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公開日 2010/05/17 20:02

シャープ、2010年度経営方針説明会を開催 − 「クアトロン」でAQUOS大幅拡販目指す

テレビ用パネルは需給逼迫と予想
ファイル・ウェブ編集部
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シャープ(株)は本日、2010年度経営方針説明会を開催した。同社代表取締役社長の片山幹雄氏が出席した。

シャープ(株)代表取締役社長の片山幹雄氏

片山氏はまず、2009年度の取り組みの成果について報告。2008年度に同社初の赤字となったことを受けて緊急業績改善対策を実施した結果について説明し、総経費を2,000億円削減するという対策については、目標を上回る2,138億円の経費削減を実現したと述べ、また液晶や太陽電池で新たなビジネスモデルを導入するという対策については、「液晶は中国での液晶パネル生産プロジェクト受注・契約の調印にこぎつけることができた」と評価した。

2009年度の同社取り組みの成果

片山氏は2009年度の事業内容に関する報告も行い、液晶については昨年10月に堺工場を立ち上げたことを改めて紹介。またUV2A技術や4原色技術の開発も行ったとし、「現在、亀山、堺ともにすべてUV2Aへの切替を進めているところだ」と説明した。

携帯電話事業については、2009年度は国内シェア向上とグローバル展開を目標に進めてきたが、高画質CCDカメラやソーラーパネルを搭載した商品を市場投入することなどにより国内シェアが向上したほか、中国向けモデルのラインナップ拡充と売上増も実現できた、と述べた。

2009年度の決算内容について片山氏は「これらの施策の結果、厳しい経営環境の中だったが、期初の公表計画をわずかながら上回った」とし、売上高3兆1,000億円、営業利益1,200億円という2010年度の業績予想についても「全社員一丸となって達成し、早期に金融危機前の水準に戻したい」とコメントした。

続いて同社の中期ビジョンについて説明を行った片山氏は、まず初めに「世界経済が大きく構造を変化させている」と指摘。具体的には「低炭素社会への移行」と「国際的な意志決定の枠組みが、G7を中心とした先進国から、新興国を含むG20へ移行している」ことを挙げた。

低炭素型社会への移行について片山氏は、今後シャープに求められるものは「経済成長とCO2排出削減の両立を実現する創エネ・省エネ技術」「新興国を基準としたコスト力」の2点だと述べ、これを実現するため、グリーンフロント堺など環境対応型の工場から様々な創エネ・省エネ製品群を生み出していくと宣言した。

またG7からG20へのシフトについては、「エレクトロニクスでの韓国や台湾との競争激化などもあり、従来の延長線上では利益を上げていくのは難しい」とした上で、「先進国中心、スタンドアローン型だった事業領域については、新興国を含めたソリューション型のビジネスモデルへ転換する必要がある」と説明。「先進国向けにはトータルソリューション提案、B2Bビジネスの強化を行う。また新興国マーケットではローカル人材の登用、現地での部材調達、設計、生産を図っていく」とした。

これらの方向性を実現するため、海外事業の組織改編を4月1日付けで実施。海外を5本部体制にすることで地域ニーズを汲み上げるとともに、意志決定のスピードアップを図り、自律性の高い組織に変えていくのだという。またASEANや中国に向け、価格戦略モデルを投入していく考えも明らかにした。

■テレビ用の大型液晶パネル需給は逼迫

続いて片山氏は、主力事業の一つである大型液晶、テレビ事業分野の説明に移った。

まず同氏は液晶パネルの需給状況について「液晶テレビ用のパネル需要は堅調に推移すると見ている。また需給状況についても、来年前半には供給過多となるという見方があったが、新興国市場で当初予測以上に需要が拡大していること、海外のG6、G7ラインがテレビ用からPC用に転換していることなどから、既存のG8ラインに液晶テレビが集中する傾向が今年から来年にかけて強まる」と説明。さらに「海外メーカーの工場やラインの立ち上げも遅れ気味になっている。パネルの品不足は続くだろう」と述べた。

テレビ用液晶パネルの需給が逼迫すると予測

さらに片山氏は、LEDバックライト搭載液晶テレビや3Dテレビの需要が急増していることも指摘。LEDテレビ、3Dテレビともに、調査機関が需要予測を最近になって大幅に見直したことを紹介し、「LEDテレビや3Dテレビへの期待は予想以上の勢いで高まっている。これらの製品には高性能パネルが必要のため、品不足はさらに強まるだろう」と予測した。

LEDテレビ、3Dテレビともに今後大幅に需要が増えるという調査結果(ディスプレイサーチ調べ)

このような予測を受けて同社では、堺工場の生産能力を段階的に増強。昨年10月に月36,000枚のマザーガラス投入能力でスタートしたが、この7月には同72,000枚に引き上げる。

同社では堺工場の生産能力を大幅に引き上げる

■UV2Aと4原色「クアトロン」技術でAQUOS拡販目指す

液晶テレビ事業については、同社が今後拡販に力を入れていく技術として「クアトロン」を紹介。クアトロンとは、世界初の光配向技術を採用した「UV2A」と、RGBにYを加えた4つのサブピクセルで映像を作り出す「4原色技術」を融合させたもので、ネーミングには「4」を表すQUADと、電子のTRONを組み合わせた。

