ニュース
HOME > ニュース > AV&ホームシアターニュース
公開日 2018/05/31 13:00
SE100は6月中旬、SR15は7月下旬発売
Astell&Kern「A&futura SE100」は約22万円、「A&norma SR15」は約10万円【音質レポートあり】
編集部:小澤貴信
アユートは、Astell&Kernの新しいポータブルプレーヤーとして、「A&futura SE100」「A&norma SR15」を発表した。価格はいずれもオープンだが、A&futura SE100が直販サイト価格219,980円(税込)、A&norma SR15が直販サイト価格99,980円(税込)となる。
発売時期については、SE100が6月中旬発売を予定。SR15が7月下旬発売を見こんでいるが、時期がもう少し遅れる可能性もあるとのこと。
本日31日、アユートはA&futura SE100とA&norma SR15の製品発表会を開催した。発表会冒頭では、iriver/Astell&KernでAK事業部の責任者を務めるアレックス・アン氏も挨拶を行った。
「A&futura」(エーアンドフューチュラ)」「A&norma(エーアンドノーマ)」は、フラグシップライン「A&Ultima」(エーアンドウルティマ)に続く、Astell&Kern第4世代プレーヤーの新しいプロダクトラインとなる。「A&futura SE100」「A&norma SR15」はいずれも先日独ミュンヘンで開催されたHIGH END 2018で発表(関連ニュース/現地試聴レポ)。今回、日本市場への導入が正式発表されたかたちだ。
■A&futura SE100 − ES9038PROをシングル搭載
「A&futura SE100」はESS Technologyの最上位となる8ch DAC「ES9038PRO」をシングル搭載。384kHz/32bit PCM、11.2MHz DSDのネイティブ再生に対応する。ES9038PROのポータブルプレーヤーへの搭載は世界初とのこと。8ch DACの右4ch/左4chを全て使うことでより精度の高いD/A変換を可能にしている。
SP1000の開発ノウハウを継承した最新回路により、バランス出力時で出力 4.1Vrms、S/N 123dB@1kHzというスペックを実現。高出力化と高S/N化の両立させたとアピールする(ちなみにAK380はバランス時出力 2.3Vrms、同S/N 117dB。SP1000はバランス時出力 3.9Vrms、同S/N 122dB)。「ES9038PRO」のパフォーマンスを最大限引き出すとする。クロックには、高精度かつ800Fs(フェムト秒)という超低ジッターを実現する電圧制御水晶(VCXO)を採用する。
ヘッドホン出力は3.5mmアンバランス/2.5mmバランス端子を搭載。USB端子はSP1000と同様にUSB type Cを採用する。高速転送および急速充電にも対応する。
Octa-core CPU(8コア CPU)を搭載し、旗艦機SP1000と同様に最新世代のユーザーインターフェースを採用。デジタルオーディオの処理性能向上、さらなる起動の高速化、UIの高速レスポンスなどを可能としている。
USBオーディオ出力機能、USB-DAC機能も搭載。いずれも384kHz/32bit PCM、11.2MHz DSDに対応する。
ボディ素材はアルミニウム合金。サイズ感はSP1000に近いが、USB端子側から見ると平行四辺形のようにサイドに角度が付つけられた独特のデザインを採用。右サイドパネルには流線型のフォルムを採用している。また、SP1000ではボリュームノブと電源ボタンを一体化していたが、本機はボリュームノブと電源ボタンを個別に搭載している。
ディスプレイは5インチ(1,280×720)。内蔵ストレージは128GBで、micro SDカードスロットを1系統搭載。市販の9V/1.67A 急速充電対応ケーブルを用いれば、2時間で満充電が可能。連続再生時間は約11時間となる。外形寸法は75.8W×132.7H×15.3Dmm、質量は241g。
■SR15 − シーラス・ロジック製最新DACをデュアル搭載した小型機
「A&norma」は、シーラス・ロジックの最新DACチップ「CS43198」をL/R独立のデュアル搭載。192kHz/24bit PCM、2.8MHz DSDのネイティブ再生に対応する(ちなみにAK70MK2はDSDネイティブ再生非対応)。384kHz・352.8/32bit PCMは192kHz・176.4kHz/24bitに、5.6MHz DSDは176.4kHz/24bitにダウンコンバートして再生できる。
