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公開日 2006/08/31 16:02
マクセル、“VRAISON”シリーズで音響機器市場へ参入 − 独自の高音質化技術を搭載
日立マクセル(株)は、九州工業大学の佐藤寧教授と共同開発した高音質化技術を搭載する音響機器を、“VRAISON”(ヴレソン)シリーズとして、11月より展開する。本日、東京都内で発表会が開催された。
VRAISONシリーズは、高域周波数と量子化ビット数の補間技術などから成る高音質化技術“Bit-Revolution”を搭載した音響機器。VRAISONは、フランス語の「VRAI(本物の)」と「SON(音)」を組み合わせた造語で、人間工学に基づいた本物の音を実現する、という意味を込めた。
第1弾製品はWindows OSに対応したPC用ヘッドホンで、今年9月下旬に製品の詳細を発表、11月より発売を開始する。USBで接続するコントローラー部とヘッドホンをセット販売し、ヘッドホンは耳を覆う大型タイプと、通常のイヤホンの2種類を用意する。また、補間処理精度が44kHz/24ビットの上位機種と、22kHz/16ビットの標準機種がラインナップされる予定。
製品の価格帯は2〜3万円程度になる見込み。ヘッドホン部は他社から供給を受け、「高音質化をきちんと再現できる性能の良いものを選定する」(同社)という。補間処理はPC側で行い、PCに専用のオーディオドライバーをインストールする必要がある。オーディオドライバーには、聴く者の聴覚感度を測定し、補正処理を調整する「聴覚感度補正イコライザ」も搭載する。また、製品にはサラウンド機能も搭載する。
コントローラー部は、ボリューム操作やサラウンドのON/OFFなどが可能なほか、ラインアウト端子も備え、アンプ内蔵スピーカーやオーディオシステムなどに、高音質化したアナログ音声を出力することができる。
来年春にはMac対応のPC用ヘッドホンも発売する予定。また、同じく来年春には高音質化処理を行うチップセットを開発し、PCが不要のAV用ヘッドホンを販売する。このAV用ヘッドホンには、独自アルゴリズムによるノイズキャンセリング機能や、Bluetoothによるワイヤレス送信機能が搭載される見込み。また同時期には、高音質化チップを内蔵したPC用スピーカーや、携帯電話用のBluetoothヘッドホンも発売する予定。
■高音質化技術「Bit-Revolution」
VRAISONに搭載された高音質化技術「Bit-Revolution」は、国立学校法人 九州工業大学の佐藤寧教授と共同開発したもの。佐藤教授はソニーやケンウッドなどでMDやカーナビの開発に携わった経歴を持ち、高音質化技術の分野では、ケンウッドの「Supreme(サプリーム)」や東芝の「H2C Technology」などを開発した。
Bit-Revolutionのコアは、音声の高域補間技術とビット拡張技術。高域補間技術では、MP3など圧縮音声では16kHz、CDなどでは22kHz程度以上の音声がカットされるものを、それぞれ44kHzまで補間することができる。他社の技術では、16kHzを22kHzまで補間するものはあるが、今回の技術ではそれを大幅に上回る帯域までの補間を可能にした点に特徴がある。補間のアルゴリズムには楽器の高調波発生メカニズムを応用し、基本波を復調して高域を作り出す仕組み。
ビット拡張技術は、16ビットの音声を、量子化予測補間処理を行うことにより24ビットに拡張するもの。ビット数をDVD並みに引き上げることで、より滑らかで自然な音声を再生することが可能になる。
またBit-Revolutionには、聴く者の聴覚特性に適応させる技術も搭載している。佐藤教授は、「従来の音響機器では、オーディオメーカーの技術者が音決めを行ってきたが、聴取者の耳の特性は一人一人異なる。これを考慮して音決めをしようという新しい試みだ」と説明する。具体的には、聴取感度を測定するアプリケーションを用い、感度に合わせて補正処理を調整する。たとえば15kHz以上の音を聴くことができない場合は、その付近の帯域を持ち上げるなどの処理を行う。「単にイコライジングをするのではなく、予測式を変えるのが特徴」(佐藤教授)という。
