH-CKR7」は、φ14mm大口径ドライバーや、切削ステンレスとアルミニウムを組み合わせたハイブリッドハウジング、音補正用に高域用と低域用のアコースティックレジスターを搭載。これまでCKMシリーズのフラグシップモデルなどで採用されてきた、シングルドライバーシステムで良い音を出すしくみを全て盛り込んだモデルになっています。これを税抜15,000円という価格で実現できたことに、我々としても非常に満足しています。
そして「ATH-CKR5」「ATH-CKR3」は、普及価格帯で手に取りやすいモデルです。同価格帯の他製品と比べて大口径のドライバーを搭載し、真鍮製リングを装着して音の雑味を低減するなど、音へのこだわりを満載しています。特に「ATH-CKR3」は、音の良さはそのままに、いかに小さなボディを実現するかをテーマにしました。
中林:それぞれ個性のある製品を幅広いレンジで取り揃え、一斉に発売するというところに、オーディオテクニカの意気込みや気概が感じられますね。少しずつ時期をずらしてリリースするということは考えなかったのですか?
國分:今回は「インパクト」を持たせたいという考えがあったので、同時発売は必須だと思っていました。……と私は簡単に言うのですが、生産サイドにとっては非常に大変だったと思います…(笑)
小澤:企画から「4月25日に一斉発売できますか?」と聞かれたので「できます!」と答えたんですが、内心「……ほんとにできるかな?」と思っていましたね(笑)。
=お話しをうかがった方= 小澤博道氏 技術本部 技術部 六課 マネージャー 24年のキャリアを誇る、オーディオテクニカの音作りのキーマン。同社のスタンダードラインであるオープンエアーダイナミック型ヘッドホン「ADシリーズ」、イヤホン「CKMシリーズ」「ESシリーズ」などの開発を手がける。 國分裕昭氏 マーケティング本部 企画部 コンシューマー企画課 企画グループ CKRシリーズの商品企画。これまで“SOLID BASS”WSシリーズなどの企画を担当。 =インタビュアー= 中林直樹氏 オーディオビジュアルはもとより、多種多様な業界や媒体に携わる。ヘッドホンやイヤホンなどはもちろん、ジャズやルーツミュージック等音楽にも造詣が深い。ハードとソフト双方に視点を置いた評論活動をモットーとしている。 平野勇樹 全国家電量販店などで配布中のフリーマガジン「プレミアムヘッドホンガイド」編集長。昨年「プレミアムヘッドホンガイドマガジン」を創刊。2014年5月には第2号を刊行予定。 |
「なにか新しいことをやろう」からスタートしたCKRシリーズ
中林氏(以下敬称略):4月25日、オーディオテクニカから“世界初”の「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS(デュアルフェーズ・プッシュプルドライバー)」を搭載した“CKR”シリーズが登場します。既に大きな話題を呼んでいる本シリーズですが、どのような経緯で誕生したのでしょうか。
國分氏(以下敬称略):CKRシリーズの企画が本格的にスタートしたのは1年ほど前です。
CKRシリーズは、これまでご好評いただいたCKMシリーズの後継にあたります。CKMシリーズの3代目フラグシップモデルである「ATH-CKM1000」をリリースした2011年頃から、次をどうしようかという話が出ていたんです。その時点で何か大幅な変更を加えることにはなりませんでしたが、新しいトピックや、世の中に驚きを与えられるようなネタはずっと探していました。小澤にも「何か新しいことをやりたい」と相談し、様々な案が出たのですが、いまひとつインパクトが足りないものばかりで…。そこで「他社が手掛けるハイブリッド/デュアルドライバー搭載モデルを、オーディオテクニカが手掛けると、どんなものができますか?」と話したんです。これがCKR10/CKR9の誕生につながっていきました。
小澤氏(以下敬称略):様々な引き出しを常に持っておくのが我々の仕事。デュアルドライバーも、3年ほど前から試作機は作っていました。他社さんからもデュアルドライバー搭載製品が登場してきた頃ですね。しかしそれらはドライバー同士が正位相で動くので、歪みが倍増されてしまう。そこで、ドライバーを対向配置し逆位相で動かすことで歪みの問題をクリアし、かつ磁束を高められる方式を考えました。それが「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」になったのです。
「音楽をいかに楽しむか」という
一貫した思想のもとに作られた個性豊かなラインナップ
中林:CKRシリーズは「ATH-CKR10」を筆頭に5モデル(iPhone/スマートフォン対応モデルを含めると7モデル)がラインナップされています。価格帯も幅広く、構造も異なっていますが、どのようなコンセプトに基づいて企画・開発されたのでしょうか?
國分:最上位機種である「ATH-CKR10」は税抜40,000円。一方エントリークラスの「ATH-CKR3」は税抜3,500円と手に取りやすい価格帯で、iOS端末/スマホ用マイクリモコン付きモデルも用意しています。様々なユーザーに向けた幅広いラインナップを取り揃えました。
どのモデルも一貫して「音楽をいかに楽しむか」という思想のもと開発を行っています。低音強調型ではなく、中高音をきれいに鳴らして“本当の音”を聴いてもらえるモデルを目指しました。CKRの”R”は“Resolution” “Sound Reality”“High Response”に由来しています。音については、全てのモデルで小澤がチェックを担当しています。
まず、上位モデルの「ATH-CKR10」「ATH-CKR9」ですが、“世界初”の「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」を搭載しています。特に「ATH-CKR10」については、オーディオテクニカのハイエンドモデルに使用する素材であるチタンと純鉄ヨークを採用。信号を伝達する線材にもこだわり、「ATH-CKW1000」や「ATH-CKM1000」などにも採用したスタッカード撚り線とするなど、音に妥協のないつくりになっています。「ATH-CKR9」は、「ATH-CKR10」の思想を受け継いだアルミハウジングバージョンです。
「ATH-CKR7」以降のモデルは、「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」ではなくフルレンジのダイナミック型ドライバーを搭載したラインナップとなります。このドライバーは、どれも今回の新モデルのためにそれぞれ開発されたものです。
「ATH-CKR7」は、φ14mm大口径ドライバーや、切削ステンレスとアルミニウムを組み合わせたハイブリッドハウジング、音補正用に高域用と低域用のアコースティックレジスターを搭載。これまでCKMシリーズのフラグシップモデルなどで採用されてきた、シングルドライバーシステムで良い音を出すしくみを全て盛り込んだモデルになっています。これを税抜15,000円という価格で実現できたことに、我々としても非常に満足しています。
そして「ATH-CKR5」「ATH-CKR3」は、普及価格帯で手に取りやすいモデルです。同価格帯の他製品と比べて大口径のドライバーを搭載し、真鍮製リングを装着して音の雑味を低減するなど、音へのこだわりを満載しています。特に「ATH-CKR3」は、音の良さはそのままに、いかに小さなボディを実現するかをテーマにしました。
中林:それぞれ個性のある製品を幅広いレンジで取り揃え、一斉に発売するというところに、オーディオテクニカの意気込みや気概が感じられますね。少しずつ時期をずらしてリリースするということは考えなかったのですか?
國分:今回は「インパクト」を持たせたいという考えがあったので、同時発売は必須だと思っていました。……と私は簡単に言うのですが、生産サイドにとっては非常に大変だったと思います…(笑)
小澤:企画から「4月25日に一斉発売できますか?」と聞かれたので「できます!」と答えたんですが、内心「……ほんとにできるかな?」と思っていましたね(笑)。
次ページ“世界初”「DUAL PHASE PUSH-PULL DRIVERS」の詳細に迫る
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