公開日 2023/11/28 06:35
剛と静の絶妙な融合。アンダンテラルゴのオーディオラック「リジッド・シリーズ」の核心に迫る
【特別企画】10年以上のロングセラーの秘密
“軽量・堅牢・コンパクト・制振”を徹底追求して具現化させたアンダンテラルゴのラック「リジッド・シリーズ」。2007年の誕生以来、ロングセラーを続けているその理由に、井上千岳氏が迫る。
リジッド・シリーズはアンダンデラルゴの代表的なラックで、10年以上のロングセラーである。いまさらと言われそうだが自分なりにその作りの秘訣、核心となるものを探ってみたい。
アンダンテラルゴでは「ゴムや空気その他のサスペンションは使わない」ことをポリシーにしているそうだ。土台が揺らぎ、支点が不明瞭になるというのがその理由である。それは確かにその通りだが、しかし一方でオーディオアクセサリーの役割は、振動を排除することである。サスペンションを排除しながらそこをどう処理しているのか、それがリジッド・シリーズのポイントと言えるのではないか。
リジッド・シリーズはその名のとおり確かに堅牢・高剛性だが、実はそれだけではない。その点を少し詳しく見てみたい。
まずフレームはチタンパイプである。軽量・高強度で非磁性。しかしそれだけなら当然鳴く。そこで内壁には、二重のシリコンコーティングを施して共鳴を抑えている。またコーティングの上に金属製のキャンセルボールを置き、パイプとの共振を打ち消す仕組みである。さらに内部にはオーストラリア産羊毛を充填して、空洞の共振を排除する。一般には入手しづらい特殊なものだそうだ。
このパイプ材を組み合わせるのは、アルミダイキャスト製のコーナージョイントである。応力のかかり方を綿密に研究したうえで、精密切削によって仕上げられている。軽量で強度の高い結合が可能である。
棚板を支えるブラケットは、ジュラルミンA7075の削り出しである。アルミ合金でも最も硬度の高い材質で、これも精密切削によって仕上げている。そして注目すべきなのが、このブラケットやジョイントとパイプとの結合方法だ。
一般には溶接やネジ止めなどで接合するが、溶接は熱による膨張・収縮が冷めたときに歪みの元になる。またネジ止めは強度の差が出やすいし、経年変化も大きい。そこでリジッド・シリーズではレーシングカーで使われ始めたという高強度な接着材で接合を確保しているという。
もうひとつ組み立て時の精度にも触れておきたい。これには専用の治具が幾つも用意され、全て社内で行われる。例えば棚板のスパイクは1000個の中から0.01mmの精度で各段4個のマッチングを取って使用する。あるいはブラケットの向きもそれぞれが絶対にずれないよう厳密な方法で調整している。
こうして水平や高さ、向きなどすべてを完全に整えるわけだが、最後はもう一度手作業で入念な仕上げを行ってさらに厳密な精度を出すのである。
棚板にも特徴がある。13層から成る特殊な積層合板だが、これだけでも強度は高い。しかしその共振をさらに排除するため、中央部に不規則な形状の穴を開けている。よく見ると上下左右いずれも同一ではなく、この非対称性によって振動が吸収されるのだという。試しに合板そのままと穴を開けた状態で叩いてみると、振動の残り方が極めて少なくなる。これとスパイクとの組み合わせで、機器の振動は目に見えて減衰するわけである。
こうして各部を細かく検討してくると、リジッド・シリーズの核心が見えてくるように思う。構造体としては少しの歪みや揺らぎもない剛体。逆に部材は徹底した共振抑制。さらに機能としてはスパイクによる振動制御。この3つの組み合わせがその秘訣なのだ。単に剛体としたのではなく、周到で高精度な制振設計と言わなければならない。剛と静の実に絶妙な融合である。
ネットワークプレーヤーの本体と電源部を、別々に他のリジッドと他社のラックに乗せてじっくりと聴き比べてみた。結果は思った以上のもので、リジッドでは背景や周囲が静かになるだけでなく、音の輪郭と肉質感が豊かになって実体感が高まるのだ。ことに低域の線の太さや充実感、高域の伸びやかさなど様々な違いが明らかになる。電源部だけでも同じように変化するのが不思議なほどだ。
最後は完成度の高さがものを言う。リジッドのそれは、もう手を加える余地がないようにさえ感じられるのである。
