公開日 2017/02/02 12:09
【レビュー】重低音を強調しつつ音楽を破綻させないイヤホン − JVC「HA-FX99X」を聴く
XXシリーズ初のハイレゾ対応モデル
どんな音楽にもソツなく対応する。または、あれもこれもと、たくさんの機能が盛り込まれている。イヤホンにおいてそれはもちろんアリだろう。ただし、本機JVC「HA-FX99X」のような、ただ一本ぴしゃりと筋の通った製品にも、大いに共感するところである。そこに清々しいまでの作り手の心意気を感じるからだ。
本機のコンセプトは「重低音&タフ」に絞られている。XX(XTREME XPLOSIVES)シリーズとして登場した2モデルの上位機種という位置づけだ。
昨今の音楽シーンを見渡せば、R&BやEDMの例を挙げるまでもなく、図太く深い低音が音楽の形成に大きな役割を果たしている。ゆえに、リスナーのニーズもそれをいかに楽しめるかに要点が置かれているはずだ。
イヤホンを始めとするハードウェアも続々とそのトレンドに歩調を合わせていることは、多くの人が知るところだろう。現に低音再生にフォーカスを当てた製品が続々と登場して久しい。
そんな中にあって、本機もその流れに位置づけられるものではあるが、ひと味違ったサウンドを聴かせてくれた。低音を強調しながら、音楽全体が破綻しない。そんなチューニングのさじ加減の妙、ともいうべきものを感じたのだ。それをまず告白しておこう。
ドライバーはφ11mmのダイナミック型1基。振動板は新開発でドーム型の高剛性カーボンにと軽量かつ高剛性を誇るPEN(ポリエチレンナフタレート)素材とを組み合わせたハイブリッドタイプとしている。マグネットにはネオジウムを採用し高レスポンスで駆動する。
そして本機の低音再生に大きく貢献するのが「XTREME TORNADO DUCT(エクストリームトルネードダクト)」という構造。
これはドライバーユニットの背面に渦巻き上のダクトを設け、そこを音が通り抜けるに従って低音を自然なかたちで増幅させるという仕組みである。トルネード状にしたことで小型イヤホンにも収めることができたという。
ハウジングはアルミ削り出しで、ブラックの塗装が施され、精悍な表情を湛えている。サウンドとのマッチングが図られているかのようだ。また、手にしてみるとボディはやや大きめだが、重量バランスが吟味されているようで、装着感は申し分なかった。
先に「チューニングのさじ加減の妙」と書いたが、それはリトルクリーチャーズの『未知のアルバム』(ハイレゾ88.2kHz/24ビット)を本機で聴いた際の感想に基づいている。同作品は2016年、筆者が最も再生したアルバムで、イヤホンはもとより、ハイエンドDACやスピーカーとの組み合わせなど、さまざまなスタイルで楽しんで来た。
生々しいサウンド、彼らの初の試みである全編日本語歌詞、そこか引き出される情緒ある世界。ギター&ボーカル、ベース、ドラムという3ピースながら、なんとも芳醇なサウンドスケープが立ち上がってくる、そんな名盤である。
中でも5曲目「かんちがい」は出色の仕上がりだと思う。まず、ソリッドなエレキギターが切り込んでくるのだが、本機を通すと、その音の芯が太く楽器の実体が感じられる。
次にベースとドラムが加わる。ベースの手数は少ないが、沈み込むようなサウンドが音楽のボトムをしっかりと支えているのがわかる。これがこのイヤホンの真骨頂のひとつだろう。
さらに、スネアドラムはラウドに響き、余韻も淡くならない。繰り返すようだが、3ピースバンドにも関わらず、イントロの時点ですでに濃厚な音場が出現しはじめるのだ。
続いてボーカルが登場。歌い上げることなく、荒れることもないボーカルワークで、声の抑制やためが非常に丁寧に表現される。また、声だけが突出せず、他の楽器とひとつの空間の中で溶け合っているようだ。
中盤ではベースが勢い良く迫り出し、音楽を牽引する。その様子も盛り上がり過ぎず、控えめになり過ぎず、他の楽器との調和が図られている。終盤のエレキギターのリフも低音の響きを余すことなく、丁寧に拾い上げていた。
こうした個々の音色はもちろん、バンドサウンド全体がふわりとした立体感を醸し出していることも聴き逃せない。スタジオライブのように、部屋の隅々にまで満ちてゆく濃厚な響きを堪能できた。少ない音数ながら、腰の据わった密度の高いサウンドが、耳のそばで繰り広げられる。低域がさらに充実したおかげで、昨年のマイベストアルバムが、また違った表情で輝き出した。
本機のコンセプトは「重低音&タフ」に絞られている。XX(XTREME XPLOSIVES)シリーズとして登場した2モデルの上位機種という位置づけだ。
昨今の音楽シーンを見渡せば、R&BやEDMの例を挙げるまでもなく、図太く深い低音が音楽の形成に大きな役割を果たしている。ゆえに、リスナーのニーズもそれをいかに楽しめるかに要点が置かれているはずだ。
イヤホンを始めとするハードウェアも続々とそのトレンドに歩調を合わせていることは、多くの人が知るところだろう。現に低音再生にフォーカスを当てた製品が続々と登場して久しい。
そんな中にあって、本機もその流れに位置づけられるものではあるが、ひと味違ったサウンドを聴かせてくれた。低音を強調しながら、音楽全体が破綻しない。そんなチューニングのさじ加減の妙、ともいうべきものを感じたのだ。それをまず告白しておこう。
ドライバーはφ11mmのダイナミック型1基。振動板は新開発でドーム型の高剛性カーボンにと軽量かつ高剛性を誇るPEN(ポリエチレンナフタレート)素材とを組み合わせたハイブリッドタイプとしている。マグネットにはネオジウムを採用し高レスポンスで駆動する。
そして本機の低音再生に大きく貢献するのが「XTREME TORNADO DUCT(エクストリームトルネードダクト)」という構造。
これはドライバーユニットの背面に渦巻き上のダクトを設け、そこを音が通り抜けるに従って低音を自然なかたちで増幅させるという仕組みである。トルネード状にしたことで小型イヤホンにも収めることができたという。
ハウジングはアルミ削り出しで、ブラックの塗装が施され、精悍な表情を湛えている。サウンドとのマッチングが図られているかのようだ。また、手にしてみるとボディはやや大きめだが、重量バランスが吟味されているようで、装着感は申し分なかった。
先に「チューニングのさじ加減の妙」と書いたが、それはリトルクリーチャーズの『未知のアルバム』(ハイレゾ88.2kHz/24ビット)を本機で聴いた際の感想に基づいている。同作品は2016年、筆者が最も再生したアルバムで、イヤホンはもとより、ハイエンドDACやスピーカーとの組み合わせなど、さまざまなスタイルで楽しんで来た。
生々しいサウンド、彼らの初の試みである全編日本語歌詞、そこか引き出される情緒ある世界。ギター&ボーカル、ベース、ドラムという3ピースながら、なんとも芳醇なサウンドスケープが立ち上がってくる、そんな名盤である。
中でも5曲目「かんちがい」は出色の仕上がりだと思う。まず、ソリッドなエレキギターが切り込んでくるのだが、本機を通すと、その音の芯が太く楽器の実体が感じられる。
次にベースとドラムが加わる。ベースの手数は少ないが、沈み込むようなサウンドが音楽のボトムをしっかりと支えているのがわかる。これがこのイヤホンの真骨頂のひとつだろう。
さらに、スネアドラムはラウドに響き、余韻も淡くならない。繰り返すようだが、3ピースバンドにも関わらず、イントロの時点ですでに濃厚な音場が出現しはじめるのだ。
続いてボーカルが登場。歌い上げることなく、荒れることもないボーカルワークで、声の抑制やためが非常に丁寧に表現される。また、声だけが突出せず、他の楽器とひとつの空間の中で溶け合っているようだ。
中盤ではベースが勢い良く迫り出し、音楽を牽引する。その様子も盛り上がり過ぎず、控えめになり過ぎず、他の楽器との調和が図られている。終盤のエレキギターのリフも低音の響きを余すことなく、丁寧に拾い上げていた。
こうした個々の音色はもちろん、バンドサウンド全体がふわりとした立体感を醸し出していることも聴き逃せない。スタジオライブのように、部屋の隅々にまで満ちてゆく濃厚な響きを堪能できた。少ない音数ながら、腰の据わった密度の高いサウンドが、耳のそばで繰り広げられる。低域がさらに充実したおかげで、昨年のマイベストアルバムが、また違った表情で輝き出した。