クアトロン技術の概要

片山氏はクアトロンについて「この4原色技術を使ったパネルを本格的に量産しているのはシャープだけ。これまでのパネルでは再現できない色が出る」とし、さらに「Yを加えたことで輝度が向上場するため、そのぶん消費電力も下げられる」と性能の高さをアピールした。

クアトロンでどれだけ消費電力を実現できるかということについても片山氏は説明し、「たとえば、堺工場と亀山第2工場で1年間のあいだに生産するクアトロンをすべてテレビに搭載し、5年間使用した場合、ASV液晶に比べて火力発電所1基分の消費電力が削減できる」と例を示した。

クアトロンによって消費電力量を大幅に削減できるとアピール

クアトロン技術を搭載した液晶テレビは、すでに米国では販売を開始しており、欧州でも間もなく販売が始まる。片山氏は「日本と中国では夏頃にクアトロン技術を搭載したモデルを発売する」と、国内での市場展開について言及した。同社はすでに、5月末に4原色パネルを搭載した3Dテレビを発売すると公表している(関連ニュース)。

クアトロン搭載AQUOSは2010年中に全世界で展開する

片山氏は、液晶テレビ“AQUOS”事業全体の目標についても言及。「今年は昨年度比で約1.5倍となる、1,500万台の販売をグローバルで計画しており、クアトロン搭載のAQUOSを中心にして達成を目指す」とした。

エコポイント効果の継続が見込まれる国内でも大幅な販売増を狙うほか、中国市場では前年比2倍以上の販売を計画。そのために中国での取り扱い店舗数を拡大し、「2010年3月の約5,200店から今年12月には10,000店舗にする」という計画も明らかにした。

一方「苦戦していた欧米でもクアトロンで巻き返しを図る」とし、「クアトロンについては現地の販売店やお客様から高い評価を得ている。米国は2009年度比で約1.4倍、欧州では約1.2倍の販売数を達成したい」と述べた。

AQUOSの中国での展開。取り扱い店舗数を本年中にほぼ倍増させる計画だ

米国でも大手流通でのメインスペース展示が増えてきているという

クアトロンは、まずは液晶テレビに先行して搭載するが、片山氏によると「他分野からも強い引き合いがある」のだという。今後はデザイン用液晶モニターなど、幅広い分野に展開していく考えだ。

同社が展開を検討している今後のクアトロン搭載商品群

中小型液晶事業については、タブレット型デバイスや電子書籍、スマートフォンなど「これまでにない新規市場の拡大が見込まれる」とし、これらには高性能パネルが必要となることから、同社のCGシリコン技術が活かせるとアピールした。

そのほか、先日開発をアナウンスした3Dカメラモジュールについても紹介。「視差バリア方式の裸眼3D液晶ディスプレイと組み合わせれば、1台でハイビジョン3D撮影を行ってその場で見ることができる。もちろん3D液晶テレビと接続すれば、メガネを使って大画面の3D視聴が可能になる」と、その可能性の高さを訴求した。

中小型液晶、大型液晶ともに3Dをキーワードに需要を創造する

また携帯電話事業については、中国市場の取り込みを積極的に行っていく。2009年度は約3,500店だった販売店の数を、2010年度中に約10,000店に増強。またラインナップも拡充し、2010年中に計35機種をラインナップする予定であることなどを紹介した。

以下、本説明会で行われた主な質疑応答を紹介する。

Q:ギリシャ発の欧州金融不安の影響は。
A:影響は当然ある。しかし、上半期は為替の予約を既に行っており、4月末に想定したレートでの為替確保はできている。明らかにユーロ安、円高が進んでいることは事実で、ユーロ圏でのビジネス環境は厳しいが、新興国市場が伸長するので、全体で見ると影響は限定的だと考えている。

Q:ニューメキシコでのグリーン実証実験に参加する意味は。
A:スマートグリッドの規格が、全世界で標準化するということは難しいだろう。各地域での標準にしっかり対応していきたいという思いがある。

Q:経産省が来月、産業構造ビジョンをまとめるが、太陽光など次世代エネルギーへの取り組みに対する期待は。
A:我々として、太陽光発電は将来性があると考えており、国がそういう風に取り組んでいただくということはありがたい。ただし我々としては、何かを具体的に要求するというわけではない。世界に展開するという目線でやっているので、そういうレベルでご支援をいただきたいと思う。

Q:テレビ用パネルで、むしろ品不足が続くとの説明だが、G6/G7ラインがPC用にシフトするだけでこれだけ供給が減るものか。
A:想像している以上にテレビ用パネルの供給能力は減っている。

Q:LEDバックライト搭載液晶テレビについて、シャープのLEDモデルの強み、位置づけは。
A:LEDバックライトテレビについては、アメリカ、ヨーロッパから始まって日本も本格化してきた。中国でもLED化が進んでいる。世界の目線はLEDにある。我々は4原色技術を用いた「クアトロン」を展開するが、これは店頭で見ていただくと、一瞬で違いが分かると思う。

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