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公開日 2001/01/01 17:49

松下電器産業AVC社・戸田一雄社長が21世紀を語る その1

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●新3ヵ年計画「創生21計画」を発表した松下電器。ITビックバンが巻き起こす大きなうねりを背景に、新体制のもと、市場創造へどのような取り組みを展開するのか。21世紀のキーワード“デジタルネットワーク”の強力な推進役である新生松下電器の21世紀のAVC戦略を、同社AVC社・戸田一雄社長にインタビューした。Senka21新年号に掲載された記事から、今日より3回に分けて全文をお届けする。第1回は、同社の考えるネットワークの概念について迫る。
インタビュアー/音元出版社長 和田光征(Senka21 1月号より)

●本格的ネットワーク時代の到来にテレビの役割が重要になる

―― デジタル化の急速な進展により、ネットワークがますます重要なキーワードとなっています。御社では早くから、“つなぐ”ということで積極的に提案されていらっしゃいます。まず、御社のネットワークの概念からお話しいただけますか。
 
戸田 ネットワークの考え方は日々進化しています。80年代はそれこそ独立独歩で、AもVもCもそれぞれ別々に歩を進めていました。それが90年代前半になって、ようやくネットワークの思想が生まれ、やがて、ホームシアターをひとつの契機として、AVをシステムで捉える考え方が台頭してきました。それに続く流れを創ったのがAVパソコンです。A+V+Cが、A×V×Cに進化したといえるでしょう。
 
 これを、極めたのが、「3コアコンセプトの時代」です。すなわち、テレビを中心としたエンターテインメント・ネットワーク、パソコンを中心としたクリエイティブ・ネットワーク、携帯電話を中心にモバイルコミュニケーション・ネットワークの構築です。この3つのネットワークが今後、どんどん膨れ上がり、集まり、重なりあっていく。そういう時代になってくると思います。
 
 自分の頭の中でも、割りと真っ白な形で、電化住設社からAVC社へ戻ってきましたが、ネットワークについて考えると、こんなことがまた入ってきた、あれが始まるといった具合に、確かにややこしいですけれども、楽しいですね。どことどこが結びつくかわからないですよ。

―― あらゆる商品や生活の領域が、これまで以上にネットワークの世界に組み込まれていきますね。
 
戸田 通信にはブロードバンド化やブルートゥースなど新しいコンセプトが導入され、パッケージメディアにもSDカードやメモリースティックが登場しました。ハードディスクドライブもパソコンだけのものではもはやなくなっています。これらの新しいサービスやメディアが相次いで登場し、先ほどの3つのネットワークが重なり合って1つになってしまうくらいに、新しいコミュニケーションのネットワークがこれでもかというくらいにどんどん出てくると思います。その変化のスピードを急速に増しているのというが、今の姿ではないでしょうか。
 
―― 限られた人だけのものではなくなってくる。いや、そうしていかないといけないですね。
 
戸田 放送と通信の融合という“ITビックバン”がさらに大きなうねりとなり、そこが新しいネットワークの中心になります。そうなることで、どちらかと言えば、マニアライクだったこれまでのネットワークが、完全にポピュラーなネットワークへと進化していきます。

 もちろん、マニアライクなネットワークも依然、存在はしますが、IT基本法をベースにして、国をあげて、とてつもなく大きなIT化を推し進める時代になってくれば、放送・通信の融合からなる大きなネットワークの渦が、本流になって当然ではないかと思います。その時、ネットワークがポピュラーになればなるほど、これまで大衆文化を背負ってきたテレビの果たす役割が、非常に大事になってくると思います。よく言われます、見るテレビから使うテレビへというコンセプトチェンジが、ここをぐっと支えていくのではないでしょうか。
 
―― パソコンが普及したとはいえ、もっとも消費者にポピュラーな存在であり、また、家族のライフスタイルの中心となるリビングで存在感を示すのがテレビですね。
 
戸田 さきほど3つのネットワークが大きくなり、重なり合っていくと言いましたが、中でも、テレビを中心としたエンターテインメント・ネットワークと、携帯電話を中心としたモバイルコミュニケーション・ネットワークが、これからは本当にひとつの大きな固まりになっていくような気がします。

 BS、CS、CATVといった放送波の受信機能、これから強く求められてくるだろうサーバー機能、そして、eコマースへのゲートウェイ機能。テレビはこれら3つの要素に対して、別々に存在することも十分にありうるでしょうし、もちろん、これをすべてひとつにしてしまうようなものも出てくるでしょう。21世紀はテレビの概念そのものが、大きく様変わりしいてきます。
 
―― 通信も、動きが活発ですね。

戸田 2001年5月のW−CDMAのスタートで、通信がブロードバンド化してきます。それに伴うひとつの現象として、私はPDAが大きく変わってくると思います。動画を美しいカラー画面で受けられようになるわけですから、新しいひとつの文化として、現在あるPDAが、まったく新しい形に置き換わる可能性も十分にあると考えています。

 携帯電話はもちろん残りますが、今のスタイルは、現在の通信環境を踏まえてのディスプレイの大きさであり、キーの配置であるわけですから、こちらもブロードバンド化してくれば、もっと魅力ある商品が出てくるのではないでしょうか。それらを支えるのが、新しいOSです。今日までウインテルがPCを引っ張ってきたのは事実ですが、今後もずっと変化がないということではないと思いますね。

 これらネットワークをつないでいく神経系統として、IEEE1394、ブルートゥース、そして、パッケージメディアとしてのSDカードの3つを考えています。
 
―― これら変革の波に、業界もそこにうまくのっていかなければならないですね。
 
戸田 2000年12月にスタートを切った「BSデジタル」が、最初の大きな山だと思います。そして、2001年5月に始まる「W−CDMA」が第二の山となります。その次の第三の山が2003年の「地上波デジタル」、さらにもうひとつの山として、2005年のFTTH(Fiber to The Home)、光ケーブルが控えています。もの凄い山が次ぎから次ぎへと現われてきますから、そこで、松下電器がどのような手を打っていけるかが大切になりますね。
(1月2日掲載 その2へ続く)

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