公開日 2016/04/23 11:31
UNAMAS、挑戦的アレンジと先端技術で挑んだ『DEATH and the Maiden』をハイレゾ配信
2ch/5chでリリース
UNAMASレーベルは、4月22日(金)より、最新作となる『Franz Schubelt No.14 in D minor Death and the maiden/UNAMAS Strings Quintet』をリリースした。配信はe-onkyo musicとHQM STOREで実施。価格は3,000円/2ch、3,500円/5chとなり、今後HPL9版も3,000円でのリリースが予定されている。
本作は、これまで同社からリリースされ、その音楽性豊かな演奏と巧みな録音技術で高い評価を獲得した『The Four Seasons』、『The ART of FUGUE』と同様となる軽井沢の大賀ホールにて収録された作品。ハイレゾを前提としたれコーディングであること以外に、3Dサラウンドによる豊かな音楽表現を前提として収録されたことも同様の特徴で、実にUNAMASレーベルらしいアプローチを満載した作品である。
今回の『Death and the Maiden』の収録では、大きく3つのアプローチが採用され、それらが見事にバランスしたことで、さらにUNAMASレーベルらしさを際立たせている。
まずひとつめのアプローチが「ART」。本作は一般的に馴染みのある『Death and the Maiden』のスコアとは異なり、第一楽章が16分を超える長いスコアとなっているが、これはオリジナルのスコアを用いた演奏が行われたため。一方で本来はヴィオラが演奏するパートをチェロで演奏し、さらに本来はないコントラバスのパートを追加して演奏に安定感を加えるという挑戦的なアレンジが施されている。
今回アレンジャーを務めたのは、これまでUNAMASレーベルが手がけたクラシック作品のアレンジを担当してきた土屋洋一氏。同氏は「シュミレーションの段階で、違和感もなくすんなりと置き換えることができましたが、あくまでそれはシュミレーションの話。人間が演奏するとどうなるのか、というのは実際に演奏してみなければ分かりません。しかし、シューベルトの時代と比べて演奏者のレベルというのは格段に上がっていると思っておりますので、不安はありませんでした」と振り返る。
演奏を行ったのは、UNAMAS Strings Quintetを構成する5人の若手演奏家達。東京交響楽団にてアシスタント・コンサートマスターを務める田尻順(Vn1)をリーダーとして、これまでリリースされてきたUNAMAS作品でもキーメンバーとなってきた竹田詩織(Vn2)、東京フィルハーモニー交響楽団委託契約団員チェロ奏者を経て現在はさまざまな分野で活躍する小畠幸法(Vc)。本作の最若手でありながら、大きな鍵を握ったヴォオラパートを担当した現役大学院生でもあるチェリスト伊東裕(Vc)。そしてUNAMAS版『Death and the maiden』にとって極めて重要なパートとなったコントラバスには、東京交響楽団にて活躍する北村一平(Cb)と、いずれも今後のクラシックシーンを担う演奏者だ。「それぞれが切磋琢磨していけるメンバー」として招聘されたメンバー達によって演奏される『Death and the maiden』は、2016年型のクラシック作品というにふさわしいものとなっている。
ふたつめのキーポイントは、「TECHNOLOGY」。UNAMASレーベルの特徴のひとつに最先端のテクノロジーを使いこなすという点があるが、これはもちろん本作でも健在。なかでも『Death and the Maiden』では、さらに新たな「現代ならではのテクノロジー」が活用された。
まず、録音時に使用した電源については、演奏を行うステージ側、そしてコントロールルーム側双方にバッテリー電源による供給方法を採用。使用したのはエリーパワー(株)が開発したバッテリー電源で、これはもともと住設用に開発されたもの。しかし、音楽制作面においてもS/N面などで高い効果があると採用に踏み切ったという。ホールなどの大型設備において電源供給は不安定要素のひとつと言われるが、一般的な商用電源から切り離したバッテリー電源を採用することで、電源を安定的に供給し、かつノイズ源から開放された良好な電源環境を構築することができる。
もうひとつ見逃せないのが、アイソレーショントランスやファインメットトランスなど、さまざまなアクセサリー類を活用したバッテリー電源以降の徹底したノイズ対策だ。今回の音源制作環境を担当した(株)JIONの宮下清孝氏は、「各機材はノイズの発生源。ノイズ対策を行うと音が痩せるというのはよくあることですが、今回はノイズを抑え、かつ音は痩せないということを第一にしています。ポイントとなったのがノイズの逆流を徹底的に抑えることで、ケーブルにノイズ抑制効果で注目されるファインメットビーズを使用したことをはじめ、さまざまなノイズ対策を施しました。これによって、本作の聴きどころのひとつとなるコントラバスの豊かな伸びなど、高いS/Nによる効果をご体感いただけると思います」と話す。
