公開日 2019/07/22 06:40
約60万円の“モンスター”ゲーミングノートPC、オーディオ面はどう? ASUS「ROG G703GXR」をチェック
【編集部ミニレビュー】
この6月、ASUSのゲーミングブランド「ROG」から多数のゲーミングノートPCが発表された(関連ニュース)。3ラインに分かれた製品ラインナップのうち、特に異彩を放っていたのは約100万円の分離/合体型PC「Mothership GZ700GX」、そして今回取り上げる約60万円の “モンスター級ゲーミングノート” 「G703GXR」(G703GXR-I9KR2080)だ。
「ノートPCサイズで極限まで高性能化した」というG703GXRは、その重厚過ぎる見た目からしてすでにタダモノではないが、内部も発表時点の最高クラスのパーツで占められている。CPUは定格2.4GHz、最大5GHzまでブーストできる8コア16スレッドのインテル「Core i9-9980HK」。GPU(グラフィック)NVIDIA「GeForce RTX2080」、しかも「Max-Qデザイン」と呼ばれるノートPC向けの薄型タイプではなく通常版を採用しており、このコンビがノートPCに載っているというだけでかなりのインパクトがある。
そのほかのスペックも、データの読み書きを3台のSSDに分散する “RAID 0” 構成により、もともと早い読み書き速度をさらに高めた512GBのSSD×3、容量と読み書き速度のバランスに優れる1TBのハイブリッドHDD、64GBものメモリ、ゲームの素早い視点移動でも残像が残りにくく、操作に対する表示レスポンスも早い144Hz駆動/3ms応答の17.3型ディスプレイなどなど盛りだくさん。あとはマウスを加えるだけで、トップクラスのゲーミング環境一式が完成するというわけだ。
一方、これだけのハイスペックを備えたぶん、消費電力も凄まじい。カタログに掲載されている最大消費電力約560Wというのは、それこそデスクトップPC用電源の話をしているのかと錯覚する数値。ゲームをしながら充電するにはACアダプターが2本必要となるし、バッテリーも搭載こそしているものの、ゲーム実行時は満充電から1時間持つか持たないかというくらいに消耗が激しい。バッテリーというか、停電時の非常電源に近い。
発熱もかなり大きく、排気ごとゴミや埃を吹き飛ばす機構を備えた大型ファンと、8本のヒートパイプで対策してある。ファンはこれまた一般的なものより強力な12V駆動。ソフトウェアから回転率を最大にしてみると12畳の会議室いっぱいに動作音が響くほどだが、そのぶん冷却性能はたのもしい。
こうした仕様を見ると、ノートPCという枠に収まってこそいるものの、鞄で気軽に持ち歩くようなスタイルを想定していないのは明らか。例えば大きなゲームイベントや大会、あるいは長期の出張等で使い慣れた自前のハイスペック環境をまるごと持ち込みたいという場面に対応する「持ち運びもできるデスクトップゲーミングPC」といった存在だ。
さて、ここまでG703GXRの通り一遍のスペックを紹介してきたが、オーディオ的にもちょっと気になる点がある。ディスプレイ下に貼ってあるシールの通り、本機のヘッドホン出力はオーディオファンにお馴染みESS社のオーディオチップを搭載している。それも、わざわざ明示するだけのことはあり、DACは「ES9018K2M」、アンプは「SABRE9601K」と、世代は少々前とはいえ、実績十分のHi-Fiチップを採用しているのだ。
もちろん、良いチップを使うだけで音質の良さが約束されるわけではなく、ノイズ対策など周辺の設計も込みで音が決まってくるのだが、一般的に音質を期待されることが少ないノートPCの内蔵サウンドで、オーディオ向けパーツを奢った結果がどんなものかはちょっと興味をそそられる。今回ASUS JAPANから実機をお借りできたので、そのあたりもチェックしてみた。
筆者が毎日使っているウォークマン「NW-WM1A」のUSB-DACモードを比較対象として、変えられる範囲で音響効果をすべて切った上で、これまた筆者手持ちのイヤホン、ヘッドホン、ゲーミングヘッドセットを交互に繋ぎ変えながら複数のFLAC音源を再生した。