CS43198はシーラス・ロジック社の最高基準を満たすことを示すという“MasterHIFI”を冠したDACチップ。GNDもL/Rで独立させたデュアルDAC構成とすることで、高S/Nと広ダイナミックレンジ、クロストークの最小化を実現したとのこと。
本機はQuad-core CPUを搭載し、SP1000やSE100と同様の最新世代ユーザーインターフェースを採用。一方で3.3インチ・ディスプレイ(800×480)に最適化されている。
ヘッドホン出力は3.5mmアンバランス/2.5mmバランス端子を搭載。本機のUSB端子はUSB micro-Bとなる。
本機もUSBオーディオ出力機能、USB-DAC機能を搭載する。USBオーディオ出力は384kHz/32bit PCM、11.2MHz DSDに対応USB-DAC出力は96kHz/24bit PCMおよびDSD(PCM変換)に対応する。
ボディ素材にはアルミニウム合金を採用。手に握ったときに最適な角度になるようにディスプレを本体に対して斜めに配置した独特のデザインも特徴だ。内蔵ストレージは64GBで、micro SDカードスロットを1系統搭載。連続再生時間は約10時間となる。外形寸法は57.5W×99.7H×16.1Dmm、質量は154g。
SE100とSR15の共通点として、いずれもaptX対応のBluetooth機能、独自のネットワーク再生「AK Connect」を搭載する。
再生対応ファイル形式は、WAV、AIFF、FLAC、ALAC、APE、OGG、AAC、WMA、MP3、DFF、DSFとなる。
なお、SE100とSR15共に専用ケースは別売。発売時期は各モデル本体の発売タイミングと同時になるということだ。SE100については天然皮革トスカーナを用いたModern Navyをはじめ3色を展開予定で、直販サイト価格はいずれも13,980円。SR15についても3色を展開予定だが、価格は現時点で未定とのこと。
■「A&Ultima」「A&futura」「A&norma」の3ラインで展開
発表会では、「A&futura」「A&norma」という第四世代の新しいラインについても言及された。昨年の「A&Ultima SP1000」発表時に、今後、第四世代として「A&・・・」というラインが複数登場することが予告されていたが、今回「A&futura」「A&norma」として出そろったかたちだ。
Astell&Kernでは「A&Ultima」を同社全技術を投入した究極の“フラグシップライン”、「A&futura」を最先端技術を投入したHi-Fiクオリティを誇る“プレミアムライン”、「A&norma」をHi-Fiオーディオの出発点となる“スタンダードライン”として位置付けている。
発表会においてはこのシリーズ展開について「単なる上位・下位というクラス分けではなく、それぞれのカテゴリーをターゲットとして最適な製品開発を行っていく」と紹介された。その証左として各ラインでAKM、ESS、シーラス・ロジックと異なるDACチップを採用しており、今後もシリーズごとのコンセプトや個性を追求した製品開発を行っていくようだ。
なお、「AK70MKII」はこれらとは異なるシリーズである「カジュアルライン」の製品として今後も併売されていく。パフォーマンスラインに位置付けられる「KANN」も同様。これら“第四世代以外”のラインについても、今後新製品を投入していく予定があるとのことだ。
編集部員がSE100/SR15を試聴レポート
編集部:小澤貴信のレポート
■クリアネスが高くすっきりと抜けの良い「SE100」
Astell&Kernの新DAP「A&futura SE100」と「A&norma SR15」を短時間ながら試聴することができたので、ファーストインプレッションを紹介したい。どちらのモデルにも、Astell&KernとJH Audioがコラボしたイヤホン「Michelle」を組み合わせて試聴した。
まずはDACチップにES9038PROを搭載したことでも注目される「A&futura SE100」をアンバランス接続で聴く。一聴してわかるクリアネスの高さ、全帯域にわたる高解像、そして抜けの良いすっきりとしたサウンドが特徴と言える。
ノラ・ジョーンズ「Don't know why」を聴くと、各楽器の分離感が高く、さわやかで開放的な音調だ。クリアで見通しの良い音場に、活き活きとしたボーカルや各楽器が展開。音のひとつひとつは緻密で、響きの余韻は自然ですっきりしている。ベースやバスドラムもタイトで、適度に厚みがありつつ早さと抜けのよさが心地いい。
