公開日 2009/03/09 12:20
AA誌とエイベックスがコラボ!? − コンピCD『福田屋セレクション』ができるまで
レファレンスCDに最適!
人気連載「優秀盤」における福田氏の推薦盤がコンピに
いよいよでき上がった。『オーディオアクセサリー・プレゼンツ・旬の音本舗 福田屋セレクション・オン・エイベックスクラシックス』。この作品、「旬の音本舗 福田屋」が大きくうたわれているが、もちろん福田雅光氏の代名詞として使用されているのであって、内容としては、本誌の別の連載「12人のオーディオ評論家が選ぶ優秀盤オーディオグレード」にて、福田氏が特選または推薦としたハイクオリティ音源から、エイベックスクラシックスのものを選び、一枚に集めたCDなのである。1アルバムから1曲〜数曲を選ぶため、選曲は二転三転、最終的には新規で選んだアルバムからも加えてある。
福田氏は「〜優秀盤〜」のCDを、毎回とても誠実に選んでいる。「CD買って音が良くなかったら、本当にがっかりしちゃうんだよねぇ。だからしっかりしたものを紹介しないと…」。そんな福田氏が選んだこのコンピレーションは、必ずやレファレンスCDとしてオーディオファン必携のものになるだろうし、福田氏の音の判断基準を知るための興味深い一枚となるだろう。
このCDを企画・制作してくれたのはエイベックスクラシックスの浅野尚幸氏。音に大変こだわりを持つ音楽プロデューサーであり、オーディオファンでもある。つまり音楽の作り手として筋の通った方なのである。「優秀盤〜」の連載もいつも楽しみにしてくれているという。
エイベックスクラシックスは、輸入作品に依存せず自社での録音、制作を着実に行っているレーベルだ。エンジニアとしては櫻井卓氏やオクタヴィア・レコードと組むことが多い。海外のエンジニアとも信頼関係を築いているため、海外在住の演奏家を現地で録るなどフレキシブルな動きで、安定した作品を作っている。
さて、この『〜福田屋セレクション〜』、編集部は大したお手伝いはできなかったが、今回浅野氏がまめに報告してくれたおかげで、「こんなふうにして、コンピレーションCDというものは作られるのだな」ということが多少なりとも分かった。
大まかな流れは次のとおりである。
1 選曲
2 曲順決め
3 ブックレット制作(ライナーノーツ執筆、ジャケット制作含む)
4 マスタリング
5 ディスクプレス
原則的に音はマスターそのままのものを使う
企画の立ち上げ当初は「市販品より少しでも良い音にしたい」という思いもあり、リマスターするかなども検討したが、最終的には原則として音はマスターそのままのものを使うことになった。
「それぞれのCDの音は演奏家や制作スタッフがきちんと聴いて決めたものだから尊重したいし、元々音のいいCDを選んでいるわけだから。それから、マスターの制作業務が、思った以上にコンピューターの中で行う作業が多くて、こまごまと手を出しづらいということもあった」(ライナーノーツより)という。
そこで福田氏が今回のマスタリングで行ったのは、電源システムの検討と、マスター作りに使用するディスクの静電気除去にとどまった。
1月17日のマスタリング当日は、各アルバムのマスター音源とORBの静電気除去器、そして福田氏自作の電源ケーブルを持参して、いざビクターのマスタリングセンターへ。マスタリングは杉本一家氏が担当した。杉本ルームにて、福田氏はORBのSN-01をマスターDVD-R一枚一枚にかざし静電気を除去。杉本氏はコンピューターでマスターを読み込み、使うトラックを抜き出し、曲順に組み、曲間を作っていく。
なお、マスタリングの現場で行った音のための工夫は次のとおり。
1.マスターのデータを作成するPyramixというコンピュータへの電源を、現在スタジオ標準として使用しているクリーン電源装置をの代わりに福田屋自作の電源延長経路とケーブルを使って供給
2.オリジナルCDのマスターのデータの入っているDVD−Rを静電気除去した上で、Pyramixに読み込ませる(ORBSN-02使用)
