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公開日 2004/11/11 19:13
キクチ科学の新レファレンススクリーン「ホワイトマットアドバンス」とは? <完結編
同社の人気スクリーン、Stylist/ホワイトマットアドバンス仕様はビジュアルグランプリ2005の栄えある「ホームシアター」大賞を受賞した |
発売を目前に控えた「ホワイトマットアドバンス」をいち早く体験した林 正儀氏のレポートも第3回目、最終回を迎える。今回は新スクリーンの驚異的な平面性とノンモワレを実現するために採用された技術、超極細糸と平織り構造に迫る。
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プロジェクターとスクリーンとは車の両輪というが、そのスクリーンにも、実は技術要素としての両輪があった。映像を映し出す生地素材と、それを構造面でサポートするバック層だ。キクチのホワイトマットアドバンスが驚くべき高画質を実現できたのも、前回紹介した「ウルトラマイクロ・シボ」と、「超極細糸・平織り構造」のバック層ががっちりと握手をしているからだ。史上最強のコンビといえるだろう。
ではどこが画期的なのか。そもそもバック層の役目とはスクリーンの平面性と強度を維持することにあり、通常ガラス繊維(グラスファイバー)が用いられている。だが平面性と強度は相反する要素でもあるのだ。ただ丈夫にするだけでよければ繊維の糸は太いほどいいだろう。だがそれでは極端な話、トランボリンのネットのようなもの。表面に激しい凹凸ができて、とても平面性の確保どころではない。反対に網の目をどんどん細かくしていくと今度は強度が保てない。難しいものだ。
キクチ科学が優れているのは、この二律背反を解消したことである。グラスファイバーの糸そのものから作りなおし、さらに細くかつ強度のある極細糸に変更。特別な平織りという繊維構造を採用することで、膜面をしなやかに支えるとともに、膜面への凹凸露出を見事に消し去ったのだ。だから表面に触れてもツルツルしている。
これは映像の格段のキメ細やかさとともに、もうひとつ「ノンモワレ」を実現したという点で、注目すべきノウハウだ。もし投射面に繊維の凹凸パターンが露出していたら、そのストライプ(縞)とプロジェクターの画素ラインとが干渉してしまい、じらじらした「モワレ」が発生する。これは3管プロジェクターの時代には問題にならなかったが、今主流である液晶やDLPなど固定画素方式のプロジェクターにとっては天敵だ。それをほぼ完璧に消し去ったのは、これまたスクリーン史上の快挙といえる。
11月20日の発売を前に、あらためて「ホワイトマットアドバンス」の画質を検証してみると、モワレのカケラさえなく、すこぶるクリーンで爽やかな、映像の品位の高さに感激する。映画フィルムの黒階調を精密に描くその一方で、しっかりとした芯のある光を失わない。白ピークのヌケきりも見事だ。あらゆるシーンで忠実な色再現が得られているという、私の評価がおわかりいただけると思う。
マニアにはスクリーンとして仕上げた場合のシームレス最大寸法も気になるが、16:9のHDで160インチ、4:3のNTSCで130インチと、まずは安心できるところ。搭載スクリーンのラインアップもほぼ全製品に及ぶから嬉しい。スプリングローラーに電動、壁掛けタイプ。そして床置きタイプもということで、人気の「スタイリスト」にもいよいよホワイトマットアドバンス・バージョンが登場するのだ。
嗚呼、カウントダウン……。発売日の11月20日まであと何日だ!(林 正儀)