公開日 2007/10/06 13:24
<岩井喬のハイエンド レポート>ADAM/FOSTEX/ONKYOの新モデル・新技術に出会った
10月5日より開催されている、ハイエンドショウトウキョウ2007。会場は今回も東京・有楽町の東京交通会館である。取材を行った初日は金曜日であるにも拘らず会場時間より多くの来場者で賑わいをみせており、オーディオ人気の再燃をうかがわせる活気あるイベントとなっている。
今回も様々なブースを訪問し、気になる製品にも数多く出会うことができた。その中からいくつかをピックアップしお届けしたいと思う。
■コンチネンタルファーイースト
ドイツ・ベルリンで設立されたスピーカーブランドであるADAM。アビーロード・スタジオを始め、全世界の録音スタジオで導入され、評判となっているアクティブモニターメーカーとして有名であるが、同社最大の特徴はARTドライバーと呼ばれる、ハイルドライバー技術を応用した独自開発の高いトランジェット特性を持つユニットを用いている点だ。今回お目見えした高級コンシューマー・ライン「TENSOR」シリーズでは、民生機では初めてとなるARTドライバー技術による、X-ARTミッドレンジユニットが搭載された。これまでプロ機でしか味わえなかった、スムースな音質かつスピード感あふれる、非常にレスポンスの良い中域サウンドは本シリーズ最大の魅力といえる。
これだけ高い信号追随性を持つ中高域ユニットに対し、低域側特性をどう追いつかせるかが課題となっていたそうであるが、本シリーズではアクティブ方式のリア・サブウーファーとフロントウーファーのダブル駆動方式でこの問題を解決している。会場には同社の製品開発リーダーも勤める、創設者クラウス・ハインツ社長も訪れていた。ADAM創設以前はELACに在籍していたというクラウス氏。彼が開発したJETトゥイーターが同ブランドの顔となっていることからも、その技術力の高さが窺える。そのサウンドはとても誠実で高域から低域まですっきりとまとまった、クールかつソリッドなものだ。しかしトランペットなどの金管楽器も非常にスムースできつさを感じることがない、自然でウェットな表現応力も秘めた高次元なサウンドであった。「本シリーズは3ヶ月前に発表を行い、これまで5つのショウで展示してきました。会場内のサウンド調整はなかなか苦労しますが、低域量の調整機構も搭載しているので家庭内での音の追い込みはしやすいと思います」とクラウス氏も自信を覗かせていた。
■ハイ・ファイ・ジャパン
同ブースではMONITOR AUDIOの新たなフラッグシップモデルとして注目を集めている「Platinum」シリーズがお目見えし、試聴ブースは常に大勢の来場者で溢れていた。展示されているのは16.5cmRDTウーファーとC-CAMリボントゥイーターによる2ウェイ「PL100」(ペア¥567,000)と20cmRDTダブル・ウーファーと10cmRDTミッドレンジ、C-CAMリボントゥイーターを用いた3ウェイ・フラグシップ機「PL300」(ペア¥1,260,000)であるが、この日試聴が行われていたのは「PL300」であった。
アルミ・マグネシウム(C-CAM)を用いた同一素材によるマルチウェイサウンドは、非常に滑らかで透明感のあるものとなっており、レンジ間も十分に感じられる、質感表現の高い傾向は価格以上に感じられるものだった。これまでのGSシリーズなどとは全く異なる傾向のサウンドといえるもので、C-CAMリボントゥイーターを採用したことによるメリットなのかもしれない。
今後開発される同社製品に、このフラッグシップ「Platinum」のサウンドがどう活かされていくことになるのかが楽しみである。
■オーディオリファレンスインク
本イベントで初お披露目となったTransmissionAudioの「M1i」(ペア¥609,000)はA.J.JORDAN製12cmアルミコーンウーファーと4本のダイポール型アルミ・リボントゥイーターを用いた2ウェイで、同社がマーク・レビンソンのために設計を行ったRedRoseMusic「R3-BabyReference」のサウンドやフォルムを継承して新たに設計したスピーカーであるという。澄んだサウンドに足を止める来場者が多かった。
またオーディオリファレンスインクで扱うブランドとして注目したいのが中国のブランドDUSSUNである。USB DACを搭載したプリメインアンプ「T2」(¥126,000)はコンパクトな縦型のスタイルを用いており、PCサイドにおいて用いるのにはうってつけの製品である。さらに同時出展されていた同型サイズ筐体のフォノアンプ「μ3i」(¥126,000)の存在も注目のモデルである。比較的リーズナブルな価格帯であるものの、電源部とアンプ部が別筐体となっており、MM/MC対応はもとより、各々のキャパシタンス/インピーダンスも4段階の設定変更が可能という高機能な製品となっている。