沢口氏によると、ここまでのノイズ対策を行う例は制作環境では極めて稀で、一部ではその意義に疑問を唱える声もあるそうだ。「しかしながら、今回の制作を経て、オーディオアクセサリーやケーブルをフル活用した伝送経路や外敵要因からのノイズ対策は間違いなく制作側にも大きなメリットをもたらす」と振り返る。
実際にその音を確認すると、静かなところから立ち上がる楽器の音色や、音の伸びなどの面で圧倒的なS/Nの実現によるメリットを感じることができる。
そして、最後が「ENIGINEERING』だ。沢口氏は日本におけるサラウンドの第一人者として世界的な評価を受けるエンジニアだが、今回の収録でもそのノウハウが存分に活用された収録が行われている。
前述のようにハイトchを追加した9.1chの3Dサラウンドを前提としているが、特徴的なのがそのマイキング。特に注目したいのが、このハイトchのために用意された4本のマイクが、それぞれステージから客席へ向けてセッティングされていること。セオリーとは異なるマイキングだが、「初期反射音だけではなく、ホールの響きも取り入れた新たなハイトchマイキング」というコンセプトを実現するにあたり、このマイキングは大きな意味を持っているといえそうだ。
大賀ホールが多くの演奏者から高く評価されている理由のひとつに「豊かな響きを持つホール」である点が挙げられるが、本作を実際に聞けば、このホールならではの豊富な空間情報が余すことなく収録されていることが体感いただけるだろう。
なお、現時点ではハイレゾの9.1ch音源をそのまま再生できる試聴環境が一般に整っていないことから、まずはヘッドホン用のマスタリング技術HPLを活用した「HPL9」として配信が予定されている。
リリースに先立って行われた発表会では、2chと実際に沢口氏が意図した表現となる9chでのデモンストレーションが行われた。UNAMASレーベルのサラウンド作品に共通することだが、沢口氏のサラウンドミックスは決して既成概念にとらわれることのない自由なもの。
今回も平面に設置された5本のスピーカーそれぞれに各楽器が配置され、リスナーがその中心で演奏を聴くようなミックスが行われている。もちろん、2chバージョンでも各楽器の豊かな倍音成分や音の消え際まで綺麗に伸びたサウンドを体感できるが、ハイトchを追加した9chバージョンでは、大賀ホールの広さや形状まで体感できるようなまた世界の異なる音響空間を体感することができる。
前述のとおり、今回リリースされるのは、2chと5ch、そしてHPL9の3バージョンとなる。今回のデモンストレーションで体感した9chバージョンのリリースの見込みはまだ立っていないが、この次世代サラウンドを前提としたことで必然的に2chや5chバージョンの空間表現力もUNAMASレーベルらしい豊富な情報量を体感できるものとなった。
随所に最先端の技術とアプローチを投入した本作は、オーディオファイルにおけるレファレンス音源として注目すべき作品になることは間違いない。ぜひ、実際にそのサウンドを聴いていただきたい。
本作は、これまで同社からリリースされ、その音楽性豊かな演奏と巧みな録音技術で高い評価を獲得した『The Four Seasons』、『The ART of FUGUE』と同様となる軽井沢の大賀ホールにて収録された作品。ハイレゾを前提としたれコーディングであること以外に、3Dサラウンドによる豊かな音楽表現を前提として収録されたことも同様の特徴で、実にUNAMASレーベルらしいアプローチを満載した作品である。
今回の『Death and the Maiden』の収録では、大きく3つのアプローチが採用され、それらが見事にバランスしたことで、さらにUNAMASレーベルらしさを際立たせている。
まずひとつめのアプローチが「ART」。本作は一般的に馴染みのある『Death and the Maiden』のスコアとは異なり、第一楽章が16分を超える長いスコアとなっているが、これはオリジナルのスコアを用いた演奏が行われたため。一方で本来はヴィオラが演奏するパートをチェロで演奏し、さらに本来はないコントラバスのパートを追加して演奏に安定感を加えるという挑戦的なアレンジが施されている。
今回アレンジャーを務めたのは、これまでUNAMASレーベルが手がけたクラシック作品のアレンジを担当してきた土屋洋一氏。同氏は「シュミレーションの段階で、違和感もなくすんなりと置き換えることができましたが、あくまでそれはシュミレーションの話。人間が演奏するとどうなるのか、というのは実際に演奏してみなければ分かりません。しかし、シューベルトの時代と比べて演奏者のレベルというのは格段に上がっていると思っておりますので、不安はありませんでした」と振り返る。
演奏を行ったのは、UNAMAS Strings Quintetを構成する5人の若手演奏家達。東京交響楽団にてアシスタント・コンサートマスターを務める田尻順(Vn1)をリーダーとして、これまでリリースされてきたUNAMAS作品でもキーメンバーとなってきた竹田詩織(Vn2)、東京フィルハーモニー交響楽団委託契約団員チェロ奏者を経て現在はさまざまな分野で活躍する小畠幸法(Vc)。本作の最若手でありながら、大きな鍵を握ったヴォオラパートを担当した現役大学院生でもあるチェリスト伊東裕(Vc)。そしてUNAMAS版『Death and the maiden』にとって極めて重要なパートとなったコントラバスには、東京交響楽団にて活躍する北村一平(Cb)と、いずれも今後のクラシックシーンを担う演奏者だ。「それぞれが切磋琢磨していけるメンバー」として招聘されたメンバー達によって演奏される『Death and the maiden』は、2016年型のクラシック作品というにふさわしいものとなっている。
