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公開日 2016/10/13 16:00

オーディオテクニカ、VMカートリッジ一新。針交換で音の変化やグレードアップが可能

VMの全ラインナップ入れ替え
編集部:小澤貴信
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オーディオテクニカは、VM型カートリッジの全ラインナップを一新。新製品として、針の交換に対応したVM型カートリッジ「700/600/500 Series」全9機種を12月9日より発売する。

■700 Series(ステレオカートリッジ)
・「VM760SLC」(無垢特殊ラインコンタクト針) ¥80,000(税抜)
・「VM750SH」(無垢シバタ針) ¥50,000(税抜)
・「VM740ML」(無垢マイクロリニア針) ¥42,000(税抜)

VM760SLC

VM750SH


VM740ML

■500 Series(ステレオカートリッジ)
・「VM540ML」(無垢マイクロリニア針) ¥32,000(税抜)
・「VM530EN」(無垢楕円針) ¥23,000(税抜)
・「VM520EB」(接合楕円針) ¥16,000(税抜)
・「VM510CB」(接合丸針) ¥14,500(税抜)

VM540ML

VM530EN


VM520EB

VM510CB

■600 Series(モノラルカートリッジ)
・「VM670SP」(3mil 接合針/SPレコード専用) ¥20,000(税抜)
・「VM610MONO」(接合丸針/LPレコード専用) ¥17,000(税抜)

VM670SP

VM610MONO

交換用の針として、3種類のラインコンタクト針、2種類の楕円針、2種類の丸針を用意する(詳細と価格は後述)。交換モデルは上記のラインナップで互換性があり(一部モノラル用モデル除く)、経年劣化による針交換はもちろん、「より上位の針に交換してグレードアップする」「針の交換によって音のキャラクターの変化を楽しむ」といった使い方も可能となる。

針(左)とボディ(右)を分離したところ

ボディと針の互換性を示す図

VM型カートリッジは、MM(ムービングマグネット)型の一種で、オーディオテクニカが特許を持つ方式。1つの大きなマグネットを用いる代わりに、左右2chの音溝に対して独立した2つのマグネットをV字に配置したことが特徴だ。カートリッジの振動系の構造を、レコードに音波を収録するための音溝を刻むカッターヘッドと相似させることで、高いセパレーションや広帯域再生、優れたトラッキングを可能にする。

VMカートリッジの優位性も紹介

VMカートリッジの新ラインナップでは、各モデルで振動系の仕様は異なるが、カートリッジボディにおける基本的な発電構造は共有。継ぎ目がなく、一体化された磁気回路を備えることで磁束漏洩の少ない、「高性能パラトロイダル発電系」を採用する。これにより優れたリニアリティが得られる。また、コア材をラミネート状にすることで、コアの透磁率も最適化された。発電コイルには、6N-OFC導体を採用する。

VMカートリッジの新製品を用いたデモも行われた


パーマロイのシールドプレートで左右の発電系を完全にセパレートする「センターシールドプレート」も採用。電気的なクロストークを40dB以下に抑えている。これは、実際のレコードの音溝が持つ左右のクロストークより低い値だという。

ラインナップにはモノラル専用「600 Series」も用意。モノラルレコード再生時に理想的とされる左右チャンネルの接続を実施し、これにより主に縦方向の振動に起因するレコードのノイズを低減する。

なお、従来モデルのVMカートリッジは、「AT95E」を除く全モデルが販売終了となる。以下に、新製品の各ラインナップの詳細を紹介する。

700 Series(ステレオカートリッジ)

700 Seriesは、堅牢なダイキャストアルミニウム合金ハウジングを採用した上位モデル。軽量化を図ったアルミニウムテーパーパイプカンチレバー、前述の高性能パラトロイダルコイル、センターシールドプレートなどを採用する。ボディは3モデルで共通となる。いずれも針圧は1.8g〜2.2g(2.0g標準)、外形寸法は17.0W×17.3H×28.2Dmm、質量は8.0gとなる。

VM760SLC

無垢特殊ラインコンタクト針のモデル

VM760SLCは、極めて精密に研磨されたという最軽量のスタイラスチップを採用した「無垢特殊ラインコンタクト針」を採用。広帯域再生や低歪率を実現すると共に、豊かな情報量も特徴とのこと。再生周波数範囲は20Hz〜30kHz、出力電圧は4.0mV(1kHz, 5mV/sec)、チャンネルセパレーションは30dB(1kHz)。

VM750SH

無垢シバタ針のモデル

VM750SHは、無垢シバタ針を搭載したモデル。シバタ針は、高音域の再生能力を要求される4chレコード再生用として開発されたもので、高域はもちろん中低域の再生も得意とするという。再生周波数範囲は20Hz〜27kHz、出力電圧は4.0mV(1kHz, 5mV/sec)、チャンネルセパレーションは30dB(1kHz)。

VM740MLは、無垢マイクロリニア針を搭載。優れた高域再生能力に加えて、明確な音像定位が得られるとする。再生周波数範囲は20Hz〜27kHz、出力電圧は4.0mV(1kHz, 5mV/sec)、チャンネルセパレーションは28dB(1kHz)。

VM740ML

無垢マイクロリニア針のモデル


500 Series(ステレオカートリッジ)

500 Seriesは、高剛性樹脂ハウジングを採用したスタンダード・ラインナップ。アルミニウムテーパーパイプカンチレバー、高性能パラトロイダルコイル、センターシールドプレートの採用などは上位モデルと同様だ。ボディは4モデルで共通。いずれも針圧は1.8g〜2.2g(2.0g標準)、外形寸法は17.0W×17.3H×28.2Dmm、質量は6.4gとなる。

