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公開日 2014/07/17 19:57
ドルビー、「Dolby Atmos」への質問に回答 − これまでと何が違うか、ホームシアターへの設置法は?
天井に障害物があっても大丈夫?
米Dolby Laboratoriesは、同社のブログエントリーにおいて、ホームシアターにおける「Dolby Atmos」(ドルビーアトモス)に対する、ユーザーから寄せられた質問に回答した。回答はサウンドリサーチ担当ディレクターのBrett Crockett氏が行っている。
まずはじめに、ドルビーアトモスの概要を紹介しておこう。ドルビーアトモスは、米Dolby Laboratoryが開発した新たなサウンド技術。すでに映画館向けには2012年から提供開始し、アメリカや中国はもちろん、日本においても、徐々に対応する映画館が増えてきている。
ドルビーアトモスの大きな特徴は、リスナーの頭上に音源を設置し、天井方向も含めた立体的な音場を展開すること。天井にスピーカーが設置できない場合は、天井へ音を放出し、その反射音で頭上からの音を再現する「ドルビーアトモス イネーブルドスピーカー」を使うことで、同じような効果が得られる。
コンテンツについては、2014年秋にはドルビーアトモス制作した映画BDを発表し、さらに動画配信サービスも開始することが発表されている。具体的には、BDについてはドルビーTrueHDの音声データに加えてドルビーアトモス用のデータが付加され、動画配信ではドルビーデジタルプラスにアトモス用のデータを加えて配信される。
ドルビーアトモス向けコンテンツについて同社は、「2015年初めには、さらに多くの発表がある予定」とも述べており、CESなどでの発表に期待がかかる。なお、ドルビーアトモス対応のBDは、一般的なBDプレーヤーで再生が可能だ。BDプレーヤーのファームウェアを更新する必要はなく、HDMIケーブルも現行のもので問題ない。
■ドルビーアトモスの「オブジェクトベースオーディオ」とは何か?
さて、ブログエントリーの中で、「ドルビーアトモスは一般的なチャンネルベースのホームシアターシステムとどのように違うのか?」という質問に対しては、「ドルビーアトモスはチャンネルではなく、オブジェクト・オーディオをベースにした初のホームシアターシステム」と回答している。
オブジェクトオーディオと聞いてもピンと来る方はまだ少ないかも知れない。オブジェクトオーディオでは、たとえばヘリコプターの音、車のクラクションなど、映画のシーンで聞こえるすべての音について、ひとつひとつのオブジェクトとして捉える。そして、それぞれのオブジェクトがどのように動くか、音量はどう変化するかというデータもあわせて保持する。あとは、これらの情報をもとにして、アンプなどの機器側で、スピーカーの位置や数にあわせて最適なレンダリングを行い、最終的な音声として再生する。
これに対して、これまでのサラウンドやオーディオは基本的にチャンネルベースで作られ、記録されている。ドルビーはチャンネルベースのオーディオについて、「映画制作者がこの音は左バックサラウンドから聞こえるべきか、それとも左サイドサラウンドかなど、スピーカー配置のことを気にしなければならない」と指摘。そして、ユーザーのスピーカー配置や数が制作者の想定と異なる場合、意図通りの体験が得られないという問題もあることも事実だ。
一方でドルビーアトモスでは、たとえば「叫んでいる子供がどこへ走っていくのか、というストーリーを考えるだけでいい」と、同エントリーではメリットを解説している。
■何チャンネルのシステムがドルビーアトモスにベストなのか?
オブジェクトベースがドルビーアトモスの特徴であるため、原理的には、スピーカーの数が多ければ、それだけオブジェクトの動きを正確に再現することが可能となる。ドルビーでは、「スペースと予算があれば、24個ものスピーカーを床に設置し、10個のオーバーヘッドスピーカーを取り付けたドルビーアトモスシステムを構築できる。あるハードウェア製品パートナーは、32チャンネル出力対応A/Vレシーバーを発売予定だ」と、今後の商品計画についても一部を明らかにしている。
とは言っても、一般家庭で32チャンネルのシステムを導入するのは不可能に近い。このためドルビーでは、手持ちの機器をそのまま使いながら、ドルビーアトモスの効果をしっかりと体験できるよう、いくつかの“リファレンス”スピーカー構成を定義した。
リファレンス設定には現在、従来の5.1chシステムに2つの天井スピーカーまたはドルビーイネーブルドスピーカーを補完した5.1.2構成、また従来の7.1chシステムに4つの天井スピーカーまたはドルビーイネーブルドスピーカーを追加した7.1.4構成が存在する。ただしドルビーでは、「ドルビーアトモスは柔軟性に優れているので、その他の多くのスピーカー構成も利用できる。どのようなシステムでも、可能な限り最高なオーディオ体験を作り出すよう適応できる」と、必ずしもリファレンス設定にこだわる必要が無いことを強調している。
■イネーブルドスピーカーが使える天井の条件は?