製品には、同じような試みとして、ヘッドホンの周波数特性に合わせて補正処理を適応させる技術も盛り込まれる。佐藤教授は、「Bit-Revolutionは、高音質技術だけでなく、聴覚特性や再生機器の特性に合わせた適応処理を行うなど、『人に優しい技術』を盛り込んだのが特徴」と説明した。
なお、前述したように、第1弾製品のPC用ヘッドホンでは、Bit-Revolutionの高音質化処理には、PCにインストールした専用のオーディオドライバーが用いられる。ドライバーの設定では、聴覚特性技術やサラウンドのON/OFFのほか、Bit-RevolutionのON/OFF操作も可能。また、Bit-Revolutionは、強く補正する「ハイエンド」モードと、より自然な補正処理を行う「プロフェッショナル」モードを選択できる。
■「これまでに無い機器で中高級ユーザーからの支持を図る」
発表会には、日立マクセル グローバル営業統括本部長 執行役常務の松本彰氏、同マーケティング部長の松岡建志氏、同ブランドビジネス開発推進部長の三島明夫氏が出席した。
松本執行役常務は、「VRAISONの立ち上げにより、本物の音を追求する音の専門メーカーとして存在感を高めていく」と挨拶。音響機器市場にかける同社の並々ならぬ意欲を滲ませた。
研究開発の背景については松岡氏が説明。同氏はまず、「人に優しいインターフェイスのマクセルへ」という同社の新しい方向性を示し、「デジタルオーディオが浸透し、様々な音声圧縮方式やメディアが生まれている。この多様化したメディアやインフラを活かして、機器を選ばず一人一人に合わせた技術で高音質化を行うのがコンセプト」と説明した。
ヘッドホン市場については、「USBヘッドホンの市場は率直に言って小さいが、これを大きくするチャレンジ精神で向かっていくのもいいじゃないか、と考えた」と述べた。また、今回のヘッドホンのターゲット層については、「一般的に、人の可聴帯域は20歳で20kHz程度で、以後は落ちていくと言われている。人口ピラミッドから考えると、20歳までの人口は2,600万人、20歳以上の人口は1億200万人。80%の方の高域が失われているわけで、ターゲットに成りうる層は非常に広い。目が悪い方がメガネをかけるように、音響機器も一人一人の可聴帯域に合わせて補正するという解決策を提供したい」と語った。
製品展開は三島部長から説明が行われた。三島氏は、今年11月に発売するPC用ヘッドホン、来春に発売するAV用ヘッドホンなどについて説明した後、「国内ヘッドホン市場は、2006年度で1,000万台と予想している。これには携帯用のイヤホンなども含まれており、AV用は650万台程度だ。当社では、この650万台のうちハイエンド層をねらう」とし、「これまでに無いヘッドホンやスピーカーを提供することで、中高級ユーザーへの認知や訴求を図る。マクセルのブランドパワーを有効に活用していく」と戦略を説明した。
■質疑応答
以下、発表会で行われた質疑応答を紹介する。
Q: 圧縮した音声やCDに対応しているとのことだが、PCゲーム等でも効果があるのか?
A: 楽器の倍音成分は使えないが、PCゲームなどの音にも対応できるようアルゴリズムを作っている。リアリティのある音になるのではないか。
Q: 44kHzという数字には何か意味があるのか。
A: 基本的に、入力した信号の帯域を倍以上に伸ばすことができる。たとえば22kHzのCD音声の場合、88kHzでサンプリングを行い、実際の出力音声は44kHzになる。入力した信号によって処理は変わる。
Q: 実際の製品の価格や仕様は?
A: 製品は9月下旬に改めて発表する。価格帯は2〜3万円のレベルになる。
Q: 事業規模はどのくらいを想定しているか?
A: 事業が本格的に立ち上がるのは2007年度。2007年度には国内で20億円程度を想定している。
Q: 他社への技術供与を行う可能性はあるか?
A: 他社からたくさん欲しいという声が上がればありがたいが、すべての機器にBit-Revolutionを搭載するというのが我々のポリシー。そういう意味では難しいのではないか。まずは我々がたくさん製品を出し、多くの方に体験して頂きたいと考えている。
Q: ドライバー単体の販売や提供は考えているか?