そして新興ブランドの一つであるONIXからはリーズナブルなCDプレーヤー「CD-5」(¥104,790)が登場した。メカドライブはPHILIPS製CDM-12.1を搭載、バーブラウン製96kHz/24bitDACチップ、PCM-1732を採用したモデルとなっている。比較的ローコストなCD専用モデルをリリースするという意義は大きいものだと思う。オーディオ入門者にも優しく、CDだけ使用できるモデルを望むユーザーも多いので、こういった動きは他のメーカー製品でも活発に起こって欲しいものである。
■フォステクス
純マグネシウム振動板を用いたトゥイーターを搭載した新型3ウェイ「G1302」(1台¥241,500)の試聴にも多くの来場者が詰め掛けていたが、今回の目玉といえるのは40cmの大型HRウーファーである「W400A-HR」と限定販売予定であるという13cmHRコーン型フルレンジ「FE138ES-R」の存在である。ともにスピーカーユニットの心臓部であるマグネットには、高価なため最近は見かけることが少なくなったアルニコマグネットを用い、中低域の独特なハリがあるサウンドを求めて開発の望んだという製品だ。特に「W400A-HR」はコーン紙をプレスするマシンも新たに製作し、製造に臨んでいるという力の入れようで、昨今の静かな15インチユニット人気において、同社のスピーカー製造の高い技術が結集した決定打ともいえる製品の一つとなっている。
対して「FE138ES-R」は最新の同社技術の全てが一体化したような一品となっている。センターキャップは純マグネシウム素材、ウーファー製品に多く用いられているHRコーン紙と堅牢なフレーム、そして15インチクラス製品にも用いられるほどの磁力を持たせているという外磁型アルニコマグネットの採用と、かなり豪華なフルレンジといえる。今のところ1本4万円ほどの価格を予定しているというが、自作派にとっては気になる製品といえるだろう。
■オンキヨー
オンキヨーブースでは近い将来“待ちに待った”大型スピーカーの新作となるであろう、試作モデルのデモが行われていた。現在の同社ラインナップにはロングセラーである「D-77MRX」が唯一の大型3ウェイスピーカーとなっているのだが、昨今の同社製品は小型2ウェイ製品が中心となっており、この「D-77MRX」後継機は登場するのか個人的にもずっと気になっていた。しかしこの思いはオンキヨー開発陣も同様の思いであったようで、本格的な大型モデルの開発を着々と進めていたということである。
「我々がオーディオに興味を持ち始めた頃、弊社スピーカーも隆盛を誇っていましたが、その時の大型3ウェイスピーカーのサウンドは未だに忘れられないものだったのです。ユニットから開発できる国内オーディオメーカーとして蓄積したノウハウを生かした大型スピーカーを手がけたかったんです」と語るのは、この試作モデルを開発した同社事業開発本部、開発センター・第三開発課、主幹技師の久本禎俊氏である。外観こそまだ完成されたものではないものの、3cmリングトゥイーター、13cmA-OMFミッドレンジ、30cmA-OMFウーファーは新設計となっており、A-OMFコーン紙は表面層を黒染色している。ウーファーはサブウーファー「SL-D1000」で用いられたユニットを元にしているということだが、ただ低域を鳴らすものではないという発想から、シングルダンパー構造に変更し、10cmボイスコイルや内磁型ネオジウムマグネットの搭載と、かなり本格的なものとなっている。キャビネットは15mm厚MDFを用い、板材の分割振動を抑える内部補強構造が採用されているとのこと。そのサウンドはまだ荒削りながらも量感溢れる豊かな低域と安定した中高域とのバランスは、かなり高いレベルまで達していると思われる。穏やかなジャズソースでのサウンドはかなり聞き入ってしまうほど安定したものであった。完成までいま少しかかるということであるが、その製品化には是非期待したい。
その他、昨年のショウでも登場した「D-TK10」の特別モデルをさらに練りこんだものが登場。メイプルで作られた構造はまさにギターそのもので、響きを殺すことなく、逆に活用するという発想が本機最大の魅力である。「D-TK10」は非常に個性的なモデルであるが弦表現の確かさ、リッチな質感は他にないものである。しかし、この特別モデルはどんなソースでも穏やかに、各楽器の存在も小さくまとまらず豊かに聴かせてくれるもので、非常に潤いのあるサウンドは、全く別次元の製品であると感じられた。
■木曽工業
Sホール内に設けられた同社ブースでは有機高分子ハイブリッド型制振材でおなじみの「fo.Q」製品各種の展示が行われていた。オーディオボードのラインナップが登場した時に、その存在の登場を予感させていた新製品、「WR-312」「WR-316」のラック製品群がお目見えした。会場内、完実電気のデモブースでも同製品は用いられているので、その姿を目にされた方も多いと思う。さらに今回登場した新製品は「fo.Q」の技術を応用し、ハイブリッド型ニューセラミックスと特殊合金を採用した多層構造のレコードスタビライザー「RS-55」(予価¥12,600)である。36gと軽量な製品であるが、同社製品が高い音質改善性能を持つだけに、その効果が気になる製品だ。
