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公開日 2021/12/10 12:00

finalの完全ワイヤレス第1弾「ZE3000」開発秘話。“新定番”になるべく注ぎ込まれたこだわりとは?

【PR】「腹を括って、本気で取り組む」
野村ケンジ
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ついにfinalが完全ワイヤレスイヤホンに本格参入を果たす。「定番ナンバー」を背負った第1弾のスタンダードモデル、ZE3000の秘密に迫るべく、細尾社長にインタビューを敢行した。


いよいよ準備が整った! 音質に妥協しないワイヤレス

過去にエヴァンゲリオンとのコラボモデルという例外はあるものの、基本的にはワイヤレス製品についてはagブランドのコーディネートにとどまっていたfinal。そんな、日本屈指の音質こだわり派オーディオメーカーが、ついに完全ワイヤレスイヤホンをリリースすることとなった。それが「ZE3000」だ。

そもそも、finalブランドで完全ワイヤレスイヤホンを作ろうと決意するまでに、どのようないきさつがあったのだろう。また、ZE3000というネーミングの由来や、製品に隠された技術的な特長とは? 様々な疑問を、finalの細尾社長に投げかけてみた。

取材にご対応くださったfinalの細尾 満社長

「ワイヤレス製品に関して、これまではfinalブランドとしてラインアップするまでのクオリティを確保できていなかったため製品化していなかった、というのが正直なところです。しかし、agの音質監修でノウハウが溜まってきたこと、そして弊社にデジタル信号処理技術のエキスパートが集まったことで、いよいよ腹を括ってワイヤレス製品に取り組める体制が整いました。

finalブランドとして恥ずかしくないサウンドが提供でき、そして今後も作り続けられるという確信が得られたことが、ZE3000のリリースにつながりました。ちなみにZE3000という名前は、皆さまのおかげでベストセラーを続けているE3000と同様に、スタンダードモデルとして多くの人に愛される製品になってほしい、という願いを込めて名づけました」(細尾氏)

スタンダードモデルとなるべく開発されたZE3000は、オーソドックスな機能性ながらイヤホンとしてのこだわりが凝縮されている

実際の製品を目にすると、ZE3000はノイズキャンセリング非搭載でスマホアプリも用意されない、ごくオーソドックスな機能性にとどまりつつも、finalらしいこだわりが随所に見られる製品となっている。

たとえばイヤホン本体は、フェースプレート部だけでなくボディ全体の造形が個性的なシェイプによって仕上げられている。下請けの製造メーカーが用意するデザインのなかから選ぶことの多い、コストパフォーマンス重視の製品とは手間のかかり方が違うことが、かんたんに想像できる。

「イヤホン本体のデザインに関しては、新たに金型を作った完全オリジナル設計です。こだわったのは装着性のよさと質感の高さでしょうか。Aシリーズと同じ、3点支持によって安定感のある優れたフィット感を実現しています。実はもっと小型にすることも可能だったのですが、装着性のよさや取り外しのしやすさなどを考えてこのようなフォルムにしました」(細尾氏)

外観に対する徹底したこだわりは、agブランドでも窺えたが、ZE3000ではさらなる上質さが追求されている。シボ加工による高級感やしっとりとした触り心地には、他にない個性を感じる。

「フェースプレートのデザインはもちろんのこと、手触りのよい質感を追求するため、塗装にもこだわり、何回も塗り重ねています。昔のカメラのように、大切な道具、愛着を持てる道具としてのデザインや質感を追求しました」(細尾氏)

上質でありながら使い勝手がよく、毎日の暮らしに寄り添うデザイン。イヤーチップはfinal独自の「TYPE E 完全ワイヤレス専用仕様」。完全ワイヤレスイヤホンはノズルが短く、耳穴が密閉されていないケースが多いそうで「いつも使っているよりもひとつ大きめサイズのイヤーチップでフィッティングを試してみてほしい」(森氏)とのことだ

■完全ワイヤレスに最適化させたドライバーと音響構造を搭載

もちろん、ZE3000の魅力は外観のみにとどまらない。いや、その中身、サウンドに関する造り込みがいちばんの特長というべきだろう。音質の要であるドライバーとして、「f-Core for Wireless」を新たに開発したほか、キャビネット内部の構造についても、ドライバー前後の空間を最適化した「f-LINK dumping機構」というシステムが採用されている。