3.作成した新しいCDのマスターのデータを書き込ませるDVD−Rも、書き込み前に静電気除去する(ORBSN-02使用)、なお、1については、コンセントからの直接給電と、スタジオの標準である某社の給電とで2通りのマスターと試聴CDを作り、福田氏が自宅で聴いた上で、どちらを使うか決定する、ということになった。
なお、制作スタッフのアイデアで、
4.工場地帯につき、電源ノイズが減る土日に作業する
5.レーベル面には何も塗らない。文字の印刷も必要最小限にする
ということも決まった。
今回マスタリング現場に立ち会うことができた編集子は、リアルタイムで周波数を映し出すPC画面を見ていて静かな感動を覚えた。芸術作品を生み出すための作業は黙々と、着々と行うものなんだな、と。そして、静電気除去器を一枚一枚にかざす福田氏の濃やかな配慮に、心打たれるものを感じた。小さなことにも目を向けて、高い改善方法を発見していく福田屋主人の、このこだわりがリスナーにも届くといいなぁ、と思う。
【収録曲一覧】
吉松隆:タピオラ幻景〜
1.光のヴィネット
2.風のトッカータ
3.ノルドグレン:小泉八雲の『怪談』によるバラードU〜衝立の女
バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻〜
4.第1番プレリュード
5.第7番プレリュード
6.第8番フーガ
バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番〜
7.プレリュード
8.クーラント
9.ジーグ
10.パーセル:ひとときの音楽
11.パーセル:ダイドーのラメント
12.グレゴリオ聖歌:サンクトゥス
13.フォーレ:レクイエム〜ピエ・イエス
14.ショスタコーヴィチ/ツィガーノフ編曲:4つのプレリュード〜第1曲
【演奏者一覧】
1-3.舘野泉(ピアノ)
4-6.曽根麻矢子(チェンバロ)
7-9.遠藤真理(チェロ)
10&11.波多野睦美(メゾ・ソプラノ)、寺神戸亮(ヴァイオリン)、アンサンブル・レ・ボレアード
12.カペラッテ
13.森麻季(ソプラノ)、金聖響指揮、オーケストラ・アンサンブル金沢
14.川久保賜紀(ヴァイオリン)、イタマール・ゴラン(ピアノ)
いよいよでき上がった。『オーディオアクセサリー・プレゼンツ・旬の音本舗 福田屋セレクション・オン・エイベックスクラシックス』。この作品、「旬の音本舗 福田屋」が大きくうたわれているが、もちろん福田雅光氏の代名詞として使用されているのであって、内容としては、本誌の別の連載「12人のオーディオ評論家が選ぶ優秀盤オーディオグレード」にて、福田氏が特選または推薦としたハイクオリティ音源から、エイベックスクラシックスのものを選び、一枚に集めたCDなのである。1アルバムから1曲〜数曲を選ぶため、選曲は二転三転、最終的には新規で選んだアルバムからも加えてある。
福田氏は「〜優秀盤〜」のCDを、毎回とても誠実に選んでいる。「CD買って音が良くなかったら、本当にがっかりしちゃうんだよねぇ。だからしっかりしたものを紹介しないと…」。そんな福田氏が選んだこのコンピレーションは、必ずやレファレンスCDとしてオーディオファン必携のものになるだろうし、福田氏の音の判断基準を知るための興味深い一枚となるだろう。
このCDを企画・制作してくれたのはエイベックスクラシックスの浅野尚幸氏。音に大変こだわりを持つ音楽プロデューサーであり、オーディオファンでもある。つまり音楽の作り手として筋の通った方なのである。「優秀盤〜」の連載もいつも楽しみにしてくれているという。
エイベックスクラシックスは、輸入作品に依存せず自社での録音、制作を着実に行っているレーベルだ。エンジニアとしては櫻井卓氏やオクタヴィア・レコードと組むことが多い。海外のエンジニアとも信頼関係を築いているため、海外在住の演奏家を現地で録るなどフレキシブルな動きで、安定した作品を作っている。
さて、この『〜福田屋セレクション〜』、編集部は大したお手伝いはできなかったが、今回浅野氏がまめに報告してくれたおかげで、「こんなふうにして、コンピレーションCDというものは作られるのだな」ということが多少なりとも分かった。
