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公開日 2009/02/04 07:50

「文化庁メディア芸術祭」受賞作品展が国立新美術館で開催

2/15まで開催、進化する「表現の可能性」を体感
Phile-web編集部
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文化庁とCG-ARTS協会が主催する「文化庁メディア芸術祭」の2008年度受賞作を集めた展示会が、六本木の国立新美術館にて開催されている。会期は本日2月4日より15日まで。入場無料。


「文化庁メディア芸術祭」はアート、エンターテイメント、アニメーション、マンガの4部門から構成。メディア芸術の創造とその発展を図ることを目的としており、さまざまな国や地域から寄せられた意欲的な作品のなかから、各部門ごとに優秀な作品を選出・表彰している。1997年の創立以来、その時代の先端をゆく作品が多数選出されており、過去には「もののけ姫」(1997年・アニメーション部門)「時をかける少女」(2006年・アニメーション部門)、「バガボンド」(2000年・マンガ部門)、「Wii Sports」(2007年・エンターテインメント部門)などが受賞している。

第12回目となる今回は、44の国と地域から2,146作品が集まった。今回の展示会では、その中から約170の作品を鑑賞/体感することができる。

→受賞作の一覧はこちら
http://plaza.bunka.go.jp/festival/2008/winner.php

なお、各部門の大賞は以下のとおり。
…………………………………………………………………………………………………………………………

=アート部門=
「Oups!」Marcio Ambrosio(マルシオ アンブロージオ)氏

=エンターテインメント部門=
「TENORI-ON」岩井俊雄氏/「TENORI-ON」開発チーム代表 西堀 佑氏

=アニメーション部門=
「つみきのいえ」加藤久仁生氏

=マンガ部門=
「ピアノの森」一色まこと氏
…………………………………………………………………………………………………………………………
CG-ARTS協会・阿部芳久氏は、今回選ばれた作品の傾向を「未来を感じさせてくれるもの、既存の垣根を越えた新しいジャンルを感じさせるものが多い」と分析した。例えば「TENORI-ON」(公式サイト)は、16×16列のLED内蔵ボタンを操り視覚的・直感的に演奏できる“楽器”であり、LEDの光で音楽を表現する“アートツール”でもある。アートとエンターテインメントの要素を兼ね備えた新しいジャンルのデバイスだ。「表現の可能性」はテクノロジーやメディアの進化と共に進化するものだと感じさせてくれる。

斬新なコンセプトの電子楽器「TENORI-ON」(C)岩井俊雄/ヤマハ株式会社

タッチブースも用意され、TENORI-ONを実際に楽しむことができる(C)岩井俊雄/ヤマハ株式会社

今回会場にはTENORI-ONタッチブースが4つ設けられており、その斬新なインターフェースと作曲方法を実際に触れて楽しめるのも面白い。

なおTENORI-ONは東京をはじめ京都・福岡・北海道など全国で展示されている。
→展示会場一覧はこちら:http://www.yamaha.co.jp/tenori-on/shops/


「touched echo」。手すりに肘をついてみると、ドレスデン空襲の音が骨伝導で聞こえてくるしかけ。(C)Markus Kison

当時の市民は空襲の爆撃の音を、この作品を聴くように耳を覆ってしのいだという。戦争の記憶を伝える作品だ。(C)Markus Kison


Wii Fitを体験できるブース。 (C)2007 Nintendo

受賞作品のほかにも「推薦作品」としてPS3やニンテンドーDSなどのソフトが展示され、実際に触ることができる。


マンガ部門受賞作は大判パネルと原画を展示している


小さな部屋で暮らすひとりの老人が、水没した階下の部屋で大切な思い出たちにめぐりあう加藤久仁生氏の「つみきのいえ」。温かな絵とストーリーが魅力だ。(C)ROBOT

アニメ部門 奨励賞を受賞した岡本憲昭氏の「ALGOL」。センスよく混ぜられたノイズが画や音に絶妙な質感を生み、無駄のないストーリーを引き立たせていた。(C)岡本憲昭

■さらなる知的財産の創造・日本文化の海外発信推進を目指す

3日、東京ミッドタウンにて贈呈式と懇親会が行われ、各部門の受賞者たちが喜びを語った。

アート部門受賞者の面々。「日本のみなさんが作品にどう反応してくれるか楽しみ」(アンブロージオ氏)

エンターテインメント部門受賞者。「予想以上の広がりを見せており嬉しい。TENORI-ONが面白い音楽の源泉になれば」(西堀氏)


アニメーション部門受賞者。「関わってくれた全ての方に有り難うと言いたい」(加藤氏)

マンガ部門受賞者。都合により出席できなかった一色氏に代わり、担当編集者が「ここまで来られたのは多くのファンのおかげ。思いを裏切らないよう最終章も精進して描きたい」とのメッセージを読み上げた


こちらには文部科学大臣 塩谷 立氏、同副大臣 山内俊夫氏、文化庁長官 青木 保氏、国立新美術館長 林田英樹氏、CG-ARTS協会理事長 永田圭司氏らも登壇し、受賞者を祝った。山内副大臣は「海外作品の応募も増えてきており、世界的な認知度の高まりを感じている。今後も知的財産の創造・日本文化の海外発信をますます推進していきたい」と語ったほか、永田氏も「“メディア”という言葉の定義が大きく変容していく現在、『そもそも“メディア芸術”ってなに?』という根本的な部分からの試行錯誤を続けてきたが、その甲斐あって“メディア芸術”は今や立派なひとつのジャンルになりつつあると感じている。これからもますますの発展を願いたい」と挨拶した。

塩谷文部科学大臣

山内文部科学副大臣


CG-ARTS協会 永田理事長

林田国立新美術館長
なお本フェスティバルは上記のような展示のほかにも、受賞者や各ジャンルの第一線で活躍するクリエーターたちがメディア芸術の「いま」と「これから」について語るシンポジウムや、海外映像フェスティバルなどと連携した作品上映会、ワークショップなども合わせて開催されている。

また、協賛展として隣接会場で展示中の「学生CGコンテスト受賞作品展」と「先端技術ショーケース'09」(主催:文部科学省/(独)科学技術振興機構)も面白い。「学生〜」では若い世代ならではのやわらかな発想を楽しむことができるし、「先端技術〜」では「未来のアート表現のために」とのサブタイトルどおり「感覚(知覚)」の新次元を切り開き、技術と感性が織りなす「表現の未来」を提案するデバイスやシステムが紹介されている。こちらも要注目だ。

橋本典久氏による全天周ディスプレイ「Panorama Ball Vision」。320個のLEDをライン上に並べた6本の経線を搭載し、本体を回転させることで映像を見せる

映像のみの出展だが慶応大学教授の斎藤英雄氏が開発した空中に立体映像を描くデバイスも面白い。その場の空気の成分によって色が微妙に違ったりするとのこと。

今週・来週は国立新美術館で、クリエーターたちの想像力が生み出す新しいコンテンツの息吹をぜひその目と耳で体感して欲しい。

【問い合わせ先】
CG-ARTS協会「文化庁メディア芸術祭事務局」
TEL/0120-454536(会期中)
TEL/03-3535-3501(会期終了後)

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