今回はフラグシップモデル「A&Ultima SP1000」と比較しながら聴いたのだが、SP1000が奥行き感や陰影まで描き出すのに対して、SE100は精巧な線画のような明快さが魅力と感じる。
特にロック系バンドサウンドではSE100の特徴が強く活きる。Weezer「Say It Ain't So」では、シンプルなバンドサウンドの各音が明快に分解されつつそれぞれ開放的に鳴る。ベースもよく制動が効いて、実に推進力が高い。スネアドラムの抜けやシンバルの解像感も印象的だ。
バランス接続の音も同じくMichelleで確認したが、アンバランス接続の音質と基本的に同じ傾向ながら、音の密度感や厚み、エネルギー感がさらに増すイメージだ。個人的には、バランス接続にすることでSE100の持ち味であるすっきりとした音に、低域を中心に適度に厚みが加わって、より好みのサウンドになった。
音の厚みや奥行きの描写、弱音の繊細な表現、抑揚などSP1000の音楽表現力はフラグシップにふさわしいものと改めて感じさせられた。一方でSE100は、ESSの最上位DACをシングル仕様で搭載したことが音質にも現れているのだろう、クリアネスと抜けの良さを前面に押し出した明快な高解像度サウンドを聴かせてくれる。SP1000の絶対的な表現力の高さは揺るぎないことを確認しつつ、高解像度志向のポータブルオーディオファンなら、むしろSE100のようなサウンドが好みという方も多いのではとも感じた。
続いて「A&norma SR15」を聴く。こちらもイヤホンにはMichelleを組み合わせ、「AK70MKII」との比較を軸に試聴した。シーラス・ロジック製DACをデュアル搭載という点で両機は共通するが、SR15はDACにより新しい「CS43198」を搭載する。
まずはアンバランス接続で試聴。そのサウンドについては、高解像度かつ上位機譲りのS/Nの高さを備えるなどAK70MKIIと方向性は同じくしつつ、より低域と高域によりメリハリを持たせ、音の厚みや色彩感も加わったという印象だ。キリンジ「エイリアンズ」を聴くと、いずれもフラットで抜けのよい高解像度サウンドだが、SR15はより音に厚みがあり、アコースティックギターの胴鳴りもより濃密で立体的だ。
SE100で再生した七尾旅人×やけのはら「Rollin' Rollin'」では冒頭のボーカルが生々しく、SEやシンセベースの重低音が重なるレイヤーも明瞭に分解。AK70MKIIのサウンドもクリアネスが高いのだが、こちらがよりさらりとした表現なのに対して、SR15はボーカルの艶っぽさや抑揚も一歩踏み込んで表現してくれる印象だ。
バランス駆動では、SR15も同じ音質傾向ながら低域がさらに厚みを増し、全帯域にわたってエネルギー感がアップする。「Don't Know Why」では各楽器をよりシャープかつパワフルに描画し、より細かい音まで拾い出して詳らかにする。
SP1000がAstell&Kernの到達点といえる高い音楽性を備えたサウンドを提示した後に、続く「A&・・・」がどのような音を聴かせてくれるのか楽しみにしていた。結果はというと、いずれも上位機が獲得したノイズの少なさ、高解像度といった美点を継承しつつ、それぞれ価格帯や搭載するDACを踏まえて個性が異なっている。だが、いずれも期待以上のサウンドを聴くことができた。その意味で、単なる「クラス分け」にとどまらない個性を、「A&・・・」を冠した第4世代の各機種それぞれ備えている。
編集部:成藤正宣のレポート
■リッチな音の余韻を再現してくれるSR15
今回Astell&Kernの新しいプロダクトラインを試聴するにあたり、同サイズの従来機種同士と比較して特徴を探った。
まずSR15とAK70MKII。聴感上の周波数帯域の広さ、音のクッキリ度合いなど、甲乙つけがたい点が多い。その中で気になったのは音の余韻。AK70MKIIでは早めにスッと消えてゆくが、SR15ではそれよりもゆっくりと減衰していく。オンマイクで楽器を録音した音源などでは、その消え際が特によく分かる。
またSR15では定位感も変化している。たとえばライブ音源を聴くと、演奏は前方、客席からの歓声は後方、と位置関係がはっきりとイメージできる。これに比べれば、AK70MKIIではボーカルの押し出しが強く、客席側の声もステージ中央側に寄って聴こえてしまうだろう。
続いてSE100とSP1000。やはり最上位モデルであるSP1000は音の繊細さ、解像感や定位の良さなど非常に優れたものがある。SE100はその長所をある程度引き継ぎつつ、新たに音のハリ/キレの良さという特徴を備えた。
