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公開日 2001/09/03 11:41
《山之内 正のベルリンショーレポート特別編》音楽ファンが嬉しい悲鳴!
筆者がベルリンシュターツカペレのコンサートを聴きに出かけたコンツェルトハウス |
音楽も活況を呈している。主要な団体だけで東西合わせて3つのオペラが継続的に公演を行い、フィルハーモニー、コンツェルトハウスという2つの中心的な演奏会場をベースに複数のオーケストラがしのぎを削っている。こんな街は、ヨーロッパにも米国にも日本にも存在しない。予算削減を狙った統廃合プランが浮上するなど、様々な問題もあったが、いまのところ、東西のオペラ、オーケストラがいい意味で競合することによって、これまで以上に高い水準のコンサート、オペラ公演が実現している。
ベルリンショウの期間とほぼ同期して、ベルリン芸術週間が開幕し、オペラ、コンサートは新シーズンの幕開けを迎える。次の日曜日の公演予定を見ると、コンツェルトハウスの大ホールは午前中から夜まで、ベルリン交響楽団やベルリン放送交響楽団など3つのオーケストラが次々に演奏会を開催する。しかも、同じ日にフィルハーモニーホールではシカゴ交響楽団とベルリンフィルがそれぞれ演奏会を開くのだ。どのコンサートに出かければいいのか、どの組み合わせで聴けばいいのか、ベルリンの音楽ファンは嬉しい悲鳴を上げている。
ショウの取材を終えた2日の夜、コンツェルトハウスにベルリンシュターツカペレのコンサートを聴きに出かけた。指揮はベルリンを舞台に超人的活躍を続けているバレンボイム、トーマス・ハンプソンの独唱でマーラーの「亡き子をしのぶ歌」、そしてマーラー交響曲第一番というプログラムだ。
ハンプソンは、歌詞と音楽が求める感情の起伏に沿ってていねいに、そして劇的に歌い分けて見事な歌唱。オペラとはまた違う繊細な表現力に感嘆した。
交響曲第一番は、特に4楽章の複雑な構造を浮き彫りにした力強い名演。DVDオーディオであらためて発売された、バレンボイムとシュターツカペレの組み合わせによるベートーヴェンの録音からも明らかだが、このオーケストラの音楽的表現力は、バレンボイム時代になって見違えるほど豊かになった。来年のベルリン国立歌劇場来日公演のワーグナーにも期待がふくらむ。(山之内 正)