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公開日 2023/10/04 06:30

妥協なきユニット技術で進化を続けるフォーカル。懐深い音楽再生を実現する「VESTIA」の魅力

【特別企画】CHORAの上位進化版とも言えるサウンド
生形三郎
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スタンダードグレードの進化著しいフォーカルのスピーカー



仏フォーカルから、新たなスピーカーラインナップ「VESTIA」(ヴェスティア)シリーズが登場した。位置づけ的には、すでに生産完了となったエントリーの「CHORA」(コーラ)シリーズと、現行ミドルクラス「ARIA」(アリア)シリーズの中間に位置するもので、今後、下位グレードとして登場する「THEVA」(テイバ)の上位機となるものだ。

FOCAL「VESTIA」シリーズ。外側から「VESTIA N゜2」(330,000円/ペア・税込)、「VESTIA N゜1」(165,000円/ペア・税込)、「VESTIA Center」(99,000円/1台・税込)。仕上げはブラックとダークオークの2種類を用意。またN゜1のスピーカースタンドは「THEVA」と共通モデル(44,000円/ペア・税込)。Centerのスピーカースタンドも「THEVA」と共通で22,000円(税込/1台)

国内では3モデルが導入され、2ウェイブックシェルフの「N゜1」(16.5万円)、3ウェイフロアスタンディングの「N゜2」(33万円)、そして、センタースピーカーの「Center」(9.9万円)が用意されている。フォーカルの新たな中核モデルとなる「VESTIA」シリーズの魅力を早速検証してみよう。

VESTIAシリーズの特徴は大きく2つある。新開発のバックチャンバー付きM字型ドーム「TAM(トゥイーター・アルミニウム/マグネシウムMシェイプド)トゥイーター」と、CHORAシリーズで初採用されたスレートファイバー・コーンを用いた新開発ミッドバス/ウーファーである。

TAMトゥイーターは、フォーカルの顔とも言える逆ドーム型の振動板を採用したもので、M字型に湾曲した独自形状を持つものだ。上位シリーズのトゥイーターに搭載されるIHL(インフィニット・ホーン・ローディング)のような、振動板後方から発せられる不要音波を消音するためのバックチャンバーが与えられ、低歪な再生を追求している。

中央部が凹んだ「M字型」ドームトゥイーターはFOCALの特徴

口径は25mmで、振動板の材質は同社がこれまでベリリウム振動板搭載機より下のグレードで一貫して重用してきたアルミマグネシウム合金が用いられている。TAMトゥイーターは、同社カーオーディオ向けシリーズに先んじて投入されていたもので、ホームオーディオ製品への初搭載にあたり、構造変更やボイスコイルサイズ拡大を施して性能を進化させたという。

ミッドバス/ウーファーユニットには、CHORAシリーズで初採用された炭素繊維布にサーモプラスチックポリマーを含浸成形したスレートファイバー・コーンを使用するとともに、こちらもマグネットの大型化やボイルコイルの改良によってさらなる高音質化を追求。なお、本ユニットは他のスピーカーユニット同様にフォーカル本社隣接の工場内で製作されているとのことだ。

スレートファイバー・コーンを採用したミッドバス

また、フロアスタンディングの「N゜2」は、やや後方に傾斜されたアルミ製ベースが与えられ、設置の安定性増大やスパイク使用による接地面からの振動低減を確保するとともに、傾斜による各ユニット間のタイムアライメント調整が施される仕様となっている。「N゜1」には専用スタンドが用意され、こちらも傾斜によるタイムアライメント調整が適用される。

バスレフポートはCHORAやARIA同様フロントに設置されている。N゜2のみリアにもポートを設置する

明瞭で颯爽とした中高音域とダイナミックな低音表現が融合



今回は、2ウェイブックシェルフの「N゜2」とフロアスタンディングの「N゜1」を試聴したが、両者ともに、フォーカルらしい明瞭で颯爽とした中・高音域の表現と、音抜け良いダイナミックな低音表現が融合したサウンドを確認することができた。まさに、先出の「CHORA」の上位進化版といったイメージである。また、2ウェイブックシェルフと3ウェイフロアスタンディングという両者の形態ならではの持ち味も如実にサウンドに現れていたので、その感触をご紹介していこう。