また、天井にスピーカーを設置する必要があるか、という質問に対しては、「オーバーヘッドサウンドを再現するには、天井にスピーカーを埋め込む、または取り付けるのが確実だが、素晴らしいオーバーヘッドサウンドを創り出す方法はこれだけではない」とし、前述の、天井へ向けて音を放出するドルビーイネーブルドスピーカーを紹介している。
上方へ向けたユニットを内蔵した一体型スピーカーが発売されることはもちろん、手持ちのスピーカーと組み合わせるための「ドルビーイネーブルドスピーカーアドオンモジュール」を購入し、組み合わせることでも、上方からの音声を再生可能であるとしている。なおモジュールは、使用しているスピーカーの上か、近くの別の表面に取り付けることができる。
気になるのは、ドルビーイネーブルドスピーカーが使用できる天井の条件がどうなっているかということ。これに対してドルビーは「天井がフラットで(アーチ型でない、または傾斜がない)、標準的な乾式壁、石こう、コンクリート、木材などの音響を反射する素材であれば、最高のサウンドを体感できる」と太鼓判を押す。
天井高については、「天井の高さが2.4〜2.7mの部屋を想定して設計されているが、天井が4.3mまでの高さなら、素晴らしいドルビーアトモスサウンドを体験できることが当社のテストで分かっている」とコメントしている。
さらに天井にある様々な障害物についても言及し、「天井に埋め込むタイプの照明器具、シャンデリア、廻り縁、エアコンの通気口などがドルビーアトモス体験に目立った影響を与えることはない」と断言している。導入の検討に際して、天井の高さや形状、障害物を気にしていた方にとっては朗報と言えるだろう。
まずはじめに、ドルビーアトモスの概要を紹介しておこう。ドルビーアトモスは、米Dolby Laboratoryが開発した新たなサウンド技術。すでに映画館向けには2012年から提供開始し、アメリカや中国はもちろん、日本においても、徐々に対応する映画館が増えてきている。
ドルビーアトモスの大きな特徴は、リスナーの頭上に音源を設置し、天井方向も含めた立体的な音場を展開すること。天井にスピーカーが設置できない場合は、天井へ音を放出し、その反射音で頭上からの音を再現する「ドルビーアトモス イネーブルドスピーカー」を使うことで、同じような効果が得られる。
コンテンツについては、2014年秋にはドルビーアトモス制作した映画BDを発表し、さらに動画配信サービスも開始することが発表されている。具体的には、BDについてはドルビーTrueHDの音声データに加えてドルビーアトモス用のデータが付加され、動画配信ではドルビーデジタルプラスにアトモス用のデータを加えて配信される。
ドルビーアトモス向けコンテンツについて同社は、「2015年初めには、さらに多くの発表がある予定」とも述べており、CESなどでの発表に期待がかかる。なお、ドルビーアトモス対応のBDは、一般的なBDプレーヤーで再生が可能だ。BDプレーヤーのファームウェアを更新する必要はなく、HDMIケーブルも現行のもので問題ない。
■ドルビーアトモスの「オブジェクトベースオーディオ」とは何か?