具体的にはドラムスのストロークやサキソフォンのソロなどが、あくまで上品さを保ちつつ、なおかつパワフルに聴ける。単純にSP1000の下位モデル、廉価モデルと見るにはもったいない、得がたい個性があると言える。
発売時期については、SE100が6月中旬発売を予定。SR15が7月下旬発売を見こんでいるが、時期がもう少し遅れる可能性もあるとのこと。
本日31日、アユートはA&futura SE100とA&norma SR15の製品発表会を開催した。発表会冒頭では、iriver/Astell&KernでAK事業部の責任者を務めるアレックス・アン氏も挨拶を行った。
「A&futura」(エーアンドフューチュラ)」「A&norma(エーアンドノーマ)」は、フラグシップライン「A&Ultima」(エーアンドウルティマ)に続く、Astell&Kern第4世代プレーヤーの新しいプロダクトラインとなる。「A&futura SE100」「A&norma SR15」はいずれも先日独ミュンヘンで開催されたHIGH END 2018で発表(関連ニュース/現地試聴レポ)。今回、日本市場への導入が正式発表されたかたちだ。
■A&futura SE100 − ES9038PROをシングル搭載
「A&futura SE100」はESS Technologyの最上位となる8ch DAC「ES9038PRO」をシングル搭載。384kHz/32bit PCM、11.2MHz DSDのネイティブ再生に対応する。ES9038PROのポータブルプレーヤーへの搭載は世界初とのこと。8ch DACの右4ch/左4chを全て使うことでより精度の高いD/A変換を可能にしている。
SP1000の開発ノウハウを継承した最新回路により、バランス出力時で出力 4.1Vrms、S/N 123dB@1kHzというスペックを実現。高出力化と高S/N化の両立させたとアピールする(ちなみにAK380はバランス時出力 2.3Vrms、同S/N 117dB。SP1000はバランス時出力 3.9Vrms、同S/N 122dB)。「ES9038PRO」のパフォーマンスを最大限引き出すとする。クロックには、高精度かつ800Fs(フェムト秒)という超低ジッターを実現する電圧制御水晶(VCXO)を採用する。
ヘッドホン出力は3.5mmアンバランス/2.5mmバランス端子を搭載。USB端子はSP1000と同様にUSB type Cを採用する。高速転送および急速充電にも対応する。
Octa-core CPU(8コア CPU)を搭載し、旗艦機SP1000と同様に最新世代のユーザーインターフェースを採用。デジタルオーディオの処理性能向上、さらなる起動の高速化、UIの高速レスポンスなどを可能としている。
USBオーディオ出力機能、USB-DAC機能も搭載。いずれも384kHz/32bit PCM、11.2MHz DSDに対応する。
ボディ素材はアルミニウム合金。サイズ感はSP1000に近いが、USB端子側から見ると平行四辺形のようにサイドに角度が付つけられた独特のデザインを採用。右サイドパネルには流線型のフォルムを採用している。また、SP1000ではボリュームノブと電源ボタンを一体化していたが、本機はボリュームノブと電源ボタンを個別に搭載している。
ディスプレイは5インチ(1,280×720)。内蔵ストレージは128GBで、micro SDカードスロットを1系統搭載。市販の9V/1.67A 急速充電対応ケーブルを用いれば、2時間で満充電が可能。連続再生時間は約11時間となる。外形寸法は75.8W×132.7H×15.3Dmm、質量は241g。
■SR15 − シーラス・ロジック製最新DACをデュアル搭載した小型機
「A&norma」は、シーラス・ロジックの最新DACチップ「CS43198」をL/R独立のデュアル搭載。192kHz/24bit PCM、2.8MHz DSDのネイティブ再生に対応する(ちなみにAK70MK2はDSDネイティブ再生非対応)。384kHz・352.8/32bit PCMは192kHz・176.4kHz/24bitに、5.6MHz DSDは176.4kHz/24bitにダウンコンバートして再生できる。
CS43198はシーラス・ロジック社の最高基準を満たすことを示すという“MasterHIFI”を冠したDACチップ。GNDもL/Rで独立させたデュアルDAC構成とすることで、高S/Nと広ダイナミックレンジ、クロストークの最小化を実現したとのこと。
本機はQuad-core CPUを搭載し、SP1000やSE100と同様の最新世代ユーザーインターフェースを採用。一方で3.3インチ・ディスプレイ(800×480)に最適化されている。
ヘッドホン出力は3.5mmアンバランス/2.5mmバランス端子を搭載。本機のUSB端子はUSB micro-Bとなる。
本機もUSBオーディオ出力機能、USB-DAC機能を搭載する。USBオーディオ出力は384kHz/32bit PCM、11.2MHz DSDに対応USB-DAC出力は96kHz/24bit PCMおよびDSD(PCM変換)に対応する。
ボディ素材にはアルミニウム合金を採用。手に握ったときに最適な角度になるようにディスプレを本体に対して斜めに配置した独特のデザインも特徴だ。内蔵ストレージは64GBで、micro SDカードスロットを1系統搭載。連続再生時間は約10時間となる。外形寸法は57.5W×99.7H×16.1Dmm、質量は154g。
SE100とSR15の共通点として、いずれもaptX対応のBluetooth機能、独自のネットワーク再生「AK Connect」を搭載する。
再生対応ファイル形式は、WAV、AIFF、FLAC、ALAC、APE、OGG、AAC、WMA、MP3、DFF、DSFとなる。
なお、SE100とSR15共に専用ケースは別売。発売時期は各モデル本体の発売タイミングと同時になるということだ。SE100については天然皮革トスカーナを用いたModern Navyをはじめ3色を展開予定で、直販サイト価格はいずれも13,980円。SR15についても3色を展開予定だが、価格は現時点で未定とのこと。
■「A&Ultima」「A&futura」「A&norma」の3ラインで展開
発表会では、「A&futura」「A&norma」という第四世代の新しいラインについても言及された。昨年の「A&Ultima SP1000」発表時に、今後、第四世代として「A&・・・」というラインが複数登場することが予告されていたが、今回「A&futura」「A&norma」として出そろったかたちだ。
Astell&Kernでは「A&Ultima」を同社全技術を投入した究極の“フラグシップライン”、「A&futura」を最先端技術を投入したHi-Fiクオリティを誇る“プレミアムライン”、「A&norma」をHi-Fiオーディオの出発点となる“スタンダードライン”として位置付けている。
発表会においてはこのシリーズ展開について「単なる上位・下位というクラス分けではなく、それぞれのカテゴリーをターゲットとして最適な製品開発を行っていく」と紹介された。その証左として各ラインでAKM、ESS、シーラス・ロジックと異なるDACチップを採用しており、今後もシリーズごとのコンセプトや個性を追求した製品開発を行っていくようだ。
なお、「AK70MKII」はこれらとは異なるシリーズである「カジュアルライン」の製品として今後も併売されていく。パフォーマンスラインに位置付けられる「KANN」も同様。これら“第四世代以外”のラインについても、今後新製品を投入していく予定があるとのことだ。
編集部員がSE100/SR15を試聴レポート
編集部:小澤貴信のレポート
■クリアネスが高くすっきりと抜けの良い「SE100」
Astell&Kernの新DAP「A&futura SE100」と「A&norma SR15」を短時間ながら試聴することができたので、ファーストインプレッションを紹介したい。どちらのモデルにも、Astell&KernとJH Audioがコラボしたイヤホン「Michelle」を組み合わせて試聴した。
まずはDACチップにES9038PROを搭載したことでも注目される「A&futura SE100」をアンバランス接続で聴く。一聴してわかるクリアネスの高さ、全帯域にわたる高解像、そして抜けの良いすっきりとしたサウンドが特徴と言える。
ノラ・ジョーンズ「Don't know why」を聴くと、各楽器の分離感が高く、さわやかで開放的な音調だ。クリアで見通しの良い音場に、活き活きとしたボーカルや各楽器が展開。音のひとつひとつは緻密で、響きの余韻は自然ですっきりしている。ベースやバスドラムもタイトで、適度に厚みがありつつ早さと抜けのよさが心地いい。
今回はフラグシップモデル「A&Ultima SP1000」と比較しながら聴いたのだが、SP1000が奥行き感や陰影まで描き出すのに対して、SE100は精巧な線画のような明快さが魅力と感じる。
特にロック系バンドサウンドではSE100の特徴が強く活きる。Weezer「Say It Ain't So」では、シンプルなバンドサウンドの各音が明快に分解されつつそれぞれ開放的に鳴る。ベースもよく制動が効いて、実に推進力が高い。スネアドラムの抜けやシンバルの解像感も印象的だ。
バランス接続の音も同じくMichelleで確認したが、アンバランス接続の音質と基本的に同じ傾向ながら、音の密度感や厚み、エネルギー感がさらに増すイメージだ。個人的には、バランス接続にすることでSE100の持ち味であるすっきりとした音に、低域を中心に適度に厚みが加わって、より好みのサウンドになった。
音の厚みや奥行きの描写、弱音の繊細な表現、抑揚などSP1000の音楽表現力はフラグシップにふさわしいものと改めて感じさせられた。一方でSE100は、ESSの最上位DACをシングル仕様で搭載したことが音質にも現れているのだろう、クリアネスと抜けの良さを前面に押し出した明快な高解像度サウンドを聴かせてくれる。SP1000の絶対的な表現力の高さは揺るぎないことを確認しつつ、高解像度志向のポータブルオーディオファンなら、むしろSE100のようなサウンドが好みという方も多いのではとも感じた。
続いて「A&norma SR15」を聴く。こちらもイヤホンにはMichelleを組み合わせ、「AK70MKII」との比較を軸に試聴した。シーラス・ロジック製DACをデュアル搭載という点で両機は共通するが、SR15はDACにより新しい「CS43198」を搭載する。
まずはアンバランス接続で試聴。そのサウンドについては、高解像度かつ上位機譲りのS/Nの高さを備えるなどAK70MKIIと方向性は同じくしつつ、より低域と高域によりメリハリを持たせ、音の厚みや色彩感も加わったという印象だ。キリンジ「エイリアンズ」を聴くと、いずれもフラットで抜けのよい高解像度サウンドだが、SR15はより音に厚みがあり、アコースティックギターの胴鳴りもより濃密で立体的だ。
SE100で再生した七尾旅人×やけのはら「Rollin' Rollin'」では冒頭のボーカルが生々しく、SEやシンセベースの重低音が重なるレイヤーも明瞭に分解。AK70MKIIのサウンドもクリアネスが高いのだが、こちらがよりさらりとした表現なのに対して、SR15はボーカルの艶っぽさや抑揚も一歩踏み込んで表現してくれる印象だ。
バランス駆動では、SR15も同じ音質傾向ながら低域がさらに厚みを増し、全帯域にわたってエネルギー感がアップする。「Don't Know Why」では各楽器をよりシャープかつパワフルに描画し、より細かい音まで拾い出して詳らかにする。
SP1000がAstell&Kernの到達点といえる高い音楽性を備えたサウンドを提示した後に、続く「A&・・・」がどのような音を聴かせてくれるのか楽しみにしていた。結果はというと、いずれも上位機が獲得したノイズの少なさ、高解像度といった美点を継承しつつ、それぞれ価格帯や搭載するDACを踏まえて個性が異なっている。だが、いずれも期待以上のサウンドを聴くことができた。その意味で、単なる「クラス分け」にとどまらない個性を、「A&・・・」を冠した第4世代の各機種それぞれ備えている。
編集部:成藤正宣のレポート
■リッチな音の余韻を再現してくれるSR15
今回Astell&Kernの新しいプロダクトラインを試聴するにあたり、同サイズの従来機種同士と比較して特徴を探った。
まずSR15とAK70MKII。聴感上の周波数帯域の広さ、音のクッキリ度合いなど、甲乙つけがたい点が多い。その中で気になったのは音の余韻。AK70MKIIでは早めにスッと消えてゆくが、SR15ではそれよりもゆっくりと減衰していく。オンマイクで楽器を録音した音源などでは、その消え際が特によく分かる。
またSR15では定位感も変化している。たとえばライブ音源を聴くと、演奏は前方、客席からの歓声は後方、と位置関係がはっきりとイメージできる。これに比べれば、AK70MKIIではボーカルの押し出しが強く、客席側の声もステージ中央側に寄って聴こえてしまうだろう。
続いてSE100とSP1000。やはり最上位モデルであるSP1000は音の繊細さ、解像感や定位の良さなど非常に優れたものがある。SE100はその長所をある程度引き継ぎつつ、新たに音のハリ/キレの良さという特徴を備えた。
具体的にはドラムスのストロークやサキソフォンのソロなどが、あくまで上品さを保ちつつ、なおかつパワフルに聴ける。単純にSP1000の下位モデル、廉価モデルと見るにはもったいない、得がたい個性があると言える。
- トピック
- オーディオプレーヤー
- IRIVER
- ASTELL&KERN