結論としては、やはり全体的なノイズの少なさ、音場の広がりや透明感ではオーディオ再生専用機にかなわないが、音の立ち上がりのクッキリ感や低域のパワフルさでは、ノートPCの内蔵サウンドと侮れないものがあった。
ホールの演奏で残響がゆっくり消えていく場面や、アコースティックな楽器の独奏など、静寂さ、繊細の表現には物足りなさを感じる一方、音数の多いポップスやロックでは各パートをしっかり鳴らし分けている。大型ヘッドホンのAudioquest「Nighthawk Carbon」でも低音の量感不足を感じることはない。普段、必要にかられて仕事用ノートPCにイヤホンを挿すたびスカスカ、モヤモヤのサウンドを聴いていた身からすると、ちょっと驚かされた。
本来想定されている用途であるところのゲームも試してみた。大型アップデートが入ったばかりのバトルロイヤル系FPS『Apex Legends』と、DLCの発売を控え(PC版は冬までおあずけだが)活気が戻りつつある『Monster Hunter: World』の2タイトルを、それぞれ画質最高設定、ついでにWindows10に標準搭載された「Game DVR」録画機能でフルHD 60fps録画しながらプレイしたが、どちらも快適のひと言。
『Apex Legends』では144Hzディスプレイのおかげで激しく視点を動かしても残像感に惑わされずキャラクターを追えたし、ステレオ設定のままでも効果音の方向性が明瞭に聴き分けることができた。より描画負荷が高い『Monster Hunter: World』では、録画も含めてかなりの負荷をかけているはずなのに派手なエフェクトがいくつ重なっても安定したフレームレートが得られ、表示のカクつきや視認性でストレスを感じる場面はいっさい無かった。BGMの重厚なオーケストレーションもゴチャつかず、それでいて臨場感は十分だ。
G703GXRの性能/サイズ/価格の力の入りようには一般ユーザーは手を出しづらいかもしれないが、これだけの性能があれば動画の編集や配信などゲーム以外への応用も効くし、それでいてディスプレイ/キーボード/本体が一体ということで移動や設置に融通がきくのはデスクトップPCには無い長所だ。なにより「ノートPCの枠でここまでやれるんだぞ」という技術の進歩ぶりは一度体験してみる価値はあるだろう。
「ノートPCサイズで極限まで高性能化した」というG703GXRは、その重厚過ぎる見た目からしてすでにタダモノではないが、内部も発表時点の最高クラスのパーツで占められている。CPUは定格2.4GHz、最大5GHzまでブーストできる8コア16スレッドのインテル「Core i9-9980HK」。GPU(グラフィック)NVIDIA「GeForce RTX2080」、しかも「Max-Qデザイン」と呼ばれるノートPC向けの薄型タイプではなく通常版を採用しており、このコンビがノートPCに載っているというだけでかなりのインパクトがある。
そのほかのスペックも、データの読み書きを3台のSSDに分散する “RAID 0” 構成により、もともと早い読み書き速度をさらに高めた512GBのSSD×3、容量と読み書き速度のバランスに優れる1TBのハイブリッドHDD、64GBものメモリ、ゲームの素早い視点移動でも残像が残りにくく、操作に対する表示レスポンスも早い144Hz駆動/3ms応答の17.3型ディスプレイなどなど盛りだくさん。あとはマウスを加えるだけで、トップクラスのゲーミング環境一式が完成するというわけだ。
一方、これだけのハイスペックを備えたぶん、消費電力も凄まじい。カタログに掲載されている最大消費電力約560Wというのは、それこそデスクトップPC用電源の話をしているのかと錯覚する数値。ゲームをしながら充電するにはACアダプターが2本必要となるし、バッテリーも搭載こそしているものの、ゲーム実行時は満充電から1時間持つか持たないかというくらいに消耗が激しい。バッテリーというか、停電時の非常電源に近い。
発熱もかなり大きく、排気ごとゴミや埃を吹き飛ばす機構を備えた大型ファンと、8本のヒートパイプで対策してある。ファンはこれまた一般的なものより強力な12V駆動。ソフトウェアから回転率を最大にしてみると12畳の会議室いっぱいに動作音が響くほどだが、そのぶん冷却性能はたのもしい。
こうした仕様を見ると、ノートPCという枠に収まってこそいるものの、鞄で気軽に持ち歩くようなスタイルを想定していないのは明らか。例えば大きなゲームイベントや大会、あるいは長期の出張等で使い慣れた自前のハイスペック環境をまるごと持ち込みたいという場面に対応する「持ち運びもできるデスクトップゲーミングPC」といった存在だ。
さて、ここまでG703GXRの通り一遍のスペックを紹介してきたが、オーディオ的にもちょっと気になる点がある。ディスプレイ下に貼ってあるシールの通り、本機のヘッドホン出力はオーディオファンにお馴染みESS社のオーディオチップを搭載している。それも、わざわざ明示するだけのことはあり、DACは「ES9018K2M」、アンプは「SABRE9601K」と、世代は少々前とはいえ、実績十分のHi-Fiチップを採用しているのだ。
もちろん、良いチップを使うだけで音質の良さが約束されるわけではなく、ノイズ対策など周辺の設計も込みで音が決まってくるのだが、一般的に音質を期待されることが少ないノートPCの内蔵サウンドで、オーディオ向けパーツを奢った結果がどんなものかはちょっと興味をそそられる。今回ASUS JAPANから実機をお借りできたので、そのあたりもチェックしてみた。
筆者が毎日使っているウォークマン「NW-WM1A」のUSB-DACモードを比較対象として、変えられる範囲で音響効果をすべて切った上で、これまた筆者手持ちのイヤホン、ヘッドホン、ゲーミングヘッドセットを交互に繋ぎ変えながら複数のFLAC音源を再生した。
結論としては、やはり全体的なノイズの少なさ、音場の広がりや透明感ではオーディオ再生専用機にかなわないが、音の立ち上がりのクッキリ感や低域のパワフルさでは、ノートPCの内蔵サウンドと侮れないものがあった。
ホールの演奏で残響がゆっくり消えていく場面や、アコースティックな楽器の独奏など、静寂さ、繊細の表現には物足りなさを感じる一方、音数の多いポップスやロックでは各パートをしっかり鳴らし分けている。大型ヘッドホンのAudioquest「Nighthawk Carbon」でも低音の量感不足を感じることはない。普段、必要にかられて仕事用ノートPCにイヤホンを挿すたびスカスカ、モヤモヤのサウンドを聴いていた身からすると、ちょっと驚かされた。
本来想定されている用途であるところのゲームも試してみた。大型アップデートが入ったばかりのバトルロイヤル系FPS『Apex Legends』と、DLCの発売を控え(PC版は冬までおあずけだが)活気が戻りつつある『Monster Hunter: World』の2タイトルを、それぞれ画質最高設定、ついでにWindows10に標準搭載された「Game DVR」録画機能でフルHD 60fps録画しながらプレイしたが、どちらも快適のひと言。
『Apex Legends』では144Hzディスプレイのおかげで激しく視点を動かしても残像感に惑わされずキャラクターを追えたし、ステレオ設定のままでも効果音の方向性が明瞭に聴き分けることができた。より描画負荷が高い『Monster Hunter: World』では、録画も含めてかなりの負荷をかけているはずなのに派手なエフェクトがいくつ重なっても安定したフレームレートが得られ、表示のカクつきや視認性でストレスを感じる場面はいっさい無かった。BGMの重厚なオーケストレーションもゴチャつかず、それでいて臨場感は十分だ。
G703GXRの性能/サイズ/価格の力の入りようには一般ユーザーは手を出しづらいかもしれないが、これだけの性能があれば動画の編集や配信などゲーム以外への応用も効くし、それでいてディスプレイ/キーボード/本体が一体ということで移動や設置に融通がきくのはデスクトップPCには無い長所だ。なにより「ノートPCの枠でここまでやれるんだぞ」という技術の進歩ぶりは一度体験してみる価値はあるだろう。