「新たにZE3000のために開発したf-Core for Wirelessは、E3000やA3000など有線イヤホンの流れをくむもので、口径も6mmとなっていますが、今回新たにシリコンエッジを採用し、射出成形によって振動板を製造しています。要するに、振動板の固定に接着剤を利用しないドライバーになっているんです。これによって、個体差が格段に少なくなるうえ、音質面でもアドバンテージを持つようになりました」

「また、完全ワイヤレスイヤホンには高い防水性能が求められますので、耳の外側にエア抜きの穴を開けることができません。密閉された筐体の中で、ドライバーが理想的な動きをするためには、ドライバー前後の音響空間における繊細なエアーコントロールが必須となります。f-LINK dumping機構は、新開発ドライバーに最適化した独自の構造を持っていて、これによって音質面でのさらなる向上を果たすことができました」(細尾氏)

独自パーツ、独自機構を持つZE3000だが、aptX Adaptiveコーデックによる48kHz/24bit再生に対応するなど、音質面へのこだわりはデジタル処理に至るまで徹底されている。

「完全ワイヤレスイヤホンはデジタル調整によって音づくりが決まる割合が高いため、PCメーカーなど、ソフト開発が得意なメーカーにアドバンテージがある、というような印象を持つ方もいらっしゃるかもしれません。実際、ハードウェアの設計や開発にノウハウを持つオーディオメーカーは、後塵を拝しているような状況ですが、我々はインテリジェントなハードづくりと、高度なソフト開発が両立してこそ、本当に質のよいオーディオ製品ができあがると信じています」(細尾氏)

心臓部にはクアルコム「QCC3040」を採用しており、aptX Adaptiveコーデックにも対応。IPX4の防滴仕様。防水機能を追求すると、ドンシャリな音になりがちなところをfinal独自の理論に基づく音質ターゲットにチューニングしている

どんな音楽ジャンルにも寄り添う、独自音響理論に基づくサウンド

さて、それでは実際のサウンドを聴いてみよう。一聴してすぐに、完全ワイヤレスイヤホンとしては望外となる質感のよさ、帯域バランスのよさを持ち合わせていることに気がつく。ハードロックはグルーブ感がよいノリノリの、クラシックも壮大なスケール感のサウンドを楽しませてくれる。女性ボーカルはハスキーでもファニーでもなくニュートラルな、存在感のある印象的な歌声を楽しませてくれる。

筆者の個人的な印象としては、サウンドキャラクターはE3000というよりもA3000やA4000に近いかもしれないと感じた。すなわち、聴いていてとても楽しい音だ。ZE3000は低域の量感がどう、高域の伸びがどうといったような基準でチューニングされているわけではなく、音響工学のエキスパートによる理論に基づく音づくりを特長としているというが、確かにその結果として、どんな音楽ジャンルを聴いても満足できるサウンドに仕上げられている。

さて、ZE3000という名前を聞いて気になるのは、今後のバリエーションについてだろう。具体的な話は聞けなかったので、ここからはあくまでも筆者の想像となるが、E3000に対してE2000が存在したように、サウンドキャラクター違いという展開が考えられる。また、今回はノイズキャンセリング機能の搭載もなかったので、上位機種の完全ワイヤレスイヤホン展開も考えられるだろう。まだまだ先の話になるかもしれないが、細尾社長いわく「腹を括って、完全ワイヤレスイヤホンに本気で取り組む」ということなので、シーンに風穴を開ける積極的な展開に期待したい。

いずれにせよ、ZE3000は数多ある完全ワイヤレスイヤホンの中でも音質面で大いに満足できる、そして、装着性や専用ケースの持ち運びのしやすさなどのユーザビリティにおいても高い満足度をもたらす、完成度の高い製品となっている。手元において、存分に音楽を楽しみたい1台だ。


final「ZE3000」
【SPEC】
●通信方式:Bluetooth5.2 ●コーデック:SBC、AAC、aptX、aptX Adaptive ●連続再生時間7時間(ケース込み35時間 ●付属品:イヤーチップ:TYPE E 完全ワイヤレス専用仕様、充電ケーブル



本記事は『プレミアムヘッドホンガイドマガジンVol.17』からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから

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