公開日 2012/05/18 10:45

ドルビー、BDを高音質化する「ドルビーTrueHDアドバンスド96kHzアップサンプリング」を発表 − 大橋伸太郎が現地レポート

ハード買い替え無しでBDの音質を向上
5月14日と15日の二日間、ドルビー・ラビラトリーズはサンフランシスコの本社に内外のジャーナリストを招き、“FIDELITY FORUM2.0"を開催した。そこで体験したドルビーの新提案を二回に渡りレポートしよう。

サンフランシスコ市POTRERO通り100番地のドルビー・ラボラトリーズ本社。アメリカに本拠を構えて以来不動のドルビーのシンボルはレンガ造りの風格ある建物だ

1Fロビー。いかにもアメリカの伝統ある会社らしく内装は木材を多用しシックで落ち着いている

BDの音質を一変させる
ドルビーの実用的で深い新提案


ドルビー3D、ドルビーアトモス、e-onkyoがドルビーTrueHDサラウンドでの音楽配信開始と、映像と音響の両面で積極的な攻勢が続く最近のドルビー。劇場音響とデジタルサラウンドの概念を覆す画期的技術、ドルビーアトモスへの期待を膨らませて現地入りしたのだが、とんでもない隠し玉があった。“ドルビーTrueHDアドバンスド96kHzアップサンプリング"である。

TrueHDをプラットホームにしたこの新技術は、あくまでコンテンツプロバイダー(BDの製作会社)への提案であって、エンドユーザーに再生システムの買い替えを求めるものではなく、その意味で一見地味なのだが、BDの音を大幅に向上させるポテンシャルを秘めている。それでは技術のアウトラインから紹介しよう。

“ドルビーTrueHDアドバンスド96kHzアップサンプリング"を一口で要約すれば、現在48kHzのサンプリング周波数で行われているBD-ROMのドルビーTrueHDのエンコード処理の前にマスターを96kHzにアップサンプリングし、その際マスターの制作工程で発生したノイズを除去して、96kでエンコード処理するというものだ。これにより、BD-ROMを再生したBDプレーヤー(レコーダー)は96kHz/24bitのデジタルビットストリームをHDMI経由でAVアンプに出力する。

アドバンスド96kアップサンプリングの概念図。コンテンツ制作の上流で発生する歪みとノイズを抑止することが目的

ドルビーがBDの登場を機に初めて実用化したロスレス音声は、PCMの半分のビットレートで同等の品質を達成し、マスターのデジタル音声をそっくりパッケージメディアに収めた点で画期的であった。しかし、映画作品についてはサンプリング周波数ついてのみ言えば、48kHzである点は従来のDVDと同様であった。

映画作品が48kHzでエンコードされるのはあくまで実用上の理由に基づく。デジタルシネマ、DVDから北米のデジタル放送の音声(ドルビーデジタルを採用)まですべて48kHzなので、映像製作のポストプロダクションの設備が48kHzベースであるためである。

ロスレスはマスターデータと完全に一致するので、ロスレスの音質改善ということは原理的にできない。だが、48kHzの制作工程に由来して起きるマスター内に存在するノイズを除去できれば、結果的にロスレスの音質をさらに改善することができる。それが今回のドルビーTrueHDアドバンスド96kHzアップサンプリングだ。

次ページプリリンギングが音を汚していた

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