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公開日 2023/06/01 21:21
老舗補聴器ブランドが手掛ける“聴覚拡張” ワイヤレスイヤホン「ASMOLA」。独自のバイノーラル信号処理を搭載
クラウドファンディング開始、48時間限定50%オフも
補聴器事業を展開するリオン(株)は、同社初の一般向け製品として、独自のバイノーラル(両耳)信号処理技術を搭載した聴覚拡張ヒアラブルウェア「ASMOLA(アスモラ)」を開発。本日6月1日より、クラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」にてプロジェクトを開始した。
ASMOLAは、独自技術を組み合わせた “聴覚拡張プラットフォーム”『Awesound』を搭載する、ネックバンド型のワイヤレスイヤホン。これにより、音空間そのものを耳に届けるという「空間ヒアスルー」機能を実現するとしている。
大きな特徴となるのが、独自のバイノーラル信号処理技術を採用した点だ。人は普段、両耳で音を聞くとき、微細な音圧変化や時間差などの“音空間情報”を感じ取り、距離感や方向感を推測している。このため、一般的なワイヤレスイヤホンの外音取り込み機能や集音器を通して音を聞くと、自身の感覚との差が生じて違和感を覚えてしまうという。
そこでASMOLAでは、ターゲットとする音声を歪みなく、空間的な印象を損なわずに届けられるという「MVDR-IC型バイノーラルビームフォーミング」を採用。これにより、内蔵マイクの入力情報から微細な音圧変化や時間差を捉え、音までの距離や方向感も自然に両耳に伝えることが可能だとしている。
イヤホン外側の集音用にデジタルマイクを、耳内側にアナログMEMSマイクを搭載。マイク入力からイヤホン出力までの処理をリアルタイムに行うべく、内部では時間領域でのゲインの畳み込みとビームフォーミングフィルタリング処理を実施して、音の遅延を低減する。これにより集音時の処理遅延は10ms未満を実現しているとのこと。
これらの技術により、全方位の音空間情報を保持し、人が耳で知覚するのに近い、より自然でリアルな聞こえを実現。同社はこれを「空間ヒアスルー」機能と呼んでいる。
対象とする聴力範囲は20 - 55dBで、主に軽度 - 中等度難聴のユーザーの使用を想定している。しかし、難聴と診断されていない人であっても聞こえづらい場面があったり、また実際は難聴だが自覚がないケースもある。このため同社では、非医療機器となるASMOLAを通じて幅広く多くのユーザーに快適な聞こえの体験を提供し、「“実は聞こえない” をなくしたい」とのコンセプトを掲げている。
バイノーラル信号処理技術の開発に至った経緯として、開発担当の藤坂氏は、「補聴器を使用している場合でも両耳の装用率は46%と低く、当たり前の聞こえを提供できていない」と現状を指摘。同技術により、人が本来音を聞くのと同じように、両耳での体験を実現することで「聞こえの素晴らしさを提供し、社会を創発することがリオンの使命だと考えている」と語る。
「快適な聞こえ」を実現するべく、各種 “聴覚拡張” 機能も搭載。周辺の環境音のノイズを抑える「FF ANC(フィードフォワードアクティブノイズキャンセリング)」、イヤホン装着時の声のこもりを低減する耳内向けの「FB ANC(フィードバックアクティブノイズキャンセリング)」、風切音を抑制する「WNC(ウインドノイズキャンセラー)」、突発的な音を瞬時に低減する「PNS(パルスノイズサプレッサー)」を備える。
補聴器にも用いられる、WDRC(ワイドダイナミックレンジコンプレッション)やAFBCも搭載する。WDRCは、過剰に大きな音の入力に対しては出力音を制限し、小さな音の入力は大きくするというコンプレッション機能で、AFBCは、音の反響を抑制するハウリングキャンセラー機能となる。
さらに、左右いずれかの方向の音を強調する「BINAURAL BEAMFORMING」機能も搭載。各種機能操作を担う専用スマートフォンアプリを通じて利用できるもので、聞きたい方向に耳を傾けるような感覚で音を聞くことが可能に。方向は左/右/全方位の3種類から選択できる。
アプリではこのほかに、ホーム画面から、上述の聴覚拡張機能のオン/オフ、取り込み音量の調整、利用シーンごとに向けたプリセットモード(デフォルト/レストラン/アウトドア/飛行機)の選択などが可能。オプション画面からは、4バンドのイコライザー調整と、AFBCのオン/オフ、「HEARING PROTECTION」のオン/オフが行える。
