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公開日 2018/05/07 12:47
<山本敦のAV進化論 第157回>
勢いに乗る中国家電市場の「今」。 IFA 姉妹イベント「CE China」レポート
山本敦
世界最大級のエレクトロニクスショー「IFA」の姉妹イベントとして、2016年に誕生した「CE China」が今年も5月3日から5日までの3日間、中国・シンセンの国際展示会場「Shenzhen Convention and Exhibition Center」で開催された。
■「CE China」が中国市場に根付いてきた
3度目の開催を迎えた今年のイベントには、地元中国や欧州の企業が多数ブースを出展。中国でも伸び盛りの、インターネット接続機能を持つコネクテッド家電と、これに関連するサービスが一堂に会した。
CE Chinaは一般コンシューマー向け展示会というよりも、どちらかと言えばBtoBショーとしての色彩を強く帯びている。そのためイベント会場の至るところで、バイヤーと出展社が熱のこもった商談を交わす姿が目に飛び込んでくる。
CE Chinaが誕生するまで、中国のエレクトロニクス市場には国内のOEM/ODM企業を海外に進出させるためのトレードショーは存在していたが、中国国外のブランドを招いて行われる、大規模な展示会は存在しなかった。
そのためCE Chinaは立ち上げ当初から、欧州を中心とする大手企業やスタートアップが中国進出を図る際に有効なイベントになることを期待されてきた。今年の熱気あふれる会場の様子は、CE Chinaがいよいよ中国市場に深く根付いてきたことをうかがわせるものだった。
■「CE China」を中国大手家電小売りの蘇寧(Sunning)も応援
イベント初日の3日に実施されたCE Chinaの開幕セレモニーには、メッセ・ベルリン社のIFAグローバル統括本部長イエンズ・ハイテッカー氏が登壇した。
ハイテッカー氏は壇上で「CE Chinaが毎年ここシンセンで開催されるようになってから、徐々にその認知が浸透してきた手応えがある。これからの中国のエレクトロニクス市場の発展に貢献できることをうれしく思う」と語り、主催者であるメッセ・ベルリンとして、出展社と来場者の双方に最高のミーティングポイントを提供する考えを伝えた。
ハイテッカー氏に続いて壇上に上がったのは、中国で最大規模といわれる大手家電小売り企業のSuning(蘇寧電器)グループのDai Fengjun氏だ。
Dai氏はCE Chinaを支えてきたSuningグループも「中国のエレクトロニクス市場とIFAとのつながりが日増しに強くなっている手応えがある」とし、これからもCE Chinaが中国を代表するブランドや、フレッシュなスタートアップを世界に押し上げるイベントになるよう、力強く支えたいとエールを送った。
今年、CE Chinaのメインホールに最大規模のブースを構えたのは、中国の総合エレクトロニクスブランドのハイアールだった。同社のブースにはスマートテレビからホームアプライアンスまで、実に多種多様な“インターネットにつながる家電”が並べられ、中国を代表するエレクトロニクスブランドがコネクテッド家電に対して貪欲に挑戦する姿勢を強烈に見せつけていた。
ハイアールのコネクテッド家電の大半は既に中国全土に“商品”として販売されている。スマートテレビには独自開発のOSをのせて、ハイアールの家電と接続した時に様々な機能が使えるようになる自前のクラウドサービス「U+(ユープラス)」も用意する。
スマートテレビを使って、リビングからエアコン、冷蔵庫、空気清浄機、ロボット掃除機やオーブンなどのコネクテッド家電を、自在にコントロールできるコンセプトが、新しもの好きな中国の富裕層の期待とミートしているようだ。
スマートテレビに付属するリモコンにはマイクも内蔵されていて、音声でスマート家電の遠隔操作が行える。動画コンテンツのストリーミング再生も当たり前のように楽しめるが、ユーザーの視聴履歴を元にしたレコメンデーション機能も充実しているという。
ブースに展示されていたスマート冷蔵庫は、ハイアールのコネクテッド家電の中でも特にキャラクターが際立っていた。Androidベースの独自OSを搭載した冷蔵庫のフロントパネルにはタッチ操作に対応する21.5インチの液晶ディスプレイやスピーカーも内蔵する。
大型の画面を付けたことで、Webで検索したレシピを画面に表示しながら調理したり、eコマースサイトから食材の注文が手早くできる機能が本機の特徴として紹介されていた。
なお商品の購入時にはAlipay(支付宝)、または中国で人気のメッセージアプリから派生した「WeChat Pay」によるモバイル決済を、支払方法として選択できる。
ベッドの敷き布団の下に敷くスリープセンサーは、眠っている間の睡眠サイクルを生体センサーで取得して睡眠のスコアをスマホで確認、評価できるというIoTデバイスだ。ハイアールがラインナップとして持っている様々なスマート家電は、そのアイデアは既に欧米で商品化されている製品をベースにしているであろうことは間違いないのだが、驚くほどの速度感で商品化を実現していたことに中国市場の勢いを感じずにはいられなかった。
■独自のHMDやスマートパッドなども展示
地元・シンセンのROYOLEは、CE Chinaのブースに3Dヘッドマウントディスプレイ「MOON」を出展していた。
本体に搭載する液晶ディスプレイの解像度はフルHD。ノンシースルータイプのヘッドマウントディスプレイなので、明るく色鮮やかな映像を楽しむことができた。ディスプレイにヘッドホンも一体にしたオールインワンデザインだが、バッテリー内蔵のメディアプレーヤーは別筐体としている。
コントローラーはヘッドホンの右側イヤーカップの表側にタッチセンサーリモコンが搭載されている。中国本土では昨年から4,999元(約8.5万円)で販売が始まった。
メディアプレーヤーに内蔵する128GBのメモリーに動画や音楽、写真などを詰め込んで楽しむ仕様。ワイヤレス接続には対応していないので、ヘッドマウントディスプレイとメディアプレーヤーの間は専用ケーブルで固定されている。メディアプレーヤーにはmicro HDMI端子も搭載しているので、ディスクプレーヤーやスマホ・タブレット、ゲームコンソールをダイレクトに接続してコンテンツの視聴を行うことも可能だ。
同社が展示していた製品の中にはもうひとつユニークなスマートパッド「RoWrite」もあった。
RoWriteは特殊な電子ペンを使って、普通の紙のメモパッドに描いた文字や画が、BluetoothでペアリングしたiPadやAndroid系デバイスのアプリを使ってリアルタイムにデジタルデータ化できる、いわゆるデジタル文具だ。本機も中国では昨年の12月から799元(約1.3万円)で発売されている。ふつうのボールペンと同じ書き味が得られるところも特徴的だ。
同社広報担当のConnie Lieu氏は、MOONとRoWriteを昨年のIFA、今年のCESに出展て大きな反響が得られたという。
「CE Chinaは中国市場向けの展示会にとどまらず、グローバルマーケットに進出するための玄関口として魅力を感じている。期間中に世界各国からイベントに訪れるトレードビジターやジャーナリストに、当社の製品の魅力を効果的にアピールできるイベントとして信頼を置いている」とLieu氏は語り、今秋のIFAにもぜひ出展したいと意気込みを語っていた。
■シンセンの街に渦巻く熱気に圧倒された
Yamazokiは“ヤマゾキ”と読む、2015年にドイツで設立されたオーディオ系スタートアップだ。CE Chinaに出展した「MOTAK PRO」はヘッドホンのような形をしたBluetoothスピーカーだ。
同社のスタッフは「ワンボックスのワイヤレススピーカーでは明瞭なステレオイメージを得るのに限界がある。このように左右別筐体のスピーカーでポータビリティの高いものが手元にあれば、いつどこでも心地よいステレオ再生が楽しめる」と、本機を開発した意図を説明する。本体はアウトドアで使うことも見越した防滴設計として、内蔵バッテリーによる最大駆動は14時間に到達するという。
本機は既にドイツで販売を始めているが、CE Chinaに出展してアジアの販売代理店を獲得することが同社の狙いだ。中国での販売価格は599元(約1.1万円)を見込んでいるという。
Yamazokiのスタッフは「当社のように規模の小さなスタートアップが中国市場に進出するためには、CE Chinaへの出展はとても効果的。地元の企業やバイヤーとのコネクションを出展の3日間にしっかりと作りたい」と熱っぽく語っていた。
ちなみにYamazokiというブランドの名前は、予想通り日本語の語感からもじったものだという。「世界に打って出るには製品のクオリティをアピールすることが大事。自社製品の出来映えには十分な自信を持っているが、世界的に信頼度の高い日本ブランドのイメージを借りることにより、さらに弾みを付けたいと考えた」のだという。
今年のCE Chinaから初めてセミナー形式のイベント「IFA Retail University」も実施されることになった。初日の3日に実施されたイベントにはCE Chinaに出展する10社が参加。Yamazokiもその中の1社に名を連ねて、自社商品の魅力を集まった大勢の来場者に向けてアピールしていた。
シンセンではSuningのフラグシップストアが来年のオープンを控えているという。同社のストアには顔認証のテクノロジーを活用した自動決済システムも導入されるそうだ。
筆者は今回2年ぶりにCE Chinaを取材したが、新しい超高層ビルが建ち並ぶ景色も含め、目がくらむほどのスピードで変化するシンセンの街に渦巻く熱気に圧倒されてしまった。
■「CE China」が中国市場に根付いてきた
3度目の開催を迎えた今年のイベントには、地元中国や欧州の企業が多数ブースを出展。中国でも伸び盛りの、インターネット接続機能を持つコネクテッド家電と、これに関連するサービスが一堂に会した。
CE Chinaは一般コンシューマー向け展示会というよりも、どちらかと言えばBtoBショーとしての色彩を強く帯びている。そのためイベント会場の至るところで、バイヤーと出展社が熱のこもった商談を交わす姿が目に飛び込んでくる。
CE Chinaが誕生するまで、中国のエレクトロニクス市場には国内のOEM/ODM企業を海外に進出させるためのトレードショーは存在していたが、中国国外のブランドを招いて行われる、大規模な展示会は存在しなかった。
そのためCE Chinaは立ち上げ当初から、欧州を中心とする大手企業やスタートアップが中国進出を図る際に有効なイベントになることを期待されてきた。今年の熱気あふれる会場の様子は、CE Chinaがいよいよ中国市場に深く根付いてきたことをうかがわせるものだった。
■「CE China」を中国大手家電小売りの蘇寧(Sunning)も応援
イベント初日の3日に実施されたCE Chinaの開幕セレモニーには、メッセ・ベルリン社のIFAグローバル統括本部長イエンズ・ハイテッカー氏が登壇した。
ハイテッカー氏は壇上で「CE Chinaが毎年ここシンセンで開催されるようになってから、徐々にその認知が浸透してきた手応えがある。これからの中国のエレクトロニクス市場の発展に貢献できることをうれしく思う」と語り、主催者であるメッセ・ベルリンとして、出展社と来場者の双方に最高のミーティングポイントを提供する考えを伝えた。
ハイテッカー氏に続いて壇上に上がったのは、中国で最大規模といわれる大手家電小売り企業のSuning(蘇寧電器)グループのDai Fengjun氏だ。
Dai氏はCE Chinaを支えてきたSuningグループも「中国のエレクトロニクス市場とIFAとのつながりが日増しに強くなっている手応えがある」とし、これからもCE Chinaが中国を代表するブランドや、フレッシュなスタートアップを世界に押し上げるイベントになるよう、力強く支えたいとエールを送った。
今年、CE Chinaのメインホールに最大規模のブースを構えたのは、中国の総合エレクトロニクスブランドのハイアールだった。同社のブースにはスマートテレビからホームアプライアンスまで、実に多種多様な“インターネットにつながる家電”が並べられ、中国を代表するエレクトロニクスブランドがコネクテッド家電に対して貪欲に挑戦する姿勢を強烈に見せつけていた。
ハイアールのコネクテッド家電の大半は既に中国全土に“商品”として販売されている。スマートテレビには独自開発のOSをのせて、ハイアールの家電と接続した時に様々な機能が使えるようになる自前のクラウドサービス「U+(ユープラス)」も用意する。
スマートテレビを使って、リビングからエアコン、冷蔵庫、空気清浄機、ロボット掃除機やオーブンなどのコネクテッド家電を、自在にコントロールできるコンセプトが、新しもの好きな中国の富裕層の期待とミートしているようだ。
スマートテレビに付属するリモコンにはマイクも内蔵されていて、音声でスマート家電の遠隔操作が行える。動画コンテンツのストリーミング再生も当たり前のように楽しめるが、ユーザーの視聴履歴を元にしたレコメンデーション機能も充実しているという。
ブースに展示されていたスマート冷蔵庫は、ハイアールのコネクテッド家電の中でも特にキャラクターが際立っていた。Androidベースの独自OSを搭載した冷蔵庫のフロントパネルにはタッチ操作に対応する21.5インチの液晶ディスプレイやスピーカーも内蔵する。
大型の画面を付けたことで、Webで検索したレシピを画面に表示しながら調理したり、eコマースサイトから食材の注文が手早くできる機能が本機の特徴として紹介されていた。
なお商品の購入時にはAlipay(支付宝)、または中国で人気のメッセージアプリから派生した「WeChat Pay」によるモバイル決済を、支払方法として選択できる。
ベッドの敷き布団の下に敷くスリープセンサーは、眠っている間の睡眠サイクルを生体センサーで取得して睡眠のスコアをスマホで確認、評価できるというIoTデバイスだ。ハイアールがラインナップとして持っている様々なスマート家電は、そのアイデアは既に欧米で商品化されている製品をベースにしているであろうことは間違いないのだが、驚くほどの速度感で商品化を実現していたことに中国市場の勢いを感じずにはいられなかった。
