PR 公開日 2024/02/13 06:25
ノラ・ジョーンズのこの音が聴きたかった!”音楽情報を忠実に再現する”TAD・Evolutionシリーズを評論家宅で徹底試聴
基本に忠実かつストレートな設計を追求
日本が世界に誇るハイエンドオーディオブランド、TAD。パイオニアの高級オーディオブランドとして誕生し、「音像と音場の高度な両立」をテーマに培ってきた音質技術は、世界的にも高い評価を獲得している。今回は、同社が“革新的な技術を投入する”と語るEvolutionシリーズのフルラインナップを土方久明氏が自宅にて試聴。土方氏も“正確な音”と絶賛するそのサウンドの真髄について語ってもらった。
2023年2月に名古屋の国際展示場で行われた「オーディオフェスタ・イン・ナゴヤ」。僕は講演するイベントの合間をぬってテクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ=TADのブースに立ち寄った。美しくディスプレイされた同社のオーディオ機器の横で、技術者・沼崎氏の解説に熱心なオーディオファイルが耳を傾けている。
最近のTADは、70年代〜90年代のエクスクルーシブシリーズの時代を知るベテランに加えて、近年オーディオの楽しみを知った若手ユーザーまで幅広い年齢層から評価が高く、それを象徴する光景に感心していると、沼崎氏がある音源を再生した。
それはノラ・ジョーンズのファーストアルバム『Come Away With Me』トラック1の「Don't Know Why[Remastered 2022]」だった。その音が出た瞬間、僕は驚嘆した。帯域バランス、ボーカルの質感、楽器のディテールまで、僕が考える“正確な音”と完全に一致していたからだ。
このリマスター音源について、僕は以前から念入りに音質を研究してきた。詳しくはe-onkyo musicのサイトにも記載しているのでそちらも参照してほしいが、オリジナルでマスタリングを担当したテッド・ジェンセンが改めて音を仕上げたため、劇的に音色が変わったわけではない。だが、波形解析からも見えてきたこのリマスター音源の特徴は、音圧が少し上がっていること、楽器の質感が向上し、サウンドステージ、特に高さ方向の表現が上がっていることなどに大きな特徴がある。安易に音圧を上げたりドンシャリ傾向にするのではない、まさに正統派の進化を遂げたリマスターと言えるだろう。
TADは、パイオニアの高級オーディオブランドとして、1975年からスタートした。世界市場で通用するプロフェッショナル用スピーカーの開発を源流としたブランドで、2024年の現在に至るまで、彼らの製品は「ソースに忠実な解釈をとること」が基本となっている。
TADのブランド背景を考えれば、リマスターされた「Come Away With Me」の正確な再現力にも深く納得がいく。そして、「もし自宅でTADを鳴らしたらどんな音がするのだろうか?」と興味を持ったことから、今回レポートする「Evolutionシリーズ」のフルシステム試聴が実現したのだ。
改めて現在のTADのシリーズを説明したい。2024年現在、TADは上位からReferenceシリーズ、Evolutionシリーズの2シリーズを揃える。いずれのシリーズも、SACDプレーヤー、プリアンプ、パワーアンプ、スピーカーと一通り揃っている。エレクトロニクスからスピーカーまで、音の上流から下流まですべて自社で完結できるブランドは、世界的にみてもあまり多くない。
Evolutionシリーズは、「アーティストの想いをあるがままに甦らせる」というTADのコンセプトを継承し、Referenceクラスで開発された技術や新規開発の技術も投入するコストパフォーマンスに優れたシリーズだ。
