公開日 2020/06/19 06:40
「低遅延モード」の実力は?音質は?
これ一台で動画もゲームも快適!オーディオテクニカの新BTイヤホン「ATH-CKS660XBT/CKS330XBT」を試してみた
関根慎一
オーディオテクニカの低音域表現重視シリーズ“SOLID BASS”から、Bluetoothイヤホンの新製品「ATH-CKS660XBT」および「ATH-CKS330XBT」が登場した。
両機種は最大20時間の連続再生と、音ズレを抑える「低遅延モード」を新搭載。ATH-CKS660XBTのみイヤホン本体にアルミニウムエンクロージャーを採用し、不要な共振の抑制を図っている。Bluetooth 5.0準拠で、対応コーデックはAACとSBC。出力音圧レベルはATH-CKS660XBTが104dB/mW、ATH-CKS330XBTが98dB/mW。重量はそれぞれ約26.5gと約24g。実売価格はATH-CKS660XBTが7,200円前後、ATH-CKS330XBTが4,500円前後の見込みと、お手頃な価格だ。
前モデル「ATH-CKS550XBT」と比べた際の最も大きな違いは、「低遅延モード」の有無だろう。スマートフォンで動画やゲームを楽しんでいる際に若干の音ズレを感じることがあるのはお手頃価格帯のワイヤレスオーディオでありがちなトラブルだが、これを抑えられる点がATH-CKS660XBT/330XBTの大きなポイントとなる。このたび、両製品をお借りする機会を得たので、使用感をお伝えしたい。
■動画視聴やゲームで効果を発揮する「低遅延モード」
まず最大の特徴となる「低遅延モード」について。オーディオテクニカの説明によると、製品内部のソフトウェアの処理によってBluetooth固有の音声の遅延を抑制しており、「低遅延モード」のOFF時とON時でおよそ40%の遅延軽減が見込めるとのことだ。低遅延が特徴のBluetoothコーデック「aptX-LL」による効果ではないので、iPhoneなどaptX-LL非対応のデバイスでも遅延低減の恩恵にあずかれる。
一般的に映像と音の同期が重要なシチュエーションといえば、動きのあるゲームのプレイと動画視聴だろう。アクションゲームにしろRPGにしろ、映像と音の鳴るタイミングが合わないのは気になるものだし、きちんと聞こえないのであればミュートの方がまし、ともなりかねない。映像作品であれば映像と音のタイミングがぴったり合って聞こえることは大前提だ。
低遅延モードをONにして、スマホアプリの「Fate/Grand Order」(FGO)や「グランブルーファンタジー」(グラブル)をプレイしてみた。こういったRPGでは、物語やキャラクターを表現するうえで音も重要な要素のひとつだ。たとえばキャラクターが宝具(必殺技)や奥義を使う際の口上・演出は見せ場のひとつだし、会話シーンではキャラクターも細かく表情を変えて話すので、そのような場面で音ズレが起きてしまっては興ざめというものだろう。
今回はATH-CKS660XBT/330XBTを使って上記の2タイトルをプレイしてみたが、そのような遅延を感じることはまったくなかった。これは「Netflix」や「Amazonプライムビデオ」のような動画配信アプリでも同様だった。
では、タイミングをシビアに突き詰める音ゲーをプレイした場合はどうだろうか?どのような伝送プロファイルやコーデックを採用しているにせよ、多少の遅延は免れないのがBluetoothイヤホンの弱点だが、ここではあえて意地悪をして「beatmania II DX Ultimate Mobile」と「太鼓の達人+」をプレイしてみた。遅延を見る上で基準としたのは、音の鳴るタイミングが譜面をタップしたときの「GREAT」(beatmania)や「良」(太鼓の達人)と合っているかどうか。
これについては、結論からいえば「なかなか遊べる」レベルだった。音ゲーの場合はプレイする曲の譜面難易度を上げるとシビアなタイミングの操作を求められるので、ある程度高い難易度になるとプレイが厳しくなってくるが、低めの難易度で楽しく遊ぶ分にはあまり不便を感じなかった。特に太鼓の達人は、太鼓部分をタップしたときに音が出るので、遅延の有無がわかりやすい。ちなみに低遅延モードをOFFにするとタイミングがまったく合わず、低遅延モードの効果を実感した。
連続的な操作を要求する譜面が高速で流れてくる音ゲーはBluetoothイヤホンの苦手とするところだが、ATH-CKS660XBT/330XBTの場合はなかなか遊べる水準まで遅延を低減していることには驚いた。今回は試していないが、本機の遅延の小ささは、攻撃のヒット音や敵の出す音で次の行動を決めるアクションゲームにおいても恩恵があるかと思う。
■紛失しにくいネックバンド式。長時間バッテリーやマルチポイント接続も嬉しい
