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公開日 2017/06/21 17:13

「防音工事をすると音がよくなる」理由とは? プロが明かした部屋づくりのポイント

【特別企画】試聴会「Acoustic Audio Forum」レポート
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オーディオファン向け物件の豊富なノウハウを持つ防音工事会社、アコースティックラボが定期的に実施している試聴会「Acoustic Audio Forum」。「防音工事をすると音がよくなる!第3回 〜中空二重構造と防振浮二重構造の違い〜」をテーマに開催された最新回の模様を、同社による公式レポートでお届けする。


■防音工事をすると音がよくなる!第3回 「部屋の響きの長さ=残響時間について」

防音工事と残響時間と音が良くなることは、そもそもどう関係するのか?がテーマです。

オーディオルームを作るという動機の多くは、もっと満足のいく大きな音を出したいと考えるオーディオマニアが少なくありません。小さい音ではせっかくのオーディオ機器性能が発揮できていないのではないか?小さい音では豊かなステレオ音場にどうしてもならないということも含んでいるようです。

それはそれとして、防音工事をすると音がガラッと変わります。音を外に出さないという目的達成の副産物として、室内音響特性が変化するためです。

どのように変化するかというと、まずスピーカーが楽に鳴るようになると同時に、豊かさと厚みが加わり、音楽を体で聴くようになります。スピーカーの音を客観的に聴く、というより音楽の中に居る、という感じになります。


オーディオという趣味が成立して以来、多くの人がいかに音を忠実に再生するかに心血を注いできましたが、それはほとんどといってよいほどスピーカーからの出音を良くする、ということに終止したのではないでしょうか。

オーディオマニアが出来ることとは、商品としてのオーディオ機器を“選択”することであり、その機器の最終形がスピーカーともいえるでしょう。だからオーディオに関する議論や評価は、多くの場合スピーカーの出音そのものを対象にした、商品としてのオーディオを機器・アクセサリーの範囲で行われてきたのです。

しかしオーディオ機器個々の飛躍的なスペック向上に伴い、音楽そのものの再生・音場の再現に関心が向かっているように思われます。

もっとも昔から音楽現場(録音現場)の再現を目指すのがオーディオの本道だという方もいらっしゃるはずで、近年流行しているヘッドホンステレオでは満足できない人は今も多いはずです。

スピーカーからの出音は素晴らしいはず?だが、いまいち音楽が楽しめない・・・やはりアンプやスピーカーに問題があるのではないか、という循環迷路に入ってしまう。否、それがオーディオ道というものだ、それが楽しいのだと肯定的に考える人もいるので、そのこと自体は趣味の領域なので否定されるべきではないと思いますが…。

このようにオーディオを部屋を含めて考えない人は意外と多いのです。部屋によって機器が同じでも、再生音がまるで異なる音になること、音のバランス・音色・それに三次元的音像の出来方までも変わることがわかれば、オーディオの楽しみが広がるというものでしょう(…これ以上悩ましさが増えるのはたくさん、という声も聞こえそうですが)。

つまらないCDと思っていたものが別のオーディオ機器で聞くと素晴らしい演奏だったり、音の良いCDだとおもっていたのが、別の部屋で聞くと意外に平凡だったりします。音楽の素晴らしさ・感動というものをもっとリスナー側に寄せるには、部屋の音環境についてもっと考えられてもよいのではないかと思います。

部屋によってさまざまな再生音の変形があり、それによって再生音の印象も変わることを述べました。それらは反射音・間接音がもたらす必然的なアコースティックな現象なのです。


響きを考える上で必要なことは次の4つの項目です。

A:響きの質(反射音の質)
B:響きのバランス(響きの長さの周波数特性)
C:響きの長さ(残響時間、吸音の度合い)
D:部屋固有の定在波の分布状態

前回は【反射音の質】についてお話をしましたので、今回は響きのバランス(周波数特性)の話です。

(1)内装材(内装下地材)の板振動によって低音が吸われている

住宅の断面は中空になっています。その中空に断熱材などがはいっていて、省エネ構造になっているのです。

ビニールクロス仕上げになっている場合が一番多く、部分的に板やタイルなどが表面に張られていることもありますが、その下地材が石膏ボード(12.5mm厚)背後に10cmぐらいの中空層があり、それが低音域で共振しやすい構造となっていることなのです。何かで叩くとゴンゴンと容易に響くのですぐ確かめられます。

