公開日 2010/04/30 10:00
ヤマハのAVアンプ「RX-V567」最速レビュー − 65シリーズから進化したサウンドを聴く
3Dパススルー対応の新エントリーモデル
HDオーディオの普及に伴い、AVアンプのボリュームゾーンは5〜10万円へとシフトしている。そこに投入するのがヤマハの注目エントリーモデル「RX-V567」と「RX-V467」だ。従来の“65シリーズ”の後継で、それぞれ7.1chと5.1chのパワーアンプを搭載する新世代モデル。ヤマハでは「ニュー3D対応AVアンプ」と位置づけている。すなわち3DのパススルーとARC(オーディオリターンチャンネル)にも対応し、さらに自慢の音場創成技術「シネマDSP」も進化させた。
従来だとこのクラスのモデルはHDオーディオソフトを再生する場合、プレーヤー側でリニアPCMに変換しないとシネマDSPをかけられなかったわけだが、今回はドルビーTrueHD、DTS-HD Master AudioなどHDオーディオ音声のまま、好みのシネマDSPプログラムをかけあわせることができるようになったのだ。注目が高まる3Dだが、映像が立体なら音声もヤマハだけの超立体音場=シネマDSPで楽しめる。よりダイナミックな音の奥行を再現して、最高の臨場感が得られるのは歓迎だ。但しDTS-HDマスターオーディオに対しては、LSIの処理能力の関係からコア部分のみのDSP対応となっている。
また別売りのアクセサリーを接続してのiPhone対応や便利なHDMIリンク機能、上位のRX-V567では加えてビデオアップスケーラー機能も備えており、3D時代のメディアセンターに相応しい仕様である。デザインもスマートな印象に変わった。
こうした機能面の充実はもちろんだが、AVアンプの本質である音のクオリティにも大いにこだわった。これは両モデルに共通で、“65シリーズ”上位のAX-V765(製品レビュー)と同じブロックケミコンを採用。パワーケーブルも中級グレードの高品位なものに変更するなど、特に電源関連の強化に注目したい。スピーカー端子も簡易なワンタッチ式からスクリュータイプに変更された。
■昨年モデルから音の解像度とレンジの伸びが進化
「RX-V567」を主に聴こう。昨年モデルAX-V565との音の違いは、ズバリ音の解像度とレンジの伸び。限られた帯域の中で聴き心地を重視したこれまでとは違い、ぐっと重心が下がる。低域の躍動感が増して、高域サイドにかけては分解能やシャープネスを高めている印象だ。音質に磨きがかかるとともにサラウンド空間の描写力もパワーアップした。
7.1chBDソフトの「クリス・ボッティ」や6.1ch「崖の上のポニョ」では空間の緻密さや微妙なニュアンス、深みのある表現力が増しており、これは本格的AVアンプといえる音のチューンとすぐに実感できた。
5.1chモデルの「RX-V467」も、電源や筐体などまったく同一な作りのため、音のクオリティは同等だ。チャンネルあたりの定格出力では105W/chと、90W×7chのパワーをもつ兄貴分をむしろ凌いでいる。
シネマDSPのかけあわせは、またゴキゲンだ。通常の5.1chソフトで感じていたチャンネル間の音の隙間、つながりの悪さも見事に解消。「ダークナイト」ではバットマンの空中飛行がリアルに再現され、チャンネル感の連携がスムーズになっていることに驚く。スピーカーの数が増えたような錯覚だ。“Sci-Fi”ではキレ味系のシャープな音場感、“スペクタクル”ではサイズの大きいダイナミックな広がり感を体感できる。音楽系であれば各種のホールやジャズクラブなど、ソースによってシネマDSPモードを選ぶのも楽しい。
■iPod/iPhoneの音もみずみずしいサウンドに
今回新たにiPhone対応となった別売のユニバーサルドック「YDS-12」を背面の端子にさし、手持ちのiPod touchの音を聴いてみたが、これは圧縮音源とは思えない。ミュージックエンハンサーの効果だろうが、ボーカルやピアノなど品位のよいみずみずしいサウンドで再生され、手軽な音楽ソースとして聴く楽しさが加わった。今後ワイヤレス再生対応のドックもラインナップしてくるといい、進化するヤマハAVアンプから目が離せない。
※「シネマDSP」
ヤマハが20年以上にわたり収集・蓄積してきた、世界中の著名なコンサートホールや劇場などの音響特性に基づく膨大な音場データをもとにつくられた音場プログラム。MOVIE、MUSIC、SPORTS、GAMEモードがあり、再生ソースにあわせて好みの音場を選択できる。さらにMUSICの中にもミュンヘンを代表するコンサートホールの音場「Hall in Munich」、LAのロック系ライブハウスの音場「The Roxy Theatre」といった細かいプログラムがあり、RX-V567/V467では17のプログラムが用意されている。>>シネマDSPのより詳しい情報はこちら