(岩井喬)
今回も様々なブースを訪問し、気になる製品にも数多く出会うことができた。その中からいくつかをピックアップしお届けしたいと思う。
■コンチネンタルファーイースト
ドイツ・ベルリンで設立されたスピーカーブランドであるADAM。アビーロード・スタジオを始め、全世界の録音スタジオで導入され、評判となっているアクティブモニターメーカーとして有名であるが、同社最大の特徴はARTドライバーと呼ばれる、ハイルドライバー技術を応用した独自開発の高いトランジェット特性を持つユニットを用いている点だ。今回お目見えした高級コンシューマー・ライン「TENSOR」シリーズでは、民生機では初めてとなるARTドライバー技術による、X-ARTミッドレンジユニットが搭載された。これまでプロ機でしか味わえなかった、スムースな音質かつスピード感あふれる、非常にレスポンスの良い中域サウンドは本シリーズ最大の魅力といえる。
これだけ高い信号追随性を持つ中高域ユニットに対し、低域側特性をどう追いつかせるかが課題となっていたそうであるが、本シリーズではアクティブ方式のリア・サブウーファーとフロントウーファーのダブル駆動方式でこの問題を解決している。会場には同社の製品開発リーダーも勤める、創設者クラウス・ハインツ社長も訪れていた。ADAM創設以前はELACに在籍していたというクラウス氏。彼が開発したJETトゥイーターが同ブランドの顔となっていることからも、その技術力の高さが窺える。そのサウンドはとても誠実で高域から低域まですっきりとまとまった、クールかつソリッドなものだ。しかしトランペットなどの金管楽器も非常にスムースできつさを感じることがない、自然でウェットな表現応力も秘めた高次元なサウンドであった。「本シリーズは3ヶ月前に発表を行い、これまで5つのショウで展示してきました。会場内のサウンド調整はなかなか苦労しますが、低域量の調整機構も搭載しているので家庭内での音の追い込みはしやすいと思います」とクラウス氏も自信を覗かせていた。
■ハイ・ファイ・ジャパン
同ブースではMONITOR AUDIOの新たなフラッグシップモデルとして注目を集めている「Platinum」シリーズがお目見えし、試聴ブースは常に大勢の来場者で溢れていた。展示されているのは16.5cmRDTウーファーとC-CAMリボントゥイーターによる2ウェイ「PL100」(ペア¥567,000)と20cmRDTダブル・ウーファーと10cmRDTミッドレンジ、C-CAMリボントゥイーターを用いた3ウェイ・フラグシップ機「PL300」(ペア¥1,260,000)であるが、この日試聴が行われていたのは「PL300」であった。
アルミ・マグネシウム(C-CAM)を用いた同一素材によるマルチウェイサウンドは、非常に滑らかで透明感のあるものとなっており、レンジ間も十分に感じられる、質感表現の高い傾向は価格以上に感じられるものだった。これまでのGSシリーズなどとは全く異なる傾向のサウンドといえるもので、C-CAMリボントゥイーターを採用したことによるメリットなのかもしれない。
今後開発される同社製品に、このフラッグシップ「Platinum」のサウンドがどう活かされていくことになるのかが楽しみである。
■オーディオリファレンスインク
本イベントで初お披露目となったTransmissionAudioの「M1i」(ペア¥609,000)はA.J.JORDAN製12cmアルミコーンウーファーと4本のダイポール型アルミ・リボントゥイーターを用いた2ウェイで、同社がマーク・レビンソンのために設計を行ったRedRoseMusic「R3-BabyReference」のサウンドやフォルムを継承して新たに設計したスピーカーであるという。澄んだサウンドに足を止める来場者が多かった。
またオーディオリファレンスインクで扱うブランドとして注目したいのが中国のブランドDUSSUNである。USB DACを搭載したプリメインアンプ「T2」(¥126,000)はコンパクトな縦型のスタイルを用いており、PCサイドにおいて用いるのにはうってつけの製品である。さらに同時出展されていた同型サイズ筐体のフォノアンプ「μ3i」(¥126,000)の存在も注目のモデルである。比較的リーズナブルな価格帯であるものの、電源部とアンプ部が別筐体となっており、MM/MC対応はもとより、各々のキャパシタンス/インピーダンスも4段階の設定変更が可能という高機能な製品となっている。
そして新興ブランドの一つであるONIXからはリーズナブルなCDプレーヤー「CD-5」(¥104,790)が登場した。メカドライブはPHILIPS製CDM-12.1を搭載、バーブラウン製96kHz/24bitDACチップ、PCM-1732を採用したモデルとなっている。比較的ローコストなCD専用モデルをリリースするという意義は大きいものだと思う。オーディオ入門者にも優しく、CDだけ使用できるモデルを望むユーザーも多いので、こういった動きは他のメーカー製品でも活発に起こって欲しいものである。
