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公開日 2018/05/22 17:29
8Kリアルタイム中継技術なども
<NHK技研公開>8K放送向け新技術多数。4倍速スロー再生や“フルスペック8K”リアルタイム伝送など
編集部:川田菜月
NHK放送技術研究所が各種研究成果を一般に披露する「技研公開2018」が、5月24日(木)から5月27日(日)まで開催される。本年は2020年までの3年において、8KやVR技術などの「リアリティーイメージング」、インターネットを活用した「コネクテッドメディア」、AI技術などを活用した「スマートプロダクション」を3つの柱とし、さらに先の未来を見据えて新しい放送技術とサービス創造を目指すとしている。
本日、一般公開に先立ってプレス向けプレビューが行われた。本稿では、放送技術をメインとする「リアリティーイメージング」の分野より、8K放送開始に向けた様々な取り組みとして、8K4倍速スローモーションシステムや8K移動伝送技術をメインにをレポートする。
■8K 4倍速スロー再生は、2018年ロシアW杯で実用開始予定
8K映像を通常の4倍速相当にあたる毎秒240枚で撮影できる「3板式8K高速度カメラ」と、4倍速8K映像をリアルタイムに記録しながら毎秒60枚のスローモーション再生が可能な装置を開発。昨年にも試作展示が行われていたが(関連記事)、今年は8K高速度カメラとスロー再生装置を組み合わせた「8K 4倍速スローモーションシステム」としてデモ展示している。
高速アナログ - デジタル変換期を備えた3,300万画素の1.25インチ CMOSセンサーを新たに開発。半導体には高速化・高機能化に優れるとされる相補性金属酸化膜を採用しており、3板式高速度カメラではこのCMOSセンサーを3枚搭載、8K 240Hzでの撮影を可能にした。合わせてカメラからの高速な信号を処理して8K出力する制御装置も開発、光4芯カメラケーブル1本でカメラヘッド・CCU間の約400Gbpsの信号を伝送する。
スローモーション再生装置では、圧縮技術とSSD並列化技術により記録装置を高速化。容量は32TBで、8K 240Hz映像をリアルタイムに圧縮して最大4時間の記録が可能となる。なお、4時間以上になると自動的に古い映像から削除して新たに記録を続けるとのこと。さらに映像記録をしながら、同時に8K 60Hzでのスロー再生も可能。T型コントローラーから可変速再生操作、プレイリスト作成機能などを備える。
NHK技研では本技術を今後8Kスポーツ番組制作に活用する予定としており、現在は2018年ロシアW杯の8K放送に向けて準備を進めているとのこと。
さらに生中継放送に向けた技術として、フレーム周波数120Hzのフルスペック8Kスーパーハイビジョン映像を、8K放送規格に準拠した形でリアルタイムに伝送可能なエンコーダーおよびデコーダーを開発した。本技術は(株)富士通研究所との共同開発によるもので世界初とのこと。
8K 120Hzのデータ量は現在の8K試験放送の2倍となるため、放送や通信回線による伝送実現には高速圧縮する必要がある。新開発のエンコーダーではHEVC/H.265方式を用いて1/1000に程度に圧縮、8K放送の規格に準拠したストリームに合成してリアルタイムに信号出力することができる。
圧縮信号を伸張するためのデコーダー側ではソフトウェア処理によりリアルタイムに復号が可能。また、エンコーダーから出力される信号は、現在の8K試験放送に用いられているデコーダー側で60Hz部分のみを復号することが可能で、1つの映像信号から8K 120Hzの復号と60Hz部分のみを抽出した復号を同時に処理できるとのこと。
これらを用いて、様々な伝送路を利用してフルスペック8K映像によるスポーツなどの生中継が実現できるという。また今後はさらなる画質改善を図っていくとのこと。
もう一つの中継技術として、双方向通信機能を用いた8K移動伝送技術を展示。マラソンや駅伝などのロードレース番組を4K/8K制作に向けて、8K映像の移動生中継の実現を目指し、総務省からの委託研究として無線伝送装置(FPU)の開発を行っている。
FPUはニュースやスポーツ中継など、様々な場所から映像や音声を放送局へ伝送する可搬型の無線伝送装置で、マラソン中継などでは走行する中継車からの映像を伝送するため移動中継用FPUが使用されている。
これまでは周波数1.2GHz/2.3GHz帯において17.5MHzの帯域幅を使用し、送受信の両方で同じ周波数で複数無線信号を多重伝送するMIMO技術を用いて、2送信2受信の双方向通信により最大44Mbpsのハイビジョン信号を伝送していた。
新開発の8K移動中継用FPUでは、送受信数を4送信4受信に拡大。さらにMIMO技術に、移動時に変動する伝搬路の状態に応じて伝送パラメーターを自動的に最適値に変更する適応送信制御方式を採用。これにより、映像の乱れや伝送誤りを防止するため、移動時に使用する伝搬路の最低値に合わせて伝送していた従来と比較して、同じ周波数・帯域幅で3倍以上となる最大145Mbpsでの8K移動伝送を可能にした。
FPUで受信した無線IF信号をイーサネットで伝送する技術も合わせて展示。これにより受信したアナログ信号をデジタル化し、アンテナ間をケーブルで繋いでまとめてパケット伝送することが可能となったとのこと。本技術のさらなる性能改善に取り組み、実用化に向けて8K移動中継用FPUの標準規格化を進めていきたいとしている。
また、中継車での8K番組制作を可能とする「フルスペック8K中継制作システム」も展示。展示する中継車内には、カメラ、記録装置、スイッチャー、文字合成装置、フレームシンクロナイザー、映像モニター、波長多重伝送装置を搭載している。
