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公開日 2022/04/21 12:40
身近に潜む電気製品事故を未然に防ぐ
拡大するネット通販も課題、「第三者認証Sマーク」が担う役割はますます重要に
PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
■市場買い上げ調査は5年連続不適合製品なし
電気製品認証協議会(SCEA)は「2021年度Web記者懇談会」を開催し、Sマークの運用や広報・普及促進に向けた一年間の活動について説明を行った。
横山明彦会長、大崎博之会長代理の挨拶に続き、基本問題専門部会長・小野亮氏が同部の活動を報告した。エアコン、洗濯機、冷蔵庫などIoTに対応した家電が増えているが、2021年5月に経済産業省から示された「IoT機器の遠隔操作ガイドライン」に対し、Sマーク認証としてどのように対応していくかが検討された。電気用品安全法(電安法)に採用された項目はSマークでも基準として取り入れていく。
それに加え、「暑い日に稼働していたエアコンを外から遠隔操作で切られ、家にいた人が熱中症等で具合を悪くしてしまうなど、従来は考えていなかったケースが含まれてくる」と小野氏は例を示し、電安法で採用を検討されることが想定される「間接被害の対策」「予防安全対策」や「インターネット特有の問題点」を新たな追加検討項目とした。
2021年12月には、Sマーク認証製品の市場買い上げを実施した。これは、Sマーク認証の信頼性向上を目的に、市場で販売されているSマーク認証製品が、認証時と同等の性能を保っているかを市場で買い上げて検査、確認するもの。今回は10製品(電気ストーブ、電気あんか、電気掃除機、冷風扇、テレビ受信機、BDプレーヤー、CD ラジオ、ラジカセ、電気スタンド、充電器)を買い上げて各認証機関で検査を行った結果、すべて認証時と同等の性能であることが確認された。2009年度から毎年行っているが、「過去5年間は市場買い上げによる試験で不適合は認められておらず、Sマーク認証のスキームがうまく機能していることが確認できた」と説明する。なお、不適合が認められた場合は改善措置が取られる。
■Sマークの有無で消費者が安全を認識できる環境構築が課題
続いて、広報専門部会長・三浦佳子氏より、広報・普及促進活動について概要が報告された。イトーヨーカドー大森店(東京都大田区)、アピタ稲沢店(愛知県稲沢市)で予定されていた広報イベントは、コロナ禍で2020年度に続いて中止となった。このため、イベント開催にあわせて会場アンケートで実施していたSマーク認知度調査は、前年度に続き、サンケイリビング社の協力のもと「Webアンケート調査」により行われた。
6,766件の回答によるSマークの認知度は28.0%。前回2020年度のWebアンケートが25.3%(調査対象が異なる)、2019年度のイトーヨーカドーでのアンケートでは13.2%だった。三浦氏は「WEBではバイアスがかかり、やや高くなっていると思う」と分析。ネット通販が拡大していくなかで、今の若い人が中心的な購買層になったときにどのようにSマークを機能させていくのか。将来を視野に入れた取り組みが重要になってくる。
同じく毎年実施している店頭でのSマーク付き電気製品の普及実態調査が、日本百貨店協会(百貨店ルート)、日本チェーンストア協会(総合量販店ルート)、家電量販店、日本DIY協会(DIYルート)、日本通信販売協会(通販ルート)、全国電機商業組合連合会、神奈川県電機商業組合(地域小規模電気店)の協力を得て、2021年11月に実施された。17品目・16,244件(従来調査先:11,183件、ネット調査先:5,061件)の調査結果は、ネットを含めた総平均での普及率が64.7%(前年度66.2%)、リアル店舗の従来調査先が66.2%(同68.3%)、価格.comが67.5% (同66.9%)、ネット販売大手3社平均が55.8%(同56.8%)となった。
「廉価なプライベートブランドの商品が出てきたり、海外ブランドでなかなかSマークをとってくださらないところがあったり、数字が下がっているのは残念。また、商品ジャンルによりSマークの店頭普及率が高く維持されるものと低下するものとに二極分化が進んでいる」と指摘する。また、「調理家電や美容家電には細かな用途に応えた新しいジャンルの商品も増えてきており、今後は品目なども考えながら調査していかなければいけない」との見解を示した。
さらなるシェア拡大が予想されるネット通販については、「ネット通販事業者では、どうしても場所を貸しているだけとの認識が否めず、安全なものをお客様に提供していくことに対しての意識がもっと高まり、そのためにSマークがついているものを積極的に販売していこうとする業者が増えていかない限り、ここでの数字は上がりにくいのではないか」と課題を提起した。