自宅に設置されたモデルは以下の通り。SACDプレーヤー「TAD-D1000TX」、プリアンプ「TAD-C1000」、パワーアンプ「TAD-M1000」、スピーカーはブックシェルフモデルの「TAD-CE1TX」である。2023年の名古屋オーディオショウの時点では、プリアンプ「TAD-C1000」はまだ発表されていなかったため、今回フルシリーズが出揃っての試聴となった(ちなみに今回は登場していないが、同一デザインで単体DAコンバーター「TAD-DA1000TX」もラインナップする)。
それにしても、なんと壮観な風景だろう。アルミパネルを高いビルドクオリティで組み上げた堂々たるシャーシデザインには、ハイエンドモデルとしての風格がある。オーディオファイルの心をくすぐるデザインで、今回のように組み合わせた際の統一感は、TADのオーディオコンポーネントが持つひとつの魅力だ。
SACD/CDプレーヤーの「TAD-D1000TX」は、8mm厚の無垢材アルミニウムシャーシに重量のあるパーツを集中的に下底部に配置することで、低重心化が施されている。ディスクドライブは読み取り時のサーボ系へ与える外部振動の影響を抑えるなど、ディスクプレーヤーとして徹底した振動対策が施されている。
プリアンプ「TAD-C1000」は、質実剛健の音質対策が施されていることが大きな魅力。Referenceシリーズで開発した1段増幅電流帰還型アンプ回路を、プリアンプ用に新開発して搭載し、超高精度の特性と低歪率を実現。ラダー抵抗切替型電子ボリュームを搭載した上で、左右チャンネルの増幅誤差を極限まで抑えるため、シャーシのセンターから対称とした回路パターンに部品配置を設定した。電源回路も充実しており、オーディオ用と制御用が別々で、それぞれ専用の大型トロイダルトランスを用いたうえ、オーディオ用には左右独立巻き線のトランスを採用し、正負左右の両面で完全な対称性を持つ。
パワーアンプ「TAD-M1000」はスピーカーを正確にドライブするというコンセプトの下に、回路方式から構造面まで対称性を追求している。出力は500W(4Ω)とハイパワー。入力段から出力段までL/R完全独立、そして左右の各アンプは2台のアンプをバランス接続したBTL(バランスアンプ)方式で駆動されるほか、電源回路/トランスさえL/R独立と正・負も完全対称で動作する。
「TAD-CE1TX」は、2014年発売の「TAD-CE1」の後継機となる3ウェイタイプのブックシェルフスピーカー。大きな目玉は、中高域の広帯域で指向性をコントロールできる独自の同軸ユニット「CSTドライバー」の搭載だ。トゥイーターは軽量で剛性に優れたベリリウム素材で、コンピューター解析に形状設計され、100kHzまでの周波数特性をカバーする。ミッドレンジには新開発のマグネシウム振動板を採用。ウーファーはセンターキャップとコーンを一体化した1ピースの振動板「MACS II」を搭載する。
上述の要素から読み解けることは、TADのアンプとソース機器については、複雑な回路等を強調するのではなく、振動対策、高品位なパーツの投入、電源部へのこだわり、そして何よりも正負左右対称を徹底していることで、基本に忠実かつストレートな設計を施していることだ。
そしてスピーカーについては、低域は正確なピストンモーションを狙い、中音域から高音域は同軸ユニットを搭載することで音像表現とサウンドステージ表現の両立を狙っている。まさに僕たちがオーディオ再生で狙っている要素を実直に達成しようとする思想が現れる。
そしてその結果が、自宅試聴室に響きわたる!
まず結論から話したい。今まで自宅の試聴室で感じたことのないほどソースに忠実な帯域バランス、そして異様なほどシャープで立体感のあるサウンドステージが再現されたのだ。
まずは基本となるディスク再生から。上原ひろみのSACD「シルヴァー・ライニング・スイート」をTAD-D1000TXのトレイに乗せて再生ボタンを押す。その瞬間、アキュレートでフォーカスの整った超分解能が高いサウンドが眼前に現れる。ピアノ+弦楽四重奏という編成で混濁しやすい音源だが、ピアノのフォーカスがピシッとステージ上に定位。
一聴してS/Nが良く、超高分解能を感じる音だが、それ以上にピアノ、2本のヴァイオリン、ビオラ、チェロという帯域バランスの違う生楽器がアンサンブルで音を出しても、それらが混濁しないことに感心する。ソース機器、プリアンプ、パワーアンプともソースに忠実な帯域バランスを持っているようで、音色的にも各楽器の存在感が確保されている。またディスクドライブ部の性能の高さによるものか、全帯域の音にブレがない。簡単に書いたが、これはすごいことだ。
次に聞いたのはオーディオショーでも最後のトリに使用するド派手なビッグ・バンド・ジャズ、エリック・ミヤシロ『TIMES SQUARE 〜Live at STB 139〜』。日本を代表するハイトーンのトランペッター、エリック・ミヤシロ率いるEM Bandが、かつて東京都港区六本木にあったライブハウス・レストランで演奏した模様を収録したものだ。本楽曲は大編成のビッグバンドの分解能および質感表現、空間表現という3点において再生難易度は高く、システムの総合力が試される音源。
ビッグバンドのフルバンド構成は17人編成が標準で、ブラスセクションがサックス5、トランペット4、トロンボーン4本、リズムセクションがドラムス、ギター、ピアノ、ベースとなにせ楽器数が多い。
ここでTAD-CE1TXのブックシェルフスピーカーとして少し大きなキャビネットの強みが出てくる。かなり大きな音量で聴いたが、それに負けることなく広大なサウンドステージが眼前に展開する。システム全体として、ソースに対し音色と音場の両面で忠実な解釈を持つが、決してつまらない音ではなく、スタジオ録音とは違うライブならでの熱気が再現できている。
ドラムとベースなどの強烈な低音域を破綻なく表現させていることも記しておきたい。強力な電源部および、低重心かつシャーシからインシュレーターまで徹底された振動対策が効果を発揮しているように感じる。
続いて、ハイレゾファイル再生も試してみよう。TAD-D1000TXの搭載するUSB回路周りは、TAD技術陣が独自開発した第三世代のUSBエンジンと超高C/NマスタークロックUPCGと組み合わせている。CDプレーヤーにUSB入力をつけただけのモデルとは一線を画す、大変品質の高いものが搭載されているので、ネットワークトランスポートやオーディオサーバー、PCと組み合わせたDAコンバーターとしても使用できる。
ここでは現代ポップスのボーカル曲を選定。ビルボードチャートでも上位常連のアーティスト、ホセ・ジェイムズの『リーン・オン・ミー』から「ジャスト・ザ・トゥー・オブ・アス」を再生した。イントロはベースとキックドラムの立ち上がりが良い。ウーファーの正確なピストンモーションに加え、2つの楽器が同時に鳴った時の描き分けも良く、スピーカーの能力の高さとそれを駆動するパワーアンプの良さを如実に感じる。当然、帯域バランスは整っているので、ボーカルおよびバックミュージックの質感はソースの音そのものだ。
ここで最後の1曲、僕が名古屋のオーディオショーで感激したノラ・ジョーンズ「Come Away with Me」のリマスター版(96kHz/24bit FLAC)を再生した。音色、音調のアキュレートさはいうまでもないだろう。リー・アレキサンダーが弾くベースの音像が左右のスピーカーの間に立体的に浮き出るさまや、弦を弾く強弱も手に取るように分かる。そしてノラ・ジョーンズ自身が演奏するピアノは色彩感があり、まさにこの音が聴きたかったのだ。
Evolutionシリーズで固められたシステムは、音色や質感などの表現に長けるが、それに加え、各楽器の横位置とセンター定位する音像表現が抜群なのだ。TADはソース機器およびアンプについて、信号の処理経路、電源まで左右の相関を揃えることを大きなコンセプトとして提唱しており、左右の相関がかなりの次元で揃っている。世界的な名作の多くを送り出しているニューヨークのスターリング・サウンドで作り出されたサウンドをあまりにも忠実に表現していることに感嘆した。
試聴を通じて感じたのは、コンポーネントオーディオとして個々の魅力はあるが、上流から下流までを統一できることで、メーカーが狙う音のフィロソフィーを全領域で享受できること。ことEvolutionシリーズの魅力に関して言えば、ソースの情報を全て出し切ることで、アーティストやエンジニアの思いをストレートに表現することに尽きる。ソースに含まれる音や録音時の雰囲気を汲み取る力がとてつもなく優れているのだ。
