公開日 2017/12/26 09:40
ハイクオリティなスピーカー修理に定評、オーディオラボオガワの女性マイスターを訪ねた
全国から信頼集める「オガワの修理」
山形県の日本海側、鶴岡の街にあるオーディオラボオガワのスピーカー修理工房は、スピーカー愛用者にとって聖地のような場所である。
オガワの修理を称賛するヴィンテージスピーカー・ユーザーは後を絶たず、修理依頼は個人からはもちろん、全国の販売店や商社などいまや100社を超す。それを牽引してきたのは女性マイスター佐藤絹子さん。そして佐藤さんのもとで技術を磨き、工房を統括する後継者として抜擢された田林 香さんである。お二人にお話をうかがうため、工房を訪ねた。
オガワの店舗とは別棟に工房はあり、10名の女性がスピーカーユニットを修理していた。
「弊社の修理内容の基本は、ユニットのエッジやコーンの貼り替えのみならず、磁気回路部のクリーニングも含めたオーバーホール、動作調整を行うことです」。
佐藤さんは、全国のユーザーから頼りにされてきた自信を感じさせる素敵な笑顔で語ってくれた。
「クリーニングは、コーンとダンパーの部分を磁気回路から一旦外して行います。赤サビや劣化したウレタン片などを薬品で取り、サンドペーパーをかけて、最終的に吸着テープをギャップに挿入しながら除去するんですよ」。
手慣れた手つきでテープを入れて回すと、ギャップから赤サビがくっついて出てきた。この工程によって、一般的に行われるエッジ貼り替えだけでは直らなかったビリつきなどが見事に解消されたケースが多く、オガワの修理は高い信頼を得ることになった。
続いて田林さんが、エッジの貼り替えや磁気回路の組み上げなどの見事な手さばきを見せてくれた。
「お客さまに信頼してもらえる修理技術者になりたいと心がけています。お客さま方は思い入れのあるものをお使いですから、世代を超えて、それを引き継いでいくためのお役に立ちたいです。私にできることは旧くて良いものを残していくことですから。さらに新しい機種についても勉強しています」。
そう語られる真摯な眼差しに、思わず吸い込まれそうになった。依頼者からの喜びの声を聞くことがいちばんのやりがい、とお二人は口を揃える。また彼女たちは、ヴィンテージJBL、タンノイを愛用するオーディオファンでもあるという。
旧き良きものを使う文化は、こうした誠実な技術者の方々により支えられている。周りの棚には全国から届いたユニット達が修理されるのを嬉々として待っているかのようであった。
中古オーディオの専門家が太鼓判を押す
オガワのスピーカー修理のクオリティの高さは、業界内でも有名だ。中でもリワイアーの小笠原氏は、スピーカーのオーバーホールをほぼ全面的にオガワに依頼し、強い信頼を寄せている。
小笠原氏は、もともと中古オーディオ店勤務を経たのちリワイアー株式会社を立ち上げた経緯があり、前職の頃にオガワのスピーカー修理を自分の目で確かめるために鶴岡までやって来たという。
「オガワさんのスピーカー修理が、ただのエッジの貼り替えだけではない、全体のオーバーホールであることに共感しました。ギャップ部のサビやセンターキャップの中の異物にまで行き届いたメンテナンスにより、エッジの貼り替えのみしか行わない修理業者では対応できないビリつきや、異音の発生を解消することができるのです。オガワさんの修理の基本は、まさにオーバーホールと呼ぶにふさわしいと思います」。
「オーディオの販売業をやっていて日頃感じているのは、オーディオ機器の価格が高過ぎるために、若い世代のユーザーにオーディオが浸透しにくい状況にあるということ。中古製品なら、旧い銘機といわれるものを含めて、高いクオリティのものが手に届く範囲の価格で手に入れられるでしょう。そういった中古マーケットの裾野を広げていくことがリワイアーを立ち上げた理由のひとつですが、その場合に品質の保持は必須条件です。中古オーディオを扱うにも、皆さんに安心できるものをお渡ししたいのです。オガワさんで直してもらったスピーカーであれば、安心してご提供することができます」。
いっしょにイベントを企画。業界に新しい風を吹き込む
そんな小笠原氏が、最初にオガワの工房を見学に行った時に意気投合したのが、当時スピーカーサービス部で箱やネットワーク部を担当していた太田望氏であった。
太田氏はその後、オーディオラボ店舗の店長となり、仕入れブランドを大幅に増やすなど、新しい試みにもどんどんチャレンジ。共感した小笠原氏は、イベントを提案した。
この夏には、リワイアーが販売サポートを行っている中村製作所のアモルメット製品の試聴会を企画し、開催した。タイムロード社にも協力をあおぎ、人気のコード社のハイエンドDAC、「DAVE」の試聴との2本立てに。 DAVEの試聴会は東北では初であり、地元鶴岡ではオガワが最近とみに元気になってきたということで、多くのオーディオファンが集まり盛況を博した。
太田店長はさらに、修理工房とショップを有機的につなげることも展望している。
「オガワに修理工房があることは大きな強みです。来年はオガワは鶴岡インター近くに移転し、新装オープンする予定です。その暁には、工房とショップを一棟に一体化し、例えば自社で修理したヴィンテージスピーカーを試聴イベント等の試聴スピーカーに加えてみるなど、工房の存在を生かした、オガワならではの提案をしていきたいです」。
修理工房の取材の後、リワイアーとオガワが企画したイベントも見学させてもらった記者は、新しい風を感じ、すがすがしい気持ちになっていた。
オガワのスピーカー修理工房は、オーディオ業界でも少数派である女性が立派に築き上げたものであり、その技術は次代に受け継がれつつある。
その伝統を確かな足場とし、オーディオ販売においても、次世代へのフレッシュな提言を発信しているオーディオラボオガワ。今後の動きが非常に楽しみだ。
オガワの修理を称賛するヴィンテージスピーカー・ユーザーは後を絶たず、修理依頼は個人からはもちろん、全国の販売店や商社などいまや100社を超す。それを牽引してきたのは女性マイスター佐藤絹子さん。そして佐藤さんのもとで技術を磨き、工房を統括する後継者として抜擢された田林 香さんである。お二人にお話をうかがうため、工房を訪ねた。
オガワの店舗とは別棟に工房はあり、10名の女性がスピーカーユニットを修理していた。
「弊社の修理内容の基本は、ユニットのエッジやコーンの貼り替えのみならず、磁気回路部のクリーニングも含めたオーバーホール、動作調整を行うことです」。
佐藤さんは、全国のユーザーから頼りにされてきた自信を感じさせる素敵な笑顔で語ってくれた。
「クリーニングは、コーンとダンパーの部分を磁気回路から一旦外して行います。赤サビや劣化したウレタン片などを薬品で取り、サンドペーパーをかけて、最終的に吸着テープをギャップに挿入しながら除去するんですよ」。
手慣れた手つきでテープを入れて回すと、ギャップから赤サビがくっついて出てきた。この工程によって、一般的に行われるエッジ貼り替えだけでは直らなかったビリつきなどが見事に解消されたケースが多く、オガワの修理は高い信頼を得ることになった。
続いて田林さんが、エッジの貼り替えや磁気回路の組み上げなどの見事な手さばきを見せてくれた。
「お客さまに信頼してもらえる修理技術者になりたいと心がけています。お客さま方は思い入れのあるものをお使いですから、世代を超えて、それを引き継いでいくためのお役に立ちたいです。私にできることは旧くて良いものを残していくことですから。さらに新しい機種についても勉強しています」。
そう語られる真摯な眼差しに、思わず吸い込まれそうになった。依頼者からの喜びの声を聞くことがいちばんのやりがい、とお二人は口を揃える。また彼女たちは、ヴィンテージJBL、タンノイを愛用するオーディオファンでもあるという。
旧き良きものを使う文化は、こうした誠実な技術者の方々により支えられている。周りの棚には全国から届いたユニット達が修理されるのを嬉々として待っているかのようであった。
中古オーディオの専門家が太鼓判を押す
オガワのスピーカー修理のクオリティの高さは、業界内でも有名だ。中でもリワイアーの小笠原氏は、スピーカーのオーバーホールをほぼ全面的にオガワに依頼し、強い信頼を寄せている。
小笠原氏は、もともと中古オーディオ店勤務を経たのちリワイアー株式会社を立ち上げた経緯があり、前職の頃にオガワのスピーカー修理を自分の目で確かめるために鶴岡までやって来たという。
「オガワさんのスピーカー修理が、ただのエッジの貼り替えだけではない、全体のオーバーホールであることに共感しました。ギャップ部のサビやセンターキャップの中の異物にまで行き届いたメンテナンスにより、エッジの貼り替えのみしか行わない修理業者では対応できないビリつきや、異音の発生を解消することができるのです。オガワさんの修理の基本は、まさにオーバーホールと呼ぶにふさわしいと思います」。
「オーディオの販売業をやっていて日頃感じているのは、オーディオ機器の価格が高過ぎるために、若い世代のユーザーにオーディオが浸透しにくい状況にあるということ。中古製品なら、旧い銘機といわれるものを含めて、高いクオリティのものが手に届く範囲の価格で手に入れられるでしょう。そういった中古マーケットの裾野を広げていくことがリワイアーを立ち上げた理由のひとつですが、その場合に品質の保持は必須条件です。中古オーディオを扱うにも、皆さんに安心できるものをお渡ししたいのです。オガワさんで直してもらったスピーカーであれば、安心してご提供することができます」。
いっしょにイベントを企画。業界に新しい風を吹き込む
そんな小笠原氏が、最初にオガワの工房を見学に行った時に意気投合したのが、当時スピーカーサービス部で箱やネットワーク部を担当していた太田望氏であった。
太田氏はその後、オーディオラボ店舗の店長となり、仕入れブランドを大幅に増やすなど、新しい試みにもどんどんチャレンジ。共感した小笠原氏は、イベントを提案した。
この夏には、リワイアーが販売サポートを行っている中村製作所のアモルメット製品の試聴会を企画し、開催した。タイムロード社にも協力をあおぎ、人気のコード社のハイエンドDAC、「DAVE」の試聴との2本立てに。 DAVEの試聴会は東北では初であり、地元鶴岡ではオガワが最近とみに元気になってきたということで、多くのオーディオファンが集まり盛況を博した。
太田店長はさらに、修理工房とショップを有機的につなげることも展望している。
「オガワに修理工房があることは大きな強みです。来年はオガワは鶴岡インター近くに移転し、新装オープンする予定です。その暁には、工房とショップを一棟に一体化し、例えば自社で修理したヴィンテージスピーカーを試聴イベント等の試聴スピーカーに加えてみるなど、工房の存在を生かした、オガワならではの提案をしていきたいです」。
修理工房の取材の後、リワイアーとオガワが企画したイベントも見学させてもらった記者は、新しい風を感じ、すがすがしい気持ちになっていた。
オガワのスピーカー修理工房は、オーディオ業界でも少数派である女性が立派に築き上げたものであり、その技術は次代に受け継がれつつある。
その伝統を確かな足場とし、オーディオ販売においても、次世代へのフレッシュな提言を発信しているオーディオラボオガワ。今後の動きが非常に楽しみだ。