VM540MLは、上位モデル「VM740ML」と同じ無垢マイクロリニア針を搭載。針が摩耗しても針先の曲率半径が変わらないため、レコードの内周部でも低歪みになるという。再生周波数範囲は20Hz〜27kHz、出力電圧は4.0mV(1kHz, 5mV/sec)、チャンネルセパレーションは28dB(1kHz)。ヘッドシェル付きモデル(「VM540ML/H」¥36,000/税抜)も用意する。

VM540ML

VM540ML/H

VM530ENは、軽量な無垢楕円針を搭載。振動系の実効質量を軽減した楕円針モデルの上位機となる。これにより、広帯域再生を実現したとのことだ。再生周波数範囲は20Hz〜25kHz、出力電圧は4.5mV(1kHz, 5mV/sec)、チャンネルセパレーションは27dB(1kHz)。ヘッドシェル付きモデル(「VM530EN/H」¥27,000/税抜)も用意。

VM530EN

無垢楕円針のモデル


VM530EN/H

VM520EBは、接合楕円針を搭載した楕円針のスタンダードモデル。トレーシング歪みが低減され、より正確な情報を引き出す。再生周波数範囲は20Hz〜23kHz、出力電圧は4.5mV(1kHz, 5mV/sec)、チャンネルセパレーションは27dB(1kHz)。ヘッドシェル付きモデル(「VM520EB/H」¥20,000/税抜)もラインナップされる。

VM520EB

接合楕円針のモデル


VM520EB/H

VM510CBは、接合丸針を採用した楕円針のエントリーモデル。丸針はセッティングに左右されにくく、安定したトレーシング性能を持つと説明されている。再生周波数範囲は20Hz〜20kHz、出力電圧は5.0mV(1kHz, 5mV/sec)、チャンネルセパレーションは25dB(1kHz)。

VM510CB

接合丸針


600 Series(モノラルカートリッジ)

モノラルカートリッジの600 Seriesは、高剛性樹脂ハウジング、およびモノラル専用ボディを採用する。アルミニウムテーパーパイプカンチレバー、高性能パラトロイダルコイルの採用は同様だ。

SPレコード専用モノラルカートリッジのVM670SPは、先端曲率半径の大きい丸針を搭載。曲率半径が3milの接合丸針によって、幅広い年代のSPレコードに対応する。再生周波数範囲は20Hz〜20kHz、出力電圧は3.0mV(1kHz, 5mV/sec)、針圧は4.5g〜5.5g(5.0g標準)、外形寸法は17.0W×17.3H×28.2Dmm、質量は6.4gとなる。


VM610MONOは、モノラル専用ボディに接合丸針を搭載したモノラルLP専用カートリッジ。専用内部配線により、レコードのサーフェイスノイズを低減。安定した再生音が得られるという。再生周波数範囲は20Hz〜20kHz、出力電圧は3.0mV(1kHz, 5mV/sec)、針圧は1.8g〜2.2g(2.0g標準)、外形寸法は17.0W×17.3H×28.2Dmm、質量は6.4gとなる。



交換針のラインナップと価格

交換針の型番と価格は以下の通り。

・VMN60SLC(無垢特殊ラインコンタクト針) ¥65,000(税抜)
・VMN50SH(無垢シバタ針) ¥35,000(税抜)
・VMN40ML(無垢マイクロリニア針) ¥26,500(税抜)
・VMN30EN(無垢楕円針) ¥18,000(税抜)
・VMN20EB(接合楕円針) ¥11,000(税抜)
・VMN10CB(接合丸針) ¥9,500(税抜)
・VMN70SP(3mil 接合丸針) ¥12,000(税抜)

なお、上記の針は、同社のこれまでのVMカートリッジの中でも“100系”のモデルと互換性がある。「100系の最初のモデルは1979年登場のAT120EGですが、このモデルでも今回の交換針を使うことができます」(後出の高橋氏)。

針交換の時間の目安は、丸針が300〜500時間、楕円針が300時間、マイクロリニア針が1,000時間、シバタ針・特殊ラインコンタクト針が800時間とのことだ。

針交換で、1枚のレコードの様々な魅力を引き出せる

発表会では、コンシューマー企画課 ホームリスニンググループリーダーの高橋俊之氏が新VMカートリッジの詳細について説明した。

高橋俊之氏

高橋氏は、新VMカートリッジにおける針交換の魅力について紹介。「デジタル全盛の時代だが、アナログはほんの小さな針先を替えただけで、大きく音が変わるのが魅力だと思います」と述べた。

また、自身の経験を踏まえつつ、針交換で音の変化を楽しむ例も紹介。「丸針は比較的安価なのでエントリー向けだと言われますが、ロックなどのパワフルな音楽には、個人的には丸針が向いていると思います。価格による序列だけでない音の好みがあるのも楽しい点です」。

「また、同じ1枚のレコード1でも、針を交換することでちがったサウンドが楽しめます。例えば私がディープパープルを聴くとき、パワフルな音を楽しみたいときは丸針を使います。一方で、キーボードとギターのユニゾンプレイにフォーカスして聴きたいときは、マイクロリニア針の分離感が高くて煌びやかな音で楽しみます。針交換によって、1枚のレコードで、二度、三度と美味しいところを味わえるのです」。



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