HOME > インタビュー > マランツ澤田氏に訊く、ヘッドホンアンプ「HD-DAC1」で実現したHi-Fiアンプの理想形とは?

同社初のUSB-DAC/ヘッドホンアンプの全貌に迫る

マランツ澤田氏に訊く、ヘッドホンアンプ「HD-DAC1」で実現したHi-Fiアンプの理想形とは?

公開日 2014/10/02 11:30 構成:ファイル・ウェブ編集部 小澤貴信
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
シングルエンドのヘッドホン出力にこだわった理由
■バランス駆動端子はあえて非搭載。だからこそ実現した駆動力

ゲイン0dBの無帰還型バッファーアンプ搭載というアンプの理想を体現したHD-DAC1のヘッドホンアンプ。澤田氏はそのサウンドについても「狙ったとおりのものになった」と自信を持って語っていた。しかし、澤田氏は「これによって犠牲になったものがある」とはっきりと述べた。

HD-DAC1がバランス端子非搭載となった理由、それは音質を最優先したからだと澤田氏は断言する

「現在、こうしたタイプのUSB-DAC内蔵ヘッドホンアンプでは、バランス駆動出力を搭載することがトレンドです。ところが、HD-DAC1は最後発モデルなのに、バランス端子がありません」と澤田氏。

「バランス駆動に対応するということは、アンプがバランス構成になるということです。片チャンネルで「+」用と「−」用のアンプが要りますので、合計4基のアンプが必要になります。これだけアンプ構成に凝ると、この筐体に4基のアンプを収めることはできません。さらに言えば、HD-DAC1ではアンプ後段に大きな電流を流していまが、これを2組にすれば、電源容量と放熱も2倍の性能が求められます。この筐体サイズ、そしてこの価格帯ではまず無理ですね。ご覧の通り、今でも中身はいっぱいいっぱいなのですから」(澤田氏)。

流行に迎合して、1基あたりのアンプの性能を下げてまで小型化を推し進めてバランス駆動を行うくらいなら、シングルエンドに注力したアンプを搭載した方が音質は良くなる。そんな確固としたビジョンと音作りへの強い意志が、マランツ開発陣にはあったのだろう。

HD-DAC1の内部を見れば、シングルエンド駆動のために最大限の物量が投入されていることがすぐわかる

澤田氏はこうも語っていた。「わざわざフルディスクリート構成にしなくても、オペアンプで増幅して後段もパワーパックを使えば、ヘッドホンアンプは作れます。電流も、HD-DAC1ほど大量に流さなくてもなんとかなります。そうすれば、バランス構成でもハーフサイズの筐体に収まります。でも、そんなの全然面白くないですよ。我々は“本来の駆動力”を味わっていただきたいのです」。

マランツは一貫してディスクリート構成アンプにこだわり、Hi-Fiオーディオではメインの回路にオペアンプを使うことはない。オペアンプにも良いものがあるのは確かだが、基本的には汎用が前提となっているという。ディスクリートアンプの最大のメリットは、それぞれの回路に特化した音質を最優先したアンプを組めることだと、澤田氏はマランツの思想を解説してくれた。

次ページUSB-DACの音質はNA8005を超えた!?

前へ 1 2 3 4 5 6 7 次へ

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE