公開日 2018/11/14 06:30
D/A変換における独自技術についても解説
マランツのSACDプレーヤー「SA-12」開発陣が語り尽くす、ディスクリートDACの核心<前編>
インタビュー・構成:山之内 正
マランツのSACDプレーヤー/USB-DACの最新モデルとして今夏に登場した「SA-12」(関連ニュース)は、メカニズムやD/Aコンバーター(DAC)など心臓部の構成を上位機種のSA-10からそのまま受け継いでいる。コア部分が変わらないのに価格を約2分の1に抑えられたのは、筐体構造や一部パーツの変更のほか、バランス回路をアンバランス化して回路規模をダウンサイジングしたためだという。
だが、そこでの音質差は極端に大きなものではないはずだし、クロック回路の性能はむしろSA-10を上回るというから、前作に当たるSA-14からSA-12への進化はたんなるモデルチェンジの範囲を超えていると言って良さそうだ。
SA-10と共通する要素のなかで特に注目したいのがMMM(Marantz Musical Mastering)と名付けられた独自設計のDACである。音質改善のカギとなる技術であり、ディスクリート構成のDACを採用すること自体、ミドルレンジのSACDプレーヤーとしてはチャレンジでもある。SA-12に続いてMMMを採用を決めた背景や、そもそもなぜDACの自社開発に踏み切ったのか、知りたくなってくる。
そこで、開発に携わった設計の河原祥三氏とサウンドマネージャーの尾形好宣氏にMMMが完成するまでの詳細なストーリーを明かしてもらうことにした。DAC技術の核心に触れる興味深い事実が明らかになる。
■オリジナルDACという未知の領域へのチャレンジ
ーー DACの独自開発に取り組んだ理由をまず教えてください。
尾形氏 信号の入口と出口に相当するメカニズムとHDAMを積むアナログ回路に続いて、DAC前段に相当するデジタルフィルターまでは自社で設計してきました。残されたDAC後段を独自に開発すれば、自分たちが求める音をさらに追求できます。そして、これまで継続して取り組んできたCDプレーヤー開発の集大成という意味もありました。
ーー 事実上チップのなかでブラックボックス化されていたDACの中身にあえて踏み込むのはチャレンジだと思いますが、実際にはどんな方法で取り組んだのですか?
河原氏 目標とするDACの構成は、「PCMをDSDに変換する部分」(MMM-Streaming)と「DSDをアナログに変換する部分」(MMM-Conversion)の2つに大きく分けられるのですが、前段は社内のライナー・フィンクが信号処理の技術に詳しかったので、それを応用することにしました。後段はDSD信号をローパスフィルターにかけるという非常にシンプルな構成が基本なので、特別なことをしなくても良いのではと考えました。
ーー そのアプローチはうまくいきましたか?
河原氏 未知の領域に踏み込んだ、と思いました。試行錯誤の末に完成に至ったというのが実際です。
ーー PCMをDSDに変換し、後段でシンプルにアナログ変換するという基本的な流れは当初から変わっていないのですね?
河原氏 そうですね、PCMだけでなくDSDも取り扱えるDACの方が合理的だということで、そこはあまり議論もなく自然に決まりました。
ーー 具体的な数値目標も設定されたのでしょうか?
河原氏 DSDをアナログに変換するだけなら、抵抗1本とコンデンサー1個でローパスフィルターにになるので音は出ます。しかし、十分な性能を得るのは非常に難しい。最初はせいぜい歪率で0.1%ぐらいしかならなかったのです。従来のフラグシップだと0.001%ぐらいですから桁が2つ違うんです。数値と音はイコールではありませんが、やはり0.001%のラインは超えたいという思いがありました。それが当初の目標になりました。
■DSD信号をアナログ変換する際に独自の処理を行いジッターを除去
ーー 歪を抑えるためにどんな方法で取り組んだのですか?
だが、そこでの音質差は極端に大きなものではないはずだし、クロック回路の性能はむしろSA-10を上回るというから、前作に当たるSA-14からSA-12への進化はたんなるモデルチェンジの範囲を超えていると言って良さそうだ。
SA-10と共通する要素のなかで特に注目したいのがMMM(Marantz Musical Mastering)と名付けられた独自設計のDACである。音質改善のカギとなる技術であり、ディスクリート構成のDACを採用すること自体、ミドルレンジのSACDプレーヤーとしてはチャレンジでもある。SA-12に続いてMMMを採用を決めた背景や、そもそもなぜDACの自社開発に踏み切ったのか、知りたくなってくる。
そこで、開発に携わった設計の河原祥三氏とサウンドマネージャーの尾形好宣氏にMMMが完成するまでの詳細なストーリーを明かしてもらうことにした。DAC技術の核心に触れる興味深い事実が明らかになる。
■オリジナルDACという未知の領域へのチャレンジ
ーー DACの独自開発に取り組んだ理由をまず教えてください。
尾形氏 信号の入口と出口に相当するメカニズムとHDAMを積むアナログ回路に続いて、DAC前段に相当するデジタルフィルターまでは自社で設計してきました。残されたDAC後段を独自に開発すれば、自分たちが求める音をさらに追求できます。そして、これまで継続して取り組んできたCDプレーヤー開発の集大成という意味もありました。
ーー 事実上チップのなかでブラックボックス化されていたDACの中身にあえて踏み込むのはチャレンジだと思いますが、実際にはどんな方法で取り組んだのですか?
河原氏 目標とするDACの構成は、「PCMをDSDに変換する部分」(MMM-Streaming)と「DSDをアナログに変換する部分」(MMM-Conversion)の2つに大きく分けられるのですが、前段は社内のライナー・フィンクが信号処理の技術に詳しかったので、それを応用することにしました。後段はDSD信号をローパスフィルターにかけるという非常にシンプルな構成が基本なので、特別なことをしなくても良いのではと考えました。
ーー そのアプローチはうまくいきましたか?
河原氏 未知の領域に踏み込んだ、と思いました。試行錯誤の末に完成に至ったというのが実際です。
ーー PCMをDSDに変換し、後段でシンプルにアナログ変換するという基本的な流れは当初から変わっていないのですね?
河原氏 そうですね、PCMだけでなくDSDも取り扱えるDACの方が合理的だということで、そこはあまり議論もなく自然に決まりました。
ーー 具体的な数値目標も設定されたのでしょうか?
河原氏 DSDをアナログに変換するだけなら、抵抗1本とコンデンサー1個でローパスフィルターにになるので音は出ます。しかし、十分な性能を得るのは非常に難しい。最初はせいぜい歪率で0.1%ぐらいしかならなかったのです。従来のフラグシップだと0.001%ぐらいですから桁が2つ違うんです。数値と音はイコールではありませんが、やはり0.001%のラインは超えたいという思いがありました。それが当初の目標になりました。
■DSD信号をアナログ変換する際に独自の処理を行いジッターを除去
ーー 歪を抑えるためにどんな方法で取り組んだのですか?