ラックスマンの試聴室にて「VESTIA」の2機種を検証

まず、ブックシェルフの「N゜2」からだが、本機の魅力はなんといっても聴手に迫るヴォーカル表現にある。歌声は程よい温もりを帯びながらもクリアな描写で、リバーブの輪郭も明瞭だ。どのようなソースでも、音楽の核である歌声が前に出てくる明快な表現が快い。

同様に、ソロピアノやジャズのピアノトリオなどでも、主役となるピアノの音色は程よい温もりがありつつも明朗な輪郭があって存在感が豊かである。低域方向はボリュームがあり張り出しよく迫り、それが声のボトムや温もりある音色を支えている。スピード感や透明感がありながらもナチュラルなレスポンスのスレートファイバー・コーンの魅力や、ARIAなどにも共通する開口の大きなバスレフポートで快活かつ抜けの良いダイナミックな低音を響かせるあたりが本機でもしっかりと継承されていて、実に爽やかで朗らかなのである。

加えて、やはりフォーカルらしい明快で瞭然たる輪郭描写は、M字型の逆ドーム振動板やバックチャンバー消音機構を搭載した新型TAMトゥイーターの賜物なのであろう。

ラックスマンのネットワークトランスポート「NT-07」に、CDプレーヤー「D-03X」をDACとして使用。プリメインアンプには「L-505uXII」を組み合わせている

続いてフロアスタンディングの「N゜2」では、低域の深みが増し、音楽の世界観がグッと広がり、音に包み込まれるような表現を楽しめる。歌声のボトムがふくよかになり、音像もサイズを増して立ち現れる。そのため、より生々しい存在感が楽しめるのだ。音数の多いオーケストラソースでも、再生に余裕が生まれ、各楽器の存在をより繊細に把握させる冷静さや客観性が生み出されている。3ウェイを実現するためのクロスオーバーネットワークによる統制も効いているのか全体的にバランスが良いので、落ち着いて心地よく聴ける仕上がりになっていると感じた。

ブックシェルフらしい迫りくるヴォーカルの訴求力やタイトな音像描写は「N゜1」に分があるが、拡大され深みを増した「N゜2」の低域再現は音楽の説得力を増しながらも、「N゜1」同様に決して重たくならない快活さがキープされており、フォーカルならではの颯爽さがある。まさに、両者は根幹の魅力は共通としながらも、それぞれの得意分野がきちんと立っている印象であった。

VESTIA N゜1の背面端子。シングルワイヤ仕様となっている(N゜2も同じ)



以上のように「VESTIA」シリーズは、まさにCHORAの上位進化版とも言えるサウンドが堪能できるモデルだ。

ブックシェルフの「N゜1」は、2ウェイらしい鮮度感や音離れの良い立体感が楽しめるとともに、ヴォーカルが聴き手に迫る魅力が白眉であり、VESTIAの核心を純度高く楽しめるものである。

一方でフロアスタンディングの「N゜2」は、ローエンドの下支えが拡大することによる音楽のスケール感の増大が魅力だ。ソースの分解能が上がり、より客観的に音楽全体を俯瞰することができる。ユニット数が増え各帯域をより余裕を持って再生でき、音楽が懐深く再現されるのである。

両者ともに音楽ジャンルを選ばないオールラウンドな再生能力があるが、ロックやポップスなどでヴォーカルソースをメインに聴く場合は「N゜1」が、クラシックのオーケストラソースを始めとする情報量の多いソースをメインに聴く場合には「N゜2」が特にマッチすると筆者は体感した。

VESTIAシリーズは、間違いなくこの価格帯における最注目スピーカーのひとつと言えるだろう。

(提供:ラックスマン)

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