■フォステクス
純マグネシウム振動板を用いたトゥイーターを搭載した新型3ウェイ「G1302」(1台¥241,500)の試聴にも多くの来場者が詰め掛けていたが、今回の目玉といえるのは40cmの大型HRウーファーである「W400A-HR」と限定販売予定であるという13cmHRコーン型フルレンジ「FE138ES-R」の存在である。ともにスピーカーユニットの心臓部であるマグネットには、高価なため最近は見かけることが少なくなったアルニコマグネットを用い、中低域の独特なハリがあるサウンドを求めて開発の望んだという製品だ。特に「W400A-HR」はコーン紙をプレスするマシンも新たに製作し、製造に臨んでいるという力の入れようで、昨今の静かな15インチユニット人気において、同社のスピーカー製造の高い技術が結集した決定打ともいえる製品の一つとなっている。
対して「FE138ES-R」は最新の同社技術の全てが一体化したような一品となっている。センターキャップは純マグネシウム素材、ウーファー製品に多く用いられているHRコーン紙と堅牢なフレーム、そして15インチクラス製品にも用いられるほどの磁力を持たせているという外磁型アルニコマグネットの採用と、かなり豪華なフルレンジといえる。今のところ1本4万円ほどの価格を予定しているというが、自作派にとっては気になる製品といえるだろう。
■オンキヨー
オンキヨーブースでは近い将来“待ちに待った”大型スピーカーの新作となるであろう、試作モデルのデモが行われていた。現在の同社ラインナップにはロングセラーである「D-77MRX」が唯一の大型3ウェイスピーカーとなっているのだが、昨今の同社製品は小型2ウェイ製品が中心となっており、この「D-77MRX」後継機は登場するのか個人的にもずっと気になっていた。しかしこの思いはオンキヨー開発陣も同様の思いであったようで、本格的な大型モデルの開発を着々と進めていたということである。
「我々がオーディオに興味を持ち始めた頃、弊社スピーカーも隆盛を誇っていましたが、その時の大型3ウェイスピーカーのサウンドは未だに忘れられないものだったのです。ユニットから開発できる国内オーディオメーカーとして蓄積したノウハウを生かした大型スピーカーを手がけたかったんです」と語るのは、この試作モデルを開発した同社事業開発本部、開発センター・第三開発課、主幹技師の久本禎俊氏である。外観こそまだ完成されたものではないものの、3cmリングトゥイーター、13cmA-OMFミッドレンジ、30cmA-OMFウーファーは新設計となっており、A-OMFコーン紙は表面層を黒染色している。ウーファーはサブウーファー「SL-D1000」で用いられたユニットを元にしているということだが、ただ低域を鳴らすものではないという発想から、シングルダンパー構造に変更し、10cmボイスコイルや内磁型ネオジウムマグネットの搭載と、かなり本格的なものとなっている。キャビネットは15mm厚MDFを用い、板材の分割振動を抑える内部補強構造が採用されているとのこと。そのサウンドはまだ荒削りながらも量感溢れる豊かな低域と安定した中高域とのバランスは、かなり高いレベルまで達していると思われる。穏やかなジャズソースでのサウンドはかなり聞き入ってしまうほど安定したものであった。完成までいま少しかかるということであるが、その製品化には是非期待したい。
その他、昨年のショウでも登場した「D-TK10」の特別モデルをさらに練りこんだものが登場。メイプルで作られた構造はまさにギターそのもので、響きを殺すことなく、逆に活用するという発想が本機最大の魅力である。「D-TK10」は非常に個性的なモデルであるが弦表現の確かさ、リッチな質感は他にないものである。しかし、この特別モデルはどんなソースでも穏やかに、各楽器の存在も小さくまとまらず豊かに聴かせてくれるもので、非常に潤いのあるサウンドは、全く別次元の製品であると感じられた。
■木曽工業
Sホール内に設けられた同社ブースでは有機高分子ハイブリッド型制振材でおなじみの「fo.Q」製品各種の展示が行われていた。オーディオボードのラインナップが登場した時に、その存在の登場を予感させていた新製品、「WR-312」「WR-316」のラック製品群がお目見えした。会場内、完実電気のデモブースでも同製品は用いられているので、その姿を目にされた方も多いと思う。さらに今回登場した新製品は「fo.Q」の技術を応用し、ハイブリッド型ニューセラミックスと特殊合金を採用した多層構造のレコードスタビライザー「RS-55」(予価¥12,600)である。36gと軽量な製品であるが、同社製品が高い音質改善性能を持つだけに、その効果が気になる製品だ。
(岩井喬)