筆者プロフィール:林 正儀
福岡県出身。工学院大学で電子工学を専攻。その後、電機メーカー勤務を経て、技術 系高校の教師というキャリアを持つ。現在、日本工学院専門学校の講師で、音響・ホー ムシアターの授業を受け持つ。教鞭をとっている経験から、初心者向けに難しい話題 をやさしく説明するテクニックには特に定評がある。
従来だとこのクラスのモデルはHDオーディオソフトを再生する場合、プレーヤー側でリニアPCMに変換しないとシネマDSPをかけられなかったわけだが、今回はドルビーTrueHD、DTS-HD Master AudioなどHDオーディオ音声のまま、好みのシネマDSPプログラムをかけあわせることができるようになったのだ。注目が高まる3Dだが、映像が立体なら音声もヤマハだけの超立体音場=シネマDSPで楽しめる。よりダイナミックな音の奥行を再現して、最高の臨場感が得られるのは歓迎だ。但しDTS-HDマスターオーディオに対しては、LSIの処理能力の関係からコア部分のみのDSP対応となっている。
また別売りのアクセサリーを接続してのiPhone対応や便利なHDMIリンク機能、上位のRX-V567では加えてビデオアップスケーラー機能も備えており、3D時代のメディアセンターに相応しい仕様である。デザインもスマートな印象に変わった。
こうした機能面の充実はもちろんだが、AVアンプの本質である音のクオリティにも大いにこだわった。これは両モデルに共通で、“65シリーズ”上位のAX-V765(製品レビュー)と同じブロックケミコンを採用。パワーケーブルも中級グレードの高品位なものに変更するなど、特に電源関連の強化に注目したい。スピーカー端子も簡易なワンタッチ式からスクリュータイプに変更された。
■昨年モデルから音の解像度とレンジの伸びが進化
「RX-V567」を主に聴こう。昨年モデルAX-V565との音の違いは、ズバリ音の解像度とレンジの伸び。限られた帯域の中で聴き心地を重視したこれまでとは違い、ぐっと重心が下がる。低域の躍動感が増して、高域サイドにかけては分解能やシャープネスを高めている印象だ。音質に磨きがかかるとともにサラウンド空間の描写力もパワーアップした。
5.1chモデルの「RX-V467」も、電源や筐体などまったく同一な作りのため、音のクオリティは同等だ。チャンネルあたりの定格出力では105W/chと、90W×7chのパワーをもつ兄貴分をむしろ凌いでいる。
シネマDSPのかけあわせは、またゴキゲンだ。通常の5.1chソフトで感じていたチャンネル間の音の隙間、つながりの悪さも見事に解消。「ダークナイト」ではバットマンの空中飛行がリアルに再現され、チャンネル感の連携がスムーズになっていることに驚く。スピーカーの数が増えたような錯覚だ。“Sci-Fi”ではキレ味系のシャープな音場感、“スペクタクル”ではサイズの大きいダイナミックな広がり感を体感できる。音楽系であれば各種のホールやジャズクラブなど、ソースによってシネマDSPモードを選ぶのも楽しい。
■iPod/iPhoneの音もみずみずしいサウンドに
今回新たにiPhone対応となった別売のユニバーサルドック「YDS-12」を背面の端子にさし、手持ちのiPod touchの音を聴いてみたが、これは圧縮音源とは思えない。ミュージックエンハンサーの効果だろうが、ボーカルやピアノなど品位のよいみずみずしいサウンドで再生され、手軽な音楽ソースとして聴く楽しさが加わった。今後ワイヤレス再生対応のドックもラインナップしてくるといい、進化するヤマハAVアンプから目が離せない。
※「シネマDSP」
ヤマハが20年以上にわたり収集・蓄積してきた、世界中の著名なコンサートホールや劇場などの音響特性に基づく膨大な音場データをもとにつくられた音場プログラム。MOVIE、MUSIC、SPORTS、GAMEモードがあり、再生ソースにあわせて好みの音場を選択できる。さらにMUSICの中にもミュンヘンを代表するコンサートホールの音場「Hall in Munich」、LAのロック系ライブハウスの音場「The Roxy Theatre」といった細かいプログラムがあり、RX-V567/V467では17のプログラムが用意されている。>>シネマDSPのより詳しい情報はこちら
筆者プロフィール:林 正儀
福岡県出身。工学院大学で電子工学を専攻。その後、電機メーカー勤務を経て、技術 系高校の教師というキャリアを持つ。現在、日本工学院専門学校の講師で、音響・ホー ムシアターの授業を受け持つ。教鞭をとっている経験から、初心者向けに難しい話題 をやさしく説明するテクニックには特に定評がある。