公開日 2011/06/30 11:07
SHUREモニターヘッドホンのトップエンド「SRH940」 − 開発者ジョーンズ氏が本機の魅力を語る
高音質の秘密を探求
プロのレコーディング現場で活躍するモニターヘッドホン。SHURE(シュア)がその分野に参入したのは比較的最近だが、その製品は当初から高い評価を得た。現在ではこの分野でも定番ブランドのひとつとなっている。
そのラインナップは登場時のSRH240/440/840/750DJで既に万全と思われていたが、この度、そのトップエンドに新モデルが追加された。SRH940だ。既存のSRH440/840がモニター用として定番となっている状況で、さらにその上の価格帯に新モデルを追加した意図、既存モデルとの差異はどこにあるのか。同社プロダクトマネージャー、マイケル・ジョーンズ氏のコメントを交えつつ、紹介していこう。
ユーザーの声に応えて装着感を向上
SHURE
SRH940/¥OPEN
まず外観はブラックを基調とした既存モデルに対して、SRH940はシルバーを基調としている。耳を覆うイヤーカップの形状も、真円に近い形状から楕円に変更された。
「SRH940はプレミアムヘッドホンという位置付け。それに見あう注目も集めたいと考え、新しいデザインを施しました」。 といっても、デザイン先行で機能性は考慮されていないということではない。ジョーンズ氏はこう続ける。
「軽量化と装着感の向上も実現しています。これはSRH840ユーザーからの要望に応えたものです」。 実際に重量は軽くなっており、装着感も大きく改善されている。ヘッドバンドに追加されたクッション、ベロア素材で肌触りをよくしたイヤーパッドの効果も大きい。
しかし核心はやはりサウンドだ。まず印象的なのは、帯域バランスのフラットさと低域の感触だ。SRH840はモニターヘッドホンとしては異例の、ふくよかに充実した低音が特徴的だった。対してSRH940の低域はぐっとタイトでスピーディ。鍛え上げられ削ぎ落とされた低音という印象だ。
「SRH840の温かみのある低域も好評です。しかしSRH940ではより色づけの少ない低域を採用しました。低域のボリューム感を抑えることで、高域の情報量も増加しています。このような正確なサウンドを好むリスナーも多いでしょう」。
高域側は、たとえばシンバルやピアノの強打、エレクトリックギターのコードカッティングなどに顕著だが、金属的な硬質さや鋭さを引き出しながらも、実になめらかな感触だ。磨きあげられて艶のある、抜けのよい高域である。そのことが空間全体の開放感も生み出している。「音を鈍くしたり耳障りにしたりせず、高域側の伸びを実現することは、開発の目的のひとつでした。高域側が伸びるほど、より”オープンな”サウンドステージになるからです」。
技術的には、高密度マイラー素材と溝を設けた形状で強度を上げて歪みの最小化を図った振動板などによって、この感触を実現しているとのことだ。イヤーパッドの素材には、すべての密閉型ヘッドホンが持っている共振ピークを抑えるダンピングクロスを採用しているという。
このようにSRH940は、SRH840の単純な上位モデルというよりは、SRH840とは異なる音調を意図して与えられた新モデルといえる。ヘッドホンファンとしては、様々な選択肢が用意されることは嬉しい。シュアの幅広いラインナップから、ご自身の好みにあうモデルを見つけてほしい。
SHURE<シュア> ブランド紹介
世界有数の歴史と実績を持つプロオーディオブランド。特にマイクロフォン分野では、伝説的なレコーディングやライブ、アメリカ歴代大統領の演説に同社製品が使用されている。とはいえプロ向け高級ブランドというわけではなく、同社のマイクは多くのアマチュアミュージシャンにもおなじみだ。マイク関連では、ライブイベントには欠かせないワイヤレス伝送システムも同社の得意とするところである。
イヤホン・ヘッドホンへの進出のきっかけは、ミュージシャンがステージ上で他のメンバーや自分の音を明瞭に確認できるように開発された、インイヤーモニターだ。プロ用途に向けた製品であったが、ポータブルオーディオの流行と重なり、いわゆるカナル型イヤホンの先駆けとしてオーディオファンに迎え入れられた。その好評を受けて一般リスナーに向けたシリーズも展開。近年ではヘッドホンにも参入し、オーディオファンにもおなじみのブランドとなっている。
【SRH940 SPECIFICATIONS】
●型式:密閉ダイナミック型 ●ドライバー口径:40mm ●感度(1kHz):100 dB SPL/mW ●再生周波数帯域:5Hz〜30kHz ●最大許容入力(1kHz):1000mW ●インピーダンス(1kHz):42Ω ●入力コネクター:金メッキ3.5mmステレオ・ミニプラグ 金メッキ6.3mm標準プラグアダプター ●ケーブル:カール→3m(着脱式、OFC) ストレート→2.5m(着脱式、OFC) ●質量(ケーブル除く):約320g
【問い合わせ先】
