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公開日 2006/08/30 16:22
JEITA、動画用の新しい拡張色空間国際規格となる「xvYCC」の説明会を開催
(社)電子情報技術産業会(JEITA)は、国際電気標準会議(IEC)にて制定された動画用の新カラーマネージメント規格であるxvYCC(IEC 61966-2-4)に関する記者説明会を開催し、技術に関する概略や今後の展開について発表した。
会場にはJEITAにおいてAV&IT機器標準化委員会 カラーマネージメント標準化グループ主査を務める三菱電機(株)の杉浦博明氏、同委員会の61966-2sRGB等対応グループ 副主査であるソニー(株)加藤直哉氏が列席した。
xvYCC(エックスブイ・ワイシーシー)の規格は国際電気標準会議(IEC)に制定された国際規格であり、本年1月17日に発行された。正式名称は「IEC 61966-2-4」となり、主に動画向けの拡張色域空間に関する新たな定義を行うものである。
本規格が取り決められた背景についてJEITAの杉浦氏は、現在の動画コンテンツの多くは、CRTディスプレイでの視聴を前提としたsRGB規格の色域でつくられており、液晶テレビやプラズマテレビなどCRT以外の技術を用いて、より広色域の表現が可能になった表示装置の出現に速やかに対応する必要があったからであると説明する。
一方で静止画の分野では、sRGBを拡張した「sYCC色空間」がデジタルカメラのファイルフォーマットであるExif 2.2に採用されているほか、現在の動画信号では静止画同様、広彩度色の保存が可能な未定義の領域が存在しており、その部分を有効利用することで広色域のデータをサポートできることが明らかになっていた。また現在発売されているカムコーダー等には広色域撮像の能力を備えた製品があり、sRGB色域外の信号を意図せずに保存している製品が存在している。ところが、テレビをはじめとする表示装置側で色域がsRGBに制限されているため、カメラで撮影された色域外の色がクリップされてしまうという課題があった。
xvYCC規格ではsRGB規格より「RGB原色点・白色点」や「RGB-YCC変換行列」「量子化」等の項目は従来通りとしながら、「光電変換諧調特性」について諧調カーブを範囲外まで拡張することにより、従来規格との互換性を最大限に保ちながら、広範囲な色域をカバーしている。拡張色空間が定義され、撮像装置と表示装置間の伝送が可能になれば、広色域のカラー画像についても明確に設計され、伝送が可能になる。
新規格が標準化されるまでの経緯については、2004年9月にJEITAにおいてカラーマネージメント標準化委員会が発足した後、翌月のJEITA 61966-2sRGB等対応グループ設立、第68回IEC総会における承認、規格審議を加速化するためのプロセスの決議へと進み、幾度かの国際審議を経て2006年1月に国際規格として発行されるに至った。
JEITAの加藤氏は、xvYCCとsRGBとの色空間の違について幾つかの資料を紹介しながら説明した。「xvYCCは、これまで未定義だったsRGB色域外の信号領域に明確な定義を加えたものである」と加藤氏は語る。sRGB色域内では全くの同一定義となるので、従来の色域で作成されたコンテンツとの互換性が確保されている。また新規格の特長として、CRTをベースにしたsRGB色域では「55%」しか表現できなかった物体色(マンセル色票)が、ほぼ「100%」に近いレベルまで表現可能になること、さらには画像処理やMPEG等の画像圧縮に優れた適合性をもつことなどが加藤氏より紹介された。
xvYCC色空間を採用した場合、従来のテレビで表現できなかった「紅/橙/黄/紫」など鮮やかな花の色や、南国の海のエメラルド・グリーンなどが目で見た通りの色で忠実に再現されるようになるという。また物体の素材感や立体感についても、よりリアルな表現が可能になるとされている。さらに、これらの効果が応用されることにより、映画コンテンツの色をフルに表現したフィルムライクな映像が家庭のテレビでも楽しめるようになると加藤氏は語った。