今週末2月16日から18日にかけて、オーディオフェスタ・イン・ナゴヤも開催される。TADもブースを出展し、このEvolutionシリーズのフルラインナップが試聴できるだろう。ぜひ自分が一番好きな音源を持って同社のブースに向かって欲しい。僕が感じた気持ちを共有していただけたなら幸いだ。
(提供:テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ)
TAD「Evolutionシリーズ」“フルシステム”の実力をレビュー
2023年2月に名古屋の国際展示場で行われた「オーディオフェスタ・イン・ナゴヤ」。僕は講演するイベントの合間をぬってテクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ=TADのブースに立ち寄った。美しくディスプレイされた同社のオーディオ機器の横で、技術者・沼崎氏の解説に熱心なオーディオファイルが耳を傾けている。
最近のTADは、70年代〜90年代のエクスクルーシブシリーズの時代を知るベテランに加えて、近年オーディオの楽しみを知った若手ユーザーまで幅広い年齢層から評価が高く、それを象徴する光景に感心していると、沼崎氏がある音源を再生した。
それはノラ・ジョーンズのファーストアルバム『Come Away With Me』トラック1の「Don't Know Why[Remastered 2022]」だった。その音が出た瞬間、僕は驚嘆した。帯域バランス、ボーカルの質感、楽器のディテールまで、僕が考える“正確な音”と完全に一致していたからだ。
このリマスター音源について、僕は以前から念入りに音質を研究してきた。詳しくはe-onkyo musicのサイトにも記載しているのでそちらも参照してほしいが、オリジナルでマスタリングを担当したテッド・ジェンセンが改めて音を仕上げたため、劇的に音色が変わったわけではない。だが、波形解析からも見えてきたこのリマスター音源の特徴は、音圧が少し上がっていること、楽器の質感が向上し、サウンドステージ、特に高さ方向の表現が上がっていることなどに大きな特徴がある。安易に音圧を上げたりドンシャリ傾向にするのではない、まさに正統派の進化を遂げたリマスターと言えるだろう。
TADは、パイオニアの高級オーディオブランドとして、1975年からスタートした。世界市場で通用するプロフェッショナル用スピーカーの開発を源流としたブランドで、2024年の現在に至るまで、彼らの製品は「ソースに忠実な解釈をとること」が基本となっている。
TADのブランド背景を考えれば、リマスターされた「Come Away With Me」の正確な再現力にも深く納得がいく。そして、「もし自宅でTADを鳴らしたらどんな音がするのだろうか?」と興味を持ったことから、今回レポートする「Evolutionシリーズ」のフルシステム試聴が実現したのだ。
プリアンプが登場し、Evolutionシリーズが完結
改めて現在のTADのシリーズを説明したい。2024年現在、TADは上位からReferenceシリーズ、Evolutionシリーズの2シリーズを揃える。いずれのシリーズも、SACDプレーヤー、プリアンプ、パワーアンプ、スピーカーと一通り揃っている。エレクトロニクスからスピーカーまで、音の上流から下流まですべて自社で完結できるブランドは、世界的にみてもあまり多くない。
Evolutionシリーズは、「アーティストの想いをあるがままに甦らせる」というTADのコンセプトを継承し、Referenceクラスで開発された技術や新規開発の技術も投入するコストパフォーマンスに優れたシリーズだ。
自宅に設置されたモデルは以下の通り。SACDプレーヤー「TAD-D1000TX」、プリアンプ「TAD-C1000」、パワーアンプ「TAD-M1000」、スピーカーはブックシェルフモデルの「TAD-CE1TX」である。2023年の名古屋オーディオショウの時点では、プリアンプ「TAD-C1000」はまだ発表されていなかったため、今回フルシリーズが出揃っての試聴となった(ちなみに今回は登場していないが、同一デザインで単体DAコンバーター「TAD-DA1000TX」もラインナップする)。
それにしても、なんと壮観な風景だろう。アルミパネルを高いビルドクオリティで組み上げた堂々たるシャーシデザインには、ハイエンドモデルとしての風格がある。オーディオファイルの心をくすぐるデザインで、今回のように組み合わせた際の統一感は、TADのオーディオコンポーネントが持つひとつの魅力だ。
SACD/CDプレーヤーの「TAD-D1000TX」は、8mm厚の無垢材アルミニウムシャーシに重量のあるパーツを集中的に下底部に配置することで、低重心化が施されている。ディスクドライブは読み取り時のサーボ系へ与える外部振動の影響を抑えるなど、ディスクプレーヤーとして徹底した振動対策が施されている。
