公開日 2009/01/19 19:36

話題のソフトを“Wooo”で観る − 第18回『ダークナイト』(Blu-ray)

ジョーカーの“闇”に迫る

■Wooo「P50-XR02」の優れたコントラスト性能をいかに使いこなすか

筆者が愛用する日立のプラズマテレビ「P50-XR02」でも、結局全編を見て後述の映像設定にたどり着いたが、結論から言うと、『ダークナイト』は「P50-XR02」くらいの再現力を持つテレビでないと映像の世界観を堪能できない。「P50-XR02」は、日立のテレビの中にあって液晶方式UTシリーズの影に隠れがちだが、大幅な躍進を遂げた優れたプラズマテレビである。現在のプラズマテレビ全てを代表する秀作といっていい。従来機からの変更点を整理すると、セル構造をALIS方式から一般的なボックス構造リブに改め、パネル内部の光漏れをなくした。サブフレームのリセット回数を最小限に制御し、黒の輝度を大幅に低減した。さらに発光を誘導する誘電体に薄膜電極を採用し、ピーク輝度を下げることなく、高いコントラストを実現、パネル単体の暗所コントラストはトップレベルの30,000対1に達した。

「P50-XR02」は、よく出来たプラズマ方式だけが持つ、コントラストの土台のしっかりしたなめらかで華麗な映像を味わわせる。機能面では、フィルム系ソフトの24コマの中間コマを創成する「なめらかシネマ」が挙げられる。フィルムソフトの動きの改善にいち早く着目、各社が現在一斉に追従を始めたが、先鞭を付けたのが日立である。搭載初期は、中間コマの挿入が始まると、被写体の輪郭が震える癖があったが、アルゴリスムを見直し、変換精度を向上させている。24p入力はコマ数を4倍化する96Hz駆動を新たに採用した。日立の特長であるHDD録画機能は、チューナー一体型の本機にも、250GBの内蔵HDDとカセットHDD「iVDR-S」が使えるiVポケットの両方が搭載される。プラズマテレビの魅力を改めて知らしめる、優れたテレビである。

日立のプラズマテレビは元々、プラズマテレビながら画面が明るく、ピーク輝度の余裕に定評があった。「P50-XR02」で黒輝度が低くなったので、コントラストのダイナミックレンジが大幅に高まっている。先に「最後まで見て最適設定に辿りついた」と書いたが、ある意味、「P50-XR02」のコントラストのダイナミックレンジの広大さが、『ダークナイト』の明暗の幅をスッポリ飲み、さらに強調してしまうのである。デフォルトの「シネマティック」標準では基本的にコントラストが強めに出てしまう。「P50-XR02」のダイナミックコントラストは30,000対1、それに対して映画館のスクリーン上のコントラストは条件のいい館で2,000対1程度である。だから、「P50-XRO2」のコントラスト感をいかに大人しく丸めていくかが調整のポイントである。

例えば冒頭のマフィアの資金のマネーロンダリングを扱う銀行を襲撃する実景シーンは、非常に明るくビデオ的な解像感である。対照的に、CH-22の誘拐されたレイチェルが死を前にしてデントの求婚を受け入れるシーンは、マギー・ギレンホールの表情はほとんど消え入らんばかりの低照度で撮影されている。どちらを重視するかといったらやはり「一筋の未来への希望」を表現した後者である。一つのカットの中でも、CH-19の執事アルフレッドとレイチェルの対話シーンは、ビルの窓からの光が二人の表情に強い明暗コントラストを生んでいる。これもコントラストをやや弱める方向で調整するといい。リアルでアクチュアルな映像感に特徴がある『ダークナイト』だが、やはり第一作からのフィルムノワール的な味、ペシミスティックなダークファンタジーの世界観を重視したいからである。

今回は結局、CH-22の暗部階調の表現を第一の基本に、次にCH-30のゴッサムシティ総合病院でジョーカーがデントを悪に引き込むシーンで光と影が入れ替わる演技上のクライマックスでの映像効果を元に全編の調整を行った。その結果が下記の映像設定である。コントラストをいかに抑えようとも、「P50-XR02」なら明るい実景シーンのリアルな表現が減退する心配はないからご安心いただきたい。

映像モード シネマティック
明るさ -15
黒レベル -2
色の濃さ -4
色合い +1
シャープネス -6
色温度 低
ディテール 切
コントラスト リニア
黒補正 切
LTI 切
CTI 切
YNR 切
CNR 切
MPEGNR 切
映像クリエーション なめらかシネマ
デジタルY/C 弱
色再現 リアル
DeepColor 切
※ 画面上の照度は約33ルクスで視聴した

執筆者プロフィール
1956 年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて、美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。ホームシアターのオーソリティとして講演多数2006年に評論家に転身。趣味はウィーン、ミラノなど海外都市訪問をふくむコンサート鑑賞、アスレチックジム、ボルドーワイン。

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