この「HEARING PROTECTION」機能は、85dB以上の大きな音量に反応して、自動的に集音の音量ボリュームを下げるというもの。将来の聴力低下を抑制することを目的としている。
アプリのホーム画面左上には集音時の音量ボリュームがリアルタイム表示され、騒音状況を把握可能できるなど、聴覚保護の配慮も施される。将来的にはデータを収集し、日常の中での騒音レベルの把握や、難聴リスクの有無をアナウンスするといったことに繋げられないかと実現方法を模索しているという。
「パーソナライズ機能」も搭載。アプリを用いて、5分ほどの簡易的な聴力測定を行うことで、一人ひとりのユーザーごとに再生音が最適化できるというもの。パーソナライズは、同社が有する補聴器調整データをベースにした独自の方式を採用する。
ドライバーユニットにはφ9.2mmダイナミック型ドライバーを採用。比較的大きな口径、かつダイナミック型を用いることで、リッチな低域の再生力を確保したとのこと。なお、音楽や動画の再生中には、空間ヒアスルーは機能しないとのこと。「オーディオ体験に集中できるように」との配慮によるもので、コンテンツ再生を停止すると自動的に空間ヒアスルーに切り替わる。
チップセットにはクアルコム「QCC5144」を搭載し、Bluetoothはバージョン5.2、コーデックはSBC/AAC/aptX/aptX Adaptiveをサポートする。また今後、クアルコムの「Snapdragon Sound」にも対応する予定とのことだ。
本体はIPX4相当の防水・防塵性能を装備。イヤホン外側の8角形のようなデザイン部分は、同社のルーツである「ロッシェル塩」をイメージしたと言う。サイズは大柄な部類に入るが、ノズル部分の小型化を検討しているとのことで、製品発送までにさらなる調整が加わる見込みだ。
左右のイヤホンにはマグネットを内蔵し、くっつけることで電源オフとなる機能も備わる。イヤーチップはシリコン製の専用品を付属。汎用イヤーチップアダプターを接続することで、市販品も利用できるとする。
ケーブル長は90cm。外装はファブリック製で、優れた耐久性と柔軟性を両立するとしている。インラインリモコンも搭載し、3つのボタンで電源や音量調整などが行える。
連続駆動時間は集音モードで最長10時間、ストリーミングモードで最長8時間。なお、現在も製品開発が続いており、仕様変更の可能性もあるため留意されたい。
予想実売価格は59,800円(税込)、製品は2023年11月以降の配送予定。プロジェクト支援プランには、48時間限定で50%オフとなる、「超早割」29,800円と「ペア超早割(2個セット)」59,600円をはじめ、40%オフ/100個限定の「超早割」(35,800円)、42%オフ/25セット限定の「3個セット超早割」104,000円など、単体/セット販売プランが各種用意される。
ASMOLAを手掛けるリオン(株)は、75年の歴史を持つ老舗補聴器ブランド「リオネット補聴器」を展開する企業。理学と音響学を通じて「人へ、社会へ、世界へ貢献する」を企業理念に、補聴器を含む4つの事業を展開している。
同社が補聴器事業において日々探求を続ける中、大きな課題と感じているのが、軽度難聴者における補聴器使用率の低さだという。日本補聴器工業会「Japan Track2022」によれば、日本の難聴者の補聴器所有率は15.2%。2018年が14.4%だったことから、この数年でほぼ横ばいという状況だ。
所有率の内訳をみると、補聴器の必要性が高い高度および重度の難聴者が48%、中等度が18%、軽度は11%。特に軽度難聴者においては、補聴器の装着への抵抗感が強くあり、「まだ必要ない」「それほど困っていない」と考える方が多いという。
ただし、健聴者とされる人でも、場面によっては音が聞き取りにくい=「実は聞こえていない」ということは起こりうる。同社ではそのような若干の聞こえにくさが、やがて難聴につながったり、他人とコミュニケーションを億劫にさせるリスクを生み、社会的な損失にもつながると判断。補聴器事業を通じて問題解決に取り組んできたと説明する。
その一方で、補聴器は購入のハードルが高いとされる。耳鼻科で処方をうけ、専門店で購入という流れが通常で、さらにフィッティングなどのために1か月から3か月程度の時間も要する。購入を検討してもなかなか手に取りにくい現状があるという。
