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公開日 2007/08/10 19:10

一条真人が考える“コピーナイン”問題 − 9回コピーはレコーダーを変える?

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■9回コピーできればいいのか

デジタル放送のコピーワンス緩和の方向性として、従来、有力だったEPNに代わり、「COG+9回コピー」という、いわゆる“コピーナイン”形式で運用されることが決まった(関連ニュース)。

HDDレコーダーに録画したコンテンツを、DVDや次世代DVDにダビングするだけであれば、一般ユーザーにとっては、9回もコピーできれば問題ないように思えるかも知れない。この9回という回数はモバイルデバイスなどへのコピーも視野に入れてのことだそうだ。

しかし、単純にコピー可能回数を増やすだけで問題はすべて解決するのだろうか。個人的にコピーワンスになって不自由を感じたのは、PCで地デジ録画を編集できないことだ。地デジチューナー搭載PCでも、地デジ録画はDVDや次世代DVDに単にムーブするしか選択肢がなく、PCならではのクリエイティビティを発揮できるビデオ編集が行えなかった。今後コピーナインが運用されたとしても、現在主流となっているビデオ編集ソフトは、グローバルに事業を展開している海外メーカーのものであり、日本国内の独自仕様にローカライズしてくれる見込みがあるか、若干不安を感じる。この問題は解決されないまま先に進んでしまうのだろうか。

また、孫コピーが不可というのも問題を感じないではない。DVDやモバイルデバイスにコピーできるとしても、そのオリジナルデータは常にレコーダーのHDDに保存されているわけだ。残りコピー数があるうちに、HDDが破損したら、ユーザーは残りのコピーの権利をどうすればいいのか。この場合も孫コピーが可能であれば、ダビングしたDVDからさらにコピーを作ることができるわけだ。

コピーナインは、コピーワンスよりはたしかに前進だが、アナログ録画の時代と比較すれば、ユーザーには不自由な部分をひきずってしまう。しかし、後ろ向きなことばかり言っていては先に進めないのも事実。これも高画質なデジタル録画時代の背負った十字架であり、今がまさに時代のターニングポイントと言えるのかも知れない。

■モバイルデバイスサポートで希望したいこと

さて、このコピーナインのフレームワークのなかに、いくつか注文したいことがある。まずはモバイルデバイスでのコピーカウントに関して、ソニーのレコーダー「RDZ-D900A」などの「おでかけ・おかえり転送」のように、録画をモバイルデバイスに転送した後、無用になれば、モバイルデバイス側の録画を消去し、カウントを戻すようなシステムをぜひ採用していただきたい。

モバイル機器の進化は日進月歩だし、複数のデバイスを使う人も多い。このようなカウントリセット機能があれば、ユーザーが次のデバイスに移るときに、前のデバイスのカウントをリセットすることができる。そうでなければ、ヘビーユーザーの利用では9回ではすぐに回数不足になってしまうのではないか。

■将来手金はネットワークの活用にも期待

また、次世代DVDではネットワークに対応するのが常識的になってきたこともあるし、将来的にはインターネット経由の管理をもっと進めてもいいのではないだろうか。録画になんらかのIDをつけて管理し、9回までコピーしていないのにレコーダーが破損した場合、ダビングしたディスクから他のレコーダーにデータを移し、最終的なカウントをセットするような方法を組み込めないものだろうか。これによって、先の孫コピーが不可だという問題を緩和することができるだろう。

さらに、HD DVDのマネージドコピーのように、必要に応じてオプショナルに料金を支払うことで、規定以上のコピーを可能にするような考え方があっても良いはずだ。ネットワークによる管理にはさまざまな可能性があるのではないかと思う。PCによる録画の編集に関しても、編集したビデオの出力の際に、ネットワークを利用して課金するシステムなどがあっても良い。

■コピーナインがレコーダーを変える?

9回コピーを生かすためにはDVDなどディスクだけでなく、モバイルデバイスに対応した製品を作ったほうがメーカーとしてはユーザーにアピールしやすい。コピーナインが現実のものとなると、モバイルデバイスのサポートなど、レコーダーは現在よりさらに機能が複雑化することが予想される。

個人的にはコピーナイン時代のレコーダーは2つの流れに分化していくと予想している。レコーダーはDVDなど光ディスクにだけダビングできればいいというユーザーも多いはずだ。このことから、ディスクメディアにだけダビングできるものと、モバイルデバイスもサポートした機種の2つのストリームができるのではないか。何にしろ、コピーナインは、ただ単にコピー回数が増えるだけでなく、レコーダーのあり方も変えることになるだろう。

9回のコピーが可能なコピーナイン案は、コピーワンスと比較すれば、間違いなく前進であり、多くのユーザーに前向きに受け入れられるのではないかと予想している。具体的な細かい技術的仕様は今後数ヶ月のうちに詰められていくとのことだが、今後、どのように具体化されていくか注視していきたい。

(一条真人)

執筆者プロフィール
デジタルAV関連、コンピュータ関連などをおもに執筆するライター。PC開発を経て、パソコン雑誌「ハッカー」編集長、「PCプラスワン」編集長を経てフリーランスに。All Aboutの「DVD ・HDDレコーダー」ガイドも務める。趣味はジョギング、水泳、自転車、映画鑑賞など。

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