ふたつめのキーポイントは、「TECHNOLOGY」。UNAMASレーベルの特徴のひとつに最先端のテクノロジーを使いこなすという点があるが、これはもちろん本作でも健在。なかでも『Death and the Maiden』では、さらに新たな「現代ならではのテクノロジー」が活用された。
まず、録音時に使用した電源については、演奏を行うステージ側、そしてコントロールルーム側双方にバッテリー電源による供給方法を採用。使用したのはエリーパワー(株)が開発したバッテリー電源で、これはもともと住設用に開発されたもの。しかし、音楽制作面においてもS/N面などで高い効果があると採用に踏み切ったという。ホールなどの大型設備において電源供給は不安定要素のひとつと言われるが、一般的な商用電源から切り離したバッテリー電源を採用することで、電源を安定的に供給し、かつノイズ源から開放された良好な電源環境を構築することができる。
もうひとつ見逃せないのが、アイソレーショントランスやファインメットトランスなど、さまざまなアクセサリー類を活用したバッテリー電源以降の徹底したノイズ対策だ。今回の音源制作環境を担当した(株)JIONの宮下清孝氏は、「各機材はノイズの発生源。ノイズ対策を行うと音が痩せるというのはよくあることですが、今回はノイズを抑え、かつ音は痩せないということを第一にしています。ポイントとなったのがノイズの逆流を徹底的に抑えることで、ケーブルにノイズ抑制効果で注目されるファインメットビーズを使用したことをはじめ、さまざまなノイズ対策を施しました。これによって、本作の聴きどころのひとつとなるコントラバスの豊かな伸びなど、高いS/Nによる効果をご体感いただけると思います」と話す。
沢口氏によると、ここまでのノイズ対策を行う例は制作環境では極めて稀で、一部ではその意義に疑問を唱える声もあるそうだ。「しかしながら、今回の制作を経て、オーディオアクセサリーやケーブルをフル活用した伝送経路や外敵要因からのノイズ対策は間違いなく制作側にも大きなメリットをもたらす」と振り返る。
実際にその音を確認すると、静かなところから立ち上がる楽器の音色や、音の伸びなどの面で圧倒的なS/Nの実現によるメリットを感じることができる。
そして、最後が「ENIGINEERING』だ。沢口氏は日本におけるサラウンドの第一人者として世界的な評価を受けるエンジニアだが、今回の収録でもそのノウハウが存分に活用された収録が行われている。
前述のようにハイトchを追加した9.1chの3Dサラウンドを前提としているが、特徴的なのがそのマイキング。特に注目したいのが、このハイトchのために用意された4本のマイクが、それぞれステージから客席へ向けてセッティングされていること。セオリーとは異なるマイキングだが、「初期反射音だけではなく、ホールの響きも取り入れた新たなハイトchマイキング」というコンセプトを実現するにあたり、このマイキングは大きな意味を持っているといえそうだ。
大賀ホールが多くの演奏者から高く評価されている理由のひとつに「豊かな響きを持つホール」である点が挙げられるが、本作を実際に聞けば、このホールならではの豊富な空間情報が余すことなく収録されていることが体感いただけるだろう。
なお、現時点ではハイレゾの9.1ch音源をそのまま再生できる試聴環境が一般に整っていないことから、まずはヘッドホン用のマスタリング技術HPLを活用した「HPL9」として配信が予定されている。
リリースに先立って行われた発表会では、2chと実際に沢口氏が意図した表現となる9chでのデモンストレーションが行われた。UNAMASレーベルのサラウンド作品に共通することだが、沢口氏のサラウンドミックスは決して既成概念にとらわれることのない自由なもの。
今回も平面に設置された5本のスピーカーそれぞれに各楽器が配置され、リスナーがその中心で演奏を聴くようなミックスが行われている。もちろん、2chバージョンでも各楽器の豊かな倍音成分や音の消え際まで綺麗に伸びたサウンドを体感できるが、ハイトchを追加した9chバージョンでは、大賀ホールの広さや形状まで体感できるようなまた世界の異なる音響空間を体感することができる。
前述のとおり、今回リリースされるのは、2chと5ch、そしてHPL9の3バージョンとなる。今回のデモンストレーションで体感した9chバージョンのリリースの見込みはまだ立っていないが、この次世代サラウンドを前提としたことで必然的に2chや5chバージョンの空間表現力もUNAMASレーベルらしい豊富な情報量を体感できるものとなった。
随所に最先端の技術とアプローチを投入した本作は、オーディオファイルにおけるレファレンス音源として注目すべき作品になることは間違いない。ぜひ、実際にそのサウンドを聴いていただきたい。