公開日 2020/10/05 06:30
【特別企画】注目ブランドのブックシェルフを聴き比べ
amphion「Helium410/Argon0」を比較試聴。同サイズの2スピーカー、サウンドの違いは?
石原 俊
フィンランドのamphion(アンフィオン)。最近は世界各国のスタジオへの導入が増え、話題となっているスピーカー専業ブランドである。今回は、同ブランドの人気シリーズArgonの最小モデル「Argon0(アルゴン0)」と、今夏から輸入が開始された「Helium410(ヘリウム410)」の2モデルを聴き比べる。サイズは同一で外観はそっくりだが、搭載されているユニットや細部が異なる両モデルがどのようなパフォーマンスを見せてくれたのか、石原 俊氏がレビューする。
■同サイズの小型機、2モデルの聴き比べ
アンフィオンのエントリークラスの小型スピーカーを2機種ハンドリングする機会を得た。
アンフィオンはフィンランド中部のクオピオに本拠を構える1998年創業のスピーカーブランドだ。創業者のアンシ・ヒヴォネン氏は弱冠14歳からオーディオにのめりこみ、位相特性が良好な2ウェイのシンプルなスピーカーが市場にないことからブランドを立ち上げたという。
同氏によると、人間の感覚が敏感な帯域は2kHz〜5kHzで、この帯域をネットワーク回路でクロスさせると聴感上の位相特性がおかしなことになってしまうのだそうだ。だから同社のスピーカーのクロスオーバー周波数は1.6kHzに統一されている。今回テストに供したHelium410とArgon0も例外ではない。
内容を見ていこう。Helium410は同社の最廉価小型スピーカーだ。トゥイーターは1インチのチタニウム。ウーファーは4.5インチのペーパーコーン。紙製の振動板というのはアンフィオンとしては初めてではないだろうか。バスレフダクトはリアバッフルにマウントされている。最廉価モデルであるにもかかわらず、アンフィオンのアイデンティティであるトゥイーターのウェーブガイドは省略されていない。
一方Argon0はアルゴンシリーズの末弟に位置づけられるモデルである。エンクロージャーのサイズはHelium410と同一だが、Helium410の質量は3.5?に対して、Argon0のそれは6?。トゥイーターは1インチのチタニウム。ウーファーは4.5インチのアルミニウム。ちなみにアルミニウムのウーファーはアンフィオンのお家芸である。トゥイーターまわりにはHelium410と同様、ウェーブガイドがマウントされている。
■「Helium410」:広々した音場に伸びやかな音像が展開
まずはHelium410から。「えっ、この小さなスピーカーからこんなにスケールの大きい音が出るの?」というのが第一印象だ。
広々した音場に伸びやかな音像が展開する。低音のレンジ感には限界があるものの、低音はやせておらず倍音で聴かせてくれる。ベースの音などはなかなかのものだ。音の質感はナチュラルで色づけがなく、音楽を素直に描く。ペーパーコーンに起因する紙臭さは皆無。クセのないスッキリとしたサウンドを楽しむことができる。
ジャズは小型スピーカーならではの明晰な表現だ。エネルギー感も十分にあって、その気になればサウンドのシャワーを浴びるような聴き方もできなくはない。実用的な音量でも十分に楽しむことができる。ヴォーカルは清潔な音場に声の音像が浮かび上がる高級オーディオ調の表現だ。声の質感は清楚系で肉感のようなものは希薄だが、これについてはアンプやケーブルの選択でどうにでもなるだろう。
クラシックのオケものは、いわゆるミニチュア的な表現とは一線を画す大きなスケールの音を聴くことができた。このお値段で、ここまで楽しませてくれれば文句は一つもない。
■「Argon0」:質感表現の幅が広く、色香を感じることができた
次いでArgon0を聴いた。基本的にはHelium410と同傾向の音である。ちなみにこのスケールの大きな表現の秘密は、トゥイーターをバッフル面の奥に取りつけることでウーファーとのボイスコイル位置を揃えていることと、トゥイーターにウェーブガイドをマウントしていることにありそうだ。