完実電気(株)
TEL/03-5821-1321
◆高橋 敦 プロフィール
デジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。
そのラインナップは登場時のSRH240/440/840/750DJで既に万全と思われていたが、この度、そのトップエンドに新モデルが追加された。SRH940だ。既存のSRH440/840がモニター用として定番となっている状況で、さらにその上の価格帯に新モデルを追加した意図、既存モデルとの差異はどこにあるのか。同社プロダクトマネージャー、マイケル・ジョーンズ氏のコメントを交えつつ、紹介していこう。
ユーザーの声に応えて装着感を向上
SHURE
SRH940/¥OPEN
まず外観はブラックを基調とした既存モデルに対して、SRH940はシルバーを基調としている。耳を覆うイヤーカップの形状も、真円に近い形状から楕円に変更された。
「SRH940はプレミアムヘッドホンという位置付け。それに見あう注目も集めたいと考え、新しいデザインを施しました」。 といっても、デザイン先行で機能性は考慮されていないということではない。ジョーンズ氏はこう続ける。
「軽量化と装着感の向上も実現しています。これはSRH840ユーザーからの要望に応えたものです」。 実際に重量は軽くなっており、装着感も大きく改善されている。ヘッドバンドに追加されたクッション、ベロア素材で肌触りをよくしたイヤーパッドの効果も大きい。
しかし核心はやはりサウンドだ。まず印象的なのは、帯域バランスのフラットさと低域の感触だ。SRH840はモニターヘッドホンとしては異例の、ふくよかに充実した低音が特徴的だった。対してSRH940の低域はぐっとタイトでスピーディ。鍛え上げられ削ぎ落とされた低音という印象だ。
「SRH840の温かみのある低域も好評です。しかしSRH940ではより色づけの少ない低域を採用しました。低域のボリューム感を抑えることで、高域の情報量も増加しています。このような正確なサウンドを好むリスナーも多いでしょう」。
高域側は、たとえばシンバルやピアノの強打、エレクトリックギターのコードカッティングなどに顕著だが、金属的な硬質さや鋭さを引き出しながらも、実になめらかな感触だ。磨きあげられて艶のある、抜けのよい高域である。そのことが空間全体の開放感も生み出している。「音を鈍くしたり耳障りにしたりせず、高域側の伸びを実現することは、開発の目的のひとつでした。高域側が伸びるほど、より”オープンな”サウンドステージになるからです」。
技術的には、高密度マイラー素材と溝を設けた形状で強度を上げて歪みの最小化を図った振動板などによって、この感触を実現しているとのことだ。イヤーパッドの素材には、すべての密閉型ヘッドホンが持っている共振ピークを抑えるダンピングクロスを採用しているという。
このようにSRH940は、SRH840の単純な上位モデルというよりは、SRH840とは異なる音調を意図して与えられた新モデルといえる。ヘッドホンファンとしては、様々な選択肢が用意されることは嬉しい。シュアの幅広いラインナップから、ご自身の好みにあうモデルを見つけてほしい。
SHURE<シュア> ブランド紹介
世界有数の歴史と実績を持つプロオーディオブランド。特にマイクロフォン分野では、伝説的なレコーディングやライブ、アメリカ歴代大統領の演説に同社製品が使用されている。とはいえプロ向け高級ブランドというわけではなく、同社のマイクは多くのアマチュアミュージシャンにもおなじみだ。マイク関連では、ライブイベントには欠かせないワイヤレス伝送システムも同社の得意とするところである。
イヤホン・ヘッドホンへの進出のきっかけは、ミュージシャンがステージ上で他のメンバーや自分の音を明瞭に確認できるように開発された、インイヤーモニターだ。プロ用途に向けた製品であったが、ポータブルオーディオの流行と重なり、いわゆるカナル型イヤホンの先駆けとしてオーディオファンに迎え入れられた。その好評を受けて一般リスナーに向けたシリーズも展開。近年ではヘッドホンにも参入し、オーディオファンにもおなじみのブランドとなっている。
【SRH940 SPECIFICATIONS】
●型式:密閉ダイナミック型 ●ドライバー口径:40mm ●感度(1kHz):100 dB SPL/mW ●再生周波数帯域:5Hz〜30kHz ●最大許容入力(1kHz):1000mW ●インピーダンス(1kHz):42Ω ●入力コネクター:金メッキ3.5mmステレオ・ミニプラグ 金メッキ6.3mm標準プラグアダプター ●ケーブル:カール→3m(着脱式、OFC) ストレート→2.5m(着脱式、OFC) ●質量(ケーブル除く):約320g
【問い合わせ先】
完実電気(株)
TEL/03-5821-1321
◆高橋 敦 プロフィール
デジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。