ただ、世界的にも軽度難聴に対する動きは活発化している。たとえばアメリカではFDA(食品医薬局)による規制変更に伴って補聴器の販路が拡大。2022年10月より専門店でなくても、医師の処方を介さず、量販店やインターネットで買えるようになっている。WHOからも軽度難聴に対する提言があり、日本でも補聴器の販売に関する法改正こそ行われていないが、同市場への取り組みは増えているそうだ。
そうした背景もあり、今回同社は、補聴器事業で培ってきた音響処理技術を活かした初のコンシューマー向け製品のASMOLAを開発。軽度難聴はもちろん、難聴者に限らず、誰にとっても便利な「聞きにくい場面で、聞き取りやすくする」アイテムとして展開する。
本日開催されたメディア向け体験会では、ASMOLAの音声や機能を確認することができた。
音質に関しては、複数人で体験するため、今回はダミーヘッドに装着したASMOLAから出力される音をヘッドホンで聴くかたちで実施。パーソナライズされていないため、自身の聞こえに適したサウンドということではなかったが、その音は全体的にカリッとした感じで、解像感が高く、明瞭になることが体感できた。
各種機能で最もわかりやすかったのは「BINAURAL BEAMFORMING」。体験時は、ダミーヘッドの左右に人がいて会話をしていたのだが、同機能で左/右と指向性の向きを選択すると、選択した方の会話は聞こえつつ、もう一方の音声ボリュームがしっかり抑えられていた。
アプリ画面に騒音レベルがリアルタイムで表示される点も良いと感じた。聞こえる音だけで判断するよりも、耳へ負担のかかる環境かどうかを可視化することで、同社が提唱するように聴覚保護の意識を自然と高められるのでは、と期待が膨らむ。
軽度難聴者向けに集音機能/補聴機能を搭載した製品は、すでに国内でもいくつか存在する。リオン同様に補聴器メーカーが手掛けるものや、オーディオメーカー、スタートアップが展開する製品もある。中には完全ワイヤレス型のモデルもあり、ケーブルレスで利便性の面では優位だ。
ASMOLAはDSPをリモコン部分に搭載していることもあり、ネックバンド型タイプとしているが、今後さらなる研究開発を進め、完全ワイヤレス型の製品にも取り組むことを検討しているという。
また、使わない間は首元にかけておき、必要になればさっと取り付けられる点、左右どちらか一方を紛失することがない点など、ネックバンド型だからこそのメリットもあるとアピールしていた。
一般販売のスケジュールは正式には決まっていないが、現在ECサイトでの展開を見込んでおり、実店舗での販売も検討中とのこと。ターゲットを明確にした店舗展開を行い、オンライン/オフラインとも、専門店ではない場所でも気軽に手に取れるような販売体制を目指すという。
ASMOLAは、独自技術を組み合わせた “聴覚拡張プラットフォーム”『Awesound』を搭載する、ネックバンド型のワイヤレスイヤホン。これにより、音空間そのものを耳に届けるという「空間ヒアスルー」機能を実現するとしている。
大きな特徴となるのが、独自のバイノーラル信号処理技術を採用した点だ。人は普段、両耳で音を聞くとき、微細な音圧変化や時間差などの“音空間情報”を感じ取り、距離感や方向感を推測している。このため、一般的なワイヤレスイヤホンの外音取り込み機能や集音器を通して音を聞くと、自身の感覚との差が生じて違和感を覚えてしまうという。
そこでASMOLAでは、ターゲットとする音声を歪みなく、空間的な印象を損なわずに届けられるという「MVDR-IC型バイノーラルビームフォーミング」を採用。これにより、内蔵マイクの入力情報から微細な音圧変化や時間差を捉え、音までの距離や方向感も自然に両耳に伝えることが可能だとしている。
イヤホン外側の集音用にデジタルマイクを、耳内側にアナログMEMSマイクを搭載。マイク入力からイヤホン出力までの処理をリアルタイムに行うべく、内部では時間領域でのゲインの畳み込みとビームフォーミングフィルタリング処理を実施して、音の遅延を低減する。これにより集音時の処理遅延は10ms未満を実現しているとのこと。
これらの技術により、全方位の音空間情報を保持し、人が耳で知覚するのに近い、より自然でリアルな聞こえを実現。同社はこれを「空間ヒアスルー」機能と呼んでいる。
対象とする聴力範囲は20 - 55dBで、主に軽度 - 中等度難聴のユーザーの使用を想定している。しかし、難聴と診断されていない人であっても聞こえづらい場面があったり、また実際は難聴だが自覚がないケースもある。このため同社では、非医療機器となるASMOLAを通じて幅広く多くのユーザーに快適な聞こえの体験を提供し、「“実は聞こえない” をなくしたい」とのコンセプトを掲げている。