JEITAでは現在、MPEG、HDMIの規格団体とも連携を図りながら、フォーマット系とインターフェース系よりxvYCC規格の導入を働きかけ、実際の普及実現へ歩みを進めていく考えだ。
以下に本日の会場で行われた質疑応答の内容をご紹介する。
【質疑応答】
Q:現在xvYCCの画質を一般ユーザーが体験できる機会はあるのか
A:三菱としてはまだそのような機会を持てていない(杉浦氏)
ソニーは「2006 International CES」でxvYCC対応の82型液晶テレビをデモしたことがある。近々またこのような機会をつくりたいと考えている(加藤氏)
※8月30日にソニーよりxvYCC対応の民生用液晶テレビが発表されている
Q:規格が発行されたのは今年の1月だが、本日記者会見を開催した理由はどこにあるのか
A:HDMIでのxvYCC正式導入が今年の7月に実現されたので、普及のボトルネックという意味では今日がひとつの大きなトピックスになると考えたからだ
Q:カムコーダーでは既にxvYCCに対応する機器があるのか
A:現状はまだ公式に対応をうたっている製品はない。xvYCCのデモ映像製作については、業務用のHDカムを改造して撮影したことがある
Q:今後xvYCCに対応するためには、デバイスにどのようなパフォーマンスが求められるのか
A:ディスプレイに関してxvYCCの信号を100%通せる回路を備えていること、表示するデバイスがこれまでより広い色再現域を持っていることが必要になる。ハードウェアについてはxvYCCに対応するための基本技術は既に確立している。あとはコンテンツの普及が課題となってくる
Q:映像の高画質化について、ビット数とは関係してくるものなのか
A:ビット数とは色のきめ細やかさ、色数のことであり、色再現域とは直接に関係していないが、間接的にはデバイスの画質に関係してくるとも考えられる
Q:規格の普及の見通しについてはどのように考えている
A:現在映像フォーマット、インターフェースの規格団体等とも連携を図りながら普及のための準備を進めている。私たちとしては出来る限り早く普及して欲しいと願っている
Q:xvYCC規格に最も適したデバイスは現状どれにあたるのか
A:液晶、プラズマとディスプレイデバイスも様々だが、どれがxvYCC規格に最適という考え方はしていない。一方で色域を広げるほど、輝度が得られなくなるというトレードオフがある。これらのバランスを図ることも高性能なディスプレイ製品として重要な課題となるだろう
【問い合わせ先】
JEITA
comm@jeita.or.jp
(Phile-web編集部)
xvYCC(エックスブイ・ワイシーシー)の規格は国際電気標準会議(IEC)に制定された国際規格であり、本年1月17日に発行された。正式名称は「IEC 61966-2-4」となり、主に動画向けの拡張色域空間に関する新たな定義を行うものである。
本規格が取り決められた背景についてJEITAの杉浦氏は、現在の動画コンテンツの多くは、CRTディスプレイでの視聴を前提としたsRGB規格の色域でつくられており、液晶テレビやプラズマテレビなどCRT以外の技術を用いて、より広色域の表現が可能になった表示装置の出現に速やかに対応する必要があったからであると説明する。
一方で静止画の分野では、sRGBを拡張した「sYCC色空間」がデジタルカメラのファイルフォーマットであるExif 2.2に採用されているほか、現在の動画信号では静止画同様、広彩度色の保存が可能な未定義の領域が存在しており、その部分を有効利用することで広色域のデータをサポートできることが明らかになっていた。また現在発売されているカムコーダー等には広色域撮像の能力を備えた製品があり、sRGB色域外の信号を意図せずに保存している製品が存在している。ところが、テレビをはじめとする表示装置側で色域がsRGBに制限されているため、カメラで撮影された色域外の色がクリップされてしまうという課題があった。
xvYCC規格ではsRGB規格より「RGB原色点・白色点」や「RGB-YCC変換行列」「量子化」等の項目は従来通りとしながら、「光電変換諧調特性」について諧調カーブを範囲外まで拡張することにより、従来規格との互換性を最大限に保ちながら、広範囲な色域をカバーしている。拡張色空間が定義され、撮像装置と表示装置間の伝送が可能になれば、広色域のカラー画像についても明確に設計され、伝送が可能になる。