(提供:アンダンテラルゴ)
本記事は『季刊・アナログ vol.80』からの転載です
堅牢・高剛性に加えて徹底した共振・振動抑制
リジッド・シリーズはアンダンデラルゴの代表的なラックで、10年以上のロングセラーである。いまさらと言われそうだが自分なりにその作りの秘訣、核心となるものを探ってみたい。
アンダンテラルゴでは「ゴムや空気その他のサスペンションは使わない」ことをポリシーにしているそうだ。土台が揺らぎ、支点が不明瞭になるというのがその理由である。それは確かにその通りだが、しかし一方でオーディオアクセサリーの役割は、振動を排除することである。サスペンションを排除しながらそこをどう処理しているのか、それがリジッド・シリーズのポイントと言えるのではないか。
リジッド・シリーズはその名のとおり確かに堅牢・高剛性だが、実はそれだけではない。その点を少し詳しく見てみたい。
まずフレームはチタンパイプである。軽量・高強度で非磁性。しかしそれだけなら当然鳴く。そこで内壁には、二重のシリコンコーティングを施して共鳴を抑えている。またコーティングの上に金属製のキャンセルボールを置き、パイプとの共振を打ち消す仕組みである。さらに内部にはオーストラリア産羊毛を充填して、空洞の共振を排除する。一般には入手しづらい特殊なものだそうだ。
このパイプ材を組み合わせるのは、アルミダイキャスト製のコーナージョイントである。応力のかかり方を綿密に研究したうえで、精密切削によって仕上げられている。軽量で強度の高い結合が可能である。
棚板を支えるブラケットは、ジュラルミンA7075の削り出しである。アルミ合金でも最も硬度の高い材質で、これも精密切削によって仕上げている。そして注目すべきなのが、このブラケットやジョイントとパイプとの結合方法だ。
一般には溶接やネジ止めなどで接合するが、溶接は熱による膨張・収縮が冷めたときに歪みの元になる。またネジ止めは強度の差が出やすいし、経年変化も大きい。そこでリジッド・シリーズではレーシングカーで使われ始めたという高強度な接着材で接合を確保しているという。
入念な最終仕上げにより厳密な精度を生み出す
もうひとつ組み立て時の精度にも触れておきたい。これには専用の治具が幾つも用意され、全て社内で行われる。例えば棚板のスパイクは1000個の中から0.01mmの精度で各段4個のマッチングを取って使用する。あるいはブラケットの向きもそれぞれが絶対にずれないよう厳密な方法で調整している。
こうして水平や高さ、向きなどすべてを完全に整えるわけだが、最後はもう一度手作業で入念な仕上げを行ってさらに厳密な精度を出すのである。
棚板にも特徴がある。13層から成る特殊な積層合板だが、これだけでも強度は高い。しかしその共振をさらに排除するため、中央部に不規則な形状の穴を開けている。よく見ると上下左右いずれも同一ではなく、この非対称性によって振動が吸収されるのだという。試しに合板そのままと穴を開けた状態で叩いてみると、振動の残り方が極めて少なくなる。これとスパイクとの組み合わせで、機器の振動は目に見えて減衰するわけである。
こうして各部を細かく検討してくると、リジッド・シリーズの核心が見えてくるように思う。構造体としては少しの歪みや揺らぎもない剛体。逆に部材は徹底した共振抑制。さらに機能としてはスパイクによる振動制御。この3つの組み合わせがその秘訣なのだ。単に剛体としたのではなく、周到で高精度な制振設計と言わなければならない。剛と静の実に絶妙な融合である。
輪郭と実体感が高まる完成度の高さを実感
ネットワークプレーヤーの本体と電源部を、別々に他のリジッドと他社のラックに乗せてじっくりと聴き比べてみた。結果は思った以上のもので、リジッドでは背景や周囲が静かになるだけでなく、音の輪郭と肉質感が豊かになって実体感が高まるのだ。ことに低域の線の太さや充実感、高域の伸びやかさなど様々な違いが明らかになる。電源部だけでも同じように変化するのが不思議なほどだ。
最後は完成度の高さがものを言う。リジッドのそれは、もう手を加える余地がないようにさえ感じられるのである。
(提供:アンダンテラルゴ)
本記事は『季刊・アナログ vol.80』からの転載です