■独自のHMDやスマートパッドなども展示
地元・シンセンのROYOLEは、CE Chinaのブースに3Dヘッドマウントディスプレイ「MOON」を出展していた。
本体に搭載する液晶ディスプレイの解像度はフルHD。ノンシースルータイプのヘッドマウントディスプレイなので、明るく色鮮やかな映像を楽しむことができた。ディスプレイにヘッドホンも一体にしたオールインワンデザインだが、バッテリー内蔵のメディアプレーヤーは別筐体としている。
コントローラーはヘッドホンの右側イヤーカップの表側にタッチセンサーリモコンが搭載されている。中国本土では昨年から4,999元(約8.5万円)で販売が始まった。
メディアプレーヤーに内蔵する128GBのメモリーに動画や音楽、写真などを詰め込んで楽しむ仕様。ワイヤレス接続には対応していないので、ヘッドマウントディスプレイとメディアプレーヤーの間は専用ケーブルで固定されている。メディアプレーヤーにはmicro HDMI端子も搭載しているので、ディスクプレーヤーやスマホ・タブレット、ゲームコンソールをダイレクトに接続してコンテンツの視聴を行うことも可能だ。
同社が展示していた製品の中にはもうひとつユニークなスマートパッド「RoWrite」もあった。
RoWriteは特殊な電子ペンを使って、普通の紙のメモパッドに描いた文字や画が、BluetoothでペアリングしたiPadやAndroid系デバイスのアプリを使ってリアルタイムにデジタルデータ化できる、いわゆるデジタル文具だ。本機も中国では昨年の12月から799元(約1.3万円)で発売されている。ふつうのボールペンと同じ書き味が得られるところも特徴的だ。
同社広報担当のConnie Lieu氏は、MOONとRoWriteを昨年のIFA、今年のCESに出展て大きな反響が得られたという。
「CE Chinaは中国市場向けの展示会にとどまらず、グローバルマーケットに進出するための玄関口として魅力を感じている。期間中に世界各国からイベントに訪れるトレードビジターやジャーナリストに、当社の製品の魅力を効果的にアピールできるイベントとして信頼を置いている」とLieu氏は語り、今秋のIFAにもぜひ出展したいと意気込みを語っていた。
■シンセンの街に渦巻く熱気に圧倒された
Yamazokiは“ヤマゾキ”と読む、2015年にドイツで設立されたオーディオ系スタートアップだ。CE Chinaに出展した「MOTAK PRO」はヘッドホンのような形をしたBluetoothスピーカーだ。
同社のスタッフは「ワンボックスのワイヤレススピーカーでは明瞭なステレオイメージを得るのに限界がある。このように左右別筐体のスピーカーでポータビリティの高いものが手元にあれば、いつどこでも心地よいステレオ再生が楽しめる」と、本機を開発した意図を説明する。本体はアウトドアで使うことも見越した防滴設計として、内蔵バッテリーによる最大駆動は14時間に到達するという。
本機は既にドイツで販売を始めているが、CE Chinaに出展してアジアの販売代理店を獲得することが同社の狙いだ。中国での販売価格は599元(約1.1万円)を見込んでいるという。
Yamazokiのスタッフは「当社のように規模の小さなスタートアップが中国市場に進出するためには、CE Chinaへの出展はとても効果的。地元の企業やバイヤーとのコネクションを出展の3日間にしっかりと作りたい」と熱っぽく語っていた。
ちなみにYamazokiというブランドの名前は、予想通り日本語の語感からもじったものだという。「世界に打って出るには製品のクオリティをアピールすることが大事。自社製品の出来映えには十分な自信を持っているが、世界的に信頼度の高い日本ブランドのイメージを借りることにより、さらに弾みを付けたいと考えた」のだという。
今年のCE Chinaから初めてセミナー形式のイベント「IFA Retail University」も実施されることになった。初日の3日に実施されたイベントにはCE Chinaに出展する10社が参加。Yamazokiもその中の1社に名を連ねて、自社商品の魅力を集まった大勢の来場者に向けてアピールしていた。
シンセンではSuningのフラグシップストアが来年のオープンを控えているという。同社のストアには顔認証のテクノロジーを活用した自動決済システムも導入されるそうだ。
筆者は今回2年ぶりにCE Chinaを取材したが、新しい超高層ビルが建ち並ぶ景色も含め、目がくらむほどのスピードで変化するシンセンの街に渦巻く熱気に圧倒されてしまった。
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