プリアンプ「TAD-C1000」は、質実剛健の音質対策が施されていることが大きな魅力。Referenceシリーズで開発した1段増幅電流帰還型アンプ回路を、プリアンプ用に新開発して搭載し、超高精度の特性と低歪率を実現。ラダー抵抗切替型電子ボリュームを搭載した上で、左右チャンネルの増幅誤差を極限まで抑えるため、シャーシのセンターから対称とした回路パターンに部品配置を設定した。電源回路も充実しており、オーディオ用と制御用が別々で、それぞれ専用の大型トロイダルトランスを用いたうえ、オーディオ用には左右独立巻き線のトランスを採用し、正負左右の両面で完全な対称性を持つ。
パワーアンプ「TAD-M1000」はスピーカーを正確にドライブするというコンセプトの下に、回路方式から構造面まで対称性を追求している。出力は500W(4Ω)とハイパワー。入力段から出力段までL/R完全独立、そして左右の各アンプは2台のアンプをバランス接続したBTL(バランスアンプ)方式で駆動されるほか、電源回路/トランスさえL/R独立と正・負も完全対称で動作する。
「TAD-CE1TX」は、2014年発売の「TAD-CE1」の後継機となる3ウェイタイプのブックシェルフスピーカー。大きな目玉は、中高域の広帯域で指向性をコントロールできる独自の同軸ユニット「CSTドライバー」の搭載だ。トゥイーターは軽量で剛性に優れたベリリウム素材で、コンピューター解析に形状設計され、100kHzまでの周波数特性をカバーする。ミッドレンジには新開発のマグネシウム振動板を採用。ウーファーはセンターキャップとコーンを一体化した1ピースの振動板「MACS II」を搭載する。
上述の要素から読み解けることは、TADのアンプとソース機器については、複雑な回路等を強調するのではなく、振動対策、高品位なパーツの投入、電源部へのこだわり、そして何よりも正負左右対称を徹底していることで、基本に忠実かつストレートな設計を施していることだ。
そしてスピーカーについては、低域は正確なピストンモーションを狙い、中音域から高音域は同軸ユニットを搭載することで音像表現とサウンドステージ表現の両立を狙っている。まさに僕たちがオーディオ再生で狙っている要素を実直に達成しようとする思想が現れる。
そしてその結果が、自宅試聴室に響きわたる!
忠実な帯域バランスとシャープで立体感のあるサウンドステージ
まず結論から話したい。今まで自宅の試聴室で感じたことのないほどソースに忠実な帯域バランス、そして異様なほどシャープで立体感のあるサウンドステージが再現されたのだ。
まずは基本となるディスク再生から。上原ひろみのSACD「シルヴァー・ライニング・スイート」をTAD-D1000TXのトレイに乗せて再生ボタンを押す。その瞬間、アキュレートでフォーカスの整った超分解能が高いサウンドが眼前に現れる。ピアノ+弦楽四重奏という編成で混濁しやすい音源だが、ピアノのフォーカスがピシッとステージ上に定位。
一聴してS/Nが良く、超高分解能を感じる音だが、それ以上にピアノ、2本のヴァイオリン、ビオラ、チェロという帯域バランスの違う生楽器がアンサンブルで音を出しても、それらが混濁しないことに感心する。ソース機器、プリアンプ、パワーアンプともソースに忠実な帯域バランスを持っているようで、音色的にも各楽器の存在感が確保されている。またディスクドライブ部の性能の高さによるものか、全帯域の音にブレがない。簡単に書いたが、これはすごいことだ。
次に聞いたのはオーディオショーでも最後のトリに使用するド派手なビッグ・バンド・ジャズ、エリック・ミヤシロ『TIMES SQUARE 〜Live at STB 139〜』。日本を代表するハイトーンのトランペッター、エリック・ミヤシロ率いるEM Bandが、かつて東京都港区六本木にあったライブハウス・レストランで演奏した模様を収録したものだ。本楽曲は大編成のビッグバンドの分解能および質感表現、空間表現という3点において再生難易度は高く、システムの総合力が試される音源。
ビッグバンドのフルバンド構成は17人編成が標準で、ブラスセクションがサックス5、トランペット4、トロンボーン4本、リズムセクションがドラムス、ギター、ピアノ、ベースとなにせ楽器数が多い。
ここでTAD-CE1TXのブックシェルフスピーカーとして少し大きなキャビネットの強みが出てくる。かなり大きな音量で聴いたが、それに負けることなく広大なサウンドステージが眼前に展開する。システム全体として、ソースに対し音色と音場の両面で忠実な解釈を持つが、決してつまらない音ではなく、スタジオ録音とは違うライブならでの熱気が再現できている。
ドラムとベースなどの強烈な低音域を破綻なく表現させていることも記しておきたい。強力な電源部および、低重心かつシャーシからインシュレーターまで徹底された振動対策が効果を発揮しているように感じる。
色彩感豊かなノラのピアノ。まさにこれが聴きたかった!
