公開日 2018/12/01 13:58
圧倒的な高画質にのけぞった! ついに開局した新4K衛星放送、さっそく体験
右旋チャンネルだけなら導入は難しくない
2018年12月1日・午前10時。日本のテレビ放送史に新たな1ページが加わった。高品位な映像・音が家庭でも気軽に楽しめる「新4K8K衛星放送」が始まったのだ。今回は東芝の4K有機ELレグザ「65X920」を用意し、放送開始初日に、圧倒的な新4K放送のクオリティを堪能した。
新4K8K衛星放送は、12月1日時点で17のチャンネルが開局した。そして2019年内以降にはさらに2つのチャンネルが加わることも決まっている。これほど多くの4K放送チャンネルが、無料で視聴できる番組も含めて一斉に開局するのは、他に類を見ない出来事だ。そして8K商用放送は世界初の試みになる。
4K放送の映像は単純に高精細であることにとどまらず、BT.2020による自然で鮮やかな色合い、HDR(HLG)の豊かな階調表現やメリハリの効いたコントラスト感などにも注目したい。
各局が放送を予定する番組スケジュールは既に公式ウェブサイトなどで公開されているが、4K対応テレビなど受信機が手元にあれば、従来の衛星や地デジの放送と同様、EPGから内容を確認できる。
NHKでは開局日の記念プログラムとして南極からの4K生中継を行った。BS朝日、BS-TBS、BSテレ東、BSフジのBS民放4社の共同企画による2夜連続プログラムの「大いなる鉄路 16,000km走破 東京発→パリ行き」にも注目したい。
ほかにも、筆者の好きな黒澤明監督「羅生門」4Kデジタル修復版の上映や、12月31日に予定する紅白歌合戦も見逃せない。なお“紅白”はBS8Kで、22.2chのマルチチャンネル立体音響による放送を予定している。
■新4K衛星放送を見るには何が必要?
4K8K放送を自宅で見るためには、それぞれに対応する機器を用意して環境をつくる必要がある。既に鴻池賢三氏が本誌で詳しく解説されているので、ここではその概略のみざっくりとおさらいしておこう。
新4K8K衛星放送をそのままの高画質で楽しむためにはテレビ(またはモニター)、チューナーなどの受信機器が必要だ。新4K8K放送は衛星から螺旋状の「円偏波」と呼ばれる円を描きながら送信される電波で、地上のアンテナに届く。
従来のBS/110度CS衛星放送も同じ右回りの「右旋円偏波」を用いているので、新4K衛星放送も「右旋」で送られてくる、NHK BS4K、BS朝日 4K、BS-TBS 4K、BSテレ東 4K、BSフジ 4Kの番組は、既存のBSアンテナや屋内配線システムをそのまま使って見られる。2019年12月1日にはBS日テレ 4Kも合流予定だ。
一方で「左旋円偏波」の電波を使う、NHK BS8Kを含む4つのBS左旋放送と110度CS左旋放送の番組を見るためには、専用アンテナの設置や分配器に分波器、ブースターにケーブルなど、屋内受信設備の入れ替えが必要になる場合が多い。集合住宅の場合も条件は同じ。ケーブルテレビやIPテレビ放送を利用する方法についても鴻池氏が先ほど紹介した記事で触れているので参考にしてほしい。
4K放送をネイティブ画質で高品位に楽しむためには、テレビ側がHDMI2.0の4K/60p入力とHDCP2.2の著作権保護技術に対応していることが条件になる。HDCP2.2非対応のHDMI端子だけを搭載している4Kテレビや、フルHD以下のテレビでも4Kチューナーをつなげばダウンコンバートして番組は見られるが、せっかくの4Kチューナーがその実力を発揮できないのはいかにも残念だ。
もしいま、新4K8K放送がスタートするこの機会に、自宅のテレビを大画面・高画質の4Kテレビに買い換え・買い増しする計画があるなら、迷わず4Kチューナー内蔵のテレビを選ぶことをおすすめしたい。
なぜなら4Kチューナーは筐体がスリムでコンパクトな製品も多いとはいえ、テレビラックの棚の中、あるいはテレビの脇などの設置スペースをそれなりに占有してしまうからだ。そして何より、来年以降に各メーカーが発売する4K/8Kテレビは、その多くがチューナー内蔵タイプに切り替わるだろう。ならば先取りして、4Kチューナー内蔵テレビを選ぶことに何のデメリットもないはずだ。
新4K衛星放送は、録画しておけばタイムシフト視聴も楽しめる。だからこそ録画もできる環境、整えておきたい。そこで今回は新4K衛星放送を余すところなく楽しめるテレビのひとつである、東芝の4K有機ELレグザ「65X920」をリファレンスに選んだというわけだ。
