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公開日 2024/06/28 06:30
驚くべきコストパフォーマンスを紐解く

ここまでこだわるの!? “最強コスパ”入門スピーカー「Monitor XT」の秘密が凄い

生形三郎

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約30年ぶりに日本へ再上陸して以来、“圧倒的なセールス”を記録しているのが、Polk Audio(ポークオーディオ)のスピーカーたちだ。

1972年にアメリカ東海岸ボルチモアの地で創業した同社は、ライブサウンドを原点とし、まるでコンサートの最前列にいるような、楽しく迫力豊かな音像表現を大切にしている。

設立当初より「手軽な価格で最高のスピーカーを作る」というポリシーを貫き、最エントリークラスとなるMonitor “XTシリーズ”は、まさにそれを体現するものとなっている。

オーディオ評論家 生形三郎氏(左)、ディーアンドエムホールディングス 澤田龍一氏(右)

本記事では、とりわけ技術的なアプローチにフォーカスして、Monitor XTシリーズの驚くべきコストパフォーマンスを紐解くべく、スピーカー開発にも精通するディーアンドエムホールディングスのシニアサウンドマスターである澤田龍一氏に詳細を伺った。

珍しい「パッシブラジエーター」をあえて採用する意味



生形 価格からは信じられないパフォーマンスをもつMonitor XTシリーズですが、もっとも大きな特徴として、フロア型の2モデルにパッシブラジエーター方式を採用している点がとても印象的でした。

これはドロンコーンと呼ばれる、磁気回路を持たない振動板によって低音再生を補強する方式です。フロア型の「XT70」や「XT60」に搭載されている下側2基のユニットがそれで、ユニット裏側に放射された音のエネルギーを使って振動板を駆動し、バスレフと同等の低域エネルギーを得るものですね。

「MXT70」49,500円/1台・税込

澤田 はい、パッシブラジエーターは、1960年代〜1970年代にKEFやJBLなどをはじめ、各社で採用されて流行した方式です。メリットは3つあります。まず、ダクトを用いずウーファーユニット同様の振動板を用いるため、低域を放射する面積が稼げるので、必要な帯域を効果的に補強できます。

もう一つは、調整がしやすいということです。振動板の裏側に付けたオモリの質量によって増強する周波数を変更できるため、バスレフよりもチューニングが容易なのです。そして、最後はエアノイズがないこと。バスレフ型はポートという形状から、開口部からの風切り音の発生は避けられませんが、パッシブラジエーターではそれは発生しません。

生形 良いことずくめですが、いまのスピーカーで一般的ではないということから、デメリットがありそうですね。

澤田 デメリットは、サスペンションを持っているため、Qという値が高くなり、狙った周波数対帯にエネルギーが集中してしまいやすい、つまり音にクセが出やすいということです。よって、調整の入念さが求められます。その点でPolk Audioは、過去に「MODEL7」というスピーカーで1975年から採用していて、ノウハウや実績があります。

当時はカット&トライ(実際に作り試行錯誤)でしたが、今はみんなコンピューター解析で出来てしまいます。一見同じような手法に見えるけど、アプローチの仕方はぜんぜん違うのです。

生形 なるほど、調整をすること自体は容易だが、同時に、実に高度な使いこなしが求められると。同社はなぜエントリークラスでこの方式を採用したのでしょう?

澤田 おそらく、使用するスピーカーユニットやキャビネットとの兼ね合いでしょう。安価なシリーズのため、キャビネットの強度はそこまで高められません。バスレフ方式は箱の強度不足が音に現れやすく、パコパコというような音になりがちです。しかしパッシブラジエーターでは、密閉構造になるために、ある程度それを抑えられます。

MXT70のパッシブラジエーター

生形 とても合点がいきます。確かにこのクラスのフロア型は、強度不足がどうしても否めません。まさにウィークポイントを効果的に克服しているわけですね。

澤田 さらに、キャビネットの大きさ自体の設計も、板取りから設計しているのでコストが最小限に抑えられています。キャビネットの大きさが物量コストに直結しますので。

生形 キャビネットの材料となる板材は、規格で決まった大きなサイズの板から切り出しますが、端材をなるべく出さずに、その規格サイズから効率よく板取りするしているのですね。これまた徹底されたコスト管理ですね。

スピーカーユニットの磁石は“上位機よりも大きい”

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