ニュース
HOME > ニュース > AV&ホームシアターニュース
公開日 2020/12/17 11:20
店頭のSマーク付き電気製品は約7割
Sマーク認証の高まる意義。取り巻く環境が激変、一筋縄ではいかない電気製品の“安全性”
PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
■Sマーク取得率が漸減する背景
電気製品の安心・安全のための第三者認証制度「Sマーク認証」。同認証の公正な運営や普及を担う電気製品認証協議会(SCEA)では、電気製品の多様化・複雑化、海外製品の台頭、ネット通販の急拡大などを背景に、電気製品のさらなる安心・安全性が求められる中で、Sマーク付き電気製品の普及率が徐々に減少を続けていることを懸念している。
Sマーク付き電気製品の店頭普及率は、2014年までは8割近くを占めていたが、2015年から漸減傾向が顕著となり、2019年には70.4%となっている。SCEAでは「従来の販売主体は国内の有名ブランドの製品であり、消費者は安全設計や高い品質管理を誇るそれらメーカーの製品を購入することで、無意識のうちに安全性が担保されると考えていた」と振り返る。
海外製品の台頭がSマーク付き電気製品の普及率を下げる一因となっていると見られるが、「もちろん、海外製品がすべて不安全なわけではないが、電気用品安全法で定められた技術基準(各種安全試験)をすべて満足していない製品が多々見受けられることも事実。海外製品の価格がなぜ安いのか。過去には低廉な人件費が通説とされたが、発展途上国の人件費も押し上げられてきた現在、その差は製品の評価試験の実施や品質管理にどれだけ費用を掛けているかであると考えられる」と一部の海外製品の安全面への意識の低さを案じる。
製品カテゴリー別のSマーク取得率を比べてみると、取得率が高い製品は、電気洗濯機、電気冷蔵庫、テレビ受信機、電子レンジ等で、「価格帯が比較的に高いことから、消費者にとって機種選択には失敗が許されない思いも働き、安心なブランドを選定されていることが主要因と思われる」と推測。また、電気炊飯器、電気カーペット、電気アイロン等は「ヒーターを備えた製品であることから、故障が火災事故の原因となる可能性もあり、メーカーサイドでもリスクに対する意識が高いカテゴリーとなり、Sマーク取得率も高くなっているのではないか」と分析する。
反対に取得率が低いのは、電気ポット、コーヒーメーカー、フードプロセッサー等の調理家電。「輸入品比率が高くなっていることが背景にあり、全体の数字を押し下げる要因となっている。また、エアコンや電気掃除機では、特定の有力メーカーがS認証非取得としていることが要因ではないかと思う」とカテゴリー特有の事情も影響している。
調理家電の「電気ポット」「コーヒーメーカー」「フードプロセッサー」の3品目について、国内メーカーと海外メーカーに分類し(※国内商社・流通業者ブランド品は海外メーカーに分類、国内メーカーの海外工場での製造品は国内メーカーに分類)、S認証取得率を見てみると、電気ポットは全体で63.2%、国内メーカーでは84.5%、海外メーカーでは30.8%、同じくコーヒーメーカーは60.0%、84.2%、40.4%。フードプロセッサーは34.6%、52.8%、17.7%と推測を裏付ける結果が得られた。
一方、電気掃除機のSマーク認証取得率では、人気の高いコードレス掃除機(スティックタイプ)で、国内メーカーの大半が取得0%、英国D社、米国S社が100%取得という結果となった。これについては「D社、S社は日本市場への新規参入のために必要な戦略であったと思われる。また、リチウムイオンバッテリーを電源とするコードレス掃除機はAC電源ではないため、電安法対象外となる。このことが日本メーカーにSマーク認証が不要であると認識されているようで、コード付き製品と変わらぬ安全面でのリスクがあり、Sマーク認証取得が重要であると認識を改めてもらうことが大切。日本メーカーはこの分野で大きくシェアを落としていることにも目を向けるべきだ」と訴える。
■今一度考えたい“安全”の価値
「今回のデータからは読み取ることはできないが、流通形態によってもSマーク付電気製品の構成比は異なる」と指摘する。例えば地域小規模電気店では、全体平均に比べて10%程度高くなるのだが、「販売数量を追わずにその地域に密着した設置、メンテナンスを中心にしたサービスに重点を置くことで生き残りを図っている。結果としてその販売ウエイトは過去に比べると残念ながら低くなっているのが実態である」と説明する。
一方、昨今急激に販売を伸ばしているネット通販は、「海外事業者からの出店比率が高いため、手頃な価格帯の製品のSマーク取得率が押し下げられている。Sマークの取得率が比較的高いヒーター系の製品である電気ストーブ、ヘアードライヤー、オーブントースターもネット販売が伸びてきており、安全面で不安な要素になる」と懸念を示す。
電気製品を購入者が選定する際のポイントには、価格、機能、デザイン、ブランド、国内製、保証期間等が挙げられるが、「そこでは製品の安全性や品質はPRポイントになっていないのが実態。できれば、店頭では説明員の方やポップ表示等で消費者へ啓発を図っていただきたい」と力を込める。
「消費者から見て製品の安全性は、製品へ表示されるPSEマークやSマークでしか確認する方法がない。安全の価値について今一度考え、1,000円高くてもSマークの付いている製品を選ぶことが、総合的な観点から判断して“お得である”と思っていただけるよう、流通事業者様に協力をお願いしたい。安全という付加価値を戦略的に位置付け、業績向上を業界全体で目指して欲しい」と訴えた。
電気製品の安心・安全のための第三者認証制度「Sマーク認証」。同認証の公正な運営や普及を担う電気製品認証協議会(SCEA)では、電気製品の多様化・複雑化、海外製品の台頭、ネット通販の急拡大などを背景に、電気製品のさらなる安心・安全性が求められる中で、Sマーク付き電気製品の普及率が徐々に減少を続けていることを懸念している。
Sマーク付き電気製品の店頭普及率は、2014年までは8割近くを占めていたが、2015年から漸減傾向が顕著となり、2019年には70.4%となっている。SCEAでは「従来の販売主体は国内の有名ブランドの製品であり、消費者は安全設計や高い品質管理を誇るそれらメーカーの製品を購入することで、無意識のうちに安全性が担保されると考えていた」と振り返る。
海外製品の台頭がSマーク付き電気製品の普及率を下げる一因となっていると見られるが、「もちろん、海外製品がすべて不安全なわけではないが、電気用品安全法で定められた技術基準(各種安全試験)をすべて満足していない製品が多々見受けられることも事実。海外製品の価格がなぜ安いのか。過去には低廉な人件費が通説とされたが、発展途上国の人件費も押し上げられてきた現在、その差は製品の評価試験の実施や品質管理にどれだけ費用を掛けているかであると考えられる」と一部の海外製品の安全面への意識の低さを案じる。
製品カテゴリー別のSマーク取得率を比べてみると、取得率が高い製品は、電気洗濯機、電気冷蔵庫、テレビ受信機、電子レンジ等で、「価格帯が比較的に高いことから、消費者にとって機種選択には失敗が許されない思いも働き、安心なブランドを選定されていることが主要因と思われる」と推測。また、電気炊飯器、電気カーペット、電気アイロン等は「ヒーターを備えた製品であることから、故障が火災事故の原因となる可能性もあり、メーカーサイドでもリスクに対する意識が高いカテゴリーとなり、Sマーク取得率も高くなっているのではないか」と分析する。
反対に取得率が低いのは、電気ポット、コーヒーメーカー、フードプロセッサー等の調理家電。「輸入品比率が高くなっていることが背景にあり、全体の数字を押し下げる要因となっている。また、エアコンや電気掃除機では、特定の有力メーカーがS認証非取得としていることが要因ではないかと思う」とカテゴリー特有の事情も影響している。
調理家電の「電気ポット」「コーヒーメーカー」「フードプロセッサー」の3品目について、国内メーカーと海外メーカーに分類し(※国内商社・流通業者ブランド品は海外メーカーに分類、国内メーカーの海外工場での製造品は国内メーカーに分類)、S認証取得率を見てみると、電気ポットは全体で63.2%、国内メーカーでは84.5%、海外メーカーでは30.8%、同じくコーヒーメーカーは60.0%、84.2%、40.4%。フードプロセッサーは34.6%、52.8%、17.7%と推測を裏付ける結果が得られた。
一方、電気掃除機のSマーク認証取得率では、人気の高いコードレス掃除機(スティックタイプ)で、国内メーカーの大半が取得0%、英国D社、米国S社が100%取得という結果となった。これについては「D社、S社は日本市場への新規参入のために必要な戦略であったと思われる。また、リチウムイオンバッテリーを電源とするコードレス掃除機はAC電源ではないため、電安法対象外となる。このことが日本メーカーにSマーク認証が不要であると認識されているようで、コード付き製品と変わらぬ安全面でのリスクがあり、Sマーク認証取得が重要であると認識を改めてもらうことが大切。日本メーカーはこの分野で大きくシェアを落としていることにも目を向けるべきだ」と訴える。
■今一度考えたい“安全”の価値
「今回のデータからは読み取ることはできないが、流通形態によってもSマーク付電気製品の構成比は異なる」と指摘する。例えば地域小規模電気店では、全体平均に比べて10%程度高くなるのだが、「販売数量を追わずにその地域に密着した設置、メンテナンスを中心にしたサービスに重点を置くことで生き残りを図っている。結果としてその販売ウエイトは過去に比べると残念ながら低くなっているのが実態である」と説明する。
一方、昨今急激に販売を伸ばしているネット通販は、「海外事業者からの出店比率が高いため、手頃な価格帯の製品のSマーク取得率が押し下げられている。Sマークの取得率が比較的高いヒーター系の製品である電気ストーブ、ヘアードライヤー、オーブントースターもネット販売が伸びてきており、安全面で不安な要素になる」と懸念を示す。
電気製品を購入者が選定する際のポイントには、価格、機能、デザイン、ブランド、国内製、保証期間等が挙げられるが、「そこでは製品の安全性や品質はPRポイントになっていないのが実態。できれば、店頭では説明員の方やポップ表示等で消費者へ啓発を図っていただきたい」と力を込める。
「消費者から見て製品の安全性は、製品へ表示されるPSEマークやSマークでしか確認する方法がない。安全の価値について今一度考え、1,000円高くてもSマークの付いている製品を選ぶことが、総合的な観点から判断して“お得である”と思っていただけるよう、流通事業者様に協力をお願いしたい。安全という付加価値を戦略的に位置付け、業績向上を業界全体で目指して欲しい」と訴えた。
- トピック
- S21 ビジネスニュース