大まかな流れは次のとおりである。
1 選曲
2 曲順決め
3 ブックレット制作(ライナーノーツ執筆、ジャケット制作含む)
4 マスタリング
5 ディスクプレス
原則的に音はマスターそのままのものを使う
企画の立ち上げ当初は「市販品より少しでも良い音にしたい」という思いもあり、リマスターするかなども検討したが、最終的には原則として音はマスターそのままのものを使うことになった。
「それぞれのCDの音は演奏家や制作スタッフがきちんと聴いて決めたものだから尊重したいし、元々音のいいCDを選んでいるわけだから。それから、マスターの制作業務が、思った以上にコンピューターの中で行う作業が多くて、こまごまと手を出しづらいということもあった」(ライナーノーツより)という。
そこで福田氏が今回のマスタリングで行ったのは、電源システムの検討と、マスター作りに使用するディスクの静電気除去にとどまった。
1月17日のマスタリング当日は、各アルバムのマスター音源とORBの静電気除去器、そして福田氏自作の電源ケーブルを持参して、いざビクターのマスタリングセンターへ。マスタリングは杉本一家氏が担当した。杉本ルームにて、福田氏はORBのSN-01をマスターDVD-R一枚一枚にかざし静電気を除去。杉本氏はコンピューターでマスターを読み込み、使うトラックを抜き出し、曲順に組み、曲間を作っていく。
なお、マスタリングの現場で行った音のための工夫は次のとおり。
1.マスターのデータを作成するPyramixというコンピュータへの電源を、現在スタジオ標準として使用しているクリーン電源装置をの代わりに福田屋自作の電源延長経路とケーブルを使って供給
2.オリジナルCDのマスターのデータの入っているDVD−Rを静電気除去した上で、Pyramixに読み込ませる(ORBSN-02使用)
3.作成した新しいCDのマスターのデータを書き込ませるDVD−Rも、書き込み前に静電気除去する(ORBSN-02使用)、なお、1については、コンセントからの直接給電と、スタジオの標準である某社の給電とで2通りのマスターと試聴CDを作り、福田氏が自宅で聴いた上で、どちらを使うか決定する、ということになった。
なお、制作スタッフのアイデアで、
4.工場地帯につき、電源ノイズが減る土日に作業する
5.レーベル面には何も塗らない。文字の印刷も必要最小限にする
ということも決まった。
今回マスタリング現場に立ち会うことができた編集子は、リアルタイムで周波数を映し出すPC画面を見ていて静かな感動を覚えた。芸術作品を生み出すための作業は黙々と、着々と行うものなんだな、と。そして、静電気除去器を一枚一枚にかざす福田氏の濃やかな配慮に、心打たれるものを感じた。小さなことにも目を向けて、高い改善方法を発見していく福田屋主人の、このこだわりがリスナーにも届くといいなぁ、と思う。
【収録曲一覧】
吉松隆:タピオラ幻景〜
1.光のヴィネット
2.風のトッカータ
3.ノルドグレン:小泉八雲の『怪談』によるバラードU〜衝立の女
バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻〜
4.第1番プレリュード
5.第7番プレリュード
6.第8番フーガ
バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番〜
7.プレリュード
8.クーラント
9.ジーグ
10.パーセル:ひとときの音楽
11.パーセル:ダイドーのラメント
12.グレゴリオ聖歌:サンクトゥス
13.フォーレ:レクイエム〜ピエ・イエス
14.ショスタコーヴィチ/ツィガーノフ編曲:4つのプレリュード〜第1曲
【演奏者一覧】
1-3.舘野泉(ピアノ)
4-6.曽根麻矢子(チェンバロ)
7-9.遠藤真理(チェロ)
10&11.波多野睦美(メゾ・ソプラノ)、寺神戸亮(ヴァイオリン)、アンサンブル・レ・ボレアード
12.カペラッテ
13.森麻季(ソプラノ)、金聖響指揮、オーケストラ・アンサンブル金沢
14.川久保賜紀(ヴァイオリン)、イタマール・ゴラン(ピアノ)