続いて、ハイレゾファイル再生も試してみよう。TAD-D1000TXの搭載するUSB回路周りは、TAD技術陣が独自開発した第三世代のUSBエンジンと超高C/NマスタークロックUPCGと組み合わせている。CDプレーヤーにUSB入力をつけただけのモデルとは一線を画す、大変品質の高いものが搭載されているので、ネットワークトランスポートやオーディオサーバー、PCと組み合わせたDAコンバーターとしても使用できる。
ここでは現代ポップスのボーカル曲を選定。ビルボードチャートでも上位常連のアーティスト、ホセ・ジェイムズの『リーン・オン・ミー』から「ジャスト・ザ・トゥー・オブ・アス」を再生した。イントロはベースとキックドラムの立ち上がりが良い。ウーファーの正確なピストンモーションに加え、2つの楽器が同時に鳴った時の描き分けも良く、スピーカーの能力の高さとそれを駆動するパワーアンプの良さを如実に感じる。当然、帯域バランスは整っているので、ボーカルおよびバックミュージックの質感はソースの音そのものだ。
ここで最後の1曲、僕が名古屋のオーディオショーで感激したノラ・ジョーンズ「Come Away with Me」のリマスター版(96kHz/24bit FLAC)を再生した。音色、音調のアキュレートさはいうまでもないだろう。リー・アレキサンダーが弾くベースの音像が左右のスピーカーの間に立体的に浮き出るさまや、弦を弾く強弱も手に取るように分かる。そしてノラ・ジョーンズ自身が演奏するピアノは色彩感があり、まさにこの音が聴きたかったのだ。
Evolutionシリーズで固められたシステムは、音色や質感などの表現に長けるが、それに加え、各楽器の横位置とセンター定位する音像表現が抜群なのだ。TADはソース機器およびアンプについて、信号の処理経路、電源まで左右の相関を揃えることを大きなコンセプトとして提唱しており、左右の相関がかなりの次元で揃っている。世界的な名作の多くを送り出しているニューヨークのスターリング・サウンドで作り出されたサウンドをあまりにも忠実に表現していることに感嘆した。
メーカーが狙う音のフィロソフィーを全領域で享受できる
試聴を通じて感じたのは、コンポーネントオーディオとして個々の魅力はあるが、上流から下流までを統一できることで、メーカーが狙う音のフィロソフィーを全領域で享受できること。ことEvolutionシリーズの魅力に関して言えば、ソースの情報を全て出し切ることで、アーティストやエンジニアの思いをストレートに表現することに尽きる。ソースに含まれる音や録音時の雰囲気を汲み取る力がとてつもなく優れているのだ。
今週末2月16日から18日にかけて、オーディオフェスタ・イン・ナゴヤも開催される。TADもブースを出展し、このEvolutionシリーズのフルラインナップが試聴できるだろう。ぜひ自分が一番好きな音源を持って同社のブースに向かって欲しい。僕が感じた気持ちを共有していただけたなら幸いだ。
(提供:テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ)