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ガジェット 公開日 2022/10/20 13:46

電力をワイヤレス伝送する宇宙太陽光発電プロジェクト。試作機がまもなく軌道へ

まだまだ課題は多い
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Munenori Taniguchi
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カリフォルニア工科大学のSpace Solar Powerプロジェクトが、最初の宇宙発電所プロトタイプを軌道に乗せる準備を進めており、打ち上げは2022年12月を予定している。このプロトタイプは超軽量構造で、太陽光のエネルギーを電力に変換し、それをワイヤレスで送出する機能を備える。

なぜ宇宙で太陽光発電をしようとするのかといえば、天候や障害物に左右されることなく、また24時間発電し続けることが可能というメリットがあるから。こうした環境のおかげで、単位面積あたりで地上に比べ、およそ8倍ものエネルギー的なポテンシャルがあるとされている。

ただ、問題はどうやってその宇宙発電所を構築するかと言うこと、またどれぐらいの費用が必要になるのかということだ。宇宙空間で大規模な太陽光発電所を作ろうと思えば、その資材を打ち上げ、軌道上で組み立て、起動して維持しなければならない。そのコストはとてつもないものになるはずだ。まったく前例がないこともあり、あらゆる面で解決すべき問題がある。

しかしカリフォルニア工科大学のチームはこの難題に対して長年取り組んできた。このプロジェクトがスタートしたきっかけは、米大手不動産会社Irvineの会長であるドナルド・ブレン氏が2013年に1億ドルもの資金を提供したことだった。さらにプロジェクトは2015年にノースロップ・グラマンから1750万ドルの寄付を得て、これまで10年近くの月日をこのプロジェクトの実現に向けて費やしてきた。

このプロジェクトは、3つのグループに分かれて進められている。ひとつめは、超軽量でなおかつ高効率なソーラーパネルを開発するグループだ。このパネルはISSや人工衛星などが搭載する太陽電池に比べて50〜100倍のパワー・ウェイト・レシオ(出力対重量比)を持たせることを目標としている。

2つめののグループは、発電した電力を高周波電力に変換し、位相操作によってビームを地上の受信機アレイへのワイヤレス伝送を行えるようにすることを行っている。小型かつ超軽量な電力無線伝送装置の開発が求められ、ビームの制御が重要となる。

この2グループはこれまでの開発で、太陽エネルギーを電力に変え、高周波電力に変換して無線伝送する機能を組み込んだ、約10cm角の「Tile」と称する、実際に機能するプロトタイプを完成させた。Tileは1枚あたり2.8kg以下の重量で、ロケットによって軌道上に配置されたあと、折りたたまれた太陽光パネルを展開できるようになっている。

残る3つめのグループは、他の2グループが構築したTile数千枚をモジュールとして組み合わせ、9平方kmという巨大な面積を持つ太陽光発電アレイを構築する方法を開発している。

この発電アレイは、軽量で薄型の構造物として折りたたんだり展開する機能を持ち、宇宙空間での姿勢や位置の制御を行い、発電を維持するという課題をクリアすることが求められている。研究者たちは、日本の折り紙などからヒントを得て、コイル状に折りたたんだ状態から自動的に展開する構造を設計・試作し、しかも1平方メートルあたり150gという超軽量に仕上げたという。

この宇宙発電所には、太陽光パネルを可能な限り太陽に向け、一方で電力送出ユニットを地上の受信アレイのひとつに向けて維持するという課題が残されている。また、どの軌道上に配置するかによっても課題は変化する。

そして最終的に運用に入ったときに、地上で提供されている電力に比べて安価にならなければ、このプロジェクトは成功とは言えない。いまの米国では1kWhあたり平均0.17ドルが電力の相場となっているが、現状の宇宙太陽光発電のコストは1kWhあたり1〜2米ドルとなる。これでは苦労して宇宙に発電所を作る意味はない。

それでも、カリフォルニア工科大学のチームは問題を解消すべく、研究に取り組み続けている。いつか将来、地上で作り出される電力よりコストが安価になることを期待したいところだ。

Source: Caltech
via: New Atlas

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