Helium410との違いは余裕度だ。試聴室的音量だとHelium410は「いっぱいいっぱい」であるのに対して、Argon0は「まだまだいけます」なのである。低音もこちらのほうが好ましく、倍音だけではなく実音を聴くこともできる。レンジ感もこちらのほうが明らかに広い。
ジャズは明晰さに加えて大人っぽさを身につけたような表現だ。エネルギー感は十分にあるのだが、やかましさはなく、実用音量での聴き味にも大人の風格が感じられる。ヴォーカルは基本的にHelium410と同傾向の音の出方なのだが、質感表現の幅が広く、時としてハッとするような色香を感じることができた。この差は大きいと言わざるを得ない。
クラシックのオケものも同様で、こちらのほうがはるかに好ましい。スケール感に加えて、しっかりとしたディテールがあり、オーケストラの姿がより正確に表現される。音の出方が滑らかなので、演奏を耳で追いかけるのが実に楽しい。
ポケットの軽いヤングマンにはHelium410がオススメだが、ご予算にある程度余裕のある本誌読者にはArgon0を強くお薦めする。けっしてご損はさせません。
amphion「Helium410」
スピーカーシステム
¥88,000/ペア・税抜
【Specifications】
●型式:2ウェイバスレフ ブックシェルフ型●ユニット:トゥイーター 1インチチタニウム、ミッド・ウーファー4.5インチペーパーウーファ−●クロスオーバー:1.6kHz●インピーダンス:8Ω●出力音圧レベル:86dB●周波数特性:52Hz〜25kHz ±3dB●許容入力:20〜80W●サイズ:132W×259H×220Dmm●質量:3.5kg●レギュラーカラー:スタンダードホワイト、ブラック
amphion「Argon0」
スピーカーシステム
¥132,000/ペア・税抜
【Specifications】
●型式:2ウェイバスレフ ブックシェルフ型●ユニット:トゥイーター 1インチチタニウム、ミッド・ウーファー4.5インチアルミニウム●クロスオーバー:1.6kHz●インピーダンス:8Ω●出力音圧レベル:86dB●周波数特性:50Hz〜20kHz ±3dB●許容入力:25〜120W●サイズ:132W×259H×220Dmm●質量:6kg●レギュラーカラー:スタンダードホワイト、フルホワイト、ブラック●取り扱い:Wefield ウインテスト(株) オーディオ事業部
本記事は季刊・オーディオアクセサリー 178号 AUTUMNからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。
■同サイズの小型機、2モデルの聴き比べ
アンフィオンのエントリークラスの小型スピーカーを2機種ハンドリングする機会を得た。
アンフィオンはフィンランド中部のクオピオに本拠を構える1998年創業のスピーカーブランドだ。創業者のアンシ・ヒヴォネン氏は弱冠14歳からオーディオにのめりこみ、位相特性が良好な2ウェイのシンプルなスピーカーが市場にないことからブランドを立ち上げたという。
同氏によると、人間の感覚が敏感な帯域は2kHz〜5kHzで、この帯域をネットワーク回路でクロスさせると聴感上の位相特性がおかしなことになってしまうのだそうだ。だから同社のスピーカーのクロスオーバー周波数は1.6kHzに統一されている。今回テストに供したHelium410とArgon0も例外ではない。
内容を見ていこう。Helium410は同社の最廉価小型スピーカーだ。トゥイーターは1インチのチタニウム。ウーファーは4.5インチのペーパーコーン。紙製の振動板というのはアンフィオンとしては初めてではないだろうか。バスレフダクトはリアバッフルにマウントされている。最廉価モデルであるにもかかわらず、アンフィオンのアイデンティティであるトゥイーターのウェーブガイドは省略されていない。
一方Argon0はアルゴンシリーズの末弟に位置づけられるモデルである。エンクロージャーのサイズはHelium410と同一だが、Helium410の質量は3.5?に対して、Argon0のそれは6?。トゥイーターは1インチのチタニウム。ウーファーは4.5インチのアルミニウム。ちなみにアルミニウムのウーファーはアンフィオンのお家芸である。トゥイーターまわりにはHelium410と同様、ウェーブガイドがマウントされている。