A: 現在のところ考えていない。
【問い合わせ先】
日立マクセル(株)
お客様ご相談センター
TEL/03-5213-3525
(Phile-web編集部)
VRAISONシリーズは、高域周波数と量子化ビット数の補間技術などから成る高音質化技術“Bit-Revolution”を搭載した音響機器。VRAISONは、フランス語の「VRAI(本物の)」と「SON(音)」を組み合わせた造語で、人間工学に基づいた本物の音を実現する、という意味を込めた。
第1弾製品はWindows OSに対応したPC用ヘッドホンで、今年9月下旬に製品の詳細を発表、11月より発売を開始する。USBで接続するコントローラー部とヘッドホンをセット販売し、ヘッドホンは耳を覆う大型タイプと、通常のイヤホンの2種類を用意する。また、補間処理精度が44kHz/24ビットの上位機種と、22kHz/16ビットの標準機種がラインナップされる予定。
製品の価格帯は2〜3万円程度になる見込み。ヘッドホン部は他社から供給を受け、「高音質化をきちんと再現できる性能の良いものを選定する」(同社)という。補間処理はPC側で行い、PCに専用のオーディオドライバーをインストールする必要がある。オーディオドライバーには、聴く者の聴覚感度を測定し、補正処理を調整する「聴覚感度補正イコライザ」も搭載する。また、製品にはサラウンド機能も搭載する。
コントローラー部は、ボリューム操作やサラウンドのON/OFFなどが可能なほか、ラインアウト端子も備え、アンプ内蔵スピーカーやオーディオシステムなどに、高音質化したアナログ音声を出力することができる。
来年春にはMac対応のPC用ヘッドホンも発売する予定。また、同じく来年春には高音質化処理を行うチップセットを開発し、PCが不要のAV用ヘッドホンを販売する。このAV用ヘッドホンには、独自アルゴリズムによるノイズキャンセリング機能や、Bluetoothによるワイヤレス送信機能が搭載される見込み。また同時期には、高音質化チップを内蔵したPC用スピーカーや、携帯電話用のBluetoothヘッドホンも発売する予定。
■高音質化技術「Bit-Revolution」
VRAISONに搭載された高音質化技術「Bit-Revolution」は、国立学校法人 九州工業大学の佐藤寧教授と共同開発したもの。佐藤教授はソニーやケンウッドなどでMDやカーナビの開発に携わった経歴を持ち、高音質化技術の分野では、ケンウッドの「Supreme(サプリーム)」や東芝の「H2C Technology」などを開発した。
Bit-Revolutionのコアは、音声の高域補間技術とビット拡張技術。高域補間技術では、MP3など圧縮音声では16kHz、CDなどでは22kHz程度以上の音声がカットされるものを、それぞれ44kHzまで補間することができる。他社の技術では、16kHzを22kHzまで補間するものはあるが、今回の技術ではそれを大幅に上回る帯域までの補間を可能にした点に特徴がある。補間のアルゴリズムには楽器の高調波発生メカニズムを応用し、基本波を復調して高域を作り出す仕組み。
ビット拡張技術は、16ビットの音声を、量子化予測補間処理を行うことにより24ビットに拡張するもの。ビット数をDVD並みに引き上げることで、より滑らかで自然な音声を再生することが可能になる。
またBit-Revolutionには、聴く者の聴覚特性に適応させる技術も搭載している。佐藤教授は、「従来の音響機器では、オーディオメーカーの技術者が音決めを行ってきたが、聴取者の耳の特性は一人一人異なる。これを考慮して音決めをしようという新しい試みだ」と説明する。具体的には、聴取感度を測定するアプリケーションを用い、感度に合わせて補正処理を調整する。たとえば15kHz以上の音を聴くことができない場合は、その付近の帯域を持ち上げるなどの処理を行う。「単にイコライジングをするのではなく、予測式を変えるのが特徴」(佐藤教授)という。
製品には、同じような試みとして、ヘッドホンの周波数特性に合わせて補正処理を適応させる技術も盛り込まれる。佐藤教授は、「Bit-Revolutionは、高音質技術だけでなく、聴覚特性や再生機器の特性に合わせた適応処理を行うなど、『人に優しい技術』を盛り込んだのが特徴」と説明した。