「ATH-CKS660XBT」および「ATH-CKS330XBT」は、左右のイヤホン本体がケーブルで繋がっている、いわゆるネックバンド型。収納性という面では完全ワイヤレスの製品に一歩譲るが、バッテリーの持続時間や紛失しにくさはネックバンド型に利がある。
ATH-CKS660XBT/330XBTの仕様はほぼ共通であり、ネックバンド部分は滑りにくいラバー製。ケーブルの途中にはマグネットクリップを備えており、収納時に絡まりにくくなっているのは地味ながらうれしい気遣いだ。基礎性能の面では、純粋に前機種から進化した約20時間の連続再生時間が実用上非常に有用だった。充電の頻度が少なく済むというのは、それだけでも使い勝手を向上させるものだ。もし充電を忘れてしまっても、約10分の充電で約2時間使用できる。
このほか使っていて便利だった機能としては、複数のスマートフォンに同時接続できるマルチポイントが挙げられる。筆者の場合はメインで使っているAndroidスマートフォンのほかに、動作検証などの用途でiPhoneや少し古い機種を同時に稼働させていることがあるので、使う端末を切り替えるたびに設定を開いて接続し直す必要のないマルチポイントは重宝した。
■どちらもSOLID BASSらしい気持ちよく伸びる低域が持ち味
音質については、「SOLID BASS」シリーズの機種ということもあり、低音域が気持ち良く伸びる点が印象的だ。レディー・ガガ「Chromatica」収録の「Rain On Me」はレディー・ガガとアリアナ・グランデのボーカルと同じくらいメロディアスなベースラインが重要な曲だが、この低音が強調されることで、曲の持つ前向きな雰囲気がより引き立つように感じられる。
低音の伸びという点においてATH-CKS660XBTとATH-CKS330XBTは同じ傾向を持っており、聴き比べても筆者としてはそれほど大きな差があるようには感じなかったが、強いていうならば、ATH-CKS660XBTの方がより重く、はっきりとした輪郭をもって聴こえてくるように思った。このあたりは「好み」の領域だと思うので、シンプルに見た目と価格で選んでもいいかもしれない。
◇
ATH-CKS660XBTとATH-CKS330XBTの良さは、最大20時間を謳う長時間のバッテリーもさることながら、低遅延モードによって遊べるゲームの幅広さ、そして手を出しやすいお値ごろ感にある。スマホと組み合わせて日常的に使うならば、これ一台持っていれば十分に用が足りるだろう。それほど予算はないが、スマホやタブレットで動画視聴やゲームなどを一つのイヤホンで楽しみたい向きにはぴったりの製品といえる。
(協力:株式会社オーディオテクニカ)
両機種は最大20時間の連続再生と、音ズレを抑える「低遅延モード」を新搭載。ATH-CKS660XBTのみイヤホン本体にアルミニウムエンクロージャーを採用し、不要な共振の抑制を図っている。Bluetooth 5.0準拠で、対応コーデックはAACとSBC。出力音圧レベルはATH-CKS660XBTが104dB/mW、ATH-CKS330XBTが98dB/mW。重量はそれぞれ約26.5gと約24g。実売価格はATH-CKS660XBTが7,200円前後、ATH-CKS330XBTが4,500円前後の見込みと、お手頃な価格だ。
前モデル「ATH-CKS550XBT」と比べた際の最も大きな違いは、「低遅延モード」の有無だろう。スマートフォンで動画やゲームを楽しんでいる際に若干の音ズレを感じることがあるのはお手頃価格帯のワイヤレスオーディオでありがちなトラブルだが、これを抑えられる点がATH-CKS660XBT/330XBTの大きなポイントとなる。このたび、両製品をお借りする機会を得たので、使用感をお伝えしたい。
■動画視聴やゲームで効果を発揮する「低遅延モード」
まず最大の特徴となる「低遅延モード」について。オーディオテクニカの説明によると、製品内部のソフトウェアの処理によってBluetooth固有の音声の遅延を抑制しており、「低遅延モード」のOFF時とON時でおよそ40%の遅延軽減が見込めるとのことだ。低遅延が特徴のBluetoothコーデック「aptX-LL」による効果ではないので、iPhoneなどaptX-LL非対応のデバイスでも遅延低減の恩恵にあずかれる。
一般的に映像と音の同期が重要なシチュエーションといえば、動きのあるゲームのプレイと動画視聴だろう。アクションゲームにしろRPGにしろ、映像と音の鳴るタイミングが合わないのは気になるものだし、きちんと聞こえないのであればミュートの方がまし、ともなりかねない。映像作品であれば映像と音のタイミングがぴったり合って聞こえることは大前提だ。
低遅延モードをONにして、スマホアプリの「Fate/Grand Order」(FGO)や「グランブルーファンタジー」(グラブル)をプレイしてみた。こういったRPGでは、物語やキャラクターを表現するうえで音も重要な要素のひとつだ。たとえばキャラクターが宝具(必殺技)や奥義を使う際の口上・演出は見せ場のひとつだし、会話シーンではキャラクターも細かく表情を変えて話すので、そのような場面で音ズレが起きてしまっては興ざめというものだろう。
今回はATH-CKS660XBT/330XBTを使って上記の2タイトルをプレイしてみたが、そのような遅延を感じることはまったくなかった。これは「Netflix」や「Amazonプライムビデオ」のような動画配信アプリでも同様だった。
では、タイミングをシビアに突き詰める音ゲーをプレイした場合はどうだろうか?どのような伝送プロファイルやコーデックを採用しているにせよ、多少の遅延は免れないのがBluetoothイヤホンの弱点だが、ここではあえて意地悪をして「beatmania II DX Ultimate Mobile」と「太鼓の達人+」をプレイしてみた。遅延を見る上で基準としたのは、音の鳴るタイミングが譜面をタップしたときの「GREAT」(beatmania)や「良」(太鼓の達人)と合っているかどうか。
これについては、結論からいえば「なかなか遊べる」レベルだった。音ゲーの場合はプレイする曲の譜面難易度を上げるとシビアなタイミングの操作を求められるので、ある程度高い難易度になるとプレイが厳しくなってくるが、低めの難易度で楽しく遊ぶ分にはあまり不便を感じなかった。特に太鼓の達人は、太鼓部分をタップしたときに音が出るので、遅延の有無がわかりやすい。ちなみに低遅延モードをOFFにするとタイミングがまったく合わず、低遅延モードの効果を実感した。
連続的な操作を要求する譜面が高速で流れてくる音ゲーはBluetoothイヤホンの苦手とするところだが、ATH-CKS660XBT/330XBTの場合はなかなか遊べる水準まで遅延を低減していることには驚いた。今回は試していないが、本機の遅延の小ささは、攻撃のヒット音や敵の出す音で次の行動を決めるアクションゲームにおいても恩恵があるかと思う。
■紛失しにくいネックバンド式。長時間バッテリーやマルチポイント接続も嬉しい
「ATH-CKS660XBT」および「ATH-CKS330XBT」は、左右のイヤホン本体がケーブルで繋がっている、いわゆるネックバンド型。収納性という面では完全ワイヤレスの製品に一歩譲るが、バッテリーの持続時間や紛失しにくさはネックバンド型に利がある。
ATH-CKS660XBT/330XBTの仕様はほぼ共通であり、ネックバンド部分は滑りにくいラバー製。ケーブルの途中にはマグネットクリップを備えており、収納時に絡まりにくくなっているのは地味ながらうれしい気遣いだ。基礎性能の面では、純粋に前機種から進化した約20時間の連続再生時間が実用上非常に有用だった。充電の頻度が少なく済むというのは、それだけでも使い勝手を向上させるものだ。もし充電を忘れてしまっても、約10分の充電で約2時間使用できる。
このほか使っていて便利だった機能としては、複数のスマートフォンに同時接続できるマルチポイントが挙げられる。筆者の場合はメインで使っているAndroidスマートフォンのほかに、動作検証などの用途でiPhoneや少し古い機種を同時に稼働させていることがあるので、使う端末を切り替えるたびに設定を開いて接続し直す必要のないマルチポイントは重宝した。
■どちらもSOLID BASSらしい気持ちよく伸びる低域が持ち味
音質については、「SOLID BASS」シリーズの機種ということもあり、低音域が気持ち良く伸びる点が印象的だ。レディー・ガガ「Chromatica」収録の「Rain On Me」はレディー・ガガとアリアナ・グランデのボーカルと同じくらいメロディアスなベースラインが重要な曲だが、この低音が強調されることで、曲の持つ前向きな雰囲気がより引き立つように感じられる。
低音の伸びという点においてATH-CKS660XBTとATH-CKS330XBTは同じ傾向を持っており、聴き比べても筆者としてはそれほど大きな差があるようには感じなかったが、強いていうならば、ATH-CKS660XBTの方がより重く、はっきりとした輪郭をもって聴こえてくるように思った。このあたりは「好み」の領域だと思うので、シンプルに見た目と価格で選んでもいいかもしれない。
ATH-CKS660XBTとATH-CKS330XBTの良さは、最大20時間を謳う長時間のバッテリーもさることながら、低遅延モードによって遊べるゲームの幅広さ、そして手を出しやすいお値ごろ感にある。スマホと組み合わせて日常的に使うならば、これ一台持っていれば十分に用が足りるだろう。それほど予算はないが、スマホやタブレットで動画視聴やゲームなどを一つのイヤホンで楽しみたい向きにはぴったりの製品といえる。
(協力:株式会社オーディオテクニカ)
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