新規格が標準化されるまでの経緯については、2004年9月にJEITAにおいてカラーマネージメント標準化委員会が発足した後、翌月のJEITA 61966-2sRGB等対応グループ設立、第68回IEC総会における承認、規格審議を加速化するためのプロセスの決議へと進み、幾度かの国際審議を経て2006年1月に国際規格として発行されるに至った。
JEITAの加藤氏は、xvYCCとsRGBとの色空間の違について幾つかの資料を紹介しながら説明した。「xvYCCは、これまで未定義だったsRGB色域外の信号領域に明確な定義を加えたものである」と加藤氏は語る。sRGB色域内では全くの同一定義となるので、従来の色域で作成されたコンテンツとの互換性が確保されている。また新規格の特長として、CRTをベースにしたsRGB色域では「55%」しか表現できなかった物体色(マンセル色票)が、ほぼ「100%」に近いレベルまで表現可能になること、さらには画像処理やMPEG等の画像圧縮に優れた適合性をもつことなどが加藤氏より紹介された。
xvYCC色空間を採用した場合、従来のテレビで表現できなかった「紅/橙/黄/紫」など鮮やかな花の色や、南国の海のエメラルド・グリーンなどが目で見た通りの色で忠実に再現されるようになるという。また物体の素材感や立体感についても、よりリアルな表現が可能になるとされている。さらに、これらの効果が応用されることにより、映画コンテンツの色をフルに表現したフィルムライクな映像が家庭のテレビでも楽しめるようになると加藤氏は語った。
JEITAでは現在、MPEG、HDMIの規格団体とも連携を図りながら、フォーマット系とインターフェース系よりxvYCC規格の導入を働きかけ、実際の普及実現へ歩みを進めていく考えだ。
以下に本日の会場で行われた質疑応答の内容をご紹介する。
【質疑応答】
Q:現在xvYCCの画質を一般ユーザーが体験できる機会はあるのか
A:三菱としてはまだそのような機会を持てていない(杉浦氏)
ソニーは「2006 International CES」でxvYCC対応の82型液晶テレビをデモしたことがある。近々またこのような機会をつくりたいと考えている(加藤氏)
※8月30日にソニーよりxvYCC対応の民生用液晶テレビが発表されている
Q:規格が発行されたのは今年の1月だが、本日記者会見を開催した理由はどこにあるのか
A:HDMIでのxvYCC正式導入が今年の7月に実現されたので、普及のボトルネックという意味では今日がひとつの大きなトピックスになると考えたからだ
Q:カムコーダーでは既にxvYCCに対応する機器があるのか
A:現状はまだ公式に対応をうたっている製品はない。xvYCCのデモ映像製作については、業務用のHDカムを改造して撮影したことがある
Q:今後xvYCCに対応するためには、デバイスにどのようなパフォーマンスが求められるのか
A:ディスプレイに関してxvYCCの信号を100%通せる回路を備えていること、表示するデバイスがこれまでより広い色再現域を持っていることが必要になる。ハードウェアについてはxvYCCに対応するための基本技術は既に確立している。あとはコンテンツの普及が課題となってくる
Q:映像の高画質化について、ビット数とは関係してくるものなのか
A:ビット数とは色のきめ細やかさ、色数のことであり、色再現域とは直接に関係していないが、間接的にはデバイスの画質に関係してくるとも考えられる
Q:規格の普及の見通しについてはどのように考えている
A:現在映像フォーマット、インターフェースの規格団体等とも連携を図りながら普及のための準備を進めている。私たちとしては出来る限り早く普及して欲しいと願っている
Q:xvYCC規格に最も適したデバイスは現状どれにあたるのか
A:液晶、プラズマとディスプレイデバイスも様々だが、どれがxvYCC規格に最適という考え方はしていない。一方で色域を広げるほど、輝度が得られなくなるというトレードオフがある。これらのバランスを図ることも高性能なディスプレイ製品として重要な課題となるだろう
【問い合わせ先】
JEITA
comm@jeita.or.jp
(Phile-web編集部)