公開日 2010/12/07 12:56

仕組みからパケット分析まで − iOS 4.2で登場した「AirPlay」の深奥に迫る

オーディオ/ビデオを無線伝送
海上忍
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
iOS 4.2の新機能として話題の「AirPlay」。デノンやマランツから対応製品が発売されたこともあり、オーディオ/ビジュアル方面から注目する向きも少なくないはずだ。今回は、AirPlayが登場した背景とその仕組みについて解説してみよう。

iTunes 10.1/iOS 4.2以降でサポートされた「AirPlay」、その内側に迫る

■まず「AirPlay」の正体を知る

AirPlayは、まったく新しい技術ではない。これまでもAirMac Express(2004年発売、日本以外での名称はAirPort Express)という小型Wi-Fiベースステーションに搭載されていた「AirTunes」に動画サポートを加え、AirPlayと名称変更し再登場させた配信サービスだ。

小型Wi-Fiベースステーション「AirMac Express」。オーディオ機器に接続すれば、iTunesの音楽をワイヤレスでも損失なしに再生できるAirTunesをサポートしている

これまでAirMac ExpressがサポートしてきたAirTunesは、iTunesからWi-Fi(IEEE 802.11a/b/g/n)経由でストリーミング送信されたサウンドデータを受信し、アナログ/光デジタル兼用3.5mmミニオーディオジャックから44.1kHz/16ビットで出力する、「ワイヤレススピーカー」的な機能を提供する。

AirMac ExpressはWi-Fiベースステーションとしての機能にくわえ、iTunesの「リモートスピーカー」として扱われてきた

たとえるなら、iTunesが“ラジオ放送局”でAirMac Expressが“ラジオ受信機”だが、データはデジタルの「Apple Lossless」に変換されたうえで転送されるため、理論上は音質劣化がなくノイズの混入もない。

Apple Lossless(ALAC)は、その名が示すとおり可逆圧縮(変換前後のデータが完全に等しい圧縮方式)のオーディオコーデック。WAVEやAIFFなどリニアPCMベースのフォーマット形式に比べると、データサイズは50〜60%程度と小さく、しかも可逆圧縮のため理論上音質が変化しない。一方、AirTunesで音楽を送信する場合にはMP3やAACなどのサウンドファイルをデコードしたうえでALACに変換(エンコード)するという処理を伴うため、パソコンのように高い演算能力を持つ機器が必要となる。

AirTunesの規格は公開されていないが、一部で解析が進み、同等の機能を備えたソフトウェアも開発されている。たとえば、WindowsとMacに対応したシェアウェア「Airfoil」は、任意のアプリケーションの音声出力をジャックしてAirTunes経由で出力する。この機能を使うことで、iTunes以外のアプリケーションの音声も出力できるが、AirTunesと100%の互換性を備えるわけではなく、第2世代Apple TVでは受信できない。

AirTunes互換をうたうシェアウェア「Airfoil」は、第2世代Apple TVを出力先として選べるものの、映像は出力できない

この事実からすると、AirTunesおよび上位互換規格のAirPlayについても、Appleがライセンスを供与した製品以外は正式対応しない、閉じられたフォーマットだということがわかる。

次ページAirPlayで再生できるコンテンツを知る

1 2 3 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック

クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 BRAVIAが空飛ぶ時代? 動画コンテンツの楽しみ方に押し寄せた大きな変化を指摘するソニーショップ店長。超大画面はさらに身近に
2 ネットワークオーディオに、新たな扉を開く。オーディオ銘機賞の栄えある“金賞”、エソテリック「Grandioso N1」の実力に迫る
3 Nothing、最大40%オフのウィンターセール開催
4 LG、世界初のDolby Atmos FlexConnect対応サウンドバー「H7」。オーディオシステム「LG Sound Suite」をCESで発表へ
5 「ゴジラAR ゴジラ VS 東京ドーム」を体験。目の前に実物大で現れる“圧倒的ゴジラ”の臨場感
6 衝撃のハイコスパ、サンシャインの純マグネシウム製3重構造インシュレーター「T-SPENCER」を試す
7 AVIOT、“業界最小クラス”のANC完全ワイヤレス「TE-Q3R」。LDAC、立体音響にも対応
8 ソニー「WH-1000XM5」に“2.5.1”アップデート。Quick AccessがApple Music/YouTube Musicに対応
9 「HDR10+ ADVANCED」が正式発表。全体的な輝度向上、ローカルトーンマッピングなど新機能も
10 クリプトン、左右独立バイアンプ機構のハイレゾ対応アクティブスピーカー「KS-55HG」新色 “RED”
12/19 11:02 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー199号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.199
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
特別増刊
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
最新号
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.23 2025冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.23
プレミアムヘッドホンガイド Vol.33 2025 SUMMER
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.33(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • プレミアムヘッドホンガイド
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX