• ブランド
    特設サイト
公開日 2022/05/02 15:59

iMacやiPhoneを手がけたデザイナーのジョニー・アイブ、アップル退社までの数年が明らかに【Gadget Gate】

Apple Watchをめぐる衝突がきっかけか
Kiyoshi Tane
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
カリスマ的な指導者だったスティーブ・ジョブズ氏が逝去した後、アップルはどうなるのか? そう世界中が問いかけた2011年から10以上が経過した現在、同社はそれまで以上に好調で、今年初めには時価総額が一時初の3兆ドルを超えたこともあった。

しかし、米New York Timesの記者トリップ・ミクル(Tripp Mickle)による新刊「アフター・スティーブ(After Steve)」では、アップルがいかにして3兆ドル規模の企業になる一方で、魂を失ったかが振り返られている。その理由の1つが、かつての最高デザイン責任者ジョニー・アイブ氏の退社である。

ミクル記者はNYT紙の記事で本の一部を抜粋し、アイブ氏が退社するまでの最後の数年間について語っている。2014年時点では、アップルの未来は、以前にも増してアイブ氏にかかっているように思えたという。彼のピュアかつシンプルなデザインは、iMacやiPod、iPhoneといった人気製品を通じて、すでに世界を塗り替えていたからだ。

ことの始まりとされているのが、アイブ氏がティム・クックCEOとテーブルを囲んで画期的な新製品・Apple Watchについて話し合っていた会議である。

アイブ氏が思い描くApple Watchの未来は、ラグジュアリー(ぜいたく)な製品だった。初代モデルのプロモーションとして2500万ドルの豪華な白いテントを建てようとしたばかりか「Vogue誌の絶賛を、どんな技術評論家の意見よりも重要視していた」という。「高級ファッションショーのような華やかなイベント」にしたかったそうだ。

ふたりは言い争った末に、結局クックCEOはアイブ氏のアイディを受け入れたとのことだ。が、アイブ氏は後にこれを「ピュロスの勝利」と表現しているという。「損害が大きく、得るものが少ない勝利」のことである。

アイブ氏はこのApple Watchをめぐる衝突が、「アップルから支持されていない」と感じた最初の瞬間の一つだったと同僚らに語っているそうだ。その後、Apple Watchがファッション製品から健康管理のフィットネス製品に移行していったのは、周知の事実である。

それでもクックCEOは、ジョブズ亡き後にアイブ氏を失うことに慎重になっていたという。2014年といえば逝去から3年後だが「アイブ氏の離脱によってアップルの市場価値は500億ドル以上、あるいは10%もの価値が失われると見積もっていた」ために、アイブ氏のテント構想を乗ることにしたそうだ。

また一方でアイブ氏もデザイン最高責任者になったことで「長年運営してきた20人のデザインチームの何倍にもなる、数百人に及ぶスタッフを管理することに圧倒された」とも語られている。そうした変化のなかで、アイブ氏はクックCEOに「自分は疲れているので、ビジネスから身を引きたい」と告げたという。ジョブズ氏抜きで製品のデザインやマーケティングに多大な責任を負うことや、地位をめぐって同僚と争うことにも疲弊していたようだ。

しかしアップル株の下落を恐れたクックCEOはアイブ氏を引き留め、日常的な経営責任を放棄し、主に新製品に携わることで合意した。社内のごく一部の人間だけが、アイブ氏の不満と燃え尽き症候群の真相を知っていたという。

退社前のアイブ氏はMacBook Proなどに採用されたバタフライ式キーボードに関わっていたとの噂もある。この方式はアイブ氏らしい薄さや美しさへのこだわりが窺われたが、構造的にゴミが入り込みやすく、集団訴訟を起こされることにも繋がっていた。アイブ氏が世界を一変させたことは事実ではあれ、「美しさよりも使いやすさ」を求める一般ユーザーとは意識のズレが生じていたのかもしれない。

Source:The New York Times
Via:9to5Mac


※テック/ガジェット系メディア「Gadget Gate」を近日中にローンチ予定です。本稿は、そのプレバージョンの記事として掲載しています。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック

クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 先進の高画質パネルを惜しみなく投入!TCLの4K Mini LED液晶テレビ「Q7Cシリーズ」徹底レビュー
2 映画「スター・ウォーズ」シリーズ最新作、日本にて正式発表。2027年5月28日に全米公開予定
3 今、SOUNDPEATSの音の進化がスゴい。「Air5 Pro」は“真の高音質コーデック対応”イヤホンだ【割引クーポン有】
4 final新フラグシップイヤホン「A10000」。ひと足さきに聴いたら本気で語彙力がなくなった
5 Acoustune、完全ワイヤレス「HSX1001 Jin -迅-」用の真鍮チャンバー&有線接続化モジュール
6 SHANLING、新据置ストリーミングデバイス「SM1.3」。ブランド初のRoon Ready対応機
7 音茶楽、“付帯音ゼロ” 目指した拭き漆仕上げイヤホン「Flat4-楓零」
8 フォステクス、高精度成型ホーン採用のスーパートゥイーター「GS17H」。4月下旬発売
9 「Switch 2」量販店の予約状況・方法まとめ。Amazon、ヨドバシ、ビックなどの現状は?【4/18更新】
10 組み立てる喜び、音が出る感動。真空管初心者にも安心、トライオードのアンプキットを作ってみた!
4/21 9:57 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー196号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.196
オーディオアクセサリー大全2025~2026
特別増刊
オーディオアクセサリー大全
最新号
2025~2026
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.22 2024冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.22
プレミアムヘッドホンガイド Vol.32 2024 AUTUMN
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.32(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2024年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX