公開日 2018/09/01 10:53
時流に合った「スマートネス」を見つける
<IFA>ソニーが目指す方向性のヒントは“初代ウォークマン”、キーマンに訊いた「変わるべきところ・変わらないもの」
山本 敦
IFA 2018に出展するソニーは、今年もベルリンを舞台に多くの新製品を発表した。特にオーディオはユニークで魅力的な製品が目白押しだ。
これほどまでに強力なラインナップを揃えた背景には、変革の時期を迎えているエレクトロニクス市場のこれからを、ソニーが勝ち抜くための大事な秘策も隠れているのだろうか。新たにソニービデオ&サウンドプロダクツ(株)V&S事業部 企画ブランディング部門の部門長に就任した黒住吉郎氏にIFAの会場でインタビューできる機会を得た。
■等しくクオリティを追求したバラエティ豊かな製品群
黒住氏はかつて、ソニーグループの携帯電話メーカーであるソニーモバイルコミュニケーションズに在籍し、フィーチャーフォン全盛の頃には音楽再生機能にフォーカスした「ウォークマンケータイ」や、カメラを強化した「Cybershotケータイ」など銘機の商品企画を担当した人物だ。初のハイレゾ対応スマホとしてXperiaの歴史に名を刻む「Xperia Z2」にも主要メンバーとして携わった。
2014年秋にソニーモバイルを退社後は国内の大手通信事業者の商品企画担当を歴任した後、昨年末からふたたびソニーブランドのオーディオ製品を強くするためのブランディング戦略を任される立場に就くことになった。
まずは、IFAで発表したソニーのオーディオ関連の新製品を俯瞰した印象から黒住氏に語ってもらった。
「ソニービデオ&サウンドプロダクツとして、とても彩り豊かなバラエティが打ち出せたと自負しています。ヘッドホンはいまとても激しい競争にさらされていますが、一昨年にソニーが発売したMDR-1000Xがブレイクして以来、ハイクラスのノイズキャンセリング機能を搭載するワイヤレスヘッドホンの中ではリーディングポジションを獲得しています。今回発表した第3世代にあたるWH-1000XM3(関連ニュース/インタビュー)は、業界最高峰のノイズキャンセリング性能を更新したうえ、音質にも磨きをかけた新製品として私も期待をかけています」(黒住氏)。
2016年にデビューしたソニーのオーディオ製品群のSignature Seriesには、8月半ばに香港で開催されたオーディオ・ビジュアルのイベントでお披露目された新製品「DMP-Z1」(関連記事)と「IER-Z1」(関連ニュース)が加わる。
おそらくどちらもファイル・ウェブをご覧の皆様が特に注目する製品だと思う。黒住氏は「いい音で音楽をじっくりと楽しむ」という普遍的な価値を、ソニーが持てる先進技術を突き詰めながら「いま最高のカタチ」として切り出した新製品がこの2機種だと胸を張る。
「スマートフォンで楽しむ音楽再生が一般に普及したいま、リスニングスタイルとしてのワイヤレス化や、装着性も含めたイヤホンのイノベーションである完全ワイヤレス化については、ソニーとしてトレンドをしっかりと追いかけて行きたいと思っています。また、それぞれにいまベストな形としてWH-1000XM3やWF-SP900(関連ニュース)をIFAで発表できました。DMP-Z1はまたこれとは別に、良質なオーディオ製品で好きな音楽を落ち着いて楽しむことの大切さを教えてくれる商品です。私もじっくりと試聴する機会を得て、あらためて実感した次第です。DMP-Z1はバッテリーを内蔵しているので、一応持ち運びもできる製品ですが、音質を追求した結果のバッテリー採用ですので、アウトドアに持ち歩いて音楽を聴くための製品ではありません」(黒住氏)。
ハイレゾや音楽配信、スマートフォンにワイヤレスオーディオなど、音楽を心地よく楽しむことの価値が、音質に機能、装着感やデザインも含めて様々な角度から注目されている今だからこそ、黒住氏いわく「ソニーのオーディオ製品の大きな強みである、きめ細かなグラデーション構成が自然にできあがっていた」という。ハイレゾ対応ウォークマンの入門機として、毎年単位の着実なアップデートを遂げてきた「NW-A55」(関連ニュース)もソニーの重要なプロダクトだ。
「高品位なサウンドと多彩な機能、高いポータビリティの三拍子が揃う正攻法のハイレゾエントリーモデルを使っていただいたお客様が、本機を音楽の楽しみ方をより深く追求していくきっかけとしてもらえたら、大変うれしく思います。いまウォークマンだけでもAシリーズに始まり、ZX300シリーズからWM1シリーズ、そしてDMP-Z1へと順にステップアップできる明快な道筋ができています。きめ細かい商品群のグラデーションの中で、ソニーのクオリティを追求する一貫した姿勢をお客様に示すこともできていると考えています」(黒住氏)。
■クリエーターとオーディオファン。人と人とを近づけることがソニーの役割
オーディオだけでなく、テレビやスマートフォン、ホームアプライアンスまで現在あらゆるエレクトロニクスの分野が大きな転換期を迎えつつある。刻一刻と変化する環境の中で、ソニーは自社製品の強みを意識しながら、同時に周囲の環境の変化を察知して柔軟かつスピーディーに対応していくことも求められている。黒住氏が考え方を次のように説いている。
「私が以前に主戦場としていた携帯電話の市場は、かつてはエリクソンやモトローラ、ノキアなど通信基地局のベンダーがリーダーに君臨していて、それぞれにビジネスの延長線上としてコンシューマー向けの端末を開発・販売していました。ところがスマートフォンの登場によって、コミュニケーションだけでなく音楽や動画再生など様々な用途に通信端末を活用する時代が到来して、アップルやグーグルなど当時は携帯電話と無関係だったIT企業が現在の主導権を握っています」(黒住氏)。
黒住氏は今後、同様の変化がオーディオ市場にも起きる可能性があると指摘している。
これほどまでに強力なラインナップを揃えた背景には、変革の時期を迎えているエレクトロニクス市場のこれからを、ソニーが勝ち抜くための大事な秘策も隠れているのだろうか。新たにソニービデオ&サウンドプロダクツ(株)V&S事業部 企画ブランディング部門の部門長に就任した黒住吉郎氏にIFAの会場でインタビューできる機会を得た。
■等しくクオリティを追求したバラエティ豊かな製品群
黒住氏はかつて、ソニーグループの携帯電話メーカーであるソニーモバイルコミュニケーションズに在籍し、フィーチャーフォン全盛の頃には音楽再生機能にフォーカスした「ウォークマンケータイ」や、カメラを強化した「Cybershotケータイ」など銘機の商品企画を担当した人物だ。初のハイレゾ対応スマホとしてXperiaの歴史に名を刻む「Xperia Z2」にも主要メンバーとして携わった。
2014年秋にソニーモバイルを退社後は国内の大手通信事業者の商品企画担当を歴任した後、昨年末からふたたびソニーブランドのオーディオ製品を強くするためのブランディング戦略を任される立場に就くことになった。
まずは、IFAで発表したソニーのオーディオ関連の新製品を俯瞰した印象から黒住氏に語ってもらった。
「ソニービデオ&サウンドプロダクツとして、とても彩り豊かなバラエティが打ち出せたと自負しています。ヘッドホンはいまとても激しい競争にさらされていますが、一昨年にソニーが発売したMDR-1000Xがブレイクして以来、ハイクラスのノイズキャンセリング機能を搭載するワイヤレスヘッドホンの中ではリーディングポジションを獲得しています。今回発表した第3世代にあたるWH-1000XM3(関連ニュース/インタビュー)は、業界最高峰のノイズキャンセリング性能を更新したうえ、音質にも磨きをかけた新製品として私も期待をかけています」(黒住氏)。
2016年にデビューしたソニーのオーディオ製品群のSignature Seriesには、8月半ばに香港で開催されたオーディオ・ビジュアルのイベントでお披露目された新製品「DMP-Z1」(関連記事)と「IER-Z1」(関連ニュース)が加わる。
おそらくどちらもファイル・ウェブをご覧の皆様が特に注目する製品だと思う。黒住氏は「いい音で音楽をじっくりと楽しむ」という普遍的な価値を、ソニーが持てる先進技術を突き詰めながら「いま最高のカタチ」として切り出した新製品がこの2機種だと胸を張る。
「スマートフォンで楽しむ音楽再生が一般に普及したいま、リスニングスタイルとしてのワイヤレス化や、装着性も含めたイヤホンのイノベーションである完全ワイヤレス化については、ソニーとしてトレンドをしっかりと追いかけて行きたいと思っています。また、それぞれにいまベストな形としてWH-1000XM3やWF-SP900(関連ニュース)をIFAで発表できました。DMP-Z1はまたこれとは別に、良質なオーディオ製品で好きな音楽を落ち着いて楽しむことの大切さを教えてくれる商品です。私もじっくりと試聴する機会を得て、あらためて実感した次第です。DMP-Z1はバッテリーを内蔵しているので、一応持ち運びもできる製品ですが、音質を追求した結果のバッテリー採用ですので、アウトドアに持ち歩いて音楽を聴くための製品ではありません」(黒住氏)。
ハイレゾや音楽配信、スマートフォンにワイヤレスオーディオなど、音楽を心地よく楽しむことの価値が、音質に機能、装着感やデザインも含めて様々な角度から注目されている今だからこそ、黒住氏いわく「ソニーのオーディオ製品の大きな強みである、きめ細かなグラデーション構成が自然にできあがっていた」という。ハイレゾ対応ウォークマンの入門機として、毎年単位の着実なアップデートを遂げてきた「NW-A55」(関連ニュース)もソニーの重要なプロダクトだ。
「高品位なサウンドと多彩な機能、高いポータビリティの三拍子が揃う正攻法のハイレゾエントリーモデルを使っていただいたお客様が、本機を音楽の楽しみ方をより深く追求していくきっかけとしてもらえたら、大変うれしく思います。いまウォークマンだけでもAシリーズに始まり、ZX300シリーズからWM1シリーズ、そしてDMP-Z1へと順にステップアップできる明快な道筋ができています。きめ細かい商品群のグラデーションの中で、ソニーのクオリティを追求する一貫した姿勢をお客様に示すこともできていると考えています」(黒住氏)。
■クリエーターとオーディオファン。人と人とを近づけることがソニーの役割
オーディオだけでなく、テレビやスマートフォン、ホームアプライアンスまで現在あらゆるエレクトロニクスの分野が大きな転換期を迎えつつある。刻一刻と変化する環境の中で、ソニーは自社製品の強みを意識しながら、同時に周囲の環境の変化を察知して柔軟かつスピーディーに対応していくことも求められている。黒住氏が考え方を次のように説いている。
「私が以前に主戦場としていた携帯電話の市場は、かつてはエリクソンやモトローラ、ノキアなど通信基地局のベンダーがリーダーに君臨していて、それぞれにビジネスの延長線上としてコンシューマー向けの端末を開発・販売していました。ところがスマートフォンの登場によって、コミュニケーションだけでなく音楽や動画再生など様々な用途に通信端末を活用する時代が到来して、アップルやグーグルなど当時は携帯電話と無関係だったIT企業が現在の主導権を握っています」(黒住氏)。
黒住氏は今後、同様の変化がオーディオ市場にも起きる可能性があると指摘している。