4K有機ELレグザ「X920」シリーズの詳しい特徴ついてもニュース記事を参照してもらいたい。新4Kチューナー内蔵については、国内メーカーのテレビとしていち早く対応してきた。おそらく何年か後に日本のテレビ史を振り返った時、そこに名前を刻んでいるモデルだと思う。
新世代の有機ELパネルの実力をフルに引き出す独自開発の映像エンジン「REGZA ENGINE Evolution PRO」は、“差がつく4K高画質” の心臓部。テレビを置いた空間に高精細な映像が浮かび上がっているように見えるほどスリムで存在感を消すほどの狭額縁デザインとしながら、音像を明瞭に定位させて力強く前に押し出してくる総合出力46Wのハイパワーな「有機ELレグザオーディオシステム」も搭載した。BS/CS 4K放送の録画は外付USB-HDDで対応する。
今回は右旋の新4K衛星放送をチェックした。本体に付属するリモコンのトップの場所に堂々と配置された「4K」ボタンを押すと放送局の一覧が表示され、数字ボタンですばやく選局ができる。
■午前10時、いよいよ新4K衛星放送が始まった
12月1日午前10時。各局のカラーバーが、一斉に本放送に切り替わった。はじめにNHKのBS4Kの開局記念番組からチェックしてみた。
番組はアナウンサーによる開局宣言から幕を開けた。何気なくスタジオの様子をとらえる全景映像の空気感が、既にこれまでのHD解像度の放送とはまったく違う。息を呑むほどの臨場感だ。期待のはるか上を行く4K映像のリアリティにたじろいでしまった。
カメラが人物に寄ると、肌の質感や小じわの様子まで鮮明に浮かび上がってくる。髪の毛が数本ハネているだけでも目立って見えてしまう。メイクの出来栄えが肉眼で見るより残酷なほどによくわかる。カメラの前に立つ俳優やアナウンサーには辛い時代が来たものだと同情してしまう。
被写体の輪郭がとてもシャープに描かれるので、手前に立つ人物だけでなく、ステージ奥の舞台装飾までが、きめ細かなディティールが浮かび上がってくる。これからのドラマやバラエティ番組は美術セットの隅々まで手が抜けなくなりそうだ。反対に視聴者としては、映像をチェックする際の見所が増えるので楽しみである。
■民放で同じソースのはずなのに画質差も
記念番組の合間に挟まれた、南極からの生中継も圧巻だった。雪面や氷面、そして空の白が、飛ばずに陰影が繊細に描かれる。まるでVRのような没入感だ。引き寄せられるように、思わず前のめりになりながらテレビの画面をのぞき込んでしまう。REGZAはリアルタイムの映像情報が表示できるのだが、それを見ると、ピーク輝度で1,000nit以上出ている。
カメラの向こう側のひんやりとした空気が肌をピリピリと刺激するような錯覚まで伝わってきた。大画面の4Kテレビで楽しむ紀行番組はテレビの映像体験に革新をもたらすだろう。期待が大いに膨らんだ。
ねぶた祭りや東京上空の空撮映像などの夜景も、4K有機ELレグザとの相性がとても良かった。ドローンによる空撮の場合は、カメラなど機材の性能が画質にまともに反映されてしまうこともあったが、その差まではっきりと映し出すポテンシャルの高さが4K放送の醍醐味でもある。
民放4局が開局と同時に一斉放映していた記念番組は、同じコンテンツだったためチャンネルをザッピングしながら画質を見比べることができた。すると色合いやコントラスト感に、各局ごとの差があった。送信システムの違いが画質に及ぼす影響も少なくないのだろう。4K放送が始まったことで、これから映像の制作現場もますます活況を呈するに違いない。なお民放でもHDR番組の輝度推移を見ていたのだが、こちらもピーク輝度1,000nitを超えるシーンが時おりあった。
少し余談になるが、NHKのBS4Kで12月2日16時半に放送を予定する「ウルトラQ」4K/HDRリマスター版の予告映像にも目を見張った。今から50年以上前に撮影された「ウルトラQ」の35mmフィルムを丁寧にリストアして制作されたリマスター版の映像を見たら、元のフィルムに驚くほど豊かな情報量が収録されていたことがわかった。
放送機器や受像機の技術がボトルネックになっていたため、今まで日の目をみることのなかった真の「ウルトラQ」の世界が、いよいよ明日ベールを脱ぐ。モノクロなのに最新のコンテンツに引けを取らないほどみずみずしいインパクトにあふれる映像だ。本作以外にも、BS4Kが今後のプログラムとして放送を予定する「4Kシアター」など、 “4Kデジタルリマスター” に要注目だ。
今回、新4K放送の船出の瞬間に立ち会い、筆者もすっかりとその魅力に惹きつけられてしまった。新4K放送の視聴環境を整える気持ちが固まった。
新4K8K衛星放送は、12月1日時点で17のチャンネルが開局した。そして2019年内以降にはさらに2つのチャンネルが加わることも決まっている。これほど多くの4K放送チャンネルが、無料で視聴できる番組も含めて一斉に開局するのは、他に類を見ない出来事だ。そして8K商用放送は世界初の試みになる。
4K放送の映像は単純に高精細であることにとどまらず、BT.2020による自然で鮮やかな色合い、HDR(HLG)の豊かな階調表現やメリハリの効いたコントラスト感などにも注目したい。
各局が放送を予定する番組スケジュールは既に公式ウェブサイトなどで公開されているが、4K対応テレビなど受信機が手元にあれば、従来の衛星や地デジの放送と同様、EPGから内容を確認できる。
NHKでは開局日の記念プログラムとして南極からの4K生中継を行った。BS朝日、BS-TBS、BSテレ東、BSフジのBS民放4社の共同企画による2夜連続プログラムの「大いなる鉄路 16,000km走破 東京発→パリ行き」にも注目したい。
ほかにも、筆者の好きな黒澤明監督「羅生門」4Kデジタル修復版の上映や、12月31日に予定する紅白歌合戦も見逃せない。なお“紅白”はBS8Kで、22.2chのマルチチャンネル立体音響による放送を予定している。
■新4K衛星放送を見るには何が必要?
4K8K放送を自宅で見るためには、それぞれに対応する機器を用意して環境をつくる必要がある。既に鴻池賢三氏が本誌で詳しく解説されているので、ここではその概略のみざっくりとおさらいしておこう。
新4K8K衛星放送をそのままの高画質で楽しむためにはテレビ(またはモニター)、チューナーなどの受信機器が必要だ。新4K8K放送は衛星から螺旋状の「円偏波」と呼ばれる円を描きながら送信される電波で、地上のアンテナに届く。
従来のBS/110度CS衛星放送も同じ右回りの「右旋円偏波」を用いているので、新4K衛星放送も「右旋」で送られてくる、NHK BS4K、BS朝日 4K、BS-TBS 4K、BSテレ東 4K、BSフジ 4Kの番組は、既存のBSアンテナや屋内配線システムをそのまま使って見られる。2019年12月1日にはBS日テレ 4Kも合流予定だ。
一方で「左旋円偏波」の電波を使う、NHK BS8Kを含む4つのBS左旋放送と110度CS左旋放送の番組を見るためには、専用アンテナの設置や分配器に分波器、ブースターにケーブルなど、屋内受信設備の入れ替えが必要になる場合が多い。集合住宅の場合も条件は同じ。ケーブルテレビやIPテレビ放送を利用する方法についても鴻池氏が先ほど紹介した記事で触れているので参考にしてほしい。
4K放送をネイティブ画質で高品位に楽しむためには、テレビ側がHDMI2.0の4K/60p入力とHDCP2.2の著作権保護技術に対応していることが条件になる。HDCP2.2非対応のHDMI端子だけを搭載している4Kテレビや、フルHD以下のテレビでも4Kチューナーをつなげばダウンコンバートして番組は見られるが、せっかくの4Kチューナーがその実力を発揮できないのはいかにも残念だ。
もしいま、新4K8K放送がスタートするこの機会に、自宅のテレビを大画面・高画質の4Kテレビに買い換え・買い増しする計画があるなら、迷わず4Kチューナー内蔵のテレビを選ぶことをおすすめしたい。
なぜなら4Kチューナーは筐体がスリムでコンパクトな製品も多いとはいえ、テレビラックの棚の中、あるいはテレビの脇などの設置スペースをそれなりに占有してしまうからだ。そして何より、来年以降に各メーカーが発売する4K/8Kテレビは、その多くがチューナー内蔵タイプに切り替わるだろう。ならば先取りして、4Kチューナー内蔵テレビを選ぶことに何のデメリットもないはずだ。
新4K衛星放送は、録画しておけばタイムシフト視聴も楽しめる。だからこそ録画もできる環境、整えておきたい。そこで今回は新4K衛星放送を余すところなく楽しめるテレビのひとつである、東芝の4K有機ELレグザ「65X920」をリファレンスに選んだというわけだ。
4K有機ELレグザ「X920」シリーズの詳しい特徴ついてもニュース記事を参照してもらいたい。新4Kチューナー内蔵については、国内メーカーのテレビとしていち早く対応してきた。おそらく何年か後に日本のテレビ史を振り返った時、そこに名前を刻んでいるモデルだと思う。
