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公開日 2022/12/09 18:24
EV用電池がもっと安全・高性能になるかも
リチウムイオン電池が発火しにくくなる不燃性電解質、研究者が開発
Munenori Taniguchi
スタンフォード大学とSLAC国立加速器研究所の研究者が、リチウムイオン電池の電解液に混合することで、発火事故を起こしにくくする物質を開発した。
リチウムイオン電池はスマートフォンから電気自動車まで、モバイル機器のエネルギー源として広く活用されているが、内部の電解液の引火点が40℃前後と非常に低く、物理的な損傷や過熱による発火事故が発生しやすい。今回の研究成果が実用化されたら、バッテリー温度が60℃を超える高温になっても安全に使えるようになるかもしれない。
リチウムイオン電池の発火事故としては、かつて粗悪な2輪電動ホバーボードの使用中や充電中に、発煙・発火する事例が相次ぎ、話題になったことがあった。それ以外にも、2013年にはボーイング787に搭載されたリチウムイオン電池が発火する事故が発生し、世界中で同型機の運行が停止になった例や、テスラのModel Sが走行中や激しい事故を起こした際、バッテリーから激しく火を噴いた例などが報道されてきた。
リチウムイオン電池の電解質は、リチウム塩をエーテルや炭酸塩などの液体有機溶媒に溶かしこんだものだ。この溶媒はリチウムイオンの移動を助けることでバッテリーの性能を向上させる効果を持つが、一方で潜在的な着火剤にもなる。またバッテリー動作中に熱を発生し、内部に構造的な欠陥が生じると急速に過熱、内部温度が60℃を超えると電解質の溶媒が蒸発することで容器を膨張させてしまう。
過去30年、リチウムイオン電池は安全性を確保するため、より燃えにくいポリマー電解質を採用するなどの進化を遂げてきた。しかし、ポリマー電解質は液体溶媒ほど効率的にはイオンを運ぶことができず、性能を上げにくい性質がある。
スタンフォードの研究チームは、この課題を解決したいと考え、ポリマー系電解液に追加するリチウム塩「LiFSI」の量を限界まで増やしてみることにした。その結果、通常なら電解液全体の50%以下だった「LiFSI」を63%まで増加できた。
この電解質は可燃性の溶媒分子とペアで機能するにもかかわらず発火しにくい性質を備え、リチウムイオン電池でのテスト中、25〜100℃の範囲でバッテリーとして機能し続けることが確認できた。十分に添加されたリチウム塩は、溶媒分子の蒸発や発火を防止する「留め具」として機能することがわかった。
スタンフォード材料エネルギー科学研究所 (SIMES) の研究者であるZhenan Bao教授は、「この新しい発見は、ポリマーベースの電解質設計の新しい考え方を示している」と述べ、この新しいポリマーベースの電解質が将来の電池を「高エネルギー密度で安全」にするのに重要だとした。
また、この新しい電解質には既存の製造工程にそのまま適用できるメリットがあり、固体セラミック電解質方式など特殊な製造方法が必要になる他の難燃性バッテリーよりも低コストで製品化できる可能性があるという。研究者らは商業化に向けたスケジュールについては言及していないが、特に電気自動車において有利と認識しており、これまでより安全に、航続距離を伸ばすことが可能になると考えている。
電気自動車のバッテリーは現在、発火を避け、熱を逃がしやすくするため、ケース内のセルに間隔を持たせた設計を採用している。このため、単位体積当たりのエネルギー密度を増やしにくい。今回の研究が自動車用バッテリーに適用できれば、セル密度を高めて大容量化(航続距離を伸ば)したり、容量はそのままにバッテリーを小型化し、車内空間の確保にまわすことができそうだ。
もちろんノートPCやタブレット、スマートフォンといった小型の機器でも、バッテリー容量の増加に役立つはずだ。
Source: Matter
via: SLAC National Accelerator Laboratory
リチウムイオン電池はスマートフォンから電気自動車まで、モバイル機器のエネルギー源として広く活用されているが、内部の電解液の引火点が40℃前後と非常に低く、物理的な損傷や過熱による発火事故が発生しやすい。今回の研究成果が実用化されたら、バッテリー温度が60℃を超える高温になっても安全に使えるようになるかもしれない。
リチウムイオン電池の発火事故としては、かつて粗悪な2輪電動ホバーボードの使用中や充電中に、発煙・発火する事例が相次ぎ、話題になったことがあった。それ以外にも、2013年にはボーイング787に搭載されたリチウムイオン電池が発火する事故が発生し、世界中で同型機の運行が停止になった例や、テスラのModel Sが走行中や激しい事故を起こした際、バッテリーから激しく火を噴いた例などが報道されてきた。
リチウムイオン電池の電解質は、リチウム塩をエーテルや炭酸塩などの液体有機溶媒に溶かしこんだものだ。この溶媒はリチウムイオンの移動を助けることでバッテリーの性能を向上させる効果を持つが、一方で潜在的な着火剤にもなる。またバッテリー動作中に熱を発生し、内部に構造的な欠陥が生じると急速に過熱、内部温度が60℃を超えると電解質の溶媒が蒸発することで容器を膨張させてしまう。
過去30年、リチウムイオン電池は安全性を確保するため、より燃えにくいポリマー電解質を採用するなどの進化を遂げてきた。しかし、ポリマー電解質は液体溶媒ほど効率的にはイオンを運ぶことができず、性能を上げにくい性質がある。
スタンフォードの研究チームは、この課題を解決したいと考え、ポリマー系電解液に追加するリチウム塩「LiFSI」の量を限界まで増やしてみることにした。その結果、通常なら電解液全体の50%以下だった「LiFSI」を63%まで増加できた。
この電解質は可燃性の溶媒分子とペアで機能するにもかかわらず発火しにくい性質を備え、リチウムイオン電池でのテスト中、25〜100℃の範囲でバッテリーとして機能し続けることが確認できた。十分に添加されたリチウム塩は、溶媒分子の蒸発や発火を防止する「留め具」として機能することがわかった。
スタンフォード材料エネルギー科学研究所 (SIMES) の研究者であるZhenan Bao教授は、「この新しい発見は、ポリマーベースの電解質設計の新しい考え方を示している」と述べ、この新しいポリマーベースの電解質が将来の電池を「高エネルギー密度で安全」にするのに重要だとした。
また、この新しい電解質には既存の製造工程にそのまま適用できるメリットがあり、固体セラミック電解質方式など特殊な製造方法が必要になる他の難燃性バッテリーよりも低コストで製品化できる可能性があるという。研究者らは商業化に向けたスケジュールについては言及していないが、特に電気自動車において有利と認識しており、これまでより安全に、航続距離を伸ばすことが可能になると考えている。
電気自動車のバッテリーは現在、発火を避け、熱を逃がしやすくするため、ケース内のセルに間隔を持たせた設計を採用している。このため、単位体積当たりのエネルギー密度を増やしにくい。今回の研究が自動車用バッテリーに適用できれば、セル密度を高めて大容量化(航続距離を伸ば)したり、容量はそのままにバッテリーを小型化し、車内空間の確保にまわすことができそうだ。
もちろんノートPCやタブレット、スマートフォンといった小型の機器でも、バッテリー容量の増加に役立つはずだ。
Source: Matter
via: SLAC National Accelerator Laboratory
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