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公開日 2009/12/29 17:22

山之内正×石原俊 特別対談 − 2010年のピュアオーディオ展望<中編>

年末年始特別対談
山之内 正・石原 俊
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iPodや携帯オーディオと旧来からのオーディオファンが息づくミドル〜ハイエンド市場の間に大きな乖離のあるオーディオ市場。コンテンツ配信という新たな動きをピュアオーディオに融合させるPCという存在、根強いファンが存在するアナログという存在が渾然となり、大きな転機を迎えているオーディオの2010年の行方は…。

石原俊氏(左)/山之内正氏(左)

音楽の“乗り物”が変わっても
それを鳴らすシステムは変わらない


―― 配信コンテンツには音質という意味でも、演奏をリアルタイムに味わえるという意味でもパッケージの範疇をこえる価値があって、PCがそれを入手するための必然的な道具だということですね。それをよりいい音で再生するための「PCオーディオ」という考え方ですね。

石原 僕はもっぱらコンサートに通うつもりでPCを使っています。「フライング・ブラボー」といって、曲が終わる前に拍手が始まったり、曲の途中で携帯電話が鳴ったりすることで嫌な思いをし、拍手恐怖症になってしまいました。もうコンサートのチケットを持っているだけで不安で仕方なく、心臓がキューンとなってしまいます。配信のコンサートはクリックひとつで購入できるので幸せです。コンサートをインターネット上で楽しめるのは、僕にとって福音なのです。

山之内 インターネットラジオも面白いですね。音のいい放送が多く、今や大分普及してきました。無数の放送局もあり、こんなものが無料で聴けるのかと驚きます。


石原 これがまたすごくいいですね。僕は子供のころBCLで世界のラジオ放送を聴いてたどたどしい英語で手紙を送り、試聴カードをもらっていました。今そういうものがインターネットラジオで、格段に違う音質で聴ける。素晴らしいですよ。意外に日本のメジャーな放送局が消極的なのが残念ですけどね。

―― 2010年はPCオーディオが一気に身近になり、iPodを高音質再生する動きがますます高まりそうですね。

山之内 iPodのデジタル出力は、すでに対応機器が数多く登場しています。あとはiTunes Storeでもロスレスオーディオを扱って欲しいですね。この世界は動きが速く、いつどう変わるかわかりませんから、ぜひこうして欲しいとがんがん言った方がいいですよ。アップルだけでなく、既存のオーディオメーカーに向けて。アップルはむしろ頑張っていると私は思います。

今はマーケティングで失敗するものはやらないという風潮が支配的ですが、その姿勢が過剰です。慎重すぎて面白いものが出てこない。PC系のメーカーがオーディオ機器にチャレンジするのもいいですが、やはり音質のノウハウをもっているオーディオメーカーがやらなくては。

―― 「USB-DDC」もそうですが、昨今小さい形状のものが増えて来ました。

山之内 ここは重要なトレンドです。レコードの時代はジャケットサイズが必須ですが、今やソースは何でもいいのでどんな大きさでもかまわないのです。これだけ小さいと、機能をスピーカーに入れてもアンプに入れてもいい。複合機のコンセプトが変わってくるし、使い勝手も変わります。

録音の現場ではほとんどハードディスクレコーディングで、PCオーディオと同じようなことがすでに実践されているのです。PCがあって、USBやFire Wireのインターフェースがあって、ミキサーを画面上で操作し1TBとかのハードディスクにデータを入れる。その逆のことを我々は家でやろうとしているんですね。

大容量のストレージに録ったものと同じ品質の音楽データをためて、それをストリーム再生する。その音はすっきりとした、見通しのよい、透明感の高いトランスペアレントな音。オーディオファンが目指してきた最高グレードの音です。それを再生する機器が安く、ダウンサイジングで手に入るということなのです。

―― PCオーディオのメリットは大きいですが、接続や設定の敷居は高いですね。


山之内 PC、そしてOSも変わる必要があるでしょう。iPodと同じような感覚で曲選びができ、誰にでも操作できるようにはまだなっていない。どのアプリケーションソフトを立ち上げ、どう操作するか、そしてハングアップしたり落ちたりしたときの解決法も知っていなくてはなりません。

石原 アプリケーションソフトもいろいろありますが、もっと充実してくれると助かりますね。

山之内 リンのDSが今急激にブレイクしているのは、いろいろなサードパーティがコントローラーをつくっているおかげで、使いやすいアプリケーションがどんどん誕生しているからです。オープンソースですから、ちょっと腕のいいプログラマーなら誰でも書けるわけです。

またリンではネット上にフォーラムをもっていて、疑問に思うことをユーザーが書き込むと技術者から直接返事がくるのです。その情報をユーザーもメーカー側も共有している。そんなことはこれまであり得ませんでした。

石原 音楽信号がデジタル化をした時点で、コンテンツの乗り物は何でもよかったのだと我々は気がつきました。乗り物はいろいろ変化しますが、D/Aコンバーターから先のオーディオシステムは、昔となんら変わるところはありません。スピーカーがあって、アンプがあって、しかも安くていい製品ができているから、iPodとハイエンドオーディオの間の「中抜け」の状態は、製品のラインナップ的にはないといっていいと思います。

ただ販売店さんにはもっと努力して取り組んでいただきたい。色々な見せ方はあると思いますし、我々も全力を尽くしてミドルクラスの製品を広めたいと思います。ハイエンドだけやっていると、リーマンショックのようなことがあると市場がなくなってしまいます。喪失しやすいマーケットにだけ頼っているのは不健全。誰もが手の届く商品を数多く展開して、オーディオファンをもっと増やしていきたいですね。

2010年のピュアオーディオ展望<後編>へ続く

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