公開日 2014/06/02 12:00
AKG「K812」レビュー − ひと聴きで心を射貫かれる卓越したサウンド
一聴したとたん、やられたと思った。これはもう、手に入れるしかない。試聴を開始してから僅か5分ほどの時間でそんな決意に至った製品が、何を隠そう、このAKG「K812」だ。
仕事柄、年間にすると300機種ほどのイヤホン/ヘッドホンを聴かせてもらっていることもあって、音の良い製品や、音色傾向的に好みのヘッドホンには数多く出会うこととなる。その都度「おまえはいくつヘッドホンを所有するつもりなんだ」とか「これ以上手に入れても置く場所がないぞ」などと自分を戒めることで“買いたい病”を必死に押さえ込んでいるのだが、そんな矢先に「K812」と出会ってしまったのだ。
何故そこまで「K812」に魅力を感じるのか。もちろん、筆者がAKGサウンドのファンであり、すでに「Q701」や「K702」などいくつかのAKGヘッドホン/イヤホンを所有していることは無視できない。しかしながら、これは自分自身としても意外だったのだが、「K812」をいちばんに“欲しい”と思った理由は“音色”的な好みではなく、あくまでも“音質”だったことだ。そう、「K812」は格別のサウンドクオリティを持ち合わせているのだ。
では、具体的にどんな“いい音”なのだろう。端的にいうと、とても上質で、とても音数が多い、というのが「K812」の特徴だ。これまでもAKGヘッドホンは、「Q701」や「K702」がそうであるように、解像度感が高くフレッシュなイメージのサウンドキャラクターを持ち、同時に、開放型ハウジングによってヘッドホンとは思えないほどの自然で広大な音場的広がり感を持ち合わせていた。それに対して「K812」は、「K701シリーズ」の基本アイデンティティを受け継ぎつつも、AKG最大サイズとなる53mm口径ドライバーや1.5テスラの強磁力マグネット、カッパーコーティングされたアルミニウム製ボイスコイル、さらにダイヤフラムの中心部にエアフロー・ドーム構造を設けて空気の流れを制御するなど、全くのブランニューテクノロジーをいくつも投入。これまででにない極上のサウンドクオリティを実現している。
実際に試聴してみると、そういった音質にかける意気込みが、はっきりと感じられる。たとえばジャズライブのハイレゾ音源を聴くと、演奏の細やかなニュアンスまでしっかり伝わってくるうえ、各楽器のセパレーションも良好なため、まるでライブハウスの最前列にいるかのよう。ステージの様子が隅々まで伝わってくるのだ。なかでもヴォーカルのニュアンス表現が絶妙で、ややハスキーで高域が鋭く立ち上がるAKGらしい音色特性はそのままに、のどの震えや唇の湿り気まで伝わってきそうな、とてつもないリアリティを持った歌声を堪能することができる。しかも、耳をそばだてて、音に集中したことでそういった細部のニュアンスが体感できるのではなく、リラックスした状態で漠然と聴いても、音のほうが勝手に耳の方へと飛び込んでくるかのような、格段のハイクオリティさ、印象の強さを持ち合わせているのだ。おかげで、ヘッドホンアンプやプレーヤーなど、接続したオーディオ機器の特徴が手に取るように把握できる。
こういったクオリティの高さ、情報量の多さは、ヘッドホン好きというよりも、オーディオライターとしてとても重宝する。製品のサウンドチェックには欠かせない存在となってくれそうだ。ちなみに、「K812」はもともとプロユースを前提としたモニターヘッドホン(のフラグシップモデル)というポジショニングが為されており、そういったキャラクターも大いに頷ける。これを使えば、いままで見逃してきた微細な音までしっかり捉えることができるはず。スタジオモニターとしても、大いに重宝してくれそうだ。
そういった“解像度&分解能絶対主義”のモニターライクなヘッドホンでありながら、ヴォーカルが活き活きとしていたり、自然な広がり感のあるサウンドフィールドがとても心地よかったりと、AKGならではのサウンドキャラクターもしっかり持ち合わせており、のびのびとした、それでいて粘りのある歌声や、響きの美しい印象的な音色を披露する楽器の演奏など、リスニング用としても充分に楽しむことができる素養も持ち合わせている。このクオリティの高さには、もう脱帽するしかない。というわけで、筆者としても、試聴後すぐに購入を決意するに至ったのだ。
さて、ずいぶんと個人的な思い込みを長々と語らせてもらったが、実際にこの音を聴けば、多くの人が「K812」の格別なサウンドに引き込まれ、冷静さを失ってしまうことだろう。そう言い切れるくらい「K812」のサウンドは上質で、かつ魅力的だ。運良く筆者は手に入れることができ、喜びに満ちた日々を送っているが、皆さんの手元にもいつかは置いて欲しい、素晴らしいモデルだ。
ちなみに、独特の立体構造デザインを採用し、表皮には吸湿性と保湿性にすぐれた「プロテインレザー」、その内部に低反発ウレタンを組み合わせたイヤーパッドは、音質を確保するとともに、装着感もかなり良好。フィット感と締め付け強度のバランスが格段向上したヘッドバンドとともに、長時間の使用も充分に快適な仕様となっている。そういった、総合的な完成度の高さも「K812」の魅力といえるだろう。
仕事柄、年間にすると300機種ほどのイヤホン/ヘッドホンを聴かせてもらっていることもあって、音の良い製品や、音色傾向的に好みのヘッドホンには数多く出会うこととなる。その都度「おまえはいくつヘッドホンを所有するつもりなんだ」とか「これ以上手に入れても置く場所がないぞ」などと自分を戒めることで“買いたい病”を必死に押さえ込んでいるのだが、そんな矢先に「K812」と出会ってしまったのだ。
何故そこまで「K812」に魅力を感じるのか。もちろん、筆者がAKGサウンドのファンであり、すでに「Q701」や「K702」などいくつかのAKGヘッドホン/イヤホンを所有していることは無視できない。しかしながら、これは自分自身としても意外だったのだが、「K812」をいちばんに“欲しい”と思った理由は“音色”的な好みではなく、あくまでも“音質”だったことだ。そう、「K812」は格別のサウンドクオリティを持ち合わせているのだ。
では、具体的にどんな“いい音”なのだろう。端的にいうと、とても上質で、とても音数が多い、というのが「K812」の特徴だ。これまでもAKGヘッドホンは、「Q701」や「K702」がそうであるように、解像度感が高くフレッシュなイメージのサウンドキャラクターを持ち、同時に、開放型ハウジングによってヘッドホンとは思えないほどの自然で広大な音場的広がり感を持ち合わせていた。それに対して「K812」は、「K701シリーズ」の基本アイデンティティを受け継ぎつつも、AKG最大サイズとなる53mm口径ドライバーや1.5テスラの強磁力マグネット、カッパーコーティングされたアルミニウム製ボイスコイル、さらにダイヤフラムの中心部にエアフロー・ドーム構造を設けて空気の流れを制御するなど、全くのブランニューテクノロジーをいくつも投入。これまででにない極上のサウンドクオリティを実現している。
実際に試聴してみると、そういった音質にかける意気込みが、はっきりと感じられる。たとえばジャズライブのハイレゾ音源を聴くと、演奏の細やかなニュアンスまでしっかり伝わってくるうえ、各楽器のセパレーションも良好なため、まるでライブハウスの最前列にいるかのよう。ステージの様子が隅々まで伝わってくるのだ。なかでもヴォーカルのニュアンス表現が絶妙で、ややハスキーで高域が鋭く立ち上がるAKGらしい音色特性はそのままに、のどの震えや唇の湿り気まで伝わってきそうな、とてつもないリアリティを持った歌声を堪能することができる。しかも、耳をそばだてて、音に集中したことでそういった細部のニュアンスが体感できるのではなく、リラックスした状態で漠然と聴いても、音のほうが勝手に耳の方へと飛び込んでくるかのような、格段のハイクオリティさ、印象の強さを持ち合わせているのだ。おかげで、ヘッドホンアンプやプレーヤーなど、接続したオーディオ機器の特徴が手に取るように把握できる。
こういったクオリティの高さ、情報量の多さは、ヘッドホン好きというよりも、オーディオライターとしてとても重宝する。製品のサウンドチェックには欠かせない存在となってくれそうだ。ちなみに、「K812」はもともとプロユースを前提としたモニターヘッドホン(のフラグシップモデル)というポジショニングが為されており、そういったキャラクターも大いに頷ける。これを使えば、いままで見逃してきた微細な音までしっかり捉えることができるはず。スタジオモニターとしても、大いに重宝してくれそうだ。
そういった“解像度&分解能絶対主義”のモニターライクなヘッドホンでありながら、ヴォーカルが活き活きとしていたり、自然な広がり感のあるサウンドフィールドがとても心地よかったりと、AKGならではのサウンドキャラクターもしっかり持ち合わせており、のびのびとした、それでいて粘りのある歌声や、響きの美しい印象的な音色を披露する楽器の演奏など、リスニング用としても充分に楽しむことができる素養も持ち合わせている。このクオリティの高さには、もう脱帽するしかない。というわけで、筆者としても、試聴後すぐに購入を決意するに至ったのだ。
さて、ずいぶんと個人的な思い込みを長々と語らせてもらったが、実際にこの音を聴けば、多くの人が「K812」の格別なサウンドに引き込まれ、冷静さを失ってしまうことだろう。そう言い切れるくらい「K812」のサウンドは上質で、かつ魅力的だ。運良く筆者は手に入れることができ、喜びに満ちた日々を送っているが、皆さんの手元にもいつかは置いて欲しい、素晴らしいモデルだ。
ちなみに、独特の立体構造デザインを採用し、表皮には吸湿性と保湿性にすぐれた「プロテインレザー」、その内部に低反発ウレタンを組み合わせたイヤーパッドは、音質を確保するとともに、装着感もかなり良好。フィット感と締め付け強度のバランスが格段向上したヘッドバンドとともに、長時間の使用も充分に快適な仕様となっている。そういった、総合的な完成度の高さも「K812」の魅力といえるだろう。