床も天井も同じです。壁や床が吸音しているなんてことは考えたことも無いと思われますが、実は10〜30%ぐらい低音を吸音しているのです。

吸音材というと、カーテンのようなものをイメージしますが、一般的に吸音材と言われる物は、中高音を吸音(耳でも効果がわかりやすい)するものが普通です。ですからビニールクロスの壁が低音を吸音しているという認識はなく、むしろ中高音の反射する壁と思っているのではないでしょうか。

確かにグラスウール吸音材のような高い吸音率はございませんが、床・壁・天井、即ち空間を構成するすべての面ですので、吸音率が低くても無視できる吸音とは言えなくなるのです。しかも建築歴史的このような中空構造の出現は世界的に見てもたかだか50〜60年前からなのです。

誰でも経験していることですが、引っ越し前の下見の段階では部屋の響きの長さが気になるところですが、よもや低音を吸音しているなんて思わないのが当然です。

引っ越し後、家具が入ることによって中高音は吸音され、あまり響きを意識しない程度に響きはおさまるのです。ですから本箱などいろいろ部屋に持ち込むものが多ければ、建築内装段階での吸音は不必要であることも多いのです。


(2)防音工事をするということは低温の響きを確保することにつながる

音を遮音(防音)する主役は建材の密度(面密度)の大きい材料です。ちなみに石膏ボードでしたら、3枚も4枚も重ねる必要があります。重い面材にすることによって振動しにくくなりますし、共振周波数も低音域から超低音域の方に移動しますので、いわゆる“おいしい”音帯域である100〜200Hzは吸音されなくなります。

(3)低音の響きは音楽再生にとって最重要

どんな音楽ジャンルでも低音楽器のパートは必ずありますし、重要な役割になっていることはご存じのとおりです。建築で言えば、基礎や土台のようなものです。

小口系のスピーカーのラジカセやミニコンポでも100〜200Hzの再生はそれほど難しくないので、その辺りをしっかり再生できれば素晴らしい音になるということはご存知の事と思います。

いわゆる低音感というのはその帯域なのです。100Hz以下の楽器もありますが、その2倍音、3倍音をうまく再生すると100Hz以下の基本がローレベルであっても十分に音楽が聴けるのです。

この帯域の響きが中高音域と響きと較べて少ないのか、同じくらいなのか、多いのか…によって再生音は大きく変わるのです。

(4)部屋の響きの特性(吸音特性)・バランスはどのようなものが良いのか

ここで言う響きの周波数特性というのは、スピーカーから出た音をリスニングポイントで音圧を測るという伝送特性のことではありません。伝送特性で低音域が十分確保されていても必ずしも低音の充実感につながるわけではありません。(残響時間の測定は5ヶ所以上の複数ポイントで測定し、それを平均して算出します)。

典型的な3パターンについて述べます。


室内に入っている家具什器などの多い少ないにより、中高音の響きの違いはありますが、現代住居に共通するのは「低音域の響きの少なさ」で、残響特性は上記グラフ中<イ>の傾向を示します。

この部屋にカーテンや吸音材などを付加していきますと、グラフ中の<ロ>のようにフラットな周波数特性になります。<イ>の再生音は中高音域中心の明快な響きの音ですが、低音域が薄いので充実感が得られません。

<ロ>のパターンは響きが押さえられてますからさらにスッキリとした響きの部屋になります。オーディオマニアの一つの到達点です。音の良い部屋、響きに違和感のない満足度の高い部屋となります。しかし大きな再生音は近所迷惑になるし、出せたとしても雑味の多い音だったり、音の飽和感が付きまとうなど限界が見えてきます。またパワーでSPをドライブしないと低域が厚い充実した再生音になりません。