新世代の有機ELパネルの実力をフルに引き出す独自開発の映像エンジン「REGZA ENGINE Evolution PRO」は、“差がつく4K高画質” の心臓部。テレビを置いた空間に高精細な映像が浮かび上がっているように見えるほどスリムで存在感を消すほどの狭額縁デザインとしながら、音像を明瞭に定位させて力強く前に押し出してくる総合出力46Wのハイパワーな「有機ELレグザオーディオシステム」も搭載した。BS/CS 4K放送の録画は外付USB-HDDで対応する。
今回は右旋の新4K衛星放送をチェックした。本体に付属するリモコンのトップの場所に堂々と配置された「4K」ボタンを押すと放送局の一覧が表示され、数字ボタンですばやく選局ができる。
■午前10時、いよいよ新4K衛星放送が始まった
12月1日午前10時。各局のカラーバーが、一斉に本放送に切り替わった。はじめにNHKのBS4Kの開局記念番組からチェックしてみた。
番組はアナウンサーによる開局宣言から幕を開けた。何気なくスタジオの様子をとらえる全景映像の空気感が、既にこれまでのHD解像度の放送とはまったく違う。息を呑むほどの臨場感だ。期待のはるか上を行く4K映像のリアリティにたじろいでしまった。
カメラが人物に寄ると、肌の質感や小じわの様子まで鮮明に浮かび上がってくる。髪の毛が数本ハネているだけでも目立って見えてしまう。メイクの出来栄えが肉眼で見るより残酷なほどによくわかる。カメラの前に立つ俳優やアナウンサーには辛い時代が来たものだと同情してしまう。
被写体の輪郭がとてもシャープに描かれるので、手前に立つ人物だけでなく、ステージ奥の舞台装飾までが、きめ細かなディティールが浮かび上がってくる。これからのドラマやバラエティ番組は美術セットの隅々まで手が抜けなくなりそうだ。反対に視聴者としては、映像をチェックする際の見所が増えるので楽しみである。
■民放で同じソースのはずなのに画質差も
記念番組の合間に挟まれた、南極からの生中継も圧巻だった。雪面や氷面、そして空の白が、飛ばずに陰影が繊細に描かれる。まるでVRのような没入感だ。引き寄せられるように、思わず前のめりになりながらテレビの画面をのぞき込んでしまう。REGZAはリアルタイムの映像情報が表示できるのだが、それを見ると、ピーク輝度で1,000nit以上出ている。
カメラの向こう側のひんやりとした空気が肌をピリピリと刺激するような錯覚まで伝わってきた。大画面の4Kテレビで楽しむ紀行番組はテレビの映像体験に革新をもたらすだろう。期待が大いに膨らんだ。
ねぶた祭りや東京上空の空撮映像などの夜景も、4K有機ELレグザとの相性がとても良かった。ドローンによる空撮の場合は、カメラなど機材の性能が画質にまともに反映されてしまうこともあったが、その差まではっきりと映し出すポテンシャルの高さが4K放送の醍醐味でもある。
民放4局が開局と同時に一斉放映していた記念番組は、同じコンテンツだったためチャンネルをザッピングしながら画質を見比べることができた。すると色合いやコントラスト感に、各局ごとの差があった。送信システムの違いが画質に及ぼす影響も少なくないのだろう。4K放送が始まったことで、これから映像の制作現場もますます活況を呈するに違いない。なお民放でもHDR番組の輝度推移を見ていたのだが、こちらもピーク輝度1,000nitを超えるシーンが時おりあった。
少し余談になるが、NHKのBS4Kで12月2日16時半に放送を予定する「ウルトラQ」4K/HDRリマスター版の予告映像にも目を見張った。今から50年以上前に撮影された「ウルトラQ」の35mmフィルムを丁寧にリストアして制作されたリマスター版の映像を見たら、元のフィルムに驚くほど豊かな情報量が収録されていたことがわかった。
放送機器や受像機の技術がボトルネックになっていたため、今まで日の目をみることのなかった真の「ウルトラQ」の世界が、いよいよ明日ベールを脱ぐ。モノクロなのに最新のコンテンツに引けを取らないほどみずみずしいインパクトにあふれる映像だ。本作以外にも、BS4Kが今後のプログラムとして放送を予定する「4Kシアター」など、 “4Kデジタルリマスター” に要注目だ。
今回、新4K放送の船出の瞬間に立ち会い、筆者もすっかりとその魅力に惹きつけられてしまった。新4K放送の視聴環境を整える気持ちが固まった。