今回新たに、長距離伝送が可能な1Uサイズの小型波長多重伝送装置を開発。光ファイバーを用いて非圧縮(144Gbps)で最大70kmの遠隔地に映像伝送が可能となり、パブリックビューイング会場へ直接劣化のない8K映像中継を映し出すことなどもできる。また、スイッチャーには新機能としてフルスペック8Kでは初となるピクチャーインピクチャー機能なども追加している。
本日、一般公開に先立ってプレス向けプレビューが行われた。本稿では、放送技術をメインとする「リアリティーイメージング」の分野より、8K放送開始に向けた様々な取り組みとして、8K4倍速スローモーションシステムや8K移動伝送技術をメインにをレポートする。
■8K 4倍速スロー再生は、2018年ロシアW杯で実用開始予定
8K映像を通常の4倍速相当にあたる毎秒240枚で撮影できる「3板式8K高速度カメラ」と、4倍速8K映像をリアルタイムに記録しながら毎秒60枚のスローモーション再生が可能な装置を開発。昨年にも試作展示が行われていたが(関連記事)、今年は8K高速度カメラとスロー再生装置を組み合わせた「8K 4倍速スローモーションシステム」としてデモ展示している。
高速アナログ - デジタル変換期を備えた3,300万画素の1.25インチ CMOSセンサーを新たに開発。半導体には高速化・高機能化に優れるとされる相補性金属酸化膜を採用しており、3板式高速度カメラではこのCMOSセンサーを3枚搭載、8K 240Hzでの撮影を可能にした。合わせてカメラからの高速な信号を処理して8K出力する制御装置も開発、光4芯カメラケーブル1本でカメラヘッド・CCU間の約400Gbpsの信号を伝送する。
スローモーション再生装置では、圧縮技術とSSD並列化技術により記録装置を高速化。容量は32TBで、8K 240Hz映像をリアルタイムに圧縮して最大4時間の記録が可能となる。なお、4時間以上になると自動的に古い映像から削除して新たに記録を続けるとのこと。さらに映像記録をしながら、同時に8K 60Hzでのスロー再生も可能。T型コントローラーから可変速再生操作、プレイリスト作成機能などを備える。
NHK技研では本技術を今後8Kスポーツ番組制作に活用する予定としており、現在は2018年ロシアW杯の8K放送に向けて準備を進めているとのこと。
さらに生中継放送に向けた技術として、フレーム周波数120Hzのフルスペック8Kスーパーハイビジョン映像を、8K放送規格に準拠した形でリアルタイムに伝送可能なエンコーダーおよびデコーダーを開発した。本技術は(株)富士通研究所との共同開発によるもので世界初とのこと。
8K 120Hzのデータ量は現在の8K試験放送の2倍となるため、放送や通信回線による伝送実現には高速圧縮する必要がある。新開発のエンコーダーではHEVC/H.265方式を用いて1/1000に程度に圧縮、8K放送の規格に準拠したストリームに合成してリアルタイムに信号出力することができる。
圧縮信号を伸張するためのデコーダー側ではソフトウェア処理によりリアルタイムに復号が可能。また、エンコーダーから出力される信号は、現在の8K試験放送に用いられているデコーダー側で60Hz部分のみを復号することが可能で、1つの映像信号から8K 120Hzの復号と60Hz部分のみを抽出した復号を同時に処理できるとのこと。
これらを用いて、様々な伝送路を利用してフルスペック8K映像によるスポーツなどの生中継が実現できるという。また今後はさらなる画質改善を図っていくとのこと。
もう一つの中継技術として、双方向通信機能を用いた8K移動伝送技術を展示。マラソンや駅伝などのロードレース番組を4K/8K制作に向けて、8K映像の移動生中継の実現を目指し、総務省からの委託研究として無線伝送装置(FPU)の開発を行っている。
FPUはニュースやスポーツ中継など、様々な場所から映像や音声を放送局へ伝送する可搬型の無線伝送装置で、マラソン中継などでは走行する中継車からの映像を伝送するため移動中継用FPUが使用されている。
これまでは周波数1.2GHz/2.3GHz帯において17.5MHzの帯域幅を使用し、送受信の両方で同じ周波数で複数無線信号を多重伝送するMIMO技術を用いて、2送信2受信の双方向通信により最大44Mbpsのハイビジョン信号を伝送していた。
新開発の8K移動中継用FPUでは、送受信数を4送信4受信に拡大。さらにMIMO技術に、移動時に変動する伝搬路の状態に応じて伝送パラメーターを自動的に最適値に変更する適応送信制御方式を採用。これにより、映像の乱れや伝送誤りを防止するため、移動時に使用する伝搬路の最低値に合わせて伝送していた従来と比較して、同じ周波数・帯域幅で3倍以上となる最大145Mbpsでの8K移動伝送を可能にした。
FPUで受信した無線IF信号をイーサネットで伝送する技術も合わせて展示。これにより受信したアナログ信号をデジタル化し、アンテナ間をケーブルで繋いでまとめてパケット伝送することが可能となったとのこと。本技術のさらなる性能改善に取り組み、実用化に向けて8K移動中継用FPUの標準規格化を進めていきたいとしている。
また、中継車での8K番組制作を可能とする「フルスペック8K中継制作システム」も展示。展示する中継車内には、カメラ、記録装置、スイッチャー、文字合成装置、フレームシンクロナイザー、映像モニター、波長多重伝送装置を搭載している。
今回新たに、長距離伝送が可能な1Uサイズの小型波長多重伝送装置を開発。光ファイバーを用いて非圧縮(144Gbps)で最大70kmの遠隔地に映像伝送が可能となり、パブリックビューイング会場へ直接劣化のない8K映像中継を映し出すことなどもできる。また、スイッチャーには新機能としてフルスペック8Kでは初となるピクチャーインピクチャー機能なども追加している。