<ハ>の特性は、重くてガッチリした下地材で作られていない限り、このような特性になりません。

防音工事をすると基本的にこのような特性になります。低音の響きが長い特性ですが、決して低音がだぶついた音ではありません。楽にスピーカーが鳴っているような再生音になります。

音を大きめにしても中高音の濁りがありませんから<イ>および<ロ>とは再生音の印象が大きく異なってきます。小口系スピーカー、小出力アンプでも楽に音が鳴るので、部屋を楽々ドライブする感じになります。

(5)音楽再生に適した特性、モニターに適した特性

ステレオ再生音をどのように聴くかは人によって異なります。音を客観的、対象的(あえて言えばスピーカーから出音)を聴く……このタイプはミキシングエンジニアなどのモニター的な聴き方をする人とか、やや年輩のベテランオーディオマニア(和室などデッドな音環境になじんだ人)に多いでしょうか。上記グラフの<ロ>を特性とする環境を好むようです。

低音を音楽的に再生するにはどうしてもパワーに頼るオーディオになります。

一方、音楽の音場そのものを再生したい、音楽的な場を再生したいという場合はハの特性がお勧めです。音楽を開放的に楽に自然に鳴らす部屋、そのものが音楽空間になる、音楽の場にいる、という再生の仕方です。

小生の立場としては、モニター的・スタジオ的再生のしかたよりは音場再生を音楽音場再生の方をお勧めします。




<試聴会『Acoustic Audio Forum』開催情報>

本記事でレポートしている『Acoustic Audio Forum』の最新回が今週末6月23日(金)・24日(土)に、また、番外編的イベント『オーディオライブin蔵前Village』が来週末6月30日(金)・7月1日(土)に開催される。会場はどちらも同社蔵前ショールームで、各イベントの詳細は下記の通り。

■第42回 Acoustic Audio Forum
「防音工事をすると音がよくなる!(第4回) 〜定在波のコントロールについて〜」

・6月23日(金)18時〜20時
・6月24日(土)14時〜16時


同社では、低音域の響きの違和感につながるブーミングの原因は、部屋の形から決まる定在波の重なりにあると説明。基本的に低音の定在波は吸音や反射によって無くすことは実用的にはできないとし、それではどうしたらよいのか、を今回のテーマに据えたという。

23日、24日どちらの回も内容は同一。また、“第4回”と銘打っているが、もちろん前回までに参加していなくとも理解できる内容になっている。

イベント詳細情報
参加申し込みメールフォーム

■オーディオライブin蔵前Village
「デジタルオーディオの最前線」

・6月30日(金)18時〜20時
・7月1日(土)14時〜16時


イベント前半は6月に発売を開始したばかりのスフォルツァートの最新ネットワークプレーヤーDSP-Velaの試聴を、後半は外部クロックの違いによる比較試聴を実施。アコースティックラボがオーディオ的な音の響きに配慮して作った防音ショールームで各種デモを体験できる。

DSP-Velaは、フラグシップ機「DSP-01」と「DSP-03」の間に位置する機種。ESSの最新DACチップES9038Proを左右に1個ずつ使用、またオプション対応でUSB DACとしても機能する。また、内部にクロックを持たず外部クロックの使用を前提としていたり、電源は別筐体にするなど、最上位機DSP-01同様に音質にこだわっている。

そして上記の通りDSP-Velaは外部クロックを前提としていることを受け、クロックの違いでどこまで音が違うのかも実験。スフォルツァートのクロック「PMC-Piccolo」(DSP-Velaとのセット販売品)、「PMC-03」、「PMC-Circinus」の3機種を比較試聴する。

イベント詳細情報
参加申し込みメールフォーム

【問い合わせ先】
アコースティックラボ
TEL/03-5829-6035
MAIL/kusakai@acoustic-designsys.com
担当:草階(くさかい)氏

(特別企画 協力:アコースティックラボ)

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