バイノーラル信号処理技術の開発に至った経緯として、開発担当の藤坂氏は、「補聴器を使用している場合でも両耳の装用率は46%と低く、当たり前の聞こえを提供できていない」と現状を指摘。同技術により、人が本来音を聞くのと同じように、両耳での体験を実現することで「聞こえの素晴らしさを提供し、社会を創発することがリオンの使命だと考えている」と語る。
「快適な聞こえ」を実現するべく、各種 “聴覚拡張” 機能も搭載。周辺の環境音のノイズを抑える「FF ANC(フィードフォワードアクティブノイズキャンセリング)」、イヤホン装着時の声のこもりを低減する耳内向けの「FB ANC(フィードバックアクティブノイズキャンセリング)」、風切音を抑制する「WNC(ウインドノイズキャンセラー)」、突発的な音を瞬時に低減する「PNS(パルスノイズサプレッサー)」を備える。
補聴器にも用いられる、WDRC(ワイドダイナミックレンジコンプレッション)やAFBCも搭載する。WDRCは、過剰に大きな音の入力に対しては出力音を制限し、小さな音の入力は大きくするというコンプレッション機能で、AFBCは、音の反響を抑制するハウリングキャンセラー機能となる。
さらに、左右いずれかの方向の音を強調する「BINAURAL BEAMFORMING」機能も搭載。各種機能操作を担う専用スマートフォンアプリを通じて利用できるもので、聞きたい方向に耳を傾けるような感覚で音を聞くことが可能に。方向は左/右/全方位の3種類から選択できる。
アプリではこのほかに、ホーム画面から、上述の聴覚拡張機能のオン/オフ、取り込み音量の調整、利用シーンごとに向けたプリセットモード(デフォルト/レストラン/アウトドア/飛行機)の選択などが可能。オプション画面からは、4バンドのイコライザー調整と、AFBCのオン/オフ、「HEARING PROTECTION」のオン/オフが行える。
この「HEARING PROTECTION」機能は、85dB以上の大きな音量に反応して、自動的に集音の音量ボリュームを下げるというもの。将来の聴力低下を抑制することを目的としている。
アプリのホーム画面左上には集音時の音量ボリュームがリアルタイム表示され、騒音状況を把握可能できるなど、聴覚保護の配慮も施される。将来的にはデータを収集し、日常の中での騒音レベルの把握や、難聴リスクの有無をアナウンスするといったことに繋げられないかと実現方法を模索しているという。
「パーソナライズ機能」も搭載。アプリを用いて、5分ほどの簡易的な聴力測定を行うことで、一人ひとりのユーザーごとに再生音が最適化できるというもの。パーソナライズは、同社が有する補聴器調整データをベースにした独自の方式を採用する。
ドライバーユニットにはφ9.2mmダイナミック型ドライバーを採用。比較的大きな口径、かつダイナミック型を用いることで、リッチな低域の再生力を確保したとのこと。なお、音楽や動画の再生中には、空間ヒアスルーは機能しないとのこと。「オーディオ体験に集中できるように」との配慮によるもので、コンテンツ再生を停止すると自動的に空間ヒアスルーに切り替わる。
チップセットにはクアルコム「QCC5144」を搭載し、Bluetoothはバージョン5.2、コーデックはSBC/AAC/aptX/aptX Adaptiveをサポートする。また今後、クアルコムの「Snapdragon Sound」にも対応する予定とのことだ。
本体はIPX4相当の防水・防塵性能を装備。イヤホン外側の8角形のようなデザイン部分は、同社のルーツである「ロッシェル塩」をイメージしたと言う。サイズは大柄な部類に入るが、ノズル部分の小型化を検討しているとのことで、製品発送までにさらなる調整が加わる見込みだ。
左右のイヤホンにはマグネットを内蔵し、くっつけることで電源オフとなる機能も備わる。イヤーチップはシリコン製の専用品を付属。汎用イヤーチップアダプターを接続することで、市販品も利用できるとする。
ケーブル長は90cm。外装はファブリック製で、優れた耐久性と柔軟性を両立するとしている。インラインリモコンも搭載し、3つのボタンで電源や音量調整などが行える。
連続駆動時間は集音モードで最長10時間、ストリーミングモードで最長8時間。なお、現在も製品開発が続いており、仕様変更の可能性もあるため留意されたい。
予想実売価格は59,800円(税込)、製品は2023年11月以降の配送予定。プロジェクト支援プランには、48時間限定で50%オフとなる、「超早割」29,800円と「ペア超早割(2個セット)」59,600円をはじめ、40%オフ/100個限定の「超早割」(35,800円)、42%オフ/25セット限定の「3個セット超早割」104,000円など、単体/セット販売プランが各種用意される。