なお、前述したように、第1弾製品のPC用ヘッドホンでは、Bit-Revolutionの高音質化処理には、PCにインストールした専用のオーディオドライバーが用いられる。ドライバーの設定では、聴覚特性技術やサラウンドのON/OFFのほか、Bit-RevolutionのON/OFF操作も可能。また、Bit-Revolutionは、強く補正する「ハイエンド」モードと、より自然な補正処理を行う「プロフェッショナル」モードを選択できる。
■「これまでに無い機器で中高級ユーザーからの支持を図る」
発表会には、日立マクセル グローバル営業統括本部長 執行役常務の松本彰氏、同マーケティング部長の松岡建志氏、同ブランドビジネス開発推進部長の三島明夫氏が出席した。
松本執行役常務は、「VRAISONの立ち上げにより、本物の音を追求する音の専門メーカーとして存在感を高めていく」と挨拶。音響機器市場にかける同社の並々ならぬ意欲を滲ませた。
研究開発の背景については松岡氏が説明。同氏はまず、「人に優しいインターフェイスのマクセルへ」という同社の新しい方向性を示し、「デジタルオーディオが浸透し、様々な音声圧縮方式やメディアが生まれている。この多様化したメディアやインフラを活かして、機器を選ばず一人一人に合わせた技術で高音質化を行うのがコンセプト」と説明した。
ヘッドホン市場については、「USBヘッドホンの市場は率直に言って小さいが、これを大きくするチャレンジ精神で向かっていくのもいいじゃないか、と考えた」と述べた。また、今回のヘッドホンのターゲット層については、「一般的に、人の可聴帯域は20歳で20kHz程度で、以後は落ちていくと言われている。人口ピラミッドから考えると、20歳までの人口は2,600万人、20歳以上の人口は1億200万人。80%の方の高域が失われているわけで、ターゲットに成りうる層は非常に広い。目が悪い方がメガネをかけるように、音響機器も一人一人の可聴帯域に合わせて補正するという解決策を提供したい」と語った。
製品展開は三島部長から説明が行われた。三島氏は、今年11月に発売するPC用ヘッドホン、来春に発売するAV用ヘッドホンなどについて説明した後、「国内ヘッドホン市場は、2006年度で1,000万台と予想している。これには携帯用のイヤホンなども含まれており、AV用は650万台程度だ。当社では、この650万台のうちハイエンド層をねらう」とし、「これまでに無いヘッドホンやスピーカーを提供することで、中高級ユーザーへの認知や訴求を図る。マクセルのブランドパワーを有効に活用していく」と戦略を説明した。
■質疑応答
以下、発表会で行われた質疑応答を紹介する。
Q: 圧縮した音声やCDに対応しているとのことだが、PCゲーム等でも効果があるのか?
A: 楽器の倍音成分は使えないが、PCゲームなどの音にも対応できるようアルゴリズムを作っている。リアリティのある音になるのではないか。
Q: 44kHzという数字には何か意味があるのか。
A: 基本的に、入力した信号の帯域を倍以上に伸ばすことができる。たとえば22kHzのCD音声の場合、88kHzでサンプリングを行い、実際の出力音声は44kHzになる。入力した信号によって処理は変わる。
Q: 実際の製品の価格や仕様は?
A: 製品は9月下旬に改めて発表する。価格帯は2〜3万円のレベルになる。
Q: 事業規模はどのくらいを想定しているか?
A: 事業が本格的に立ち上がるのは2007年度。2007年度には国内で20億円程度を想定している。
Q: 他社への技術供与を行う可能性はあるか?
A: 他社からたくさん欲しいという声が上がればありがたいが、すべての機器にBit-Revolutionを搭載するというのが我々のポリシー。そういう意味では難しいのではないか。まずは我々がたくさん製品を出し、多くの方に体験して頂きたいと考えている。
Q: ドライバー単体の販売や提供は考えているか?
A: 現在のところ考えていない。
【問い合わせ先】
日立マクセル(株)
お客様ご相談センター
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(Phile-web編集部)