さて、ブログエントリーの中で、「ドルビーアトモスは一般的なチャンネルベースのホームシアターシステムとどのように違うのか?」という質問に対しては、「ドルビーアトモスはチャンネルではなく、オブジェクト・オーディオをベースにした初のホームシアターシステム」と回答している。
オブジェクトオーディオと聞いてもピンと来る方はまだ少ないかも知れない。オブジェクトオーディオでは、たとえばヘリコプターの音、車のクラクションなど、映画のシーンで聞こえるすべての音について、ひとつひとつのオブジェクトとして捉える。そして、それぞれのオブジェクトがどのように動くか、音量はどう変化するかというデータもあわせて保持する。あとは、これらの情報をもとにして、アンプなどの機器側で、スピーカーの位置や数にあわせて最適なレンダリングを行い、最終的な音声として再生する。
これに対して、これまでのサラウンドやオーディオは基本的にチャンネルベースで作られ、記録されている。ドルビーはチャンネルベースのオーディオについて、「映画制作者がこの音は左バックサラウンドから聞こえるべきか、それとも左サイドサラウンドかなど、スピーカー配置のことを気にしなければならない」と指摘。そして、ユーザーのスピーカー配置や数が制作者の想定と異なる場合、意図通りの体験が得られないという問題もあることも事実だ。
一方でドルビーアトモスでは、たとえば「叫んでいる子供がどこへ走っていくのか、というストーリーを考えるだけでいい」と、同エントリーではメリットを解説している。
■何チャンネルのシステムがドルビーアトモスにベストなのか?
オブジェクトベースがドルビーアトモスの特徴であるため、原理的には、スピーカーの数が多ければ、それだけオブジェクトの動きを正確に再現することが可能となる。ドルビーでは、「スペースと予算があれば、24個ものスピーカーを床に設置し、10個のオーバーヘッドスピーカーを取り付けたドルビーアトモスシステムを構築できる。あるハードウェア製品パートナーは、32チャンネル出力対応A/Vレシーバーを発売予定だ」と、今後の商品計画についても一部を明らかにしている。
とは言っても、一般家庭で32チャンネルのシステムを導入するのは不可能に近い。このためドルビーでは、手持ちの機器をそのまま使いながら、ドルビーアトモスの効果をしっかりと体験できるよう、いくつかの“リファレンス”スピーカー構成を定義した。
リファレンス設定には現在、従来の5.1chシステムに2つの天井スピーカーまたはドルビーイネーブルドスピーカーを補完した5.1.2構成、また従来の7.1chシステムに4つの天井スピーカーまたはドルビーイネーブルドスピーカーを追加した7.1.4構成が存在する。ただしドルビーでは、「ドルビーアトモスは柔軟性に優れているので、その他の多くのスピーカー構成も利用できる。どのようなシステムでも、可能な限り最高なオーディオ体験を作り出すよう適応できる」と、必ずしもリファレンス設定にこだわる必要が無いことを強調している。
■イネーブルドスピーカーが使える天井の条件は?
また、天井にスピーカーを設置する必要があるか、という質問に対しては、「オーバーヘッドサウンドを再現するには、天井にスピーカーを埋め込む、または取り付けるのが確実だが、素晴らしいオーバーヘッドサウンドを創り出す方法はこれだけではない」とし、前述の、天井へ向けて音を放出するドルビーイネーブルドスピーカーを紹介している。
上方へ向けたユニットを内蔵した一体型スピーカーが発売されることはもちろん、手持ちのスピーカーと組み合わせるための「ドルビーイネーブルドスピーカーアドオンモジュール」を購入し、組み合わせることでも、上方からの音声を再生可能であるとしている。なおモジュールは、使用しているスピーカーの上か、近くの別の表面に取り付けることができる。
気になるのは、ドルビーイネーブルドスピーカーが使用できる天井の条件がどうなっているかということ。これに対してドルビーは「天井がフラットで(アーチ型でない、または傾斜がない)、標準的な乾式壁、石こう、コンクリート、木材などの音響を反射する素材であれば、最高のサウンドを体感できる」と太鼓判を押す。
天井高については、「天井の高さが2.4〜2.7mの部屋を想定して設計されているが、天井が4.3mまでの高さなら、素晴らしいドルビーアトモスサウンドを体験できることが当社のテストで分かっている」とコメントしている。
さらに天井にある様々な障害物についても言及し、「天井に埋め込むタイプの照明器具、シャンデリア、廻り縁、エアコンの通気口などがドルビーアトモス体験に目立った影響を与えることはない」と断言している。導入の検討に際して、天井の高さや形状、障害物を気にしていた方にとっては朗報と言えるだろう。