老舗補聴器メーカーが目指す、「誰にとっても聞き取りやすい世界」
ASMOLAを手掛けるリオン(株)は、75年の歴史を持つ老舗補聴器ブランド「リオネット補聴器」を展開する企業。理学と音響学を通じて「人へ、社会へ、世界へ貢献する」を企業理念に、補聴器を含む4つの事業を展開している。
同社が補聴器事業において日々探求を続ける中、大きな課題と感じているのが、軽度難聴者における補聴器使用率の低さだという。日本補聴器工業会「Japan Track2022」によれば、日本の難聴者の補聴器所有率は15.2%。2018年が14.4%だったことから、この数年でほぼ横ばいという状況だ。
所有率の内訳をみると、補聴器の必要性が高い高度および重度の難聴者が48%、中等度が18%、軽度は11%。特に軽度難聴者においては、補聴器の装着への抵抗感が強くあり、「まだ必要ない」「それほど困っていない」と考える方が多いという。
ただし、健聴者とされる人でも、場面によっては音が聞き取りにくい=「実は聞こえていない」ということは起こりうる。同社ではそのような若干の聞こえにくさが、やがて難聴につながったり、他人とコミュニケーションを億劫にさせるリスクを生み、社会的な損失にもつながると判断。補聴器事業を通じて問題解決に取り組んできたと説明する。
その一方で、補聴器は購入のハードルが高いとされる。耳鼻科で処方をうけ、専門店で購入という流れが通常で、さらにフィッティングなどのために1か月から3か月程度の時間も要する。購入を検討してもなかなか手に取りにくい現状があるという。
ただ、世界的にも軽度難聴に対する動きは活発化している。たとえばアメリカではFDA(食品医薬局)による規制変更に伴って補聴器の販路が拡大。2022年10月より専門店でなくても、医師の処方を介さず、量販店やインターネットで買えるようになっている。WHOからも軽度難聴に対する提言があり、日本でも補聴器の販売に関する法改正こそ行われていないが、同市場への取り組みは増えているそうだ。
そうした背景もあり、今回同社は、補聴器事業で培ってきた音響処理技術を活かした初のコンシューマー向け製品のASMOLAを開発。軽度難聴はもちろん、難聴者に限らず、誰にとっても便利な「聞きにくい場面で、聞き取りやすくする」アイテムとして展開する。
本日開催されたメディア向け体験会では、ASMOLAの音声や機能を確認することができた。
音質に関しては、複数人で体験するため、今回はダミーヘッドに装着したASMOLAから出力される音をヘッドホンで聴くかたちで実施。パーソナライズされていないため、自身の聞こえに適したサウンドということではなかったが、その音は全体的にカリッとした感じで、解像感が高く、明瞭になることが体感できた。
各種機能で最もわかりやすかったのは「BINAURAL BEAMFORMING」。体験時は、ダミーヘッドの左右に人がいて会話をしていたのだが、同機能で左/右と指向性の向きを選択すると、選択した方の会話は聞こえつつ、もう一方の音声ボリュームがしっかり抑えられていた。
アプリ画面に騒音レベルがリアルタイムで表示される点も良いと感じた。聞こえる音だけで判断するよりも、耳へ負担のかかる環境かどうかを可視化することで、同社が提唱するように聴覚保護の意識を自然と高められるのでは、と期待が膨らむ。
軽度難聴者向けに集音機能/補聴機能を搭載した製品は、すでに国内でもいくつか存在する。リオン同様に補聴器メーカーが手掛けるものや、オーディオメーカー、スタートアップが展開する製品もある。中には完全ワイヤレス型のモデルもあり、ケーブルレスで利便性の面では優位だ。
ASMOLAはDSPをリモコン部分に搭載していることもあり、ネックバンド型タイプとしているが、今後さらなる研究開発を進め、完全ワイヤレス型の製品にも取り組むことを検討しているという。
また、使わない間は首元にかけておき、必要になればさっと取り付けられる点、左右どちらか一方を紛失することがない点など、ネックバンド型だからこそのメリットもあるとアピールしていた。
一般販売のスケジュールは正式には決まっていないが、現在ECサイトでの展開を見込んでおり、実店舗での販売も検討中とのこと。ターゲットを明確にした店舗展開を行い、オンライン/オフラインとも、専門店ではない場所でも気軽に手に取れるような販売体制を目指すという。