■「Helium410」:広々した音場に伸びやかな音像が展開
まずはHelium410から。「えっ、この小さなスピーカーからこんなにスケールの大きい音が出るの?」というのが第一印象だ。
広々した音場に伸びやかな音像が展開する。低音のレンジ感には限界があるものの、低音はやせておらず倍音で聴かせてくれる。ベースの音などはなかなかのものだ。音の質感はナチュラルで色づけがなく、音楽を素直に描く。ペーパーコーンに起因する紙臭さは皆無。クセのないスッキリとしたサウンドを楽しむことができる。
ジャズは小型スピーカーならではの明晰な表現だ。エネルギー感も十分にあって、その気になればサウンドのシャワーを浴びるような聴き方もできなくはない。実用的な音量でも十分に楽しむことができる。ヴォーカルは清潔な音場に声の音像が浮かび上がる高級オーディオ調の表現だ。声の質感は清楚系で肉感のようなものは希薄だが、これについてはアンプやケーブルの選択でどうにでもなるだろう。
クラシックのオケものは、いわゆるミニチュア的な表現とは一線を画す大きなスケールの音を聴くことができた。このお値段で、ここまで楽しませてくれれば文句は一つもない。
■「Argon0」:質感表現の幅が広く、色香を感じることができた
次いでArgon0を聴いた。基本的にはHelium410と同傾向の音である。ちなみにこのスケールの大きな表現の秘密は、トゥイーターをバッフル面の奥に取りつけることでウーファーとのボイスコイル位置を揃えていることと、トゥイーターにウェーブガイドをマウントしていることにありそうだ。
Helium410との違いは余裕度だ。試聴室的音量だとHelium410は「いっぱいいっぱい」であるのに対して、Argon0は「まだまだいけます」なのである。低音もこちらのほうが好ましく、倍音だけではなく実音を聴くこともできる。レンジ感もこちらのほうが明らかに広い。
ジャズは明晰さに加えて大人っぽさを身につけたような表現だ。エネルギー感は十分にあるのだが、やかましさはなく、実用音量での聴き味にも大人の風格が感じられる。ヴォーカルは基本的にHelium410と同傾向の音の出方なのだが、質感表現の幅が広く、時としてハッとするような色香を感じることができた。この差は大きいと言わざるを得ない。
クラシックのオケものも同様で、こちらのほうがはるかに好ましい。スケール感に加えて、しっかりとしたディテールがあり、オーケストラの姿がより正確に表現される。音の出方が滑らかなので、演奏を耳で追いかけるのが実に楽しい。
ポケットの軽いヤングマンにはHelium410がオススメだが、ご予算にある程度余裕のある本誌読者にはArgon0を強くお薦めする。けっしてご損はさせません。
amphion「Helium410」
スピーカーシステム
¥88,000/ペア・税抜
【Specifications】
●型式:2ウェイバスレフ ブックシェルフ型●ユニット:トゥイーター 1インチチタニウム、ミッド・ウーファー4.5インチペーパーウーファ−●クロスオーバー:1.6kHz●インピーダンス:8Ω●出力音圧レベル:86dB●周波数特性:52Hz〜25kHz ±3dB●許容入力:20〜80W●サイズ:132W×259H×220Dmm●質量:3.5kg●レギュラーカラー:スタンダードホワイト、ブラック
amphion「Argon0」
スピーカーシステム
¥132,000/ペア・税抜
【Specifications】
●型式:2ウェイバスレフ ブックシェルフ型●ユニット:トゥイーター 1インチチタニウム、ミッド・ウーファー4.5インチアルミニウム●クロスオーバー:1.6kHz●インピーダンス:8Ω●出力音圧レベル:86dB●周波数特性:50Hz〜20kHz ±3dB●許容入力:25〜120W●サイズ:132W×259H×220Dmm●質量:6kg●レギュラーカラー:スタンダードホワイト、フルホワイト、ブラック●取り扱い:Wefield ウインテスト(株) オーディオ事業部
本記事は季刊・オーディオアクセサリー 178号 AUTUMNからの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから。