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公開日 2019/09/07 08:00
4Kレーザー上映を体験
大画面でSF映画の金字塔に刮目せよ!『ブレードランナー』初のIMAX版が2週間限定公開
永井光晴
SF映画ファンなら絶対に観ておかなければならない作品がある。その最右翼に位置するのが、リドリー・スコット監督の『ブレードランナー』(1982年)だ。その “ファイナル・カット” が、9月6日からIMAXシアターで2週間限定公開される。
何度も観ている人は「初IMAX体験を」、いままでパッケージ版でしか観たことない人は「非日常スクリーンサイズで」、SF映画の金字塔に刮目(かつもく)せよ!
ということで、ファイルウェブでは上映初日の初回、東京・池袋のグランドシネマサンシャインにある国内最大級スクリーンのIMAX GT Technology、 “the theatre” で鑑賞したので、早速レポートする。
■“最高のSF映画”に常に選ばれる最右翼
SF映画の名作についてはいろいろなデータはあるものの、例えば「Time Out」誌(ロンドン版)が選ぶ「最高のSF映画100本」のトップ10が知られる(出展)。同誌のランキングは一流の科学の専門家、作家、映画製作者らが選んでいる。以下は2018年12月に発表された最新版だ。
【Time Out誌(ロンドン版)が選ぶ「最高のSF映画100本」のうちトップ10】
1.『2001年宇宙の旅』(2001: A Space Odyssey /1968)
2.『ブレードランナー』(Blade Runner /1982)
3.『エイリアン』(Alien/1979)
4.『未知との遭遇』(Close Encounters of the Third Kind/1977)
5.『エイリアン2』(Aliens /1986)
6.『スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望』(Star Wars /1977)
7.『未来世紀ブラジル』(Brazil /1985)
8.『メトロポリス』(Metropolis /1927)
9.『ターミネーター』(The Terminator /1984)
10.『スター・ウォーズ エピソード5 帝国の逆襲』(Star Wars: Episode V - The Empire Strikes Back /1980)
このリストだけで一晩、語り明かせそうな内容だが、およそ類似のランキングにおいても『ブレードランナー』は、必ず上位に選ばれる。
ここでの注目は、同じくリドリー・スコット監督作品の『エイリアン』が3位に入っていることだ。リドリー・スコット監督は『グラディエーター』(Gladiator/2000)でアカデミー作品賞も獲った名匠であるが、近年もマット・デイモン主演のSF映画『オデッセイ』(The Martian/2015)がある。
■IMAX上映は初めて、そして意外にも4K上映も初めて
今回、IMAXシアターで上映されるのは『ブレードランナー ファイナル・カット』。初上映から25周年にあたる2007年にリドリー・スコット監督自らが再編集とデジタル修正を施した最終バージョンである。
オリジナル版の公開当時は、日米ともに評価が二分し、必ずしも興行的に成功したとは言えなかった。本作は、時間とともに評価を上げてきた作品である。そんな背景と複雑な経緯のなかで、本作には7種類ものバージョンがあることが知られている。それぞれをマニアックに比較するなら、Blu-rayで2009年発売された『ブレードランナー アルティメット・コレクターズ・エディション』で、うち5つのバージョンを見ることができる。
そもそも映画は、製作者(プロデューサー、ディレクター)の意図した編集バージョン、上映サイズで観るのが理想である。そういう意味ではどんな映画であれ、劇場公開作品が再び劇場スクリーンで上映されること自体が、貴重な機会である。
もちろん「ファイナル・カット」とはいえ、製作当時の環境を考えると過度な期待をしてはいけないのだが、いくつかの点で他のバージョンより改善されている。本作は、オリジナル撮影時に65mmフィルムで撮影されたSFX(視覚効果)シーンをネガから直接テレシネしていることが特徴。ましてや国内IMAX上映は初めてである。
2007年当時、ファイナル・カット版は第64回ヴェネツィア国際映画祭でワールドプレミア4Kデジタルで上映されているが、国内上映は2KデジタルDLP上映だった。最近では2017年の続編『ブレードランナー2047』公開時にも特別上映されているが、いずれも国内では2K上映である。一方で、2017年9月発売のBlu-rayパッケージ版は4Kである。今回のIMAX GT Technologyでは、これがIMAXスクリーンによる劇場初4Kレーザー上映ということが最大の注目である。
■ブレードランナーなくして多くのSF作品はない
『ブレードランナー』の原作は、フィリップ・K・ディックの小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』であるが、小説を大きく翻案しており、むしろそれは原案に過ぎず、視覚的な世界観の多くは映画独自に展開された。
『ブレードランナー』を “後追い” で観る世代の多くは、たいてい「どこかで見たことがある」という既視感に襲われることになる。しかし、それこそが本作の凄さなのである。それほどまで、のちの映画、漫画、アニメ、ドラマ、イラストレーションなどを手掛けたクリエイターたちに影響を与え続けているのだ。
リドリー・スコットが作り上げた環境汚染に伴う酸性雨が降る、退廃的な近未来都市は、それまでの夢のような明るい未来都市とは異なり、本作をきっかけとして “サイバーパンク” という映像ジャンルを構築した。また、未来の車をはじめとした工業デザインの多くを担当し、 “ビジュアル・フューチャリスト” とクレジットされているシド・ミードによるセットや小道具などの独特のデザインも特徴的だ。
前年公開の『炎のランナー』(Chariots of Fire/1981)の音楽で米アカデミー賞作曲賞を受賞したヴァンゲリスが、本作の音楽を手掛けたということも大きく、作品のバックグラウンドを支えている。ヴァンゲリスの主題曲作品といえば、日本では『南極物語』(1983)が有名である。
■国内2館のIMAX GT Technologyで初4Kレーザー上映を体験した
今回鑑賞したのは、7月にオープンしたばかりの東京・池袋のグランドシネマサンシャインのIMAXスクリーン。デュアル4Kレーザープロジェクター(DLP)によるIMAX GT Technologyスクリーンである。これは大阪の109シネマズ 大阪エキスポシティとともに、国内に2館しかない。
なんといっても度肝を抜くのは、ビル4階に相当する高さ18mの国内最大級スクリーンである(W25.849m×H18.91m)。最大画角1:43対1のスクリーンは、通常のスクリーンの約40%も大きい。実際には『ブレードランナー』はシネスコ画角の作品なので、このスクリーンをフルサイズで使うことはなく、白い余白が上下に大きく残るわけだが、それにしても横幅25mなので観客を圧倒する。
■総合的に4K上映の効果が高く、音もよく回り込む
初IMAX上映となった『ブレードランナー・ファイルカット』だが、思いの外、綺麗なシーンが多い。もちろん、そのサイズには圧倒されるわけだが、初IMAX上映の感動というよりも、4K上映の効果のほうが出ている。
フィルム特有のグレインノイズが見えるシーンと、デジタルレストアによってスッキリとクリアになったSFXシーンが混在しているが、総合的に4Kであることのアドバンテージがよく活かされている。なかでも、たびたび登場するタイレル社本社ビルのミニチュアがとくに美しい。また画面サイズが大きいので、インテリアをはじめとするシド・ミードの造形が詳細に見えるのが嬉しい。
劇場と比べて小さなテレビサイズで観ていると気づかない丁寧なレストアがなされていることが、明確にわかる。
巨大な画面全体から発する音の壁は、身体全体を包み込み、画と音のバランスがよく取れている。IMAX12chへのリミックスが見事。ドルビーステレオ時代の作品なので、ソースは3ch(前方ステレオ+後方1ch)のはずなのに、音がとてもよく回り込んでくる。
ヴァンゲリスの音楽もスクリーンの高さ方向があるので、大きな面で迫ってくる。個人的には2年前に本作を “爆音映画祭” で観たのだが、2chの大爆音ばかり際立って、細かく設計されているアンビエントの音バランスが壊れてしまっていた。
全編を通して酸性雨が降りしきる、雨の音が細かく、かつ広く再現されている。ちゃんと雷鳴が天井から響いてくるのは感動である。
たった2週間の上映だが、この体験をせずに『ブレードランナー』を語ることはできない。ぜひその目と耳で確認してほしい。
『ブレードランナー ファイナル・カット』
<4K ULTRA HD&ブルーレイセット>(2枚組)¥5,990+税
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
TM & ©2017 The Blade Runner Partnership. All Rights Reserved.
何度も観ている人は「初IMAX体験を」、いままでパッケージ版でしか観たことない人は「非日常スクリーンサイズで」、SF映画の金字塔に刮目(かつもく)せよ!
ということで、ファイルウェブでは上映初日の初回、東京・池袋のグランドシネマサンシャインにある国内最大級スクリーンのIMAX GT Technology、 “the theatre” で鑑賞したので、早速レポートする。
■“最高のSF映画”に常に選ばれる最右翼
SF映画の名作についてはいろいろなデータはあるものの、例えば「Time Out」誌(ロンドン版)が選ぶ「最高のSF映画100本」のトップ10が知られる(出展)。同誌のランキングは一流の科学の専門家、作家、映画製作者らが選んでいる。以下は2018年12月に発表された最新版だ。
【Time Out誌(ロンドン版)が選ぶ「最高のSF映画100本」のうちトップ10】
1.『2001年宇宙の旅』(2001: A Space Odyssey /1968)
2.『ブレードランナー』(Blade Runner /1982)
3.『エイリアン』(Alien/1979)
4.『未知との遭遇』(Close Encounters of the Third Kind/1977)
5.『エイリアン2』(Aliens /1986)
6.『スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望』(Star Wars /1977)
7.『未来世紀ブラジル』(Brazil /1985)
8.『メトロポリス』(Metropolis /1927)
9.『ターミネーター』(The Terminator /1984)
10.『スター・ウォーズ エピソード5 帝国の逆襲』(Star Wars: Episode V - The Empire Strikes Back /1980)
このリストだけで一晩、語り明かせそうな内容だが、およそ類似のランキングにおいても『ブレードランナー』は、必ず上位に選ばれる。
ここでの注目は、同じくリドリー・スコット監督作品の『エイリアン』が3位に入っていることだ。リドリー・スコット監督は『グラディエーター』(Gladiator/2000)でアカデミー作品賞も獲った名匠であるが、近年もマット・デイモン主演のSF映画『オデッセイ』(The Martian/2015)がある。
■IMAX上映は初めて、そして意外にも4K上映も初めて
今回、IMAXシアターで上映されるのは『ブレードランナー ファイナル・カット』。初上映から25周年にあたる2007年にリドリー・スコット監督自らが再編集とデジタル修正を施した最終バージョンである。
オリジナル版の公開当時は、日米ともに評価が二分し、必ずしも興行的に成功したとは言えなかった。本作は、時間とともに評価を上げてきた作品である。そんな背景と複雑な経緯のなかで、本作には7種類ものバージョンがあることが知られている。それぞれをマニアックに比較するなら、Blu-rayで2009年発売された『ブレードランナー アルティメット・コレクターズ・エディション』で、うち5つのバージョンを見ることができる。
そもそも映画は、製作者(プロデューサー、ディレクター)の意図した編集バージョン、上映サイズで観るのが理想である。そういう意味ではどんな映画であれ、劇場公開作品が再び劇場スクリーンで上映されること自体が、貴重な機会である。
もちろん「ファイナル・カット」とはいえ、製作当時の環境を考えると過度な期待をしてはいけないのだが、いくつかの点で他のバージョンより改善されている。本作は、オリジナル撮影時に65mmフィルムで撮影されたSFX(視覚効果)シーンをネガから直接テレシネしていることが特徴。ましてや国内IMAX上映は初めてである。
2007年当時、ファイナル・カット版は第64回ヴェネツィア国際映画祭でワールドプレミア4Kデジタルで上映されているが、国内上映は2KデジタルDLP上映だった。最近では2017年の続編『ブレードランナー2047』公開時にも特別上映されているが、いずれも国内では2K上映である。一方で、2017年9月発売のBlu-rayパッケージ版は4Kである。今回のIMAX GT Technologyでは、これがIMAXスクリーンによる劇場初4Kレーザー上映ということが最大の注目である。
■ブレードランナーなくして多くのSF作品はない
『ブレードランナー』の原作は、フィリップ・K・ディックの小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』であるが、小説を大きく翻案しており、むしろそれは原案に過ぎず、視覚的な世界観の多くは映画独自に展開された。
『ブレードランナー』を “後追い” で観る世代の多くは、たいてい「どこかで見たことがある」という既視感に襲われることになる。しかし、それこそが本作の凄さなのである。それほどまで、のちの映画、漫画、アニメ、ドラマ、イラストレーションなどを手掛けたクリエイターたちに影響を与え続けているのだ。
リドリー・スコットが作り上げた環境汚染に伴う酸性雨が降る、退廃的な近未来都市は、それまでの夢のような明るい未来都市とは異なり、本作をきっかけとして “サイバーパンク” という映像ジャンルを構築した。また、未来の車をはじめとした工業デザインの多くを担当し、 “ビジュアル・フューチャリスト” とクレジットされているシド・ミードによるセットや小道具などの独特のデザインも特徴的だ。
前年公開の『炎のランナー』(Chariots of Fire/1981)の音楽で米アカデミー賞作曲賞を受賞したヴァンゲリスが、本作の音楽を手掛けたということも大きく、作品のバックグラウンドを支えている。ヴァンゲリスの主題曲作品といえば、日本では『南極物語』(1983)が有名である。
■国内2館のIMAX GT Technologyで初4Kレーザー上映を体験した
今回鑑賞したのは、7月にオープンしたばかりの東京・池袋のグランドシネマサンシャインのIMAXスクリーン。デュアル4Kレーザープロジェクター(DLP)によるIMAX GT Technologyスクリーンである。これは大阪の109シネマズ 大阪エキスポシティとともに、国内に2館しかない。
なんといっても度肝を抜くのは、ビル4階に相当する高さ18mの国内最大級スクリーンである(W25.849m×H18.91m)。最大画角1:43対1のスクリーンは、通常のスクリーンの約40%も大きい。実際には『ブレードランナー』はシネスコ画角の作品なので、このスクリーンをフルサイズで使うことはなく、白い余白が上下に大きく残るわけだが、それにしても横幅25mなので観客を圧倒する。
■総合的に4K上映の効果が高く、音もよく回り込む
初IMAX上映となった『ブレードランナー・ファイルカット』だが、思いの外、綺麗なシーンが多い。もちろん、そのサイズには圧倒されるわけだが、初IMAX上映の感動というよりも、4K上映の効果のほうが出ている。
フィルム特有のグレインノイズが見えるシーンと、デジタルレストアによってスッキリとクリアになったSFXシーンが混在しているが、総合的に4Kであることのアドバンテージがよく活かされている。なかでも、たびたび登場するタイレル社本社ビルのミニチュアがとくに美しい。また画面サイズが大きいので、インテリアをはじめとするシド・ミードの造形が詳細に見えるのが嬉しい。
劇場と比べて小さなテレビサイズで観ていると気づかない丁寧なレストアがなされていることが、明確にわかる。
巨大な画面全体から発する音の壁は、身体全体を包み込み、画と音のバランスがよく取れている。IMAX12chへのリミックスが見事。ドルビーステレオ時代の作品なので、ソースは3ch(前方ステレオ+後方1ch)のはずなのに、音がとてもよく回り込んでくる。
ヴァンゲリスの音楽もスクリーンの高さ方向があるので、大きな面で迫ってくる。個人的には2年前に本作を “爆音映画祭” で観たのだが、2chの大爆音ばかり際立って、細かく設計されているアンビエントの音バランスが壊れてしまっていた。
全編を通して酸性雨が降りしきる、雨の音が細かく、かつ広く再現されている。ちゃんと雷鳴が天井から響いてくるのは感動である。
たった2週間の上映だが、この体験をせずに『ブレードランナー』を語ることはできない。ぜひその目と耳で確認してほしい。
『ブレードランナー ファイナル・カット』
<4K ULTRA HD&ブルーレイセット>(2枚組)¥5,990+税
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
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