公開日 2022/08/23 06:40
【インタビュー】アイリスオーヤマ執行役員・本所翔平氏
BtoB事業で躍進 アイリスオーヤマ、“生活者の不満解決”から“日本の課題解決”へ
PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
生活の不満を解決する “なるほど家電” でキラリと存在感を放つアイリスオーヤマ。東日本大震災を契機に法人向けLED照明でスタートを切ったBtoB事業においても、コロナ禍で社会貢献を果たしたAIサーマルカメラやリモート環境を整えるためのオフィス設備、さらにはロボティクス事業、エアソリューション事業など次々に事業を拡大し、注目を集めている。ここでは、同社BtoB事業グループの責任者・本所翔平氏にご登場いただき、社会課題を解決する “ジャパンソリューション” を掲げて躍進するBtoB事業の強さの秘密に迫る。
アイリスオーヤマ株式会社
BtoB事業グループ メーカー本部 執行役員 本部長
ロボティクス事業部 事業部長
本所翔平氏
プロフィール/ほんじょしょうへい。1987年(昭和62年)2月10日生まれ。岩手県出身。2009年3月 東北大学工学部 機械・知能航空工学科卒業。2009年4月 アイリスオーヤマ株式会社入社。2013年 法人向けLED照明事業部へ異動。2018年7月 同副事業部長、2019年1月 同事業部長、2021年12月 ロボティクス事業部長を兼任(現任)、2022年1月 BtoB事業グループ メーカー本部 執行役員 本部長に就任。趣味は温泉めぐり、愛犬の散歩。
―― 近々では6月30日に教育現場向けの “書けるプロジェクター” 、7月19日にはストアソリューション事業への参入を発表されるなど、BtoB事業への積極的な展開が目を引きます。御社ではこのBtoB事業について、売上げ第一ではない「ジャパンソリューション」の考え方を打ち出されています。この点からまずお聞かせください。
本所 アイリスオーヤマのすべてのソリューションは「ユーザーイン発想」から生まれます。BtoCの商品開発においても必ず商品を使う生活者を思い、どうすれば生活がより豊かになるのかを考え、消費者も気づいていないニーズを見つけ、開発を行っています。社会や自治体など生活基盤に携わる課題を、商品やサービスを通じてどう解決できるかが常に頭の中にあります。
BtoB事業の始まりはLED照明事業、きっかけは東日本大震災でした。宮城県に本社を置くわれわれも被災した一企業ですが、東日本では初めて計画停電が行われるなど、電力不足が切実な問題としてクローズアップされました。東日本大震災が発生した2011年頃、日本の全電力の約15%が照明に使われており、LED化することで6%の電力削減が見込まれていました。そこで当時の社長であった大山健太郎(現アイリスグループ会長)が、節電のためにLED化を図る企業や家庭はきっと増える、いや、増やす義務があると考え、LED照明の開発を加速することを決断しました。LED化のニーズに新製品開発と供給力の向上でお応えし、「日本の社会課題を解決する」という大きなテーマへ向けた取り組みが始まりました。
こうしてスタートしたBtoB事業は、コロナ禍にも非接触で体温が計れるAIサーマルカメラやさらなる省エネを実現する無線制御システムなど、世の声の課題にタイムリーにお応えしてきました。昨年からソフトバンクロボティクスグループさんと一緒に始めたロボティクス事業は、我が国の労働人口減少が見込まれるなかでロボットによるDXで解決を目指すものです。社会の変化や危機的状況に対し、まだまだたくさん解決できることがあるはずです。「生活者の不満解決」から「日本の課題解決」へ、ジャパンソリューションへと事業の幅を広げることで、アイリスオーヤマのBtoB事業はさらなる広がりを見せています。
社会は変化し、その時その時に求められるニーズも変わります。会社もそれに合わせて変わることで、事業を拡大できる。何かに固執してしまえば、今は求められても、10年後にはどうなるかわかりません。アイリスオーヤマは業種の枠を超えた「業態メーカー」として常に変化をしていきます。変化していくからこそ世の中に貢献でき、生活者に受け入れていただけるのだと考えています。企業理念においても「会社の目的は永遠に存続すること」、そして「生活提案型企業として市場を創造する」を謳っています。
「アイリスオーヤマって何屋さんですか」と以前からよく聞かれるんです(笑)。家電にマスク、法人向けビジネス、飲料水やお米までやっている。本当に幅広い事業を手掛けていますが、そのすべてに共通しているのは、冒頭に申し上げた「ユーザーイン発想」であり、社会課題に向き合っていることです。
―― 次から次へと新たなBtoB事業を発表されています。そのスピード感の秘密はどこにあるのでしょう。
本所 大きく関係しているのはやはり、意思決定の早さではないでしょうか。テレビ番組等でも取り上げられた、毎週月曜日に開催する「新商品開発会議」は、意思決定に携わるメンバーが一堂に会して行われます。社員が新商品をはじめとする様々なテーマのプレゼンを行い、経営トップがその場で即断即決します。社長決裁が下りるわけですから、事業は加速度的に進行します。
BtoC、BtoBの区別はなく、先週の実績の確認、販売するための戦略、TV CMや広報リリースなど、経営にかかわるすべてがここで報告され、各部署で情報が共有されます。一般的な会社では、部署ごとにリレー方式で根回しややりとりが行われますが、この会議には全部署が参加していますから、その場で一気に全部署が一丸となれます。さらに、一般的な会社では月一回の会議を、当社は毎週行っていますから、世の中で起こった変化に対し、来月ではなく、来週対応できます。根底にあるのは、この意思決定の早さですね。
―― アイリスオーヤマのDNAというわけですね。
本所 社長のお墨付きが得られるわけですから、チャレンジしていく上でもこれ以上に動きやすい環境はありません。社員もチャレンジ精神旺盛で、「何かあればやってみよう」と目を輝かせています。世の中がこれだけスピードアップして変化しているのに、自分たちが変わらなければ取り残されてしまう、それくらいの危機感を皆が持っています。変化することが何も怖くないんですよ。
昨秋「アイ ラブ アイデア」というコーポレートメッセージを打ち出しました。企業理念やユーザーイン発想、ジャパンソリューションといったキーワードをよりわかりやすく表現したものです。社内でも浸透が早く、「アイデアミーティングをやろう」といった機会がさらに増え、勢いが感じられます。
また、全社員が最低1件の日報を書く「ICジャーナル」というシステムもあります。単なる業務報告ではなく、自分が次にどういうアクションを起こすのか、また、「今日お会いしたお客様にこのようなことを言われたので、この事業にはこんなチャンスもあると思う」「こういう切り口でお客様に提案したら非常に刺さった。この業態も同じような課題を抱えていると思う」など、日々の仕事を通じて社員が感じたことを自らの言葉で発信します。制限なしに誰もが自由に読めますから、何が起きているかが手に取るようにわかり、社内での情報共有を徹底しています。
アイリスオーヤマ株式会社
BtoB事業グループ メーカー本部 執行役員 本部長
ロボティクス事業部 事業部長
本所翔平氏
プロフィール/ほんじょしょうへい。1987年(昭和62年)2月10日生まれ。岩手県出身。2009年3月 東北大学工学部 機械・知能航空工学科卒業。2009年4月 アイリスオーヤマ株式会社入社。2013年 法人向けLED照明事業部へ異動。2018年7月 同副事業部長、2019年1月 同事業部長、2021年12月 ロボティクス事業部長を兼任(現任)、2022年1月 BtoB事業グループ メーカー本部 執行役員 本部長に就任。趣味は温泉めぐり、愛犬の散歩。
■きっかけは東日本大震災。電力不足解消へ立ち上げたLED照明事業
―― 近々では6月30日に教育現場向けの “書けるプロジェクター” 、7月19日にはストアソリューション事業への参入を発表されるなど、BtoB事業への積極的な展開が目を引きます。御社ではこのBtoB事業について、売上げ第一ではない「ジャパンソリューション」の考え方を打ち出されています。この点からまずお聞かせください。
本所 アイリスオーヤマのすべてのソリューションは「ユーザーイン発想」から生まれます。BtoCの商品開発においても必ず商品を使う生活者を思い、どうすれば生活がより豊かになるのかを考え、消費者も気づいていないニーズを見つけ、開発を行っています。社会や自治体など生活基盤に携わる課題を、商品やサービスを通じてどう解決できるかが常に頭の中にあります。
BtoB事業の始まりはLED照明事業、きっかけは東日本大震災でした。宮城県に本社を置くわれわれも被災した一企業ですが、東日本では初めて計画停電が行われるなど、電力不足が切実な問題としてクローズアップされました。東日本大震災が発生した2011年頃、日本の全電力の約15%が照明に使われており、LED化することで6%の電力削減が見込まれていました。そこで当時の社長であった大山健太郎(現アイリスグループ会長)が、節電のためにLED化を図る企業や家庭はきっと増える、いや、増やす義務があると考え、LED照明の開発を加速することを決断しました。LED化のニーズに新製品開発と供給力の向上でお応えし、「日本の社会課題を解決する」という大きなテーマへ向けた取り組みが始まりました。
こうしてスタートしたBtoB事業は、コロナ禍にも非接触で体温が計れるAIサーマルカメラやさらなる省エネを実現する無線制御システムなど、世の声の課題にタイムリーにお応えしてきました。昨年からソフトバンクロボティクスグループさんと一緒に始めたロボティクス事業は、我が国の労働人口減少が見込まれるなかでロボットによるDXで解決を目指すものです。社会の変化や危機的状況に対し、まだまだたくさん解決できることがあるはずです。「生活者の不満解決」から「日本の課題解決」へ、ジャパンソリューションへと事業の幅を広げることで、アイリスオーヤマのBtoB事業はさらなる広がりを見せています。
社会は変化し、その時その時に求められるニーズも変わります。会社もそれに合わせて変わることで、事業を拡大できる。何かに固執してしまえば、今は求められても、10年後にはどうなるかわかりません。アイリスオーヤマは業種の枠を超えた「業態メーカー」として常に変化をしていきます。変化していくからこそ世の中に貢献でき、生活者に受け入れていただけるのだと考えています。企業理念においても「会社の目的は永遠に存続すること」、そして「生活提案型企業として市場を創造する」を謳っています。
「アイリスオーヤマって何屋さんですか」と以前からよく聞かれるんです(笑)。家電にマスク、法人向けビジネス、飲料水やお米までやっている。本当に幅広い事業を手掛けていますが、そのすべてに共通しているのは、冒頭に申し上げた「ユーザーイン発想」であり、社会課題に向き合っていることです。
■意思決定の早さが生み出すチャレンジスピリット
―― 次から次へと新たなBtoB事業を発表されています。そのスピード感の秘密はどこにあるのでしょう。
本所 大きく関係しているのはやはり、意思決定の早さではないでしょうか。テレビ番組等でも取り上げられた、毎週月曜日に開催する「新商品開発会議」は、意思決定に携わるメンバーが一堂に会して行われます。社員が新商品をはじめとする様々なテーマのプレゼンを行い、経営トップがその場で即断即決します。社長決裁が下りるわけですから、事業は加速度的に進行します。
BtoC、BtoBの区別はなく、先週の実績の確認、販売するための戦略、TV CMや広報リリースなど、経営にかかわるすべてがここで報告され、各部署で情報が共有されます。一般的な会社では、部署ごとにリレー方式で根回しややりとりが行われますが、この会議には全部署が参加していますから、その場で一気に全部署が一丸となれます。さらに、一般的な会社では月一回の会議を、当社は毎週行っていますから、世の中で起こった変化に対し、来月ではなく、来週対応できます。根底にあるのは、この意思決定の早さですね。
―― アイリスオーヤマのDNAというわけですね。
本所 社長のお墨付きが得られるわけですから、チャレンジしていく上でもこれ以上に動きやすい環境はありません。社員もチャレンジ精神旺盛で、「何かあればやってみよう」と目を輝かせています。世の中がこれだけスピードアップして変化しているのに、自分たちが変わらなければ取り残されてしまう、それくらいの危機感を皆が持っています。変化することが何も怖くないんですよ。
昨秋「アイ ラブ アイデア」というコーポレートメッセージを打ち出しました。企業理念やユーザーイン発想、ジャパンソリューションといったキーワードをよりわかりやすく表現したものです。社内でも浸透が早く、「アイデアミーティングをやろう」といった機会がさらに増え、勢いが感じられます。
また、全社員が最低1件の日報を書く「ICジャーナル」というシステムもあります。単なる業務報告ではなく、自分が次にどういうアクションを起こすのか、また、「今日お会いしたお客様にこのようなことを言われたので、この事業にはこんなチャンスもあると思う」「こういう切り口でお客様に提案したら非常に刺さった。この業態も同じような課題を抱えていると思う」など、日々の仕事を通じて社員が感じたことを自らの言葉で発信します。制限なしに誰もが自由に読めますから、何が起きているかが手に取るようにわかり、社内での情報共有を徹底しています。