平井雄二事務局長は「テレビや洗濯機などの高額家電では消費者も慎重に実際に物を見て、安心できる日本のブランドを購入する消費者が多く、結果としてSマーク普及率が高くなっている。一方、海外製品の販売比率が高い調理家電では、価格も1万円以下の安いものも多く、Sマーク普及率が低い。とりわけヒーター系の製品は事故になると火事の恐れがあり心配される。何か手を打たなければじりじり下がるばかり。何より重要なのは、消費者がSマークの有無により安全・安心を認識して製品を選択してもらう意識を高めることだ」と訴えた。
■JOMCとの意見交換会を初開催
さまざまなSマーク広報活動の取り組みのひとつとして、今後の大きな課題と目されるネット通販では、オンラインマーケットプレイス協議会(JOMC)との意見交換会が2021年11月に行われた。
三浦氏は「オンライン上で売られている電気製品は多く、トラブルも数多く発生し、消費者団体からは『もう少し品質をきちんとチェックした商品を出せないのか』との声が寄せられている。消費者団体の代表として主婦連合会、日本消費者協会にも参加をいただき、製品安全についての意見を交換した。どこまで本音で話せたのかというのが正直な感想だが、こうした試みを実現することでSマークを認知いただき、より安全性の高いものをマーケットに出していただくことをお願いするのは大事なこと」と力を込める。次年度以降の同会の進展が注目される。
プラットフォーム提供のネット販売事業者は電安法では製品に対する責任を負わない立て付けになっていることもその一因であるが、現在では重要な社会インフラとして認知された立場として、 “ものを売る” だけでなく、消費者に対して “安全・安心を提供する” 責任をもっと強く意識する流通事業者になることが求められている。
平井氏は「NITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)から公表されている事故情報やリコールの対象品は、ほとんどがSマークのついていない製品。火災事故になったものではリチウムイオン蓄電池の関連製品が報告されている。コードレス掃除機や電動工具のバッテリーパックの交換用に安価な非純正品を購入して、充電中に発火して火災に至った案件が多数ある。実はリチウムイオン蓄電池でSマークを取得しているものはほとんどない。丸型PSEの対象製品であっても事故が発生しているのは、法律を守るためのチェック機能が不十分だから。Sマークを取得されていたら、そこでかなりの事故は防げると思われるのだが」と無念の表情を浮かべる。
最後に認証機関を代表して一般財団法人 電気安全環境研究所 常務理事・古谷毅氏は「電気製品に関しては事故が報告されており、第三者認証Sマークは引き続き重要な役割を担っている。海外製品が増えていくことで、今後、その役割はこれまで以上に重要さを増してくる。消費者の手元に安全な製品が届くように。そのために、Sマークの重要性を消費者の皆様に理解していただくことが何よりも重要だと考えている」とあいさつを締めくくった。
電気製品認証協議会(SCEA)は「2021年度Web記者懇談会」を開催し、Sマークの運用や広報・普及促進に向けた一年間の活動について説明を行った。
横山明彦会長、大崎博之会長代理の挨拶に続き、基本問題専門部会長・小野亮氏が同部の活動を報告した。エアコン、洗濯機、冷蔵庫などIoTに対応した家電が増えているが、2021年5月に経済産業省から示された「IoT機器の遠隔操作ガイドライン」に対し、Sマーク認証としてどのように対応していくかが検討された。電気用品安全法(電安法)に採用された項目はSマークでも基準として取り入れていく。
それに加え、「暑い日に稼働していたエアコンを外から遠隔操作で切られ、家にいた人が熱中症等で具合を悪くしてしまうなど、従来は考えていなかったケースが含まれてくる」と小野氏は例を示し、電安法で採用を検討されることが想定される「間接被害の対策」「予防安全対策」や「インターネット特有の問題点」を新たな追加検討項目とした。
2021年12月には、Sマーク認証製品の市場買い上げを実施した。これは、Sマーク認証の信頼性向上を目的に、市場で販売されているSマーク認証製品が、認証時と同等の性能を保っているかを市場で買い上げて検査、確認するもの。今回は10製品(電気ストーブ、電気あんか、電気掃除機、冷風扇、テレビ受信機、BDプレーヤー、CD ラジオ、ラジカセ、電気スタンド、充電器)を買い上げて各認証機関で検査を行った結果、すべて認証時と同等の性能であることが確認された。2009年度から毎年行っているが、「過去5年間は市場買い上げによる試験で不適合は認められておらず、Sマーク認証のスキームがうまく機能していることが確認できた」と説明する。なお、不適合が認められた場合は改善措置が取られる。
■Sマークの有無で消費者が安全を認識できる環境構築が課題
続いて、広報専門部会長・三浦佳子氏より、広報・普及促進活動について概要が報告された。イトーヨーカドー大森店(東京都大田区)、アピタ稲沢店(愛知県稲沢市)で予定されていた広報イベントは、コロナ禍で2020年度に続いて中止となった。このため、イベント開催にあわせて会場アンケートで実施していたSマーク認知度調査は、前年度に続き、サンケイリビング社の協力のもと「Webアンケート調査」により行われた。
6,766件の回答によるSマークの認知度は28.0%。前回2020年度のWebアンケートが25.3%(調査対象が異なる)、2019年度のイトーヨーカドーでのアンケートでは13.2%だった。三浦氏は「WEBではバイアスがかかり、やや高くなっていると思う」と分析。ネット通販が拡大していくなかで、今の若い人が中心的な購買層になったときにどのようにSマークを機能させていくのか。将来を視野に入れた取り組みが重要になってくる。
同じく毎年実施している店頭でのSマーク付き電気製品の普及実態調査が、日本百貨店協会(百貨店ルート)、日本チェーンストア協会(総合量販店ルート)、家電量販店、日本DIY協会(DIYルート)、日本通信販売協会(通販ルート)、全国電機商業組合連合会、神奈川県電機商業組合(地域小規模電気店)の協力を得て、2021年11月に実施された。17品目・16,244件(従来調査先:11,183件、ネット調査先:5,061件)の調査結果は、ネットを含めた総平均での普及率が64.7%(前年度66.2%)、リアル店舗の従来調査先が66.2%(同68.3%)、価格.comが67.5% (同66.9%)、ネット販売大手3社平均が55.8%(同56.8%)となった。
「廉価なプライベートブランドの商品が出てきたり、海外ブランドでなかなかSマークをとってくださらないところがあったり、数字が下がっているのは残念。また、商品ジャンルによりSマークの店頭普及率が高く維持されるものと低下するものとに二極分化が進んでいる」と指摘する。また、「調理家電や美容家電には細かな用途に応えた新しいジャンルの商品も増えてきており、今後は品目なども考えながら調査していかなければいけない」との見解を示した。
さらなるシェア拡大が予想されるネット通販については、「ネット通販事業者では、どうしても場所を貸しているだけとの認識が否めず、安全なものをお客様に提供していくことに対しての意識がもっと高まり、そのためにSマークがついているものを積極的に販売していこうとする業者が増えていかない限り、ここでの数字は上がりにくいのではないか」と課題を提起した。
平井雄二事務局長は「テレビや洗濯機などの高額家電では消費者も慎重に実際に物を見て、安心できる日本のブランドを購入する消費者が多く、結果としてSマーク普及率が高くなっている。一方、海外製品の販売比率が高い調理家電では、価格も1万円以下の安いものも多く、Sマーク普及率が低い。とりわけヒーター系の製品は事故になると火事の恐れがあり心配される。何か手を打たなければじりじり下がるばかり。何より重要なのは、消費者がSマークの有無により安全・安心を認識して製品を選択してもらう意識を高めることだ」と訴えた。
■JOMCとの意見交換会を初開催
さまざまなSマーク広報活動の取り組みのひとつとして、今後の大きな課題と目されるネット通販では、オンラインマーケットプレイス協議会(JOMC)との意見交換会が2021年11月に行われた。
三浦氏は「オンライン上で売られている電気製品は多く、トラブルも数多く発生し、消費者団体からは『もう少し品質をきちんとチェックした商品を出せないのか』との声が寄せられている。消費者団体の代表として主婦連合会、日本消費者協会にも参加をいただき、製品安全についての意見を交換した。どこまで本音で話せたのかというのが正直な感想だが、こうした試みを実現することでSマークを認知いただき、より安全性の高いものをマーケットに出していただくことをお願いするのは大事なこと」と力を込める。次年度以降の同会の進展が注目される。
プラットフォーム提供のネット販売事業者は電安法では製品に対する責任を負わない立て付けになっていることもその一因であるが、現在では重要な社会インフラとして認知された立場として、 “ものを売る” だけでなく、消費者に対して “安全・安心を提供する” 責任をもっと強く意識する流通事業者になることが求められている。
平井氏は「NITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)から公表されている事故情報やリコールの対象品は、ほとんどがSマークのついていない製品。火災事故になったものではリチウムイオン蓄電池の関連製品が報告されている。コードレス掃除機や電動工具のバッテリーパックの交換用に安価な非純正品を購入して、充電中に発火して火災に至った案件が多数ある。実はリチウムイオン蓄電池でSマークを取得しているものはほとんどない。丸型PSEの対象製品であっても事故が発生しているのは、法律を守るためのチェック機能が不十分だから。Sマークを取得されていたら、そこでかなりの事故は防げると思われるのだが」と無念の表情を浮かべる。
最後に認証機関を代表して一般財団法人 電気安全環境研究所 常務理事・古谷毅氏は「電気製品に関しては事故が報告されており、第三者認証Sマークは引き続き重要な役割を担っている。海外製品が増えていくことで、今後、その役割はこれまで以上に重要さを増してくる。消費者の手元に安全な製品が届くように。そのために、Sマークの重要性を消費者の皆様に理解していただくことが何よりも重要だと考えている」とあいさつを締めくくった。
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