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公開日 2022/05/27 12:56

幻の『マーブルマッドネスII』、約30年振りにプレイアブルな形で復活。ただしトラックボールではなくジョイスティック操作【Gadget Gate】

完全なROMデータが流出
Kiyoshi Tane
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1984年に米アタリゲームズが稼働した業務用ゲーム『マーブルマッドネス』(Marble Madness)の続編、『Marble Madness II : Marble Man』は未発売に終わった。そのプロトタイプはコレクターの手に渡り、ROMデータは門外不出とされ、実際に遊べるのは(筐体が持ち込まれた)コンベンション参加者などに限られていた。


が、その完全なROMデータが予期せぬ形で流出し、全世界の人々が(合法的かどうかはさておき)プレイできるようになった。

『マーブル2マッドネス』は、クォータービュー(斜め見下ろし視点)で、画面上にあるビー玉をトラックボールで転がし、制限時間以内にゴールにたどり着くゲームだ。道中には様々な罠が仕掛けられており、ビー玉が食べられたり溶かされたり、高所から落ちて割れたりとヒドい目に遭う。当時としては滑らかな動きが注目を集めていたが、開発者は後にPS4やPS5のリードアーキテクトを務めたマーク・サーニー氏その人だ。

Getty Images

その続篇「II」が企画されたのは、7年後の1991年のこと。2020年のインタビューでゲームデザイナーのボブ・フラナガン氏は、「もっとすべてを盛り込んだ」ものの制作に着手したと語っている。17の大きくて複雑な迷路(前作は全6面)、たくさんの新しい敵、3人プレイ対応、ピンボール式のボーナスゲーム、行く手を阻む脅威を粉砕するパワーアップ要素などだ。

しかし社内での検討や、社外でのロケテストを実施したところ、結果は思わしくなかったという。俗説では(当時すさまじいブームだった)『ストリートファイターII』との競争に勝てないからと言われていたが、後にアタリの社内文書から「トラックボールは直感的な操作方法だが上級者向けだ……」と難を示されたことが明らかになっている。

そして最近まで、実在はしているがほぼ幻だった『マーブルマッドネスII』。それがにわかに注目を集めているのは、21日にROMイメージがInternet Archiveや4chanなどのサイトを通じて拡散し始めたことがきっかけだ。

具体的には、「dank2079」というハンドル名以外は未知の人物がROMデータを基板から吸い出し、ひっそりとInternet Archiveに置いたとのことだ。こうしたマーブルマッドネスIIほど有名でないにせよ、未発売のゲームや失われたと思われていたROMデータが突如現れることは珍しくないという。

ROMデータが流出したとしても、MAME(定番のアーケードゲーム・エミュレータ)最新の安定版ですぐに動作することはなかった。MAME開発者のデビッド・ヘイウッド氏は、アーケードゲームが家庭用ゲーム機と違い、ゲームごとに専用のハードウェアとセットで動くよう設計されているため、チェックに追加作業が必要になると説明している。

幸いなことに、ヘイウッド氏はゼロから始める必要はなかった。なぜならアタリ社は、同社のゲーム向けハードウェアプラットフォームの多くには共通のデザインパターンが流用されているため、すでにMAMEコードベース内でモジュール化されて再利用しやすくなっていたからだ。

ハードウェアのレベルでは、『II』は1984年の前作とは似ても似つかない。その代わり1991年のアーケード版『バットマン』に最も近く、サウンドボードまで同じだったという。ほか「ランパート」など近い時期のゲーム用コードも再利用したとのこと。ヘイウッド氏は「これはレゴのようなもので、どのパーツを使い、どのように組み合わせるかを考えるんだ」と語っている。

結局、MAMEソースコードを更新するのにかかったのは、全部で4時間。意外と短いとも思えるが、ヘイウッド氏は「アタリ製ゲームのエミュレーションで最も難しいのは通常コピープロテクトだが、おそらくまだ試作品のため、アタリ社お決まりの邪悪な仕掛けを一切使用していない」と語っている。

今回流出したROMデータは、操作がジョイスティックに変更された2つ目のバージョンだという。トラックボールのファンにとっては、少々残念なことかもしれない。

ヘイウッド氏は、「大局的に見れば、これはアタリ社のアーケード試作品の失敗作に過ぎない」と述べている。それとともに、エミュレータで幻のゲームが遊べるようになったことには「人々がMAMEについて肯定的に語り、失われたゲームへの認識を高める」価値があるとも示唆している。

こうしたROMデータの流出は、希少なビデオゲームの価値を下げるのか? 実際そう考えているコレクターが多いために流出も稀だと思われるが、中には「既存のマシンの価値が下がることはないだろう」「より多くの人が知ることになるので、おそらく価値が上がるだろう」との声もあるそうだ。

今回の件は、たしかに著作権的には限りなくグレーだと思われる。が、それでも失われたゲームが現代に蘇ることや、幻想が膨れあがっていた幻の続編が「なぜ発売されなかったか」を実際にプレイして考察することは、ゲーム史への知見を深め、将来のゲーム開発に役立つかもしれない。

Source:GitHub
via:ArsTechnica



※テック/ガジェット系メディア「Gadget Gate」を近日中にローンチ予定です